目を覚ますと首筋に柔らかいものを感じて首を動かすと笑い声が聞こえてきた。目を開けると姉ちゃんの顔が直ぐ側にあった。
「何してるんだ、姉ちゃん?」
「これね膝枕っていうのよ。貴方の寝顔も見れたし、膝枕って良いわね。」
「俺も気に入ったよ。なんて言うか心地いいしな。」
そう言いながら身体を起こして周りを見回した。どうやらココは洞窟になっていてすぐ目の前が森の様だ。あたりは暗いし、もう夜になってしまったのだろう。
「姉ちゃんこれからは、この洞窟を生活の拠点にするのか?」
「そのつもりよ。ただ、この洞窟奥まで相当続いてるみたいだし、あまり奥に行ってはダメよ?」
「わかったよ、じゃあ森の方の様子見てくるよ」
森の中はとても暗く、静かだった目を見張れば小さな妖怪たちが話し合ってるのが頭の中に響いてくる。
「今日もあの百足の妖怪隣の山から来てるぜ。」
「向こうの山の人里食い尽くしたらしいしな。俺らの分も食い荒らされちまうのかね。」
「おいそこの妖怪、その話詳しく聞かせてくれ。」
「コイツ俺らの言語がわかるのか?」
「馬鹿言うなって、俺らの言語は人型の奴らがわかるような言葉じゃないさ。」
「俺は悟り妖怪だ。お前らの心を読んで会話している」
「そういう事か、俺らは土の中の微生物の集合体からなる妖怪だよ。」
「さっきの百足の妖怪の事ならあっちの人里の近くの方にいるぜ。」
「出来ればでいいんだが、あのムカデの野郎を殺すなり追い出すなりしてくれよ。」
「俺らみたいな妖怪には手出しができないんだ。お前も食料になる人間がいなくなったら困るだろう?」
「あっちの方だな。教えてくれてありがとな、できるだけ協力するよ。」
そう言いながら二人の妖怪と別れて示された方向に向かって歩き始めた。目的地につくとムカデの妖怪が人の子を食べようと追い掛け回している所だった。観察してみるとムカデの甲殻は黒光りしていて、かなりの硬度であることが見てとれた。また大顎はそこら辺の太い木などスパッとキレるくらいの鋭さを持っていた。あの妖怪を倒す勝算は俺にあるだろうか?しかし、他の妖怪に協力すると言った手前何かしらの手傷を追わせて追い払う事くらいはしてやりたいよなとゆっくり考えていた。そんな事を考えていると子供が転んでしまい逃げられなくなってしまったので、仕方なく動く事にした。下準備も終わらせたところだしね。
「そこのゴキブリの妖怪よぉ、少し止まれよ。」
「誰がゴキブリの妖怪だとぉ?」
苛つきながらこちらの姿をとらえたその目には俺自身が反射して写っていた。下準備もなしに飛び出ていたら俺はこの時点で詰みだったろうな。
「その人の子は俺が食べることにしたんだ。実は生まれたばっかでな。腹が減ってしょうがない。それに話に聞いたらおまえの住処は隣の山だそうだな帰れ!」
「俺に刃向かうとはなかなかの度胸だな小僧。生まれたばかりの青瓢箪の言う事を俺が聞くとでも思ったのか?」
「やめてくれないのか?」
俺の問いに答えるのも馬鹿馬鹿しくなったのかムカデは子供に近づこうとしたところで動きを止めた。正確にはこれ以上動けなかったのだろう。
「どうかしたのか?速く食っちまえよ。」
「テメェ俺に何をした!!」
「気づくのが遅かったね。と言ってもその分厚い外骨格だと感覚がにぶそうだし気づけないだろけどね」
「何をしたんだと説いているんだ小僧ぉ!!」「お前の関節の隙間に俺の想いを紡いだ糸がすでに巻き付いている。その糸の終着点はここだ。」
そう言いながら右手を上に上げると妖怪は苦しそうに呻きだした。
「や、止めてくれぇ、このままだとバラバラになっちまう。このガキはくれてやる。だから辞めてくれ。」
「ヤダよ、俺は忠告したじゃないか俺の言うことを聞いてくれなかったんだからね。」
そう言いながら右手を握りながら天に掲げた。その瞬間目の前のムカデは悲鳴を上げながら愉快なオブジェに成り下がった。動かなくなるのを確認して後ろを向くとが子供がムカデの返り血を浴び怯えた表情でこちらを見ていた。さて、この子をどうするかな。