真・恋姫✝無双 狐来々   作:teymy

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てやんでぃ!(江戸っ子)

最近は調子が良くて筆が進む作者です!
まず一言。
感想欄が「ロリコン」で埋め尽くされようとしている件。
ちょっとした炎上ですか?作者震えが止まりません。まぁなんにせよ葵ちゃんが愛されているようで嬉しいです。

遂に反董卓連合編が始まりましたよ!雄々しく勇ましく華麗に行きましょう!
先に言っておきますが、最後の展開は完全にギャグです。


反董卓連合
第十九話 三人の金色。狐と覇王とオホホ


「…と、いうのが一連の流れですね」

 

朱里が一通り説明を終える。この日、将の殆どが一堂に会して行われた会議では、ある議題が持ち上がっていた。

 

各地の諸侯に送られた『反董卓連合』への参加を要請する檄文である。

これは河北の袁紹が発し、既に参加を表明している諸侯も多い。

 

この檄文には朝廷で起こったこれまでの経緯なども懇切丁寧に書かれており、朱里がその内容をわかりやすく説明したのだ。

 

黄巾の乱が終息し、朝廷の無力さが露呈してから幾らも経たずにそれは起こった。

霊帝の崩御。

漢の支配者が空席となり、当然のように激化する権力争い。

小帝弁を擁立する将軍・何進と、劉恊を擁立する宦官・十常侍が対立した。

この対立自体は小帝弁が即位して決着がついたのだが、その後何進が暗殺されるとその報復に十常侍も数名が舞台を降ろされることになった。

これを予見していた十常侍の筆頭が小帝弁と劉恊を連れて都から逃れ、董卓の大軍団を引き連れて戻って来たは良いが、自らも董卓に裏切られて殺される。

董卓は劉恊を即位させて傀儡とし、自らは相国となって都を牛耳ることに成功し、悪逆の限りを尽くしているらしい。

 

この董卓を排し、天子を救おうと立ち上がったのが『反董卓連合』だ。

 

「それでね、この連合に参加するかどうか。皆の意見も聞きたいと思って」

 

情報が全員に行き渡ってから、桃香が切り出した。

 

「その前に言っておくけど、この経緯が全て事実かどうかは調査中よ」

 

補足する桂花。その言葉に愛紗が疑問を呈する。

 

「虚実が入り混じっている可能性があるのか?」

 

「はい。朝廷での権力争いは恐らく事実ですが、董卓さんが現れてからの展開が分かりやす過ぎるんです」

 

「『悪い董卓がやってきて、好き放題してるから皆でやっつけよう』…恐らく、都に入って天子様に近づいた董卓さんへの嫉妬が多分に含まれているでしょう」

 

その疑問には朱里と雛里が答えた。

 

「フム…ではこの連合、茶番であるかもしれぬと?」

 

「可能性は高いわ。そもそもが袁紹が言い出してるんだし、嫉妬が暴走してあることないこと言いふらしてもおかしくないもの」

 

「にゃー…巻き込まれたくはないのだ」

 

「そうだねぇ…でも、董卓さんがもし圧政を敷いてるなら、都の人たちを助ける必要はあると思うよ?」

 

「だが桃香殿、我等は既に流浪の身ではなく、平原を預かる為政者です。参戦するにも物入りとなります」

 

星の指摘には桃香も苦い顔をするが、それは理解しているようだった。

 

「うん、それはわかってる。でも、後の事を考えても参加した方が良いと思ってるんだ」

 

表情を歪めながらも、桃香はチラリと壁に背を預けて会議を見守る芙陽を見てから、静かに自分の意見を語った。

 

「芙陽さんにも相談したんだけどね、この反董卓連合には色んな諸侯が既に参加してる。曹操さんや袁術さん、白連ちゃんだっている。皆、茶番かもしれないことはわかってるんだと思う。

 なら、『それでも参加する理由は何か?』って芙陽さんが言ってくれたの。……これは、飛躍の好機なんだって。

 董卓さんをやっつけて、この連合が解散しても…大陸は平和にならないと思う。寧ろ、これからが乱世の本番になるっていうのは、皆も聞いてると思う。

 なら私達も、身を守るための力は必要でしょ?そして、私たちの夢を叶えるためにも、もっと大きな力が必要になって来る。

 だから、私は賭けに出たい。私達がこれから潰されないように、大切な人を守れるように、ここで勝負に出たい」

 

以前の桃香からは感じられなかった"覚悟"。

桃香は真直ぐに皆の視線を受け止めながら、自分の意見を言いきった。

 

