遊戯王デュエルモンスターズGX 伏臥する無限の竜   作:マンボウ

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――殻は己を守るもの。されど砕け壊れるもの。


翔の覗き騒動

 次の日。

 さっそくアカデミアでは授業が開講され、1時間目は最初にクロノスによるデュエル授業だった。

 そこでまず天上院明日香がクロノス教諭に当てられ、モンスターカードの種類について説明することになった。

 すらすらと説明していくその様子は、元々の容姿とあいまって、まさしく優等生だ。

 理有はそんな彼女の様子を見て、そんなことを思っていた。

 次いでクロノスは翔を当て、フィールド魔法について説明することになった。

 しかし、あたふたしたまま上手く説明できず、クロノス教諭はそんな彼のことを馬鹿にするような発言をした。

 周囲は翔を笑う。そこには、確かに嘲りの感情が感じられた。

 理有は胸糞が悪くなる。

 確かに、翔は説明できなかったが、理有はその理由を理解することが出来た。

 ……知らないんじゃなくて、あがってて言えないんだよ。

 理有自身もあがり性なので、その気持ちがよく分かる。

 フィールド魔法がどんなものかぐらい、翔は知っている。その証拠に、実は初日のヘリの中で、ロイドデッキに合うフィールド魔法がないか、という話をしていたのだ。

 だから理有の中で、クロノスと言う人物に対する評価は大きく下がった。こんな誰かを公然と貶めるような人間が、本当に教師なのか、と。しかもクロノスは、オシリスレッド全体まで馬鹿にするようなことを言い出した。

 ――デュエルの実力と性格は、反比例するのだろうか。

 そう思っていたとき、別の席から声がした。

 十代だ。

「けど先生。知識と実践は、関係ないですよね? だって、俺もオシリスレッドの一人だけど、クロノス先生に勝ってるんだし」

「ぐぬぬぬぬー……!」

 ……うわー、十代君ってとことん空気を読まないなー。クロノス先生ハンカチ噛んで悔しがってるよ。

 確かに十代の言うとおり、理論のみで決闘に勝てるなら、最も頭のいい学者がデュエリストの頂点にいるはずである。

 だが、必ずしもそうではない。

 かつての決闘王、武藤遊戯は、学生でありながらバトルシティで頂点に立ったのだ。しかも準決勝の相手は海馬瀬人――海馬コーポレーションの社長であり、あらゆる学問を修めた天才でもある。

 理論だけでは補いきれない部分は、確かに存在するのだ。

 そういう意味では、十代とクロノスは対極に位置する人間なのだろう、と冷静に推察した理有は、この両極端な二人の存在が、別の騒動の引き金にならないか心配になった。

 そして理有は知ることもないが、本当に別の騒動の引き金になったのである。

 

 ――ちなみに、次の大徳寺先生の錬金術の授業を聞いて、理有はクロノスの教師資質以上に、その授業の意義が疑問になった。

 

