最近雨が続いてバイクが出せなくてイライラ気味の作者です。
台風早くどっかいって欲しいですね。煙草の本数が増えます。
今回は曹操さんがGJなお話。どうぞ!
その日、曹操は夜の城内を酒を片手に歩いていた。
普段の曹操を知る者にとっては珍しい光景以外の何物でもない。寧ろ何事かと戦慄する者までいる。
「この辺りにいると聞いたのだけど…」
曹操が歩いているのはある人物を探すためだ。
少し話をしようと部屋を訪ねたところ、近くにいた女中から『今夜は月見酒だそうです』という情報を聞いて先程から探しているのだ。
確かに今夜は満月だが、少し雲がかかっている。だが、探している人物―――まぁ、芙陽なのだが、芙陽ならば『月に照らされながら漂う雲も、眺めてみれば美しい』と言うのだろう。
「おや、曹操。こんな夜更けにどうしたんじゃ?」
ふと、上から声がかかる。見上げてみると、城壁の上に座り込んだ芙陽が酒の器を片手に下を覗きこんでいた。
「貴女が月見酒をしていると聞いてね、私も一緒しようと思ったのだけれど」
「そうかそうか。どれ、特等席に招待しようかの」
ケラケラと笑ってストンと降りてきた芙陽は、曹操を抱え上げる。
「ちょっと?」
嫌な予感がした曹操だが、芙陽はニタリと笑ってそのまま高く跳ね上がった。
「っ……あまり驚かせないで頂戴。酒を落としてしまうかと思ったわ」
「それは済まなかったの。ほれ、ここに座ると良い」
芙陽は自身の隣をポンポンと叩いて曹操を促した。曹操も大人しく腰を下ろして盃を取り出す。
「先にこちらを空けてしまおうかの」
芙陽は自分が持っていた酒を曹操の盃に注ぎ、続いて自分の盃も酒で満たした。
「この酒はどこから持ってきたのかしら?」
「昨日蔵で見つけての。何、拝借したのは少しだけじゃ。そう睨むな」
あっけらかんと『盗みました』と言う芙陽に曹操は睨むが、芙陽はどこ吹く風と笑っている。一つ溜息を吐いて酒を飲む。
「あまりいい酒ではないけれど、美味しいわね」
「ダラダラと飲むだけのこんな時こそ安い酒が美味いんじゃよ」
「そう…こういうのも良いわね」
曹操はこのように野外で何も敷かないようなラフな飲み会はあまりしてこなかった。美食家でもある彼女は食に関しては煩く、酒を飲む機会も、自分で用意した場でさえ一定の作法を必要とするような環境が多かったのだ。
しかし、芙陽と初めて酒を酌み交わす今回の場は何故か曹操にとって心地よく感じるものだった。
「肴はこんなものしかないがの」
そう言って差し出されたのは干した肉を小さく切り分けた物。これも明らかに食料庫から
「私の城で随分と自由に過ごしてくれるじゃない」
「お主も喰えば同罪じゃよ。もう酒は飲んでおるし、手遅れじゃ」
「女狐…」
「正解じゃ」
実は芙陽の正体を言い当てた曹操はそれに気付かず、最早何も言わずに干し肉を口に咥えた。芙陽と話しているとどんどん自分が凝り固まった人間に思えてくる。これを受け入れれば良いのか、それとも毒されないように注意すればいいのか、まだ彼女には判断が付かない。とりあえずは考えないようにした。
暫く二人で月を眺めながら酒で口を湿らせる。
芙陽はいつの間にか煙管を取り出し、煙を吐いていた。
聞こえてくるのは幽かな風の音と、虫の声。酒を注ぐ音と、煙を吐く芙陽の吐息。
月の光は時折雲に遮られてしまうが、それをジッと眺めていると雲が通り過ぎ、また月明かりが二人を照らす。月が顔を出せば、何故か少し安心できるような、友と再会したかのような不思議な気分を味わった。
「月と雲。雲は月見に邪魔だと思っていたけれど、案外良いものね」
「雲があれば一晩でも月の変化を楽しめる。月が出なければ夜の草木に虫の声。雨が降れば雨音に耳を澄ませる。
何事も心の持ちようで見え方は変わる。
月が出れば月見が出来るが、月があっては星が見えぬ。
美しいものは何一つ無く、美しくないものも無い」
芙陽の優しい声色に、曹操は目を閉じた。鈴の音のような美しい声の他に、虫たちの声に耳を澄ませる。
「美しくないものは無い、ね。……美しい言葉だわ」
目を開けて芙陽に笑いかける。
「やはり私は貴女が欲しいわ、芙陽」
「突然じゃの」
特に驚いたようでもなく、芙陽も笑う。
芙陽が曹操の客将となって暫く。と言ってもそう経ったわけでは無い。城に来てから一月も過ごしていない。その間に芙陽は日々をのんびりと過ごしたり、時折出撃したり、夏候惇や楽進の鍛錬に付き合ったりしていた。
曹操は夏候惇への罰(夏候惇の真名を呼ばない。また、夏候惇も曹操を真名で呼ばない。その他減給など)が終わるまでは芙陽の勧誘をしないつもりだったのだが、それも今日夏候惇を許し、酒の席へ招くことも自粛していた曹操はやっと芙陽を誘えるようになったのだ。
