ベルの大冒険   作:通りすがりの中二病

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火種

大魔王と別行動を開始してから早数時間、ベル・クラネルは迷宮都市の観光を楽しんでいた

武器屋にある長剣や大剣、双剣に短剣、それ等を見て目を輝かせた

防具屋にある全身甲冑に軽鎧、手甲に徹甲、ソレ等は纏う自分の姿を想像して頬を緩ませた

また多種多様に趣向品に日用雑貨、衣服やアクセサリー等も興味の対象だった。

 

田舎育ちのベルにとって、この迷宮都市は目に映る全ての物が興味を引くものであり、眩しく映る物であり、宝箱の中に入り込んだ様な気分だった

 

商店街にある一つ一つの店を覗き込み、足を止めて、目に映る一つ一つの品を食い入る様に見る

気に入った物を幾つか購入し、ベルは鼻歌交じりで街道を歩いていた

しかし、そうこうしている内に日も西に沈み始め、都市は夜闇に染まりつつあった。

 

「…そろそろ宿を確保しておこっかな」

 

観光ついでに幾つかの宿を探しておいたので、その中でも安全面に優れ自分が出せる宿代の場所を思い出して足を運ぶ

冒険者通りにある、中堅どころの宿に目標を定めてチェックを済ませる。

 

「とりあえず食事なしの二泊でお願いします」

「かしこまりました、それでは御代の方ですが――」

 

部屋の鍵を受け取って、荷物を置いて財布と得物を携帯して再び町に繰り出す

時間は夕食時、宿の食事を希望しなかったのもこのためだ。

 

「おぉー」

 

今日何度目になるかに分からない、感嘆の声を出す

故郷の村では夜とは全ての家や店から明かりが消える休みの時間だったが、ここではどうやら昼は昼、夜は夜で違う顔を見せる様だ。

 

色取り取りの明かりが都市全体を包み込み、夜の都市へと変貌する

恐らく、迷宮都市の本当の商売時はこの時間からなのだろう。

 

ダンジョン帰りの冒険者は元より、仕事帰りの職人や商人

両者ともに一日の疲れと解放感によって、財布の紐が緩む時間だ

そしてソレ等を逃がすまいと、商店街全体に活気が漲っている。

 

昼とはまた種類の違う活気と空気に当てられて、ベルの足取りも軽やかになる

また夕食時ともあって、何とも言えない鼻腔と空腹を刺激する匂いがそこかしこから漂ってくる。

 

「宿のお金を払ってもお金は十分あるし、ちょっと位贅沢してもいいかなー…うーん、でも、折角だから色々なモノも食べてみたいしなー」

 

と、そんな風に頭を悩ませながらベルは街道を歩く

考えた末に今日はどこかの店で食べて、明日は都市の散策も兼ねて食べ歩く事にした

そして一際良い匂いを漂わせている店を見つけて、その店で夕食を済ます事に決めた。

 

「豊饒の女主人…か、ここで良いかな」

 

カランカラン、とそんなお決まりの鈴の音が鳴響いて、ベルは入店をする

ドアを開けた瞬間、僅かに響く程度の活気ある声の数々が一気にボリュームを増す

店には数多くの冒険者たちやどこかの職人や商人達が、仕事疲れの心と体を酒と料理で労っていた

そしてベルの入店に気付いた店員の一人、メイド服に身を包んだ銀髪の見目麗しい美人がベルの下に小走りでよっていく。

「いらっしゃいませー!何名さまですか?」

「あ、はい、一人です」

「カウンター席でよろしいでしょうか?」

「お願いします」

そんなお決まりのやり取りをしながら、ベルは店員に連れられてカウンター席に着く。

(……見事に、男の人ばかりだな……)

 

店内をざっと見渡しながらベルは思う。

店のテーブルと席はその九割が埋まっており、その殆どが男性客であり女性は指で数えられる程しかいなかった

しかし、ベルはその事に特に疑問に思っていなかった

その疑問の答えは、入店と同時に解消されていたからだ。

店内を行き交うウェイトレス、ヒューマン、獣人、エルフ、種族の違いはあれどその全てが見目麗しい美人麗人の集まり

そしてそんな女性たちが、男心をくすぐるメイド服に身を包み給仕してくれる…この客層の偏り具合も納得だった

 

(……うーん、でもこの手の店は結構高いって爺ちゃん達が言っていたなー……)