これまでの桃香を知る愛紗や朱里、雛里は驚くと共に、頼もしくも感じた。どこか田舎娘のようだった彼女が、先を見て、そこへ辿り着くまでの歩き方も考えている。

これを"成長"と言わずなんと言うのか。

 

「桃香様がそこまで仰るのでしたら、私は着いて行くだけです。我が青竜偃月刀…必ずや貴女をお守り致します」

 

「入念な準備をしてから出立しましょうっ。あらゆる可能性を考えて対処できるように!」

 

「あわ…出来る限りの情報も集めましゅ!どんな些細な情報も見逃さずに行きましょうっ」

 

嬉しくなった三人は興奮気味に立ち上がる。星はそれを微笑ましく見ていた。

 

「やれやれ、お主等は相変わらず熱血なものだな」

 

「ま、やる気があるのは良いんじゃない?空回りしなければ」

 

やれやれと溜息を吐く桂花だが、その口元が微かに吊り上がっていることを星は見逃さなかった。

 

「どうやら方針は決まったようじゃの」

 

今まで黙って会議を見守っていた芙陽が近づいてきた。

桃香は決意に満ちた表情で芙陽を真正面から見つめ、総意を述べる。

 

「はい、私達は反董卓連合へ参加します。苦しむ民がいれば救い、茶番であれば飛躍の糧としましょう」

 

「ならば良し。軍を動かすにも莫大な金子や糧食が必要となる。民が血と汗を流してつくり上げたそれらを決して無駄にせぬようにな」

 

「桃香様、出立はギリギリまで遅らせて隙の無い準備を行いましょう」

 

「留守の間の警備体制も入念に整えましょう。民の不安は出来る限り抑えなければいけません」

 

芙陽が桃香に意見を述べれば、それにこたえる様に朱里と雛里が動き出す。桃香も彼女らの意見を聞きながら、精一杯の指示を出し始めた。

 

「じゃあ、軍の準備を愛紗ちゃんと鈴々ちゃん、警備態勢を星ちゃんにお願いするね。

 情報収集は桂花ちゃんにお願いして、参戦への準備は朱里ちゃんを中心に。私と雛里ちゃんは政務をこなしながら、街の人たちに説明をしていこっか!」

 

それぞれが頷いたり返事をしながら、己の仕事へと向かっていく。

桃香は最後に芙陽へ顔を合わせた。

 

「芙陽さん、申し訳ないんですけど、街の人たちへの説明…手伝って貰えませんか?」

 

「ほう?理由を聞こう」

 

「私たちの勢力が弱小であることは周知の事実です。だから、大きな戦いに参戦するとなれば民の不安は大きいと思います。そこで芙陽さんが私と一緒に居てくれれば、少しでも不安は紛れると思うんです」

 

『傍で笑っててくれれば良いですから』と言う桃香に、芙陽は微笑みながら頷いた。

芙陽を誘った当初は唯なんとなくしか考えていなかった桃香も、今では『天の御使い』の名の使い所をうっすらと理解してきている。

 

「ま、先程は中々に成長が見られたしの。少しは手伝ってやっても良い」

 

「有難うございます!」

 

人の成長とは面白いものだ。そう考えながら、満面の笑みを浮かべる桃香に笑い返した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

入念に出立の準備を行い、本当にギリギリまで不備が無いかを確認しながらも連合の合流地点に到着した。

 

「ふわぁ~…沢山いるねぇ」

 

「袁紹さん、袁術さん、曹操さん、孫策さん、公孫賛さん…あっちには西涼の馬謄さんの旗もありますね」

 

「あわわ…官軍だった人の旗もいくつかあります…」

 

三人の言う通り、連合の陣地には所狭しと諸侯の旗が掲げられ、色とりどりの旗や兵士があちこちを走り回っている。

中央に見える巨大な天幕はこの諸侯連合の発起人である袁紹の旗が見えた。

 

「桃香様、受け継ぎの兵が既に軍議が始まっているとのことです。急ぎ軍議へ」

 

「あちゃ~流石に遅くなりすぎちゃったかな?」

 

「はわわっ…まだ顔合わせ程度だと思いますし、周囲の状況を見れば私たちの少し前に来たことが分かります。問題は無いかと…」

 

「とにかく軍議へ向かうぞ」

 

「あれ?芙陽さんも行くの?」

 

煙管を吹かしていた芙陽が言えば、意外そうに桃香が答えた。

 

「まだ見たことの無い者もいるのでな。軍議にて顔を拝もうと思っての…行くのは儂、桃香、朱里の三人で良いじゃろ」

 

「そっか。じゃあ早速軍議へ出発~」

 

意気揚々と歩き出した桃香。しかしその勢いは軍議に顔を出してすぐに削がれることになる。

 

