東京レイヴンズ~英霊を従えし陰陽師~   作:スペル

10 / 21
祝!!お気に入り三桁!!
単純に凄くうれしいです!!!

そして今回で原作に終了です
完全に舞台裏感が強いです

楽しんでくれたら嬉しいです


第九夜 裏で暗躍せし者達

陰陽塾の裏口から、顔面蒼白の男が出て来るのを一台の黒いリムジンが見ていた。男の姿が見えなくなると、窓が開き一人の老人の姿が現れる。

 

「なんとも、期待外れじゃな」

 

一度ため息を吐いた後、しわまみれの口から出てきた声は、姿からは想像も出来ない程若い。

 

「いや存外、子供たちが期待以上なのか‥‥‥あの衛宮(・・・・)がおるし、そちらの方が濃厚じゃな。しかし、もう少しどうにかならんかったもんかの…‥大の大人が不甲斐ない。流石に人選を誤ったか?」

 

血のように赤いサングラスを付けた和服姿の老人。まるで死人の様に枯れた姿からは想像も出来ない程、声は若々しい。むしろ死人に生者が乗り移っていると言われた方が、納得できる。

ふと、窓を開けているにも関わらず、老人の視界に影が差す。

 

「…‥よお」

 

老人の視界に影を差したのは、一人の男だった。窓から老人を覗きながら、黄金のような短めの金髪で南欧の血を感じさせる筋骨隆々たる長身の男は、己の右腕を車の上に乗せ

 

「他人の名前を勝手に使わないでもらおうか」

 

老人を咎める口調で話す。しかし腹を立てている様子はない。男の言葉に老人は、イタズラの見つかった子供のように「もうバレたか」と軽く返す。

 

「じゃが、お前さんも気になるじゃろ?」

 

「別に、そこまでだ」

 

「冷たいの。かれこれ六十年経って、漸く土御門と衛宮が交わり出した(・・・・・・・・・・・・・)のじゃぞ」

 

「まだ…‥‥六十年だ。俺やアンタが、懐かしむ様な時間じゃない」

 

男は平然と言う。しかし男の言葉を聞いた老人は、何処か面白そうに笑う。

 

「そうか。じゃが、儂はこの六十年でずいぶん鬱憤が溜まっとる。衛宮の様な麒麟児も現れんしな。あやつらが生きとった頃が懐かしいわ」

 

「アンタはいい加減に落ち着くべきだと思うが…?そもそも衛宮の様な奴が早々に生まれるとは俺には思えない。アンタもわかっていた事だろう」

 

「それとこれとは話が別じゃ。第一昔から儂はこんな感じじゃったろう」

 

「まったく…‥せめて黒幕に徹してほしいモノだ。アンタが動くと、面倒事が余計に面倒になる」

 

男は辟易(へきえき)した口ぶりで言うが、半分以上は形だけだ。彼自身、関心が関わらない限り、何が起きようと首を突っ込む事など無いのだから。

老人は、その無関心が面白くないのか再び問う。

 

「本当に、全く、気にはならんのか?」

 

「全くと言う訳ではないが…‥それでも自分から確かめようとは思わないさ。俺は飛車丸とは違う」

 

「そんなもんかの。そう言えば、相変わらず向こうも音沙汰なしか。存外、向こうも冷たいの」

 

「それこそアンタが知らなくても良い事だ」

 

付き合いの長さを感じさせる二人の会話。

 

「それにしてもお主は、昔から自分の鬼気に無頓着すぎる。お蔭で、儂まであんな若造に見つかったではないか、まったく」

 

「悪いな。昔から、そこら辺は雑でな」

 

責められながらも男は対して気にせずに、気配だけを感じ取る。

 

「‥‥あいつか。確かに筋は悪くなさそうだな。知り合いか?」

 

「前に、生意気にも片足を引き替えに、儂の手から逃れおった」

 

老人の悔しそうな言葉に男は笑みを浮かべ「ほう。そいつは有望株だ」と告げる。

 

「まあ、どのみち陰陽塾(ここ)の塾長は、やり手の星読みだ。アンタの思惑は、当に知られてたんじゃないのか?」

 