前に故郷の村で、出稼ぎから帰省していた若者達を迎える飲み会でそんな会話があった事を思い出す

案内されたカウンター席について、メニューを渡されてウェイトレスは去っていく。

(……えーと、日替わりディナーが1、10、100…あ、結構するな……)

宿代をざっくり計算に入れてもそれなりに余裕はあるが、やはり初日から無駄遣いをするのも気が引ける

だがしかし、店中に充満している何とも言えない香ばしい匂い、空腹を誘う料理の香り

店に入るまでは別段大した事なかった空腹が、ここに来て一気にベルの心を支配していた。

(……バーン様も、僕自身で考えて決めろって言ってたなー……)

 

先の師の言葉を思い出す

腹は減ったし金にも余裕が有る、迷宮都市についた初日くらいちょっとした贅沢をしてもバチは当たらないだろう。

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

不意に隣から声を掛けられる

丁度良いと思って、ベルは注文を伝えようと思って声の方向に振り向き

「――っ」

思わず息を呑む

その人物を視界に入れた瞬間、思わず全身が硬直する

そのウェイトレスは、エルフの女性だった。

歳は大体二十歳前後くらいだろうか?艶のある金髪を肩口まで伸び、毛先が小さくカールしている

やはりこの女性も他の従業員同様に、十人いたら十人が振り返る様な美人

故郷の村ではおよそ目にする事のなかった、綺麗で美しい女性だった。

だが、ベルが息を呑んだ理由はそれではない。

その女性が纏う雰囲気、放つ空気

ソレ等があまりにも澄んでいて、透き通っていて、美しさを感じるほどに滑らかだった。

ベルはこの手の空気には覚えがある

以前、師匠である大魔王と共に『資金調達』として、お尋ね者や賞金首の根城に殴り込みを掛けていた時期があった。

その時、ベルは何度かこの雰囲気や空気を持っている者と遭遇した事がある

その者達は種族や性別、年齢も戦闘スタイルも全てがバラバラだったが…共通して言える事が一つだけあった。

自分よりも強い、格上の相手――それが、全員に共通で言える事だ。

ちなみにその全員が大魔王の一撃で沈んでいった事は、完全に余談である。

 

「あの、ご注文は?」

「あ、はい!日替わりディナーセットで!」

「かしこまりました、飲み物は何になさいますか?」

「アップルジュースでお願いします!」

「かしこまりました。それでは少々お待ちください…オーダー入ります!」

 

ベルの注文を聞いて、そのエルフの店員は厨房にオーダーを伝えに行った

そしてその背中を、ベルはずっと目で追っていた。

 

(……今の人、相当強いなー……)

この店の人達は何かしらの武芸を身につけている様だが、あのエルフの女性だけは別格だ

多分、ここに居る冒険者全てを含めて、あのエルフの女性に勝てる冒険者は一人か二人だろう。

 

(……流石は世界の中心とも言える迷宮都市、店員さん一人とってもこのレベルかー……)

 

と、ベルが一人納得していると

 

「…フムフム、どうやらお客さんはリューがお気に入りみたいだにゃー」

「リューも罪な女だにゃー、こんないたいけな純情少年を虜にしてしまうなんてー」

 

不意に声を掛けられて、改めて周囲を見る

気が付けば猫人の店員とヒューマンの店員が、楽しげで意地の悪い笑みを浮かべていた

 

「あの、なにか?」

「とぼけなくっていいニャ、リューに見惚れてたんじゃないかにゃー?」

「見るだけなら構わないけど、お触りはくれぐれもご遠慮願いますにゃー」

「……っ!」

 

その店員の言葉を聞いて、ベルの頬は真っ赤に染まる

確かに外野から見れば、自分はリューと呼ばれたあのエルフの女性に見惚れていた様に見えるだろう

少なくとも、目の前の店員二人にはそう思われているのは事実だった

 

「え、いや!その、確かに綺麗な人で、ついつい目で追っちゃってましたけど!別に見惚れていた訳じゃ!」

「むふーん、世間ではソレを見惚れてたって言うんじゃないかにゃー?」

「でも!いや…っ!その!」

「むっふっふー、お客様は本当に純情だにゃー」

 

と、ベルが弁明すればする程に、目の前の女性は楽し気に意地悪気な笑みを浮かべていく

このままずっと弄り倒されるのか?、そんな風にベルが思っていると不意に助け船が出された。

 