「どう?私たちと共に歩むことは出来ないかしら?」
客将として誘った時もそうであったが、この勧誘の仕方は曹操らしくない。いつもならばもっと強気なのだが、芙陽に関しては曹操が強気に出ることは出来なかった。
「お主らしく無いの。もっとグイグイ来ると思うとったが」
「そうね、悔しいのだけれど。貴女に関してはそうできないわ」
覇王としてはこれではいけないのだけれど、と自嘲気味に笑う曹操。
曹操は覇王として歩んできた中で初めて、"格上"だと思える存在に出会ったのだ。芙陽の強さや智謀、心の在り方など全てにおいて『勝てない』と思ってしまった。
「だけど、それで負けを認めては"覇王"失格よ」
「それで儂を超えようと傍に置きたいのか?」
「簡単に言えばそうね。貴女にとっては面白くない話かもしれないけど、それでもいつか必ず貴女を手に入れて見せる」
「いつか、とな?」
「えぇ、"いつか"よ。正直、貴女今の私の話、受ける気などないでしょう?」
「ウム。まだまだ旅を続けようと思っているよ」
「でしょうね……はぁ」
勧誘失敗を受けて溜息をつきながら酒を飲む。酒の席で会ったのが曹操の救いであった。
「しかし、楽しみにしておるよ」
「えぇ。首を洗って待っていなさい」
まるで決闘でもするような言い方であるが、曹操にとっては正に戦いであり、宣戦布告である。
それからしばらくは再び酒を飲み月を愛でる時間となった。曹操の持ってきた酒も半分を消費したときに、ふと思い出したことがある。
「そういえば、荀彧はどうするのよ?あの子確実に貴女と一緒に私に仕える気でいるけど」
「なんでじゃろな?」
「それだけ一緒にいたいと思ってるんじゃない?」
荀彧は今も曹操に仕えるため、様々な準備を行っている。それも、芙陽の立場などを踏まえたものだ。
いつの間にか荀彧の中では芙陽がこのまま曹操に仕えることになっている。芙陽も曹操もそれに気付いてはいたが、荀彧が余りにも力を入れていたので指摘することが出来なかった。芙陽の場合は『黙っていた方が面白そうだから』という鬼畜な思惑があったが。
しかし、芙陽にも誤算があった。
「あそこまで懐かれるとは思わなんだ」
荀彧は未だ芙陽に対して厳しい態度を取っている。曹操にはその真逆の態度であるが、どちらをより信頼しているかと問われれば迷うだろう。
「どうするのよ?『実はもう旅に出ます』なんて突然伝えたら……泣くかもしれないわね」
「……泣くかの?」
「だってあの子、どう考えても貴女に惹かれてるわよ?口では私だと言ってるけど」
「まぁ初めから曹操に仕えるための旅じゃったしの」
「やっぱり私の所にいるべきじゃない?」
「いや、旅には出る。これは変えんよ」
「じゃあ連れていくの?」
「それはあやつ次第じゃのう。儂が無理を言う事ではない」
「そう……」
曹操はそれっきり荀彧の話題を出すことは無かった。
しかし、曹操の中ではある思惑があった。
(このまま私に仕えられてもあれだし、少し揺さぶらないとダメかしらね)
月が見守る中、荀彧にとって重要な決断が迫っていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
荀彧は曹操と二人で政務を片付けていた。
最近では良くある光景だ。
政務がひと段落し、女中にお茶を入れさせてから、曹操が急に切り出した。
「荀彧、貴女、芙陽の事はどう思ってるの?」
「はい?」
何の脈絡もないその言葉に、荀彧の思考は停止しかける。だが、ここで思考を放棄してしまえば軍師の名折れだ。なんとか返答を捻りだす。
「どう…と?まぁ、気まぐれな自由人ですね」
「いえ、性格の話ではなく、貴女は芙陽の事が好きなのかしら、と聞いたのよ」
「は、す――えぇ!?」
今度こそ思考停止に陥る―――と思われたが、流石は荀彧。頭の中では曹操の真意を探っている。
(どういうこと?好き?私が?芙陽を?なんでいきなり…いえ、曹操様のことだからなにか意味があるはず……はっ!?もしや遂に私を閨に誘って―ー!?確かに私が『芙陽の事が好き』なのだったら曹操様が遠慮なさるのもわかるけど、そもそも私が好きなのは曹操様で、曹操様に誘われたのなら一も二もなくホイホイ付いて行くのだし芙陽の事なんて微塵も……微塵も?確かに芙陽は初めて会った時から私を助けてくれたけどその理由が『月が綺麗だったから』とか意味わかんないし最低でしょ!?でも今までの旅でも何度も盗賊から私を守ってくれて強いし色々なこと知ってるし考え方はまあ尊敬できなくもないけどいやでも私は男が嫌いなのよ!!あれ?でも芙陽は今女だしそもそも女とか男とか意味ない存在だしあれ?……あれ?)