「それを出し抜くのが楽しいんじゃよ」

 

「困った趣味だ」

 

それだけ言うと、男はリムジンから腕を離し老人から離れていく。老人も止めはしない。しかし、ふと離れ際、何かを思い出したように、男は珍しく間を置きながら

 

「‥‥‥そう言えば、あのガキは‥‥‥一体何者だ?」

 

「うん?どのガキじゃ」

 

「虎」

 

「ああ。分家筋の男らしいぞ。面白いわい。これで竜虎並び立つじゃな‥‥虎は少々貧弱じゃが‥‥‥それでそやつがどうかしたか?」

 

珍しく男が見せた好奇心に、老人は楽しそうに問う。しかし男は揺るがず淡白に

 

「…‥いや、別に何でもないさ」

 

告げる。そして去り際に「おちょくるのもほどほどにしな」と告げて今度こそ老人の前から姿を消す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

老人と塾舎を視界に納めるビル裏。まるでそこが己の生きる場所とでもいう様に違和感のない男は、一度塾舎を見て、男は何処か懐かしむ様に呟いた。

 

「‥‥相変わらずの忠義者だよ。お前は」

 

それだけ告げ、右手をポケットに残る左手の袖が振り返る風に煽られ、ふわりと舞う。そうして歩き出そうとした、次の瞬間

 

「よう。久しぶりだな」

 

上から声が男の耳に届いた。一瞬、自分が気取られずに背後を取られたことを驚いた男だが、声を聞き納得する。男は体勢変えないまま声に応える。

 

 

「ああ、久しぶりだな。お前がこっちに来た(・・・・・・・・・)って事は、あいつ(・・・)がそうなのか?」

 

「それはこっちのセリフだ。あいつ(・・・)が仕えてるてって事は、あの坊主がそう言う事だな」

 

互いにわかっている。それでも問う。

 

「それにしても相変わらず、冷めた奴だぜ。もう少しぐらい、興味を持ったっていいだろうに」

 

「生憎、お前らみたいな騎士道精神は持ち合わせてなくてな」

 

「ケッ。面白くねえ奴‥‥‥まあ、互いに自由な時間は随分過ごしたな」

 

「たかが六十年だぞ」

 

「長げえよ、新鮮な刺激も面白みもあったが…それでも足りねえ。使命ある自由と責務ない自由の差はお前も俺もわかってて過ごしてんだからな」

 

そのセリフに男は答えない。ただ沈黙が肯定を示す。

 

「そう言えば‥‥あいつはどうした?飛車丸と同じ位の忠義者は…」

 

「見守ってやがるよ。ご丁寧に個人ではなく家そのもの(・・・・・)をな。うんで、今は坊主の内(・・・・)にいる」

 

「成程な。お互いに、変わってないな」

 

「全くだ」

 

昔を懐かしむ様に話す二人。それっきり会話が途切れる。沈黙が支配する中、一方の声が

 

「うんじゃあ、またな。今度は酒でも飲もうぜ」

 

それだけ告げてその場から消える。一人残された男も一度目を閉じた後、ゆっくり歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビルとビルに挟まれた路地。涙と鼻水で顔を汚し、肩で息をしながら呪捜官はそこまで逃げていた。

 

「どうしてこんな目に…‥わ私は、ひ飛車丸なのだぞ!!、そそうだ、こんなのは間違ってる!!」

 

自分に言い聞かせるように譫言の様に呟く呪捜官だが…

 

「‥‥‥暫らく見んうちに、随分と呪捜官の質も落ちたもんやな」

 

何処からか聞こえる声に取り乱したように辺りを見渡すが

 

「‥‥いや、違うか。それだけ優秀な人材が霊災の修復員に偏ってるって事やな。霊災の増加の悪影響やな」

 

背後。それもすぐにでも触れそうな距離に追手はいた。直後、何かに縛られた様に身体が動かない。呪術。それもかなりレベルの隠形と金縛り。こんな事が出来るのは、国内最高峰の『十二神将』クラス。

