え?もっと早く書け?こやつめハハハ!
時間があるからってすいすい書けるわけじゃないんです……
今回は少し短めになりました。
初めての戦略…矛盾点が無いといいのですが…
「ねぇ、アンタってもしかして"天の御使い"?」
日が昇ると同時に行動を開始した芙陽たちは、街に向かって歩いていた。
「噂を聞く限りそういう事になるの。儂以外に妖狐がいなければ」
荀彧は未だ若干の警戒心を残しながらも芙陽の隣を歩いている。
「じゃあアンタ世の中を救うつもりあるの?とてもガラじゃないわよ?」
「儂もそう思うの。元より人のために働くなど御免じゃし」
「そうよねぇ?……じゃあアンタなんで旅してるのよ?」
「この時代は動乱の幕開けじゃ。これから立ち上がる英傑となり得る人間でも見ようと思ってな」
『英雄など都合よく現れない』とは芙陽自身の弁だったが、時代の流れを知識として持っている芙陽であればこれから時代の中心となる人物には心当たりが多い。それに、ここまでの不況となると既に立ち上がる、もしくは立ち上がろうとしている英傑もいる筈だと踏んでいた。先を見通す眼を持ち、力を蓄えている臥龍たちを見てみようかと思ったのだ。
("臥龍"とは…引き籠りの小僧だけの言葉ではないしの)
「ふーん…それで、今のところ注目してるのは誰よ?」
「ふむ、まだ旅を初めて一月。儂の眼鏡に適うのはそこの三人だけじゃな」
そう言って"趙雲"、"郭嘉"、"程立"を指す芙陽。
「なに?あの三人は英傑足る人物なの?」
「趙雲は槍の達人、昨夜の盗賊たちも余裕で倒すじゃろ。戯志才と程立は軍師じゃな。二人とも戦略、軍略に長けておる。
しかし趙雲は些か突出が過ぎる。人の身ではいつか限界を迎えるの。戯志才は先を見通す力はあるが、幾分視野が狭く、柔軟性に欠ける。程立はもう少し"焦っても"悪いことにはならん」
実は芙陽の言葉に舞い上がっていた三人は、途端に始まった欠点の暴露に肩を落とした。
「…よく見ていると思うけど、"焦る"ってどういうことよ?」
「風…程立は常に平常心、落ち着いた心で物事に当たる。それ故の柔軟性は目を見張るものがある…が、臨機応変に対応しようとするあまり、万能と言えば聞こえはいいが、突出した特技は無い。
…そうじゃの、戯志才と共に仕官すれば互いに補い合うことができるじゃろ。仲も良いしの」
「耳が痛いですね~」
「クフフ、年寄りの戯言と思っていると足元を掬われるぞ?心の片隅にでも留めておけ」
「わかりましたのです~」
「そこの人形も程立をよく見ておけ」
「ったりめ~よ狐さんよ」
「っ!?あの人形喋るの!?」
「妖力も何も感じぬが、喋りそうではあったからの」
「いや、声も程立だし、喋るって言うよりは…」
「おうおう、なんだよ猫娘。俺に文句でもあるってかい?」
「いや、もう良いわ…」
げんなりと肩を落とす荀彧だったが、内心ではそれよりも芙陽について考えていた。
(確かに人を見る目はある。弱点も理解してる。それを補う方法も…。
なにより、これからの時代の"先"もある程度見えているような気がするわ…話を聞く価値はあるかも)
「ねぇ、アンタ」
「芙陽と呼ばんか小娘」
「うぐっ、ならアンタ…芙陽も私を小娘扱いしないで頂戴」
「カカカッ。なにかね、荀彧?」
「芙陽、共に公孫賛の下へ士官するなら、私にもあなたの考察を聞かせてくれない?」
「それは、稟と風に話したことをお主にも話せば良いのか?」
「えぇ、彼女たちの話ではかなり勉強になるみたいだし」
「ふむ…荀彧、お主いつまでも公孫賛の下にいるつもりではないじゃろ?どうするんじゃ?」
「旅費が溜まったら曹操様の下へ行くつもりよ」
「ほう……曹操か」
やはり、と思っていた芙陽だが、曹操の名を出した途端に荀彧が頬を染めて語りだした。
「当たり前よ!曹操様は正に英傑、英雄足る人物に違いないわ!その辺の男なんて歯牙にもかけない武勇を持ちながら、自ら書を編纂する知識、軍を率いる智謀!噂では幼少から覇気を纏っていたと言うわ!そして何より誰もが振り返る見目の麗しさを持っていると聞いたのよ!」