「ほらそこ!何油売ってるんだい!さっさとこっちに来て料理運びな!」

「んにゃ!? しまった!」

「ミア母さんごめん!すぐ行くにゃ!」

 

二人を一喝する声が響いて、ベルの前にいた二人は先程とは慌てた様に声の主の元に駆けていく

ベルの位置からでも、声の主はカウンター越しにその姿が見えた。

そしてその件の人物、『ミア母さん』と呼ばれたその大柄の女性は、出来上がった料理を持ってベルの眼前まで移動して

 

「はいよ。日替わりディナーセットとジュースお待ち! 注文は以上だね?」

「はい、そうです」

「それじゃ、ごゆっくり」

 

ミアはベルの前に手早く料理を並べていくと、再び調理の為に厨房を見る

ベルの前に置かれたのは、サラダとポタージュスープ、クリームパスタに付け合わせのパンとラスクだ

鼻腔をくすぐる何とも言えない匂いを嗅いで、ベルの腹は一際激しく空腹を訴えていく。

 

「それじゃ、いただきます」

 

フォークでパスタを巻いて、軽く一口食べる

 

「っ‼‼」

 

その瞬間、ベルの両目が驚愕に見開かれる

美味い、美味すぎる、今まで食べてきたどの料理よりも美味い

濃厚な生乳クリームとカリカリのベーコンを惜しみなく使ったソースに、アルデンテで茹でられたパスタの相性は最高だった。

 

そこから先は、フォークとスプーンが止まらなかった

削り取る様な勢いでパスタを喰らって、サラダもささっと食べ終わる

そしてここで、ベルは付け合わせのパンとラスクの食べ方に気づく。

 

「そっか、パンはパスタのクリームに、ラスクはポタージュスープで合わせるのか」

 

周囲に目を向ければ、似た様な食べ方をしている冒険者が何人かいた

恐らく、自分が今気づいた食べ方で合っているのだろう

 

パンをちぎって、更に残ったクリームソースをつけて食べてみる。

 

「…んー美味しい」

 

思わず顔が緩み綻ぶ、さっきのパスタは美味かったがコレはコレで違った旨味がある

次いでラスクもポタージュスープと合わせて食べてみる。

 

やはりこれも美味い。

 

ポタージュスープを単品で食べてもイケるが、スープの旨味と甘味にラスクのざくざくとした歯触りと歯応えとバター風味が加わると、その旨味さが変貌する

どうやら、この店の人気の秘密は女の子だけではない様だ

ベルはアップルジュースを飲みながら、そんな風に自分の意見を纏める。

 

(……よし、明日も晩御飯はここにしよう……)

 

最初は割高かと思っていたが、この味なら寧ろ割安だ

これからもご贔屓にさせて貰おう、そうベルが心の中で思っていると目の前に皿が置かれた。

 

「…あれ?」

 

目の前に置かれたのは、平皿に盛り付けられた軽食だった

ハムとチーズをレタスで巻いた物や、クラッカーの上にチーズと黒胡椒をふり掛けた物

他にもベーコンや揚げた芋に肉の燻製など、酒のつまみになりそうな物が盛り付けられていた。

 

だがしかし、ベルはコレ等を頼んだ覚えはない

恐らく店員さんが持ってくるテーブルを間違えたのだろう。

 

「あたしからのサービスだよ、見てるこっちが気持ち良くなる様な食べっぷりだったからね」

 

そんなベルの心中を察したかの様に、ベルにそんな言葉が掛けられる

目を向ければ、ミアと呼ばれた女店主らしき女性がこっちを見て楽しげに微笑んでいた。

 

ベルは最初は遠慮しようかとも思ったが――

 

(……こういう時は素直に受けておいて、追加で何か頼むのがマナー…だったかな?……)

 

祖父や師匠による、『いい男としての振る舞い』の授業を思い出す

無論、悪質な店やいわゆるボッタクリの店、趣味趣向が合わない店においてはその限りではないが

自分で『コレだ!』と思ったお店に対しては、そういう振る舞いを覚えておいて損はない…そんな事を教えられたのを思い出す。

 

「ありがとうございます。それじゃあグラスも乾いてきたので、ジュースおかわり」

「お、分かってるじゃないか。ちょいと待ってな」

 