 夜。

 自分の部屋で自習をしていた理有は、いきなり自分の部屋の扉を叩く音に驚いた。

「理有! 大変だ!」

 十代の声だ。

 その慌てぶりからして、どうもただならぬ様子だ。

 理有が玄関の扉を開けると、予想通り十代が慌てた様子で部屋に入ってきた。

「大変なんだよ! 翔が誘拐されちまった!」

「ゆ、誘拐!? ど、どういうこと! 詳しく教えて!」

「いきなり俺のPDAに連絡が入ったんだ! 顔は分からなくて、声は機械じみてて、返して欲しければオベリスクブルーの女子寮まで来いって!」

「――は? 女子寮? な、なんでそんなところに?」

「とにかく、一緒に来てくれ! 翔の友達なんだろ!?」

「……分かったよ。けど、あまり期待しないでね? 僕はあまり、手荒なことに慣れてないんだから」

 理有はデッキとデュエルディスクを持ち、先に部屋を出て走り始めた十代の後を追う。

 暗い夜の森を抜け、湖までたどり着くと、岸につけてあったボートを見つけてそれに乗り、十代が全力で船を漕ぐ。

「じゅ、十代君。全力はまずいよ。いきなり体力を使い果たしてどうするの?」

「けど、このままじゃ翔がどうなっちまうか!」

 言っても聞かない様子なので、仕方なく理有は頭を回転させるほうへ意識を向けた。

 それにしても、なぜ女子寮なのだ。

 これでは明らかに、翔を捕まえた犯人が女子だと言っているようなものだ。そもそも翔とオベリスクブルーの女子に、どんな接点があると言うのだ。

 妙なことは他にもある。翔自身だ。

 昼間、体育の授業が終わったあたりから、翔の様子がおかしかった。どこか浮ついた様子で、何を聞いても上の空。時折、まるで恋煩いのように、顔を赤くしたりしている。

 ……まさか、女子寮に誰かから呼び出されて、それが問題になったとか?

 理有は嫌な予感がして、願った。頼むから外れててくれ、この予感、と。

 だが、現実は無情だった。

 事件のおおよその流れは、大当たりだったのだ。知る由もないが、翔を呼び出した犯人がクロノスで、呼び出そうとした本当の標的が十代だということ以外は。

 

 女子寮の船着場までやってくると、そこには五人の人影があった。明日香と、オベリスクブルーの女子が三人。そして両手を縛られた翔だ。

 それが気になった十代が最初に声をかける。

「翔、どうしたんだ!?」

「こいつが私達の風呂場を覗き見したのよ」

「覗き見なんてしてないっスよ! 手紙で呼び出されただけっス!」

 理有は、貧血になったようにくらりとする頭を押さえた。

 ……予想通りだったよ。最悪。っていうか、なんでそんな迂闊なことをするの、翔君。

 そう内心で愚痴りながら、理有は明日香以外の三人の姿を確認する。

 一人目は茶髪の勝気な女性――後日紹介を受けたが、枕田ジュンコという。

 二人目は黒髪のおっとりした雰囲気……と思ったが、今はぷんすか怒りながら翔を睨む女性――こちらは浜口ももえ。

 三人目は紫髪のツインテールに、明日香に負けず劣らずの美貌を持つ、妖艶な雰囲気を持った女性だ。

 翔はやってないと言い、女子三人は翔に辛らつなことを言う。うそつき、とか、バレたら退学、とか。

 ……あーあー、なんだかどんどんややこしい話になってきたよー。どうするの、これ?

 どう収拾をつければいいか分からなくなってきた理有だが、そこで明日香がこんなことを言い出した。

「さて、ねえ貴方達、私とデュエルしない? 勝てば今回のこと、大目に見てあげるわ」

 それを聞いた理有は、思わず明日香を見返し、そして思う。なんつー太っ腹な人間だ、と。理有は、明日香の本性を垣間見た気がした。昨日まではまだ大人しい印象だったけど、実は彼女、ものすごく気が強いのではなかろうか。