「ほー」
興奮する荀彧に、芙陽は煙を吐いて答えた。
「ちょっと!いつの間に煙管なんて取り出したのよ!私の話聞いてた!?」
「お主の曹操自慢はどうでも良かったがの、曹操には少し興味が湧いた」
「へ?」
「荀彧、路銀が溜まったら儂も曹操の下へ行くぞ」
「えぇ!?」
「代わりに護衛をしてやる。案内せい」
「ちょ、そんな簡単に決めるの!?」
「荀彧よ、芙陽殿はいつも気まぐれに行動なさる。諦めよ」
「意味わかんない!?」
「ほれ、街が見えてきたぞ」
「話を聞きなさいよ!?」
「荀彧殿がいると何故でしょう?とても楽ですね」
「苛められる対象が移りましたね~」
「ちょ、助けなさいよ!?」
「これ荀彧、しっかり芙陽殿の相手をせんか」
「あ、押さないでよ!」
「お、なんじゃ愛い奴じゃの」
「あ、ちょ、抱っこしないでよ!持ち上げるんじゃないわよ!!
なんなのよおおおぉおぉお!!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「で、荀彧と言ったか?……なんかお前だけ疲れてないか?」
「……気にしないで」
疲れた顔でうなだれている荀彧を、赤い髪の少女、公孫賛が心配している。
あれから一行は公孫賛の治める街に入り、取り敢えず食事を取りながら今後の行動を話し合った。
芙陽、星、荀彧は士官をするために公孫賛へ謁見することに。
稟と風はこのまま旅を続けることにしたが、女二人だけの旅は危険と判断し、行商の一団がいればそれに付いていこうと思ったのだ。そこで、行商の情報があればと思い芙陽たちと共に公孫賛へ謁見することにした。
因みに、芙陽は現在女の姿になっている。一応騒ぎにならないように、このまま正体を隠すよう星や凛に説得されているので、面倒ではあるがしばらくは女で過ごすつもりだ。
「それで芙陽、趙雲、荀彧が士官してくれるのか?」
「左様。芙陽殿と私は武芸を、荀彧は軍師としての働きを約束いたしましょう」
「扱いは客将で良いのか?」
「儂らは路銀を貰えたらそれで良い。まだ一か所に留まるには時期が早いからの。いずれは旅を続けるつもりじゃ」
「あの、雇い主相手なのですから少しは敬語を使ったらどうですか…」
稟は頭痛を堪えるようにこめかみに手を当てていた。
「ハハハッ。良いよ、堅苦しいのは私も嫌いなんだ。
戯志才と程立はどうするんだ?」
「我等はこのまま旅を続けます。しかし女二人では危険が多いのです」
「成程な。行商にでも付いていくのか。たしか南に向かう一団が明日出立するな」
「丁度良いですね~」
「情報感謝します」
「良し、部下をやるから一団に話を付けてくれ。私の部下には案内するよう言っておくから、そのまま旅の準備をすると良い。案内された店なら多少安く買えるはずだ」
「おや、公孫賛殿は随分とお優しいですな」
「私の懐が痛まないなら恩は売っておくべきだろう?」
「カカカッ。なかなかやるの、公孫賛」
「なんだかアンタには敵わない気がするよ、芙陽殿」
「クフフ、もっと気安く呼ぶが良いよ、伯珪」
「うわーもう会話の主導権取られた…強いな芙陽…」
「芙陽殿は武も際立つが弁もお強いからな。それと私も伯珪殿とお呼びしても?」
「あぁ。よろしく頼むよ趙雲。あと荀彧も好きなように呼んでくれ」
「ふーん、まぁ世話になるわよ公孫賛」
穏やかな面通しが終わり、現在は特に仕事は無いとのことで、一行は稟と風の旅支度へ街に繰り出した。
一団との交渉が終わり、買うものも買って支度を終えた凛と風は、公孫賛の部下に礼を言って解放した。
現在は甘味の店で一息付いている。
「この不況でも良く街を治めているな、伯珪殿は」
「そう?ちょっと印象は薄いけど」
「確かに突出した才があるわけでは無いが、治政と賊の討伐をほぼ一人でやっていることは賞賛すべきじゃな」