「……えっと…何故そのようなことを?」
思考停止に陥りかけて限界を迎えそうになった荀彧はギリギリのところで質問を返した。とにかく話を続けてみなければ答えは得られない。そう思ったからだ。
「芙陽だけど…旅に出るそうよ」
「――――」
荀彧は今度こそ―――今度こそ思考が停止した。
「はあ……貴女、いつの間にか芙陽がこのまま私の所に正式に加入すると思ってたわね?」
曹操の言葉も今の荀彧には届かない。荀彧の頭の中は事実を受け入れるための思考に精一杯であった。
何度も頭の中で事実を受け入れようとするも、何故かそれが受け入れられない。数秒と立たないうちに、もう何度失敗したかわからなくなっていた。
「……やっぱり、涙が出るほどなのね」
「っ!!」
ふと耳に入った曹操の言葉に、両手で頬や目に振れる。濡れた感触が自分が泣いていると証明した。
「こ…これ、は…」
「無理をしなくていいわ。急にこんなことを話してごめんなさい。もう少しゆっくり話すべきだったわね」
「いえ…ひっく…ち、違う…んで、す」
「そんなに泣きながら言っても説得力の欠片もないわよ。今日はもうやることもないし、休みなさい」
「でも……」
「夜になったらもう少し話しましょう?私が呼ぶまでに落ち着いておきなさい」
「……はい」
荀彧は半ば呆然としながら返事を返した。そのままどうやって部屋まで戻ったのかは覚えていない。いつの間にか部屋の寝台に横になっていた。
寝台に横になってからも、荀彧の頭は先程の会話がぐるぐると巡っているだけで、瞳からは涙が溢れ出てくる。
「なんで…」
涙の理由が分からない。いや、わかっているのかもしれない。理解しているけれど、認めたくないだけなのかもしれない。
そんなことをずっと考えているうちに、いつの間にか夜になっていたらしい。部屋の外から声が聞こえる。
「荀彧?入ってもいいかしら?」
「っ、曹操様!?」
荀彧が慌てて扉を開けると、そこには声の主、曹操が立っていた。
「その目、まだ泣いていたのね?」
「はい…でも、少し落ち着きました。……どうぞ」
荀彧が曹操を部屋へ入れる。曹操は部屋に入って椅子に座ると、部屋にある小さな机に酒を置いた。
「曹操様?」
「まあ、言いたいことも言えるようにね……荀彧」
「…はい」
「腹を割って話しましょう」
今夜は寝かさないわよ?と言う曹操に荀彧の頭の中に警鐘が鳴る。
「曹操様、明日もお仕事が…」
「腹を割って話しましょう」
「……はい」
荀彧は覚悟を決めて椅子に着いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「それであのバカは、『今夜は月が綺麗だったから血は無粋だ』とか言うんですよ!?」
「気まぐれにも程があるわね…」
二人の宴席は思いの外盛り上がっていた。具体的には、芙陽の愚痴で。
取り敢えず曹操は芙陽に付いて荀彧がどう思っているのか、軽いところから聞き出していくために二人の旅の話などを聞いていた。
暫くは荀彧も普通に話していたのだが、次第に愚痴が多くなり、曹操もそれに便乗して愚痴を言い始めたので止まらなくなったのだ。
そこで荀彧が話したのが二人の出会い。芙陽が荀彧を助けた理由が余りにも理不尽だったのが、荀彧としては今のところ気に喰わないらしい。
「もう少しマシな理由で助けてくれたのなら、私だって素直に感謝できたのに…」
「フフ、でもやっぱり感謝してるんでしょう?」
「それは……はい
でも、やっぱり芙陽ももう少し気まぐれを抑えても良いと思うんですよ!公孫賛の所でだって、夜に講談の約束してたのに賊から助けた女の所に行っちゃうし!」
顔を赤くして起こる荀彧だが、曹操からすればどう見たって荀彧が"嫉妬"してるようにしか見えなかった。
「ねえ荀彧…そろそろわかってきた?」
