アレから数年何事も無く平和に生き延びてこれた。ムカデの妖怪もあれから姿を見ていない。
それから、村の人たちにはそこそこ感謝して貰い、だが助けなかった人間の子孫たちには恨まれながら生きてきた。今もこうして妖怪の食い残しである人だったものの処理をしている所だ。
「ほら、お前達早く消化してくれ、服に匂いが染み付く前に離れたいんだよ。」
「了解っスよ。」
「おい、喋ってる暇あったら速い所この残りカス消化するぞ。」
コイツラはムカデ妖怪の居場所を教えてくれた微生物の妖怪達だ。瞳ちゃんの家から帰る最中会ったので倒したことを伝えたら弟分にしてくれ、と頼まれたので俺に害をなさないと約束させてからというもの俺の体の表面にいつも待機してもらってる。最初に返事をくれた愛想のいいやつは、バク。バクは基本的にマヌケで話していて飽きない、そんな奴だ。もう一人はとても冷静なテリーだ。テリーは妖怪の格としてはバクよりも高い、性格も相まって無駄な事は余りしないが、俺の事となると心配が耐えないそうだ。
「こおりさん、食べ終わりました。」
「もうお腹いっぱいッスよ。」
そう言うと二人はいつも通りに俺の体に戻っていった。これでやっと死体はなくなったはずだ。死体は放置しておくと臭い、その上匂いが強烈なせいで他の山からも妖怪がやってくる事が多々あったので定期的に掃除しに山の中を歩きまわる。ここ数年間でルーチン化した生活だ。外に出るのが増えたのか村人たちに合う回数も増え、時折どこかから視線を感じるようになった。今もどこかから見られていたようだが……
「お前が村で言われていた三つ目の鬼か?」
そう、村では何故か俺の種族は鬼になっていた。多分瞳ちゃんが鬼のように強いと何度も言っていたせいだろうと思う。俺に恨みを持つ村人かと思いそちらを向くと気持ち悪いくらいの妖気を放つ人影がそこには居た。あれは、ヤバイ、アレと渡り合うのは不可能だ。しかもさっきっからコイツ俺のことを殺すなどと物騒なことを考えているじゃないか。
「オレは鬼じゃない。村人が勝手に言っているだけだ。だから、アンタと喧嘩できるとは思えないんだけどね。」
見た限り相手は鬼のようだし、とりあえず同族であることを否定して逃げよう。
「同族じゃないのかい?そいつは残念だね。
しかし、同族の名を語るとはそれなりの覚悟があると思うんだよね。私としてもお前の様な不気味な奴が同族の名を語っていたと知ってしまった。これは鬼のプライドが許さないんでね。」
これは、逃げられない。とりあえず今はまだ昼だ。
「解った。しかし、今すぐにという訳にはいかない。俺もまだ眠いんだ。それにケンカするっていう条件飲んだんだ此方にも2つだけ条件がある。」
「2つか……良いよ。鬼の喧嘩を受けてもらったんだ2つくらいなら言ってくれ。」
話しの分かるやつで助かった。
「1つ目は、今は昼だからまだ眠いんだ。日が落ちてからもう一度この場所でって言うのと、2つ目は俺が勝ったら俺の家族には手を出さないでもらおうか。」
「それくらいならお安い御用だよ。しかし、間違えても逃げようなんてするなよ?その時は鬼の名にかけて地の果てでも追ってやる。」
「俺も借り物だが鬼の名にちかおう。」
「ッフフ…面白いやつだな。
逃げようともせず、鬼に勝とうなんて。私の名は星熊勇義だ。」
そう言うと勇義は静かに森の中に消えていった。
「こおりさん。大丈夫ですか?鬼なんかと約束してしまって?鬼は嘘をつかないんですよ。地の果てでも追ってきますよ?」
「テリーは心配症だなぁ。兄貴が負けるはずないっすよ。」
今回もヤバイかな。とりあえずあの場所に色々仕掛けて帰るとしよう。姉ちゃんにも話さないといけないな。