 

 

 

 

 

「オ~ッホッホッホッホ!!」

 

「「うわぁ…」」

 

「カカカッ、威勢が良いのがおるの」

 

軍議の場に入ってみれば、金色の派手すぎる鎧を身に着けたお世辞にも利口とは言えない(バカみたいな)女が気でも狂ったのかと思わずにはいられない声を上げていた。

 

「えぇ…とぉ…これはどういう状況ですか?」

 

余りにも予想外なこの状況に戸惑いつつ、桃香が周囲に助けを求める。すると、近くの席から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「大将を誰がやるか。それを決めてるんだ」

 

不意に掛けられた言葉に視線を向けてみれば、お馴染みの赤い髪を一つに纏めて気さくな笑みを浮かべる公孫賛がいた。

 

「白連ちゃん!」

 

「元気そうだな、桃香」

 

知り合いの顔を見つけ、嬉しそうな声を上げる桃香。

簡単な挨拶を交わした後、公孫賛が状況を素早く教えてくれる。

 

「桃香が来たことで参加諸侯は全員揃った。後は総大将を決めて軍議を決めるんだが…正直そんなの誰もやりたくない。一人を除いてな」

 

「オ~ッホッホッホッホ!!」

 

公孫賛の呆れた視線が女に注がれる。

 

「アイツは袁紹。この連合の発起人なんだが、明らかに総大将をやりたがってる。でも見栄を張ってかなんなのか知らないが、なかなかそれを言い出さないんだよ…」

 

「え?じゃあ誰かが『お願いします』って言ってあげれば…」

 

「そんなこと言って推薦した責任負わされたらたまんないだろ?」

 

「あぁー…」

 

とうとう桃香も呆れ顔で、未だ高笑いを続ける袁紹(バカ)を見た。

 

「ところで桃香、横にいる小さい子とえらく美人な男は誰だ?」

 

「へ?朱里ちゃんはともかく、白連ちゃん知って――」

 

「あらぁ?貴女は新しく合流した方ですの?」

 

桃香の言葉を遮って発言したのは袁紹だ。

 

「最後に到着したのだから、それ相応の挨拶があっても良いのではなくて?」

 

「あ、御免なさい!平原より兵を率いてやってきました。劉備と言います!」

 

「あら、貴女が『天の御使い』を招き入れたという劉備さん?と言う事は……」

 

袁紹の視線が、桃香の傍らに立つ芙陽に向けられる。

 

芙陽は軍議の場へ顔を出してから一言も言葉を発していない。否、発することが出来ていなかった。

と言うのも、現在芙陽に注がれている視線は袁紹の物のみではない。

一時期身を寄せ、共に戦った孫策の気さくな視線。城に侵入し、口八丁の策を授けた袁術の驚愕の視線。

 

そして………

 

 

 

「………………………」

 

 

 

覇王系少女、曹孟徳の値踏みするような、疑心のような、怒りのような、様々な感情がこれでもかと乗せられた何とも言えない視線。

 

芙陽も覚悟をしていた。この場に自分が現れれば必ず曹操の目に留まる。そして曹操は必ず気付くだろう。自分があの"芙陽"であることを。

 

苦々しいと言う表現が最も似合う顔をしていると、正に田舎娘と言われかねない暢気な声で桃香が言った。

 

「はい!此方の方が『天の御使い様』、芙陽さんです!」

 

―――桃香ぁぁ……

 

何故ここで芙陽の表情を見ることが出来なかったのか。何故空気を読むことが出来なかったのか。先日見せた『成長』はどこへ行ってしまったのか。

芙陽とて理解している。ここで"名乗らない"等と言う選択肢は無いのだ。どれだけ時間を稼ごうと、この場で芙陽の正体は明かすしかないのだ。

 

だからと言って、恨む気持ちが無いかと言えば、それは別の話なのだ。

 

「へぇ、アンタがあの『御使い』なのか。よろしくなふよ…はあ!?芙陽!?は、はあ!?」

 

「あら、貴方がそうでしたの?しかし『天の御使い』は『金色の獣』では…?」

 

「お主あの『天の御使い』じゃったのか!?何故妾にそれを言わなかったのじゃ!」

 

「ふーん…只者じゃないとは思ってたけど、まさか芙陽がねぇ…」

 

驚愕、疑問、関心。様々な理由でざわめくその場で、一人だけ沈黙を保った者がいた。

 

 

 

「………ふぅん…」

 

 

 

曹孟徳である。

彼女は腕を組み、不気味に口元を吊り上げて笑っていた。しかし、その背にはなんだか奇妙な(オーラ)を背負っているし、目尻も小刻みに震えている。

明らかに、誰が見ても、一目瞭然で怒り心頭であった。

 

