外伝:あの子がフランドール・スカーレットになっていた件 作:冷水
【閲覧注意】
本編では絶対にやらないIFストーリー
じゃら、じゃら、
十六夜咲夜が歩くたびに、鎖が擦れる音がする。
じゃら、じゃら、
十六夜咲夜は何もしゃべらない。
じゃら、じゃら、
銀の鎖が音を立てて鳴り響く。
咲夜が、レミリアの御前に馳せ参じた。
「フランドールお嬢様の居場所が、分かりました」
青と白のメイド服の裏には、大量の銀のナイフを。
腰には銀の鎖を巻き、髪留めは鋭く尖った杭のようなデザイン。
咲夜は対吸血鬼に特化した装備を付けている。
これから連れ戻すのは、凶暴と言われる吸血鬼。
レミリアは目を閉じ、咲夜の報告を聞いている。
「絶対に、連れ戻しなさい」
--御意に。
--抵抗された場合は、どうしますか?
「無理にでも連れ戻しなさい」
--銀製装備の使用は・・・
「当然、許可するわ」
--邪魔者は・・・
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コン、コン
ドアを、ノックする音が聞こえる。
「こんな時間に、誰だ?」
深夜、フランは眠ってしまい、魔理沙はこれから寝ようとしていた。
パジャマに着替え、既に来客の服装ではない。
それでも夜の魔法の森を歩けるのは、里の人間ではありえないし、多分知っている誰かだろうと思う。
ドアを開けると、重装備に身を包んでいる咲夜だった。
「おいおい、こんな時間に物騒な恰好をして・・・何の用だ?」
「こちらに、フランドールお嬢様がいらっしゃると聞いて」
お嬢様?
魔理沙は首を傾げて、咲夜の言葉が上手く飲み込めない。
しかし、口元から覗く犬歯、翼のある種族、日光に弱いという特性。
それらを思い出すとともに、不思議と合点がいくものがあった。
フランドールは、吸血鬼で、紅魔館の住人だったのだ。
そして、目の前に居る、殺意を隠そうともしない咲夜。
紅魔館は、かなり閉鎖した組織であり、フランはそこから逃げ出してきたのだと思われる。
魔理沙はドアの近くにあった、箒を手に取った。
「そんな奴、ここにはいないな」
通せんとするように、魔理沙はドアの真ん中で陣取っている。
「そんなはずはないわ。少し、中を見せてくれないかしら?」
剣呑な雰囲気が、二人の間で交錯していく。
「まりさ・・・どうしたの?」
目をこすりながら、パジャマ姿で魔理沙の方へやって来るフランドール。
「バカ、来るな!」
「え?」
その瞬間、咲夜は蹴りを放ち、魔理沙を吹き飛ばす。
「ぐう・・・」
机にぶつかり、魔導書や何やらが床にばらまかれた。
「魔理沙!」
フランドールは、魔理沙に近寄ろうとする。
しかし
「フランドールお嬢様」
目の前には、十六夜咲夜が立ちふさがった。
「なに、あなた・・・誰よ・・・」
「これは失礼しました。私は十六夜咲夜。紅魔館でメイド長をやっております」
フランドールは、紅魔館では人間を見たことがない。
当然、十六夜咲夜の事をしらない。
だが、レミリアが差し向けた、追手であることだけは理解できた。
魔理沙を視界の端に捉える。
呻き声を上げているが、それほど大きな怪我はしていないように思える。
「心配なさらずとも、魔理沙には何もしませんよ」
キッと、咲夜を睨むフランドール。
「紅魔館へ帰りましょう。レミリアお嬢様が、帰りをお待ちしておりますよ」
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逡巡するフランドール、ここで否を言えば、魔理沙に何をされるか分からない。
しかし、その迷いは魔理沙の言葉で揺れ動いてしまう。
「フラン・・・行かなくて、いい・・・」
魔理沙は、這って咲夜の足を掴んだ。
その瞬間、フランドールは覚悟を決めた。
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「私は、帰らない!」
拳を握り、咲夜へ攻撃を加える。
吸血鬼の拳は、人間が食らえば、ひとたまりもない。