 彼女に抱いた女王という印象は、案外間違ってなかったと確信した。

「……なんだかよく分からないけど、まあいいや。その決闘、受けて立つぜ!」

「ま、待ってよ、十代君。君、さっき思いっきりボート漕いでたから、少し息あがってない?」

「ん? 大丈夫だって」

「とか言いつつ、肩で息してるよ。明日香さん。ちょっと十代君を休ませたいんだけど、いい?」

 理有が明日香に確認を取ると、明日香は少し考えてから、

「そうね。どうせならベストコンディションでお願いしたいわ。じゃあ、貴方……理有だったわね。ウォーミングアップに付き合ってくれるかしら?」

「いいけど、十代君にデッキバレるよ?」

「構わないわ。ばれたところで問題ないもの」

 ……うっわー。ものすっごくあっさり強気だなー。見た目綺麗なのに、割と竹を割ったような人だ。

「えーと、じゃあ一個条件が。僕が勝ったら、その時点で翔君を還してもらえる?」

「えー? それじゃあ、理有が勝っちまったら、俺が決闘できないじゃんかー」

「と、とことん決闘したいんだね、十代君は。……じゃあ、こうしてもらおうよ。僕が勝っても、十代君との決闘は予定通り行うってことで。明日香さん、それでいい?」

「いいわよ。こっちとしても願ったりだわ」

 明日香のどこか嬉しそうな声を聞いて、理有は直感する。実は明日香、この件を口実にして、本当は十代と決闘したかっただけではないか、と。

「待ちなさい、坊や。アナタとの決闘、私がやらせてもらうわ」

「え? えっと……貴女は、どちら様ですか?」

 そこで出てきたのは、先ほどの三人目の女性。紫のツインテールを髪になびかせながら、彼女は余裕たっぷりに、甘い声で問いをつき返す。

「人に名前を尋ねるときは、まず自分からよ、坊や?」

「ぼ、坊や……すみませんでした。僕は、円影理有です」

「私は藤原雪乃。よろしくね、ボ・ウ・ヤ」

 いきなりのボウヤ呼びに面食らう理有。

「ちょ、ちょっと雪乃! いきなりどうしたのよ?」

「あら。こっちも気を利かせてあげたのよ。このままだと貴女も連戦でしょう? ベストコンディションでそっちの坊やと戦いたいなら、一戦目は私に譲りなさい」

「でも……」

「明日香。貴女、私の腕がどれほどのものか、知ってるでしょう?――任せておきなさい。あんな坊や程度、軽くあしらってあげるから」

 ……うわー、こっちは明日香さんと別の意味で女王だよ。っていうか女王「様」だよ。

 珍しい人種を見た、と思っている理有をよそに、明日香は雪乃の提案に少し考える仕草を見せ、そして頷いた。

「分かったわ。お願いね」

「ええ。任されたわ」

 雪乃はやっぱり余裕たっぷりな笑みで、明日香の視線を見返した。

  

 湖の中央まで、男性陣と女性陣、二つのボートで漕ぎ出した。ちなみに女性陣のボートは人数に合わせて大きめである。

「さて、それじゃあ始めましょう? 遊んであげるわ、坊や」

「い、いきます!」

 デッキのシャッフル、ディスクセットアップが完了し、

 

「決闘!」

 

 闘いの幕が切って落とされた。

 デュエルディスクが先攻の判断を雪乃に下す。

「先攻は私ね。ドロー!……《センジュ・ゴッド》を召喚。デッキから儀式モンスターカードを1枚手札に加える。私は、デッキから《終焉の王デミス》を手札に加えるわね」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《センジュ・ゴッド》

効果モンスター

星4/光属性/天使族/ATK 1400/DEF 1000

このカードが召喚・反転召喚に成功した時、

自分のデッキから儀式モンスター1体を手札に加える事ができる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ターン終了よ」

 

雪乃 手札:6枚 → 6枚

   場 :《センジュ・ゴッド》

 

「ぼ、僕のターン、ドロー!……《終焉のカウントダウン》発動。ライフを2000支払います。 さらにモンスターを1枚セット。カードを2枚伏せ、ターンを終了します」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《終焉のカウントダウン》

通常魔法

2000ライフポイント払う。

発動ターンより20ターン後、自分はデュエルに勝利する。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

理有 手札:6枚 → 2枚

   LP:4000 → 2000

   場 :裏側守備モンスター×1

      伏せカード×2

 

「あら、伏せモンスターなんて、珍しいわね」

 伏せモンスター。正式には裏側守備表示。

 あまりこの世界ではリバースモンスター以外では用いられない方法だが、理有は良くこの手段を使っていた。

 正体が分からないから相手をかく乱できるし、時に守備力の高いモンスターに突っ込んで自爆してくれるから精神的ダメージもある。

 だから理有は基本的に守備表示でモンスターを出すときには裏側にするのだ。

 だが、それが必ずしも有効であるとは限らない。

「私のターンね。ドロー……じゃあ、まずは様子見かしら。《センジュ・ゴッド》で、裏側守備表示モンスターを攻撃するわ」

 《センジュ・ゴッド》が、手中の錫杖を使って伏せモンスターに攻撃を仕掛けるが、ここで理有はデュエルディスクのボタンをプッシュし、伏せカードをオープンする。

「永続罠カード《グラヴィティ・バインド-超重力の網-》発動! レベル4以上の場のモンスターは攻撃できません」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《グラヴィティ・バインド-超重力の網-》