そんな曹操に気付くことなく、諸侯たちは芙陽についての話題を続けた。

 

「貴方が『天の御使い』であると言うのなら、『金色の獣』とはどこから来た話ですの?」

 

「……儂は妖じゃ。どれ」

 

袁紹の疑問に、芙陽は音を立てて大狐の姿に変身して答えた。

 

『!!!?』

 

その場の殆どが一気に臨戦態勢になるが、構わず芙陽は話を続ける。

 

「この通り狐の妖での……安心せい、お主等を喰おうなどと思っておらぬ。他に質問はあるか?」

 

最早開き直った芙陽はこの際どんな質問にも答えるつもりであった。

 

「ふ、芙陽…?お前女じゃなかったのか…?」

 

公孫賛が恐る恐る言うと、曹操がピクリと反応した。それをチラリと見ながら芙陽は再び人間の姿に戻る。ただし、今度は女の姿であった。

 

「…この通りじゃ。儂に性別は無い」

 

「あ、芙陽だ」

 

良く知る女の芙陽の顔に安心したのか、公孫賛から緊張の色が消えた。

 

「お知り合いでしたの?」

 

「あぁ、一時期うちで客将をしていたんだ。武力も智謀も頼りになるよ」

 

「あらそうですの。なら構いませんわ」

 

『人外』と言う明らかな異常事態を『あらそうですの』で済ます袁紹も、ある意味では大物である。

実際は何も考えていないだけなのだが。

 

「さて皆さん。全員が揃ったところでお話を元に戻しましょう。今論ずるべきは『誰がこの連合の大将を務めるか』ですわ」

 

袁紹の言葉に曹操、袁術、孫策、公孫賛、劉備が席に着けば、未だ芙陽に警戒している諸侯も仕方なしと渋々席に着いた。

 

「皆さんもお判りなのでしょう?連合を率いるにはまず『家格』、そして敵を殲滅できるような『能力』、最後に天に愛された『美しさ』!

 この三つを満たしている人物が、今この場にいるのではなくて?」

 

何とも面倒な言葉で『自分を推薦しろ』と言っている袁紹。誰もが(面倒だから)口を閉ざす中、沈黙を保っていた曹操がただ一人、その口を開いた。

 

「えぇ、いるわね」

 

(……動くか、曹操)

 

いい加減痺れを切らしたのだろう。これで軍議が進むと思った芙蓉。しかし、それは大きな勘違いであった。

 

「そこの天の御使いが全て満たしているでしょう」

 

(……なん…じゃと…?)

 

あろうことか芙陽を指名した曹操に、芙陽も一瞬固まってしまった。まさか人外である自分が指されるとは思ってもみなかったのだ。

 

(嫌がらせか曹操!)

 

(当たり前でしょう!後で貴女に話があるから逃げるんじゃないわよ!)

 

(あ、芙陽ー。私も行くからね!)

 

(伯符!今ちょっと大事な話してるから黙っとれ!)

 

因みにこの会話。全て視線のみで行っている。所謂アイコンタクトである。何故孫策が会話に混じったのか、その方法も不明だが。

 

「ちょっとお待ちなさい?そこの御使いさんが?」

 

「そうでしょう?『天の御使い』なのだから家格以前に出自は合格。先の黄巾賊との戦も、5万の兵力差を一人で覆す能力。それに、見てわかる通りの美しさ…どれを取っても申し分ないじゃない」

 

曹操はニヤニヤと笑いながら芙陽を持ち上げる。芙陽は頭痛を堪える様に眉間を押さえた。

 

「ですが!そんなどこの誰ともわからぬ下賤な輩を…」

 

「だから『天の御使い』だって言ってるでしょう?」

 

焦る袁紹に曹操が反論するが、そこに新たな火種が舞い込んでくる。それは笑いを堪えていた孫策の隣に座る、袁術からの言葉であった。

 

「麗羽姉さま、天から遣わされた者を『下賤』と言っても良いのですかぇ?」

 

「……っ!!?」

 

袁術は張勲により性格が歪んではいるが、その根本は己に素直な子供である。この言葉も、純粋な疑問でしかなかった。

しかし、袁紹や他の諸侯からすればその言葉の重みは段違いである。

 

建前とはいえ、この連合の目的は『都の民、そして天子である帝を救うこと』である。その発起人である袁紹が、天の子である帝と同じ出自を意味する『天の御使い』を侮辱する。

たとえ『天の御使い』という存在がどれほど胡散臭いものだとしても、その名は大陸中に広まっている。この件が広まってしまえば最悪『逆賊』とされてしまう事もあり得る。

あってはならない一言であった。

 