「……曹操様…」
「貴女は、芙陽の事をどう思ってるの…?」
「………」
荀彧はやはり俯いてしまう。また泣き出すのかと曹操は思うが、荀彧は泣いたりせずに……泣き出しそうな表情ではあったが、涙はかろうじて流さずに曹操に尋ねた。
「曹操様…芙陽は、本当に旅に出るのですか?」
「…えぇ、近いうちにね」
「……私は……私を、置いて……」
荀彧は最早何が言いたいのか自分でも理解できていなかった。
芙陽が出て行ってしまう。自分はここにいるのに、芙陽は何でもないかのように出て行くと言う。
「結局、私は芙陽にとって……なんでもない存在だったのですね…」
「荀彧…やはり、芙陽の事が好きになっていたのね?」
少しだけ頬を染めて頷くと、すぐに悲しげに俯いてしまう荀彧。堪えていた涙が、遂に溢れ出してしまう。
「辛いのね?芙陽と離れてしまうことが」
「…はい」
「…なら、どうして貴女は私の所にいると決めつけているのかしら?」
「…え?」
顔を上げる荀彧。曹操の言葉が理解できていないようだ。
曹操は少し厳しい表情で、荀彧に問いかける。
「貴女はどうして私の所に来たの?」
「それは、曹操様が覇道を進み、世に平和をもたらす為、貴賤なく人材を欲し、善政を敷くお方だと聞いたからです…」
「貴女は私の事をどう思っているの?」
「憧れました。才を持ち、また人格も素晴らしいお方です」
「なら、芙陽の事はどう思っているの?」
「……好き、です。出来ることなら、ずっと一緒にいたい、です…」
その言葉を聞いて、曹操は表情を崩す。優しい笑顔。荀彧が見たことのない笑顔であった。
「そこまでわかっているのなら、あとは貴女が決めなさい」
「え……?」
「貴女はまだ客将の身。貴女が芙陽に付いて行くと言うのなら、私はそれを止めはしない」
「でも、私は曹操様に憧れて…」
「それも含めて考えなさい。
……大丈夫、どんな答えを出したとしても、貴女を軽蔑したりなんかしないわ」
「曹操様……」
荀彧は曹操を見て答えを出す。曹操と芙陽。どちらを選ぶのか。
きっと、どちらを選んでも二人は納得するだろう。曹操を選べば芙陽は優しく笑って応援してくれるだろう。芙陽を選べば曹操は快く見送ってくれるだろう。
どちらを選んでも後悔は無い。いつか後悔する日が来るとしても、荀彧は"今の"自分の心に従うことにした。
「曹操様…私は、荀文若は――――芙陽に付いて行きます」
曹操の顔をしっかりと見つめ、荀彧は答えた。
曹操は少し寂しげに笑いながらも、しっかりと頷いた。
「そう……なら、荀彧。貴女に一つ言う事があります」
「はい」
荀彧は頷いた。『軽蔑しない』と曹操は言ったが、たとえ罵詈荘厳であろうとも受け入れようと覚悟を決めた。
「私と友達になってくれないかしら?」
「はい?」
流石にこれは予想できなかった。荀彧は首を傾げる。
「楽しかったのよ。貴女と仕事をして、政策や軍策を話し合ったり、今日のように酒を飲みながら愚痴を言い合ったりして。
だから、たとえこの先貴女がどこかの軍師であって、私と敵対したとしても……
平和なときに再会したのなら、また愚痴を言い合って良いかしら?」
曹操が言葉を発するうちに、荀彧の涙腺はまたも決壊していた。今度は悲しみの涙ではなく、嬉し涙で。
「はい…っ、はい!」
何度も何度も頷いて、荀彧は返事を返す。
「なら、私の真名を預けましょう。我が真名は、華琳」
「私は、桂花。桂花です、華琳様!」
友となった二人は、満面の笑みで手を取り合い、再会を約束した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
次の日、芙陽は玉座の間に呼び出されていた。
何の話かは知らないが、そろそろ旅支度も始めようと思っていたので、それを伝えるにはいい機会だと思っていた。