永続罠

フィールド上のレベル4以上のモンスターは攻撃できない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 フィールド全体に重力の加圧が係り、《センジュ・ゴッド》は急激にその動きを鈍らせて攻撃の手を止めた。

「あら。あたしを網で縛るなんて。実はあなた、女を支配したい深層心理でもあるのかしら? 網どころか縄で縛ったりして」

「な、なな、何をいきなりそんなこと言ってるんですか!?」

「あらあら、顔を赤くしちゃって、初心ねー」

「っ~~! 雪乃さん! 頼みますから、からかわないでくださいよー!」

 理有が真っ赤な顔で抗議するが、雪乃は相も変わらず妖しい顔で理有を遊んでいる。

「ふふ。それじゃあ、私は伏せカードを1枚セットして、ターンを終了するわ」

 

雪乃 手札:7枚 → 6枚

   場 :《センジュ・ゴッド》

      伏せカード×1

 

「僕のターン、ドロー!……伏せモンスターを1体追加して、ターン終了です!」

 

理有 手札:3枚 → 2枚

   場 :裏側守備モンスター×2

      伏せカード×2

 

「私のターン、ドロー……ふふ。確かに《グラヴィティ・バインド-超重力の網-》は厄介ね。けど、この程度の束縛で、女を縛れると思ったら大間違いよ? 坊や」

「え?」

 余裕のある笑みを見せる雪乃は、ここですべての盤面をひっくり返しに来た。

「もっと刺激的にいかなきゃね。――私は手札から《高等儀式術》を発動するわ」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《高等儀式術》

儀式魔法

手札の儀式モンスター1体を選び、そのカードとレベルの合計が

同じになるようにデッキから通常モンスターを墓地へ送る。

その後、選んだ儀式モンスター1体を特殊召喚する。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「デッキから《甲虫装甲騎士》を2枚墓地へ送り、手札から《終焉の王デミス》を特殊召喚するわよ」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《甲虫装甲騎士》

通常モンスター

星4/地属性/昆虫族/ATK 1900/DEF 1500

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《終焉の王デミス》

儀式・効果モンスター

星8/闇属性/悪魔族/ATK 2400/DEF 2000

「エンド・オブ・ザ・ワールド」により降臨。

フィールドか手札から、レベルの合計が8になるよう

カードを生け贄に捧げなければならない。

2000ライフポイントを払う事で、

このカードを除くフィールド上のカードを全て破壊する。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 突如、黒い幽鬼が出現した。

 いや、幽鬼と言うよりも死神に近い。

 青のラインが入った黒の甲冑を纏い、戦斧を持ったその顔は、白磁のような白さを持った骸骨と黒い角。

 まさに終焉の王に相応しい出で立ちに、理有は驚愕を喉から発した。

「しゅ、《終焉の王デミス》!? なんてとんでもないレアカードを!」

「気に入ってくれたかしら。じゃあ早速、《終焉の王デミス》の効果を発動するわ。2000ポイントのライフを払い、《終焉の王デミス》以外のすべてのカードを破壊! 『終焉の嘆き』!」

 

雪乃 LP :4000 → 2000

 

「っ! デミスの効果に対応して罠カード《和睦の使者》発動! このターンの戦闘ダメージを0にする!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《和睦の使者》

通常罠

このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける

全ての戦闘ダメージは0になる。

このターン自分のモンスターは戦闘では破壊されない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「あら、つれないわね。じゃあ、さらにチェーンして伏せカード発動。《強制脱出装置》で《センジュ・ゴッド》を自分の手札に戻すわね」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《強制脱出装置》