先程からの立場は一瞬にして逆転、今一番危うい立場となった袁紹は止まらない冷や汗を流して考える。

しかし、その隙を突いて再び芙陽と曹操が視線を交わす。

 

(今なら押せるわね)

 

(止めは儂が)

 

先程の苦々しい表情から一転、厭らしくニヤリと笑う芙陽。その表情に気付いたのは芙陽をよく知る曹操、孫策、そしてそれぞれの傍らにいる夏侯淵と周瑜のみであった。生憎と劉備と公孫賛は隣にいるため表情は見えなかった。

 

「そうよねぇ?誇り高き袁家の貴女が天の者を侮辱するなんて、これは由々しき事態だわ」

 

「ちょ、ちょっとお待ちなさい!私は……」

 

「万が一にもこの一件が広まってしまえば、袁家の権威はどうなってしまうのでしょうね?」

 

「っ…あ…わ、わた…くしは…」

 

「それで、この件をどう収拾するのかしら…ねぇ、『御使い』様?」

 

「そうじゃの……」

 

芙陽は腕を組んで目を閉じ、眉間に皺を寄せる。あたかも『怒っている』かのように見せるためであり、内心は嫌らしく笑っているのだが。

 

「袁紹」

 

「ひぃっ!?は、はい…」

 

少しだけ怒気を孕ませて袁紹を見れば、それだけで袁紹は身体を震わせた。

不用意な一言が、己を窮地に立たせることとなった。その恐怖で震えが止まらない。

 

袁紹が恐怖に蝕まれたことを見抜いた芙陽は、期は満ちたとばかりに一瞬で袁紹の隣まで移動し、その肩に手を置く。

 

「ひっ…」

 

顔を青ざめさせてビクリと反応する袁紹に、芙陽は打って変わって優しい声色で話しかけた。

 

「安心しなさい…儂は事を大きくするつもりはない…」

 

「え……」

 

呆気にとられた袁紹は目を見開きながら芙陽へと顔を向けた。

その袁紹へとしっかり目線を合わせ、妖艶な笑みを浮かべる芙陽。

 

「儂は人の身ではない故、大将になるつもりはない。その大役、お主が引き受けてはくれんかの?」

 

「あ…」

 

「大丈夫、お主ならば見事連合を率いて進軍できるじゃろう…やってくれるね?」

 

耳元で囁き、するりと軽く袁紹の頬を撫でる。それだけで、袁紹の身体は恐怖から解放され、心を満たす幸福感でブルリと芯が震えた。

撫でられた頬は赤く染まり、好悦とした表情に変わる。

 

「は、はい…」

 

朦朧とする意識の中で訳も分からず頷いた袁紹に、芙陽は更に言葉を続ける。

 

「良い子じゃ。ならば、最初の砦攻略は儂が先鋒に立とう。そうなれば劉備も先鋒になるが、まだまだ勢力も小さいのでな…どうかお主の力を貸してくれんかの?」

 

最後に少し悲し気に瞳を伏せた芙陽に、袁紹の心はは謎の使命感に支配された。

 

「と、当然ですわ!芙陽さん…いえ芙陽様!劉備さんには私がしっかりと援助いたします!ですからそんなお顔をなさらないでください!」

 

「そうか…感謝する」

 

「いいえ!芙陽様、他に何か私に出来ることはございませんか!?」

 

「大丈夫じゃよ、取り敢えずは軍議を進め、己の仕事を優先しなさい」

 

「畏まりましたわ!」

 

この時、袁紹は完全に芙陽の毒牙に掛かり、心酔していた。

多くの諸侯は呆気にとられ、公孫賛や劉備は何が起きたのかわからず大口を開け、曹操や孫策は笑いを堪えて肩を震わせていた。

 

 

「さて皆さん!張り切って行きましょう!雄々しく、勇ましく、華麗に進軍ですわ!」

 




芙陽さん身バレ回でした。

実はプロット段階では袁紹をこっぴどく説教してその報復で先鋒を任される、という展開だったんですが、流石に説教回が続くと書くのもめんど……、くどいかなと。
ちょっと強引に方向転換してチョロインの爆誕です。今後の展開に致命的な影響を及ぼさないことを願う…。
次回は曹操襲来の予定ですが、文字数や展開によっては閑話に回して本編を進めるかもしれません。

ゼロ魔の設定が進まない…。ハイスクールは何故か書きあがって行きます。どうしてこうなった。
もしかしたらこっそり投稿を始めるかもしれません。と言ってもプロローグから少ししか書けてないんですけどね。


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