玉座の間の扉を開き、中へ入る。
「曹操、突然呼び出してどうしたんじゃ?」
中には曹操と、荀彧がいる他には誰もいない。曹操は玉座へ座り、ニヤニヤと笑っている。荀彧は何故か緊張の面持ちでその隣に立っていた。
「芙陽は、桂花が貴女に話があるそうよ」
(桂花?いつの間に真名を許したんじゃ?荀彧から話…真名を許したということは、正式に曹操へ仕えることになったという事かの)
「フム、荀彧よ、話とはなにかの?」
話しかけられたあ荀彧は『ビクッ』と一瞬震えたが、すぐに芙陽を見つめて(緊張のためか睨んだようにも見えたが)、切り出した。
「ふ、芙陽!!」
「ウム」
「わ、わたし……アナタに、つ、付いて行きたい!!」
「ウム?まぁ、良いが」
「だ、だから!アナタに付いて…え、軽!?」
『ガビーン』とでも言いそうな反応を示す荀彧。
「付いて行く、と言うことは儂が旅に出ることは曹操にでも聞いたのじゃろ?」
「え、えぇ」
「ま、儂はお主が曹操の下に残ると思っとったが、付いてくるのなら止めはせんよ」
「…いいの?」
「なんで嘘つくと思ったんじゃ。それより儂はなんでお主が曹操に真名を許したかが気になるの」
「あら、私たちは友達だもの。もう親友と言っても良いわね。なら真名くらい交換したっていいでしょう?」
曹操が自慢げに話してきた。これで何があったのか芙陽は大体の予想が付いた。
「曹操、お主荀彧に発破をかけたな?良かったのか?貴重な人材じゃぞ?」
「貴女への想いを引き摺ったまま残られても役に立たないもの。ならキッチリ答えを出してから選ばせれば良いだけの事よ」
いつもの自信に満ちた表情でそう言う曹操。芙陽もケラケラと笑っていたが、荀彧はまだ話があるようで芙陽に近づいてくる。
「まだ、話は終わってないのよ」
「お、どうした、荀彧?」
荀彧は未だ緊張の面持ちでいる。寧ろ先程よりも緊張の度合いが高まっているようにも見える。
「わ、私……アナタが好きなの!だから、……だから!」
突然の告白かと思いきや、突然その場に跪く荀彧。流石に芙陽もそれを見ているしか出来なかった。
「私を、アナタだけの軍師にしてください、芙陽様」
「荀彧……お主はそれで、良いのか?」
「はい。私が仕えたいのは、芙陽様です」
「そうか……」
芙陽は目を閉じた。それを見ていた曹操も、答えを待つ荀彧にも冷や汗が流れる。
芙陽は目を開けると、荀彧を見下ろしながら優しく言った。
「良かろう。これからこの芙陽を支えておくれ、荀文若よ」
「芙陽様…!」
嬉しさのあまり涙さえ浮かべて顔を上げる荀彧。芙陽は優しく笑ってその頭を撫でる。
その手つきに、いつも振り払ってばかりだった荀彧は気持ちよさそうに目を閉じた。
「芙陽様……我が真名を受け取って頂けますか?」
「教えておくれ」
「我が真名、桂花をお捧げいたします」
「ウム。よろしく頼む、桂花」
「はい!」
とてもいい笑顔で返事をした荀彧―――桂花だが、思いが爆発したのか遂に芙陽に抱き付いた。
「芙陽様ー!」
「カカカッ、今までとは大違いじゃの」
「それは言わないでください、芙陽様ぁ…」
ケラケラと桂花の頭を撫でながら笑う芙陽。曹操も笑顔でその光景を眺めていた。
こうして、芙陽に正式に仲間が出来た。
荀彧。字は文若、真名は桂花。軍師として最高の智謀を持つ少女。
彼女の頭脳は、芙陽をどのように支えるのか―――
「あ、それはそうと儂そろそろ旅に出るから」
「「!?」」
桂花が懐くとかちょっと鼻血出そう。あ、脳汁はもう出てます。
やっと子猫ちゃんが攻略できました。え?魏ルート?
……次は呉に行きますよー。曹操さんの出番はもう少し先までありません。
トロトロ華琳ちゃんは果たして日の目を見るのか!?
作者は見たいです。是非。
誤字、脱字報告、感想などお待ちしております。