「一人?どうして一人だと?」
「我等の謁見に伯珪一人で立ち会っていたじゃろ。それに『客将で良いのか?』と聞いてきたしの。少しでも人材を確保しようと必死なんじゃろ。
街を見ても警邏の兵はいるが、どうも"ただ回っている"というだけの抑制しかできておらん。指導が行き届いていないようじゃの。これも将となる人物がいないからじゃ」
「よく見てますね~」
「お主等もこれから仕官するならそういう"眼"を養うことじゃな」
「芙陽、アンタはどうやって養ったのよ?」
「若いころは人に混じって天軍相手に兵を率いていたからの。その時の経験は貴重じゃったのう」
懐かしむように言った芙陽だが、その言葉に四人が驚いていた。
「天軍って…芙陽殿は天を相手に戦ったのですか?」
「アンタ天の御使いじゃなかったの!?」
「"天の御使い"等と言っておるのはどこぞの占い師が勝手にしたことじゃ」
「というか、天に背いていた人たちがいたのですか~?」
「儂らの国は最初は群雄割拠じゃった。そこで天が兵を送っての、統一を果たすまではいろんな神々が争っておったよ。
儂はなんとなく入った軍が天を相手にしていた国だっただけじゃ」
「ほう、天軍は強かったですかな?」
「当たり前じゃの。儂も何回死にかけたことか。まぁ、あの戦乱を生き残ったからこそ後に儂を討伐しに来た奴らにも対抗できたんじゃが」
「アンタ討伐対象だったの?」
「『天で働け』と煩かったのでな、無視しておったら神も人も軍を率いて儂を殺しに来よったわ」
「よく生き残りましたねぇ…」
呆れながら芙陽を見る少女たちに、芙陽はいつものようにケラケラと笑っていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一夜明けて、稟と風の出立である。
「それでは芙陽殿、お世話になりました。星、荀彧殿もどうかお気をつけて」
「お主等もの」
「道中体を壊さぬようにな」
「フフフ。荀彧さんは今度会うことがあれば真名を教えてあげますよ~」
「あらそう?なら私もそうしてあげるわよ」
「では皆さん、またいずれ」
「しばしのお別れですね~」
「達者での」
あっさりと別れの挨拶を済ませ、去っていく二人を見送った。
「さて、芙陽殿、荀彧。伯珪殿が北の古い砦の賊を討伐しに行くらしい。これから軍議がある」
「先に砦へ行っても良いかの?」
「駄目に決まってるでしょ!」
荀彧は怒りながら先を歩いて行ってしまった。
「やれやれじゃの。冗談も通じぬ」
「芙陽殿は本当にできてしまいますからな。冗談に聞こえませぬ」
ケラケラと笑いながら荀彧の後を追う二人。
そして軍議に出席したは良いものの…
「だから、火矢で一気に砦を燃やせば混乱して戦力が大きく減るでしょう!?」
「それでは時間が掛かる。火を消しているうちに混乱が収まるとも限らんではないか。
それにすべて燃やさずに戦を終えれば砦の物はすべて手に入るのだぞ」
荀彧と星の意見が真っ向から衝突していた。
公孫賛は多少戸惑いながらも星の意見に傾いている。芙陽は煙管を吹かしながら見守るに留まっていた。
「だからと言って砦の外に敵を呼び出してどうするの!被害が広がるだけじゃない!」
「我等のような将のいる今なら統制が取れるはずだ。有象無象にやられる兵ではないだろう」
二人の意見はどちらも正しいと言えるものだった。合理性に適った荀彧の策と、賭けではあるが成功すれば大きな戦果となる星の策。どちらも実行足り得る意見であった。
しかし、もう既に意見を出し合って長い時間になる。昼食の時刻が迫っており、周囲の人間の腹も鳴り出した。
「はぁ…伯珪よ、儂が意見を纏めても構わぬか?」
「ん?あぁ。そろそろ決めないとな…。何かいい案があるのか?そこの二人が納得する形で」
「うむ。……お主等、ちと話を聞け」
「どうされた、芙陽殿?」
「なによ?」
「お主等、互いの意見を通そうとするあまり視野が狭くなっておるの」