通常罠

フィールド上のモンスター1体を選択して持ち主の手札に戻す。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 そして、立体映像のデミスが戦斧を天にかざして光を空に放ち、球を成す。

 次の瞬間、光球は弾け、光の雨となってフィールド上に降り注ぐ。

 光にカードが突き破られ、次々に破壊されていく。

「うわあああっ!?」

 おまけにソリッドビジョンシステムがよほどリアルなのか、湖が波立ち、船が大きく揺れる。

 あちらの船でも雪乃以外の女性陣が悲鳴を上げている。

 はた迷惑なソリッドビジョンに複雑な顔をする理有は、それでもホッとしていた。

 ……あ、危なかったー。《和睦の使者》を伏せてなかったら負けてたよ。

「このターン、攻撃しても無意味ね。私はターン終了よ」

 

雪乃 手札:7枚 → 6枚

   場 :《終焉の王デミス》

 

「僕のターン、ドロー!……もう一度伏せモンスターを1枚、カードを1枚伏せ、ターン終了します」

 

理有 手札:3枚 → 1枚

   場 :裏側守備モンスター×1

      伏せカード×1

 

 理有の伏せモンスターは《魂を削る死霊》、伏せカードはもう一枚の《グラヴィティ・バインド-超重力の網-》。

 ……ライフポイントが2000以下になったから、デミスの効果はもう使えない。これで耐え切る!

 理有はなんとか防ぎきれると考えていたカードだが、そうそう事は上手く運ばない。

 と言うよりも、間違いなく理有が考えたことはお約束(フラグ)だ。

「私のターンね、ドロー……貴方、もうデミスの効果は使えないって思ってるでしょう?」

「え?」

 心を読まれた――理有がそう思い雪乃の表情を見た瞬間、彼は自分の浅慮を自覚した。

 笑っている。

 雪乃は優雅さと女性特有の柔らかさを失っていない。それどころか、満ち溢れる余裕すら感じられる。

「私は、《センジュ・ゴッド》をもう一度召喚。デッキから2枚目の《終焉の王デミス》を手札に加えるわ。……そして速攻魔法《神秘の中華なべ》を発動」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《エンド・オブ・ザ・ワールド》

儀式魔法

「破滅の女神ルイン」「終焉の王デミス」の降臨に使用する事ができる。

フィールドか手札から、儀式召喚するモンスターと同じレベルになるように

生け贄を捧げなければならない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《神秘の中華なべ》

速攻魔法

自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。

生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、

その数値だけ自分のライフポイントを回復する。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「私は《センジュ・ゴッド》を生贄にし、攻撃力分のライフポイントを回復するわ」

「げ」

 

雪乃 LP :2000 → 3400

 

「これでもう一度デミスの効果を使えるわ。もう一度《終焉の王デミス》の効果を発動! 2000ポイントのライフを払い、《終焉の王デミス》以外のすべてのカードを破壊! 『終焉の嘆き』!」

「わああああっ!?」

 またもデミスが場のカードを光の雨で破壊しつくす。

 もはや、理有に防御手段はない。成す術もない。

 

雪乃 LP :3400 → 1400

 

 

「往きなさい、デミス!」

 雪乃は容赦なく、決着をつけるための攻撃を宣言。

 デミスの持つ刃が理有を切り裂く。

「ぐああっ!?」

 

 理有 LP: 2000→0

 

「うぅ……ちゃぶ台をひっくり返された気分だよ……」

 がっくりと地面に手をついてうなだれる理有の姿は、どこか哀愁が漂っていた。

「何やってるっスか! 理有クーン!」

「あぁもう煩いなあこの覗き魔!」

「覗き魔ってなんスか! 大隊僕は覗いてなんてないんだよー!」

「そんなのこっちは分からないし知りたくもないよー!」

 ぎゃーぎゃーと理有、翔が言い争いをはじめ、明日香たちは呆然とした。

 そんな中、十代は意気揚々とデュエルディスクを起動した。決闘にしろ何にしろ、神経の図太い青年である。

 

