「ンッ…ハァ〜……ん?姉ちゃん?」
目を覚ますと、首筋に柔らかい皮膚の感触が伝わってきたのでまた、姉ちゃんの膝枕かと思っていたが。
「姉ちゃんじゃ無くて悪かったな。アタシだよだ・ん・な・さ・ま」
「勇義か、傷なおるの速いなさすが正真正銘の鬼ってだけあるな。それとその旦那様ってのは何だ?」
「だってお前勝負始まる前に私が欲しいって言ったじゃないか。」
「そういう意味で言ったんじゃないんだがな。
俺は、俺の代わりにこの山と村を管理してほしいという意味で言ったんだ。……けれど、家族が増えるってのも悪くない。俺の旦那を名乗りたければ名乗ればいいさ。俺も勇義のことは気に入っているしな。」
「今更恥ずかしそうに言われても説得力ないよ。プロポーズの時の男らしさは何処に行ったんだかね。」
お前は悟り妖怪かよ。俺らの専売特許を奪いやがって……俺が分かりやすすぎるのが問題か。これからはポーカーフェスでも覚えるかな。
「俺が寝てる間に何か変わったことはあったか勇義?」
「とくに変わらないと思うけどね。お前の姉ちゃんは奥のほうで何かしてるみたいだし、お前の妹は今お前が抱きしめてるだろ。」
視線を下に向ければそこにはいつも通りニコニコ微笑むこいしちゃんがいた。
「…心配かけてゴメンなこいしちゃん。」
「いいよ。お兄ちゃんが生きてればそれでいいよ。」
いいとは言ってくれているがその表情にはやり切れない想いが出てしまっているのか少し陰っている。コレじゃ俺達は悟られだな。とても分かりやすい。これ以上の言葉はかけ用が無いので少し抱きしめる力を強くし頭を撫でた。こいしちゃんもご満悦のようで、無垢な笑顔を見してくれた。
「お兄ちゃんは鬼いちゃんだったんだね。」
……ハッ?発音おかしくないかな?
「こいしちゃん?発音がおかしくないか?」
こいしちゃんは首を横に振りながら自分の顔の左目の上辺りをチョンチョンと指で指している。嫌な予感がしてきた。恐る恐る自分の顔の左目の上に手を伸ばすとそこには角が生えていた。螺旋状に伸びているであろうその角はしっかりと俺の身体のものだと主張する様に感覚が備わっていた。原因は1つしかない、勇義の目だろう。デメリットが無いなんて、甘い考えは無かったがまさか角が生えてくるとは思わなんだ。しかし、この事で勇義を攻めるのはお門違いもいいところだろう。寧ろ責められるのは俺の方だろう勇義から目を奪ったのだから、勇義の方を見ると、勇義の目はしっかりと再生していた。
「再生に一番時間がかかったんだからな。また、やすやすと抉ってくれるなよ。旦那様。」
そういう勇義の顔は少し赤くなっていた。
「鬼の四天王ともあろう御方がそれだけで、赤くなるとは可愛いねぇ。」
さっきのお返しと言わんばかりにからかってやった。勇義はよほど恥ずかしかったのか、俺の頭から足を抜き、俺の頭が地面に落ちる前に、拳で殴ってきた。
鬼の力が俺の体にあったおかげで、粉砕までもいかないが、俺はもう一度気を失った。