ふと気づくとそこは森の中だった。そう感じた時、違和感を覚えた。森、という知識はあれど森が何なのかはまるで分からない。頭が混乱していた。徐ろに顔を上げると癖っ毛の少女が笑いながらこちらを見ていた。
「何がなんだかわからない、困ったぞ。という顔ね」
嬉しそうに彼女は笑いながら話した。
「私達は今この瞬間生まれたのよ。」
何を言っているんだ。身長だってそこそこ大きい、生まれたばかりというのはもっと小さい身体のはずだ。
「それは人間の子供の場合よ。私達は妖怪だから人の思念がその形を作り偶発的に生まれるものなのよ。その証拠に貴方の体の周りを目が廻ってるでしょ?」
そう言われて自分の体を見ると拳大の目が廻っていた。よく見ると俺の体の周りにある糸に沿って廻っていた。少女を改めて見ると心臓のあたりに目があった。少女の目は体から伸びたコードのようなものに支えられていた。
「その目は、私達が悟り妖怪である証みたいなものよ。」
少女は私達と言っていたが他に誰かいるのだろうか?考えこんでいると
「他にはいないわ、私が気づいた時にはあなたが横で眠っていたの。」
流石悟り妖怪、知識では理解していたが心を読んでの会話は楽でいいな。
「現状が理解できた所で私について教えるわ。さっきから少女、少女と他人行儀ね。私達は今日から姉弟になるのよ?私は古明地さとりよ。いい名前でしょ?私が考えたのよ!!」
薄い胸を張りながら姉ちゃんは自慢げな顔をしていた。俺が起きるまでに頑張って考えていたと考えると可愛い姉ちゃんに思えてきた。考えが伝わったのか姉ちゃんは顔を赤くしながら
「五月蠅いわね、変なことを考えないでよせっかく貴方の名前も考えたのに教えてあげないわよ!」
姉ちゃんは怒って顔を背けちまった。
「悪かったよねぇちゃん。そう言わずに姉ちゃん渾身の作の名前を教えてくれよ。」
「聞きたい?聞きたいんでしょ?しょうが無いから教えてあげるわ。」
ずいぶん扱いやすい姉だなと思いかけたのを急いで掻き消し喜んでごまかすことにした。
「貴方は悟り妖怪の古明地こおりよ。」
姉ちゃんにそう言われてから俺の中で何かが固まった。なるほど、これで俺はこの世界で悟り妖怪としての自我を手に入れたのか。姉ちゃんの方を向くと心を読むこともスムーズにできるようになった(そうしたら自分の中になんの能力が在るのか問いかけてみて。妖怪は固有の能力を持っているはずだからちなみに私は「心を読む程度の能力」よ)少し集中すると急に閃いた。「想いを紡ぐ程度の能力」
「どうやら自分の能力がわかったようね。」
急に目の前が暗くなってきた。
「大丈夫よその疲れは貴方が自分を認識したことにより精神が疲弊しただけよ。」
そ言葉を聞いて安心して目を閉じた。