 その後、十代と明日香が決闘を行った。結果、

「《E・HERO サンダー・ジャイアント》の攻撃!」

「きゃああああああああっ!」

 十代の《E・HERO サンダー・ジャイアント》が明日香の《サイバー・ブレイダー》を効果破壊したうえでダイレクトアタックを決め、勝者は十代となり、翔の無罪放免が決まったのである。

「よっしゃー! ガッチャ! 楽しい決闘だったぜ!」

「……なんか、僕ってやっぱり要らない子?」

 理有が思わずそうこぼしたのは秘密だ。やっぱり十代一人で事が片付いていたと、そう思うと自分の存在意義を疑ってしまう。

 そんなことに構わず、十代は明日香に翔の身柄を要求し、明日香たち女性陣は、しぶしぶその要求に応じたのだった。

 ボードを再び近寄せて、縄で縛られたままの翔がなんとか立ち上がったところで、縄を解こうという仕草を見せたジュンコが、いきなり翔の背中を蹴り押した。

「早く行きなさい!」

「わあああっ!?」

 体勢が不安定な上に水上だから揺れる揺れる。必死に落ちないようバランスを取ろうとした翔は。真正面から前に倒れた。

「ふぎゅっ!?」

 縛られてるせいで受身すら取れず、顔面から倒れこむ。

「だ、大丈夫!?」

「い、痛いっスー!」

 さすがにこれには理有が慌てて近寄り、彼を起こすが、めがねは割れていない。おでこから落ちたらしくて額はたんこぶが出来始めている。

 女子に蹴られるという一部の人にはご褒美な状況だが、残念ながら翔は性癖的な問題と痛みでそんなことを思う暇もない。

「枕田さん! さすがにちょっとやりすぎだよ!」

「フン!」

 ぷいっとそっぽを向くジュンコ。どうやら謝るつもりはないらしいが、

「ジュンコ、さすがにやりすぎよ?」

「明日香さん! この覗き魔に情けをかけるんですか!?」

 やっぱり疑いそのものは晴れていない。そんな状況で謝れと言っても意味がないと悟った理有は、とりあえず翔の縄を解きながら、嘆息する。

「はぁ……やっぱり僕、弱いのかなー」

 それに明日香は苦笑して、理有に声をかける。

「あまり気にしないほうがいいわよ。雪乃はオベリスクブルーの女子の中でもトップランカーの一人よ? 普通なら勝ち目がある相手じゃないわ」

「うわー……」

 それは初耳だ。先に言ってよ。

 と言うより、デミスの効果を知っていたから、出された直後に8割がた形勢は決まっていたのだ。永続罠や永続魔法のロックに頼る以上、場を吹き飛ばす効果を持つデミスにはまず勝ち目がない。