ベルの返答に気を良くしたのか、ミアは上機嫌な笑みを浮かべて追加のジュースを持ってくる

ついでベルの顔に改めて視線を向けて

 

「…坊主はあまりここ等じゃみない顔だね?オラリオには来たばっかかい?」

「はい、師匠と一緒に今日着いたばかりです」

「師匠?冒険者…にはちょいと見えないね、商人か何かかい?」

「いえいえ、商人じゃないです。そうですねー…確かに、冒険者とも言えなくもないですね。

ここに来るまでの五~六年くらいは、モンスター相手に狩猟やアイテムドロップで生計を立てていましたから…あとは、まあ…そうですねー」

 

ベルは今までの大魔王との修行内容を思い出す

そして収入面においてもう一つ、自分達の大事な収入源を思い出す。

 

 

「――後は賞金首を捕らえたりして、生計を立てていました」

 

 

ベルは思い出したかの様に、ジュースをグビグビと飲みながらそんな事を言って

次の瞬間、『豊饒の女主人』にいる全ての店員の視線がベル・クラネルに向けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほぼ同時刻、オラリオにある酒場の一席にてバーンはいた。

賑やかな大衆向けの酒場ではなく、ここは静かな雰囲気でゆっくりと酒を楽しみたい高級志向の酒場であった

壁は大きなガラス張りになっており月と星空を堪能する事ができ、またテラスの席に着けば夜の喧騒と活気が程よく届く様になっている。

バーンは仕切りに分けられたテーブル席ではなく、カウンター席についていた

理由は特に無い、ただカウンター奥には大きなショーケースが配置され、あらゆる種類の酒が展示されたあったのがバーンの興味を引いたからだ

葡萄酒に蒸留酒、発泡酒に麦酒に清酒、中には大きな蛇が瓶ごと漬けられている薬酒もあった

またあらゆる果実からなる様々な飲料も置かれていて、どうやら各自の好みに合わせて混合酒も扱っている様だ。

 

バーンは店主に『値段は問わん、一番の上物を一杯』と注げて店主もそれに応じる

少し待つと店主はバーンの前にグラスを置いて、そこに並々と透明な酒を注いでいく。

 

バーンはソレを手にとって、グラスを手の中で転がし、続けて香りを吸い込み、グイっと飲む。

 

「――美味い」

 

透明なグラスに注ぎ込まれた清酒を一口飲んで、バーンは満足した様に呟く

舌を痺させる様な芳醇な甘み、鼻腔まで支配するような風味、それでいて全くしつこくなく爽やかな後味と清涼感が舌に残る

今まで自分が飲んできた酒の中でも、トップクラスに入る上質なモノだった。

 

「店主よ、コレの製造元を教えて貰えぬか?」

「気に入りましたか?お客様が今お飲みになられているのは、『ソーマ・ファミリア』の主神であるソーマ様が自らお作りになられたものですよ」

「フム、聞いた事がある。神ソーマ…酒を造る事を何よりの生き甲斐とし、その為にわざわざ『ファミリア』まで結成したとか…だが随分と気難しい神で、製造された酒は市場に出回る事は無いと聞いていたが…」

「ああ、それは『成功作』の話ですね。市場に出回っているのはほぼ全部が『失敗作』みたいですよ」

 

店主から告げられたその言葉、その思いもよらぬ情報を知ってバーンは感心した様に驚いた様に、楽しげに笑みを浮かべ

 

「――成程、コレ程の酒ですら失敗作か。噂に違わぬという訳か…是非とも成功した酒も味わってみたいものだ」

 

再び酒を飲む。到底失敗には思えない極上の味、極上の美酒

これで失敗作なら、本物は一体どれだけの美味なのだろうと知らず知らずの内に期待が大きくなる。

 

「…あー、それは無理じゃないですかね?ソーマ様の成功作はソーマ様自身かファミリアの一部の団員しか飲めないって話ですよ?」

「金や物では動かない…という事か」

 

店主の言葉を聞いて、バーンも似たような人物に心当たりがあった

確かにその手の人物はいくら金を積んでも動かないだろう。

 

「今までラブコールは全部撃沈しているって話ですよ、自分も何度か交渉してみたんですけどフラれてしまいました

他の店も軒並み同じみたいですね…まあ、つまりはそういう事です。どうしても成功作をお飲みなられたいのなら『ファミリア』に入団するか」

「――神ソーマそのものを、手中に収めなければならぬ…という事か」

「そういう事ですね」

 