しかし、咲夜は霞のように、残像を残して避けてしまう。
「抵抗なさると、そう受け取ってよろしいのですね?」
冷たい目を、フランドールへ向けてくる。
それは暗殺者のように、ただひたすらに無機物を見るような目を、フランドールへ向けてくる。
その眼差しに、フランドールは寒気と恐怖を同時に感じた。
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先手必勝とばかりに、フランはドアの前に立つ咲夜へ突進する。
しかし、咲夜はバックステップと共に、外へ出る。
咲夜は時を操り、残像を残しながらも、勢いよく後ろに下がる。
「ここなら、魔理沙に構わず戦えますよ?」
余裕の笑みを浮かべている。
フランドールの意図など、何もかも御見通しとばかりに、薄く冷酷な笑みを浮かべている。
空を飛び、蹴りを、拳を、そして炎で出来た剣を出し、咲夜へ向けて攻撃をする。
しかし、咲夜には当たらない。
「拍子抜けですね。そろそろ私から行きますよ」
銀のナイフを持つ咲夜は、それらをフランドールへ投擲してくる。
剣ではじくも、咲夜は次の瞬間には視界の外からナイフを放つ。
ナイフが風を切る音、咲夜の気配の現れる場所を吸血鬼の勘で察し、フランはぎりぎりの所でそれらを避けていく。
「そろそろ、終わりにしましょう」
咲夜の姿が、消える。
時が、止まる。
全てが静止した世界で、咲夜だけが動けている。
鎖を腰からはずし、背後へまわり込み、そして時は動き出す。
銀の鎖が、フランドールの首へまとわりついた。
「っ・・・」
まずいと思った時には、既に遅かった。
銀は吸血鬼にとて、弱点の一つとなる。
力が入らない。
(こんな鎖程度、引きちぎれない・・・!)
腕に、足に。
短めのパジャマが仇となり、そのまま吊し上げられていく。
最後に、持っている剣を咲夜へ投げようとする。
グサ、
髪留めが手のひらへ刺さる。
焼ける、痛みがフランドールを襲う。
「あぁ・・・」
四肢に、ナイフが一本ずつ刺されていく。
銀製の武器が、吸血鬼の能力を封じ、その力さえも、奪っていく。
こんな程度では、吸血鬼は死にはしない。
ナイフが取れれば、一日もすれば怪我も完治する程度には、フランドールだって強大な吸血鬼の一人である。
「いたぃ・・・」
涙を流し、手足から血を流すフランドール。
「待ちやがれ・・・」
魔理沙が、ミニ八卦炉と、箒を持ってやって来る。
咲夜の蹴りがまだ効いているのか、足取りはおぼつかない。
それでも、帽子だけはかぶり、咲夜へ鋭い視線を向けてくる。
「貴女には、用はないわ」
魔理沙がミニ八卦炉で攻撃をしてくる寸前に、咲夜は魔理沙の背後を取り、手刀を首筋に叩きつける。
ただの人間である少女には、それだけのことで、気を失ってしまう。
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引きずれれて行くフランドール。
魔理沙は気を失い、何もすることができなかった。
End.引きずれれていく血まみれのフラン
これは「私がフランドール・スカーレットになっていた件」を書き始める前、やろうかな・・・って思っていた話です。
ですが、書き始める際には、フランドールの幼い笑顔や微笑みを書きたい、そう思いました。
なので、こんな怖いストーリーはありません。
実際には、いつかの後書きでも書いたように、今も第2章を一番書きたいと思っているのですが、最近、書くのが怖くなりまして、ちょっと手が付けられていない状態です。
この物語の一番の見どころは、作者的には2章なんじゃないかな・・・と思っています。
書き直しているんですが、1章の大詰めがなかなかまとまらないのと、読者の目をちょっと気にしすぎていたりで、もうちょっと時間が掛りそうです。
人によっては、見づらくないって言ってくれたり、評価のコメントしてくれたりするのですが、いつのまにか、自分の「文体」がめちゃくちゃになってしまいまして・・・。