「ふむ…では芙陽殿は何か策がおありかな?」
意見を止められた星が少し牽制するようにきつく言うが…
「舐めるなよ小娘が」
芙陽の放った殺気にその場にいた全員が黙る。意見した星も冷や汗を流して息を飲んだ。
荀彧も公孫賛も、突然の殺気に顔を青くしている。
全員が黙したのを確認し、芙陽は殺気を収めた。
「ふむ、聞く姿勢はできたようじゃの。
では、まず伯珪。砦を全て焼き尽くすような矢は用意できるのか?」
「あ、あぁ。だが火矢として使うのとなるとギリギリの数になる」
「荀彧。お主今までは袁紹の下にいたのだったな。だからそこを基準に策を立てておったようじゃの。自らの勢力の軍備は確認しておくことじゃ」
「ぐ、……そうね」
「それと星、将がいると言っても儂らは今日配属されたばかりで調練も何も行っておらん。己の評価が高いのは構わんが、過信をすると痛い目を見るぞ」
「むぅ…確かに、仰る通りです」
「伯珪が一番問題じゃの」
「ええ!?」
「当たり前じゃ。お主が我らを率いるのに、なんでお主が一番うろたえておるんじゃ。上に立つ者がそんなことでどうする。
あとは二人を諌めなかったのもな。長引くのは目に見えておった。早々に諌めて仕切りなおした方が良かったの」
「うぅ…すみません」
「大将が簡単に頭を下げるな。部下が見ておるんじゃぞ」
「は、はい!」
一瞬で場を諌めた芙陽。その姿に周囲の兵たちがザワ付き始める。
『あの美しい女性は何者だ?』『あのような殺気は初めてだぞ』『それに二人の策の弱点を突くあの智謀は…』
好き勝手に話し始める兵たちに、またもや溜息をついて芙陽は公孫賛を睨んだ。
「ひぃ!?…皆静かに!!……芙陽、お前の意見を聞かせてくれ」
「うむ。先程口論していた二人の良いとこ取りじゃ。
まず部隊を二つに分け、これを砦正面に待ち構える隊と側面に配置する隊とする。側面部隊は更に二つに分ける。
砦内部は斥候が詳細に掴んでいるのだろう?少数の火矢で食糧近辺を集中的に燃やし、ある程度混乱したのちに正面部隊が銅鑼で大きな音を出し、更に混乱を招く。そこで正面大門を開き、一当てして後に正面部隊が後退。敵を釣る。この時の指揮は伯珪が行う。
敵の最後尾が砦を出たところで側面部隊が奇襲、挟撃と共に砦内部も制圧すれば、最大の戦果を得られるじゃろう」
周囲から感嘆の声が漏れた。星と荀彧の意見を見事に融合させた策であったためだ。
荀彧は芙陽が説明しだした最初のころに意図に気付き、悔しそうに顔を歪めていた。
「芙陽殿、策は見事ですが、兵の連携は大丈夫ですかな?」
「一番連携が必要なのは敵の攻撃を受けながら後退する正面部隊じゃ。だからこそここは伯珪が仕切る。あとは奇襲を星、内部制圧を儂が率いれば良い」
「成程…いや、お見事です。感服いたしました」
「あぁ。これなら兵の損失も最小限に収められる!」
「荀彧はどうじゃ?」
「悔しいけど芙陽の策が一番理に適っているわ…」
「なに、少し落ち着けばお主でも思いついていたよ。今日は少し熱が入ってしまったようじゃの」
「ふんっ」
子供の用に拗ねた荀彧に、優しく微笑んだ芙陽。周囲では早速策の細部を詰め、準備を開始していた。
そんな中で芙陽は煙管を咥えながら、荀彧に近づいて頭を撫でる。
「クフフ…ムキになるようではまだまだじゃのう」
「あ、ちょっと、撫でないでよ!」
顔を真っ赤にしながら逃げ出す荀彧に、狐はケラケラと笑っていた。
最後はなんだか荀彧がチョロインになりかけてますね。
このまま苛め抜いてトロトロにしてやりたいです。あ、まだ好感度は低いですよ?もうちょっと弱らせないとボールで『ゲットダゼ』できそうにないです。
今回の戦略どうですかね…意見どうこうではなく、納得できる策であったならそれでいいです。素人考えの策なので…。
次回は遂に大きな戦闘ですね!うまく書ければ良いのですがね!
ダレカタスケテ……
誤字、脱字報告、感想などお待ちしております。