「有益な情報、感謝する…もう一杯貰おうか」

「良いんですか? この酒、相当しますよ?」

「良い。今日は大事な商談が成立して気分が良いのだ、まあ妙なオマケもついてきたのだがな…」

「畏まりました、少々お待ちを」

 

そう言って、店主は再びカウンター奥に向かいバーンは月夜の酒を楽しむ

 

バーンは気分が良かった

あの『名工』に負けず劣らずの、もう一人の至高の鍛冶師に巡り合え商談を纏められた事

偶然見つけた店で偶然見つけた酒が極上の一品であり、またソレを遥かに超える美酒が存在する事

 

バーンは、とても気分が良かった

 

(……さて、あちらはどう出る……)

 

バーンは月と星空を眺めながら、バーンは思う

今日、武器の商談が成立した後に仕込んでおいた…自分が送った『招待状』

こちらの誘いは、バーン自身も成功率は殆ど無いと踏んでいる…当たれば儲け物、正にそんな感じだった

 

だがしかし、バーンは確信があった

理由も根拠も無いがバーンは確信していた…自分の仕込が、誘いが成功する事を

 

そして店主が次の一杯を持ってくるのと、ほぼ同じタイミングだった。

 

「すまぬな店主よ、同じ物をもう一つ頼む」

「はい?」

「待ち人が来た」

 

バーンの言葉につられて、店主は店の入り口を見る

そこには男が一人立っていた。

 

その男は冒険者だった

200Cを超える大柄な体、その筋骨隆々な肉体は正に強靭

鍛え抜かれた戦いよって磨かれたその肉体は、誰もが思い浮かべる様な『鋼の肉体』そのものだ。

 

その男を視界に入れた瞬間、店主は僅かに驚いた様に息を呑んだ

その男を視界に入れた瞬間、バーンは思わず口元が緩んだ

 

――強い、この男は間違いなく強い――

――噂に違わぬ強者、噂以上の『本物』の力を持つ者――

 

「やはり、今の余は中々運が向いている様だ」

 

満足げに呟く

緩んだ頬と口元を隠す事無く晒し、喜びの表情を露にする。

 

「ようこそ。突然の招待、突然の誘いでありながらこうして応じてくれた事を、余は誠に嬉しく思う」

「………」

「駆けつけ一杯という訳ではないが、先ずは一つ乾杯でも如何かな?」

 

その男は冒険者だった、その男は獣人だった、その男は武人だった

その男は、この迷宮都市オラリオにおいて『最強』と称される男だった。

 

 

「――フレイヤ・ファミリアの団長…『猛者』オッタルよ――」

 

 

夜は更け、闇が深まっていく、その日の終わりを告げていく

だがまだ終わらない、この夜はまだ終わらない

 

大魔王師弟の夜は、まだ終わらない――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




流石はベルくんだー!たった一言で店の女の子に視線を独り占めするなんて!
俺達に出来ない事を平然とやってのける!そこに痺れる憧れるうぅ!

――とまあ、最初からテンションがおかしい作者です。
また一ヶ月近く掛かってしまいました…スピードアップするのが中々難しいです。しかしそんなこんなでやっと更新できました!

今回はベルくんとサイドとバーン様サイド、今回はどちらかと言うとベルくんサイドがメインです
今回ベルくんは知らない内に、あの店で色々とやらかしてしまいました(笑)
作者的には少し前からちょいとい仕込んでおいた『賞金首』のネタを活かす事が出来たので大満足です!

そしてもう一つのバーン様サイド、なぜオッタルさんがバーン様の誘いにホイホイ乗ってしまったのかは次回に明かされるかと思います。
次回はちょいと話を動くと思うので、できるだけ早く更新したいと思います。


追伸  作者とその友人達が選ぶ(いい歳した野郎達がガチ議論)ダイ大において衝撃的だった必殺技

その1 ライディンストラッシュ
その2 ギガブレイク
その3 五指爆炎弾
その4 カイザーフェニックス
その5 メドローア

番外  集中アタック

幼心的に、ディン系>>超えられない壁>>メラ系だったのでこんな感じです(笑)
ちなみに集中アタックを知っている人、或いは覚えている人は殆どいない思います(笑)

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