「まぁ、これともう一つデッキはあるけど、今回は遠慮なしで戦わせて貰ったわ。ふふ、坊やの束縛じゃあ、私を縛ることはできないわよ?」

「とか言いながら体のしなを作るのやめてー!? なんでそんな女王様なキャラクターなのー!?」

「ふふふ、女は常にミステリアスで蠱惑的なものよ。そうやって女は自分を磨くの」

「とか言っちゃってるけど、これが雪乃の芸風だから」

「さいですか……」

 突っ込んだので負けだと理有は思った。呆れる明日香の横で、こうも他人のペースをひっかき回すタイプの雪乃は、嫌いではないが、苦手だ。

 ……まぁ、そういう意味では十代君も、なんだけどね。

 でも十代の明るさはむしろ心地いいので否定はしない。というか、雪乃が特殊過ぎるだけだ。いまどき女王様キャラな人間など見るとは思わなかった。

「それでも、やっぱり僕じゃあ力不足だったなー」

「え? 役不足じゃないんスか?」

「意味逆だよ、翔君。役不足は、実力よりも下の役割を与えられたりすること。それじゃあ雪乃さんが格下だって行ってるようだよ」

「失礼な坊やねぇ……やっぱり先生のところに突き出そうかしら。それとも蝋燭と鞭がお好み?」

 じろりと睨む雪乃に、翔は慌てて十代の背後へ隠れる。どうにも残念な性格をしているなー、と友達のことなのに冷めた思考でそんなことを考える理有。

 十代は仕方なさそうに笑ってから、

「じゃあ、約束どおり頼むぜ、明日香」

「ええ。負けた以上、約束は守るわ。それにしても、貴方、いい腕と運してるわね。そっちの理有君はちょっと残念だけど」

「僕まで残念扱い!?」

 ショックを受ける理有だが、それを見て雪乃がフォローを入れる。

「大丈夫よ。そこの覗きボウヤほど残念じゃないから」

「それどういう意味っすかー!?」

「っていうか、結局僕が残念ってことだよねそれ!?」

「それより大声を上げ過ぎると、先生方に気づかれますわよ?」

 女性陣にいいように手玉に取られる理有と翔。そしてそれを嗜めるモモコという構図。

 そんな横で、ジュンコは十代を睨んでいる。

「ふん、マグレで勝ったからって、いい気にならないでね」

「よしてジュンコ。負けは負けよ」

「いいや、そいつの言うとおりかもしれねえぜ。明日香、アンタ強いよ。……ふぁーっ、さて、もうそろそろ帰って寝るか。いい加減眠いしな」

「そしてやっぱり十代君はマイペースだよねー」

 それは、はや二、三日でおおよそ把握した十代の性格に対する、理有の感想だった。

 

 明日香は、十代達が船を濃いで離れていくのを、その姿が見えなくなるまで眺めていた。

 今日は自分が十代に負けを喫したが、次があれば負けてやらないし、負けてやるものか。

 そんな感情を胸に燻らせながら、他方では別の感情もあって、それが彼女の頬を緩ませる。 

 ……なんかアイツ、面白いかも。

 それに、こんなに熱い駆け引きをする決闘は久しぶりだ。血沸き肉踊る、とまではいかないが、それでも今まで闘った決闘でも五指に入るぐらいに楽しかった。そして勝ちたかった。

 だから明日香は、笑った。悔しさも込みで、心の中で笑った。

 そんな彼女の笑みは、どうやら心の中だけでなく、顔にも出ていたらしい。横から覗き込んできた雪乃が、あら、と不思議そうな、そして愉しそうな顔で、

「あら、明日香、十代の坊やに惚れちゃった?」

「は?」

 そんなことを言ってきたから、思わず素っ頓狂な声を上げた。

「や、やっぱりそうなんですか明日香さん!?」

「ちょっと! 雪乃も、ジュンコも早合点しないでよ! そんなわけないでしょ! それにジュンコやっぱりってなに!?」

 その一言を切欠にかしましい言い合い弄り合いが勃発。

 夜も遅いのにがやがやと賑やかな会話は、夜の帳の中でも明るい雰囲気を振りまいていた。

 




……デッキ構築レベル的に、どう見ても明日香より雪乃のほうがトップランカーなのは気のせいか。

おひさしぶりです。マンボウです。
1年以上ほったらかしにしてしまい、申し訳ありません。

どうにも雪乃の口調やキャラクターに慣れず四苦八苦するのが苦しいところ。
他のタッグフォースキャラクターも、コントロールが利くならもっと出していきたいところですが、現状は難しいです……。

そして、理有の使う終焉のカウントダウン(ロック型)ですが、ぶっちゃけカウンター積んでないと、《終焉の王デミス》とか《海竜-ダイダロス》とか《ブラック・ローズ・ドラゴン》で詰みます。今回はそのいい例でした。
このまま行くと、どう考えても理有は勝ち進んでいくことも難しいので、いずれ、何らかの変革を迫られます。
ただし、その変革の由来が己の外か内か、そのどちらになるのかは今後の物語次第と言うことで。

文体などが見づらい、ここは変えたほうがいいなどの意見がありましたら、感想とあわせて記入お願いします。

それでは、いつになるかは未定ですが、次の話までしばしお待ちください。
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