ふと呪捜官は、昔職場で聞いた噂を思い出す。かつて『十二神将』の一人に数えられながらもその隠密の任務故に公に名が上がらなかった、最早伝説に数えられる凄腕の呪捜官の事を。そこまで思い出した呪捜官の意識が完全に縛られた。

 

「やれやれ、ひどい時間外労働もあったもんやな。これって残業手当つきますん?」

 

頭を掻いながら大友陣は、自身の後方に問う様に話す。するとにゃあと一匹の猫が大友の前に現れる。陰陽塾の塾長倉橋美代(くらはしみよ)の式神だ。

 

「可愛い生徒の為なのですよ?心優しい大友先生?お金の問題ではありませんよ」

 

「金やのうて、誠意の問題やっちゅうに‥‥」

 

「何か言いましたか?」

 

「いえ、別に!!」

 

小言の筈がまるで感情を読まれたような地獄耳に大友は身体を委縮させる。

 

「それはともかくお疲れ様でした、大友先生」

 

猫は倒れた男を見ながら一応いたわりの言葉をかける。

 

「言うて何ですけどね、こいつ雑魚ですわ。今時おるんかって位のレベルの」

 

「恐らく深層心理にまで深い暗示を長期間受けていたのでしょう。彼を見ていましたが、かなりの人格の乖離が見られました」

 

「ああ、あの遠坂クンにも見破られた、あのみっともない一人二役。なんや塾長も見てはったんですか」

 

「ええ、当然です。しかし、遠坂さんの乙種は想定外であり見事でした。これは嬉しい誤算です。それに…」

 

「衛宮の術を見れたからですか?」

 

一瞬、式神の気配がブレる。大友自身、あれを見ていたが凄まじいの一言だ。現役時代噂には聞いていたがあれ程とは思いもしなかった。準備に膨大な時間がかかるのが、難点と見たが、もしもその時間を角行鬼や飛車丸と言った式神が主を守護(・・・・・・・)すればと考えると、恐ろしい。

 

「ええ。私自身、衛宮の術を詳しく知りませんからね。一度でも見れたのは行幸でした。そして担任に貴方のような彼の名を気にしない講師を付けれて良かったと思ってますよ」

 

「そらまあ、僕自身あの名に思う所は有りますけど、それだけで彼を責めるのも筋が違いますからね」

 

「世の中、そう上手く行かないモノですよ。特に彼のような家はね」

 

今後の事も考えれば。彼らの結束は不可欠なのだ。その中で不確定な物は出来るだけ除外したいというのが彼女の考えだ。でも同時に教える身として、彼の道を大人の都合で潰したくないとも考える。

 

「それにしても今回は随分と危ない橋を渡りましたね。塾長は既に、こいつが夜光信者って知ってたんやないんですか?知ってた上で野放しとは…‥結構危ないはんだんちゃいます?」

 

「彼が双角会(そうかくかい)の一員だというのは、早い段階でわかっていました。しかし、それ以上は判らなかったのです。それにしても危ない橋を言うなら、大友先生もじゃありませんか?あの紛い物の角行鬼が出た時点で介入すべきだったのでは?」

 

「そないな事言うてもですよ?ただのストーカー一人ならともかく、すぐ傍に超大物が二人おったんですよ。僕まだ、もう片方の足まで差し出したくはないですよ」

 

大友は「無理ですやん」と呟きながらも、そこには確かな自信があった。そう犠牲さえ覚悟すれば、彼らと戦えると案にそう告げている。ただ今はその時(・・・)では無いだけだと。

 

「それに予防策なら僕も打ちましたし。僕の作った錫杖、役に立ってたでしょ?前回の木刀は、まさかのオーバーヒートされたけど、あれは自信作やったんで!!これって結構僕のお蔭とちゃいます?」

 

「‥‥まあそれは置いておきましょう。それでは後処理はお願いしますね。私は陰陽庁の方に、色々手をまわしておきますので」

 

「…‥時間外手当ってつきますん?」

 

「あら、先ほども言ったでしょう?可愛い生徒の為なら、お金なんて問題ではない筈ですよ」

 

「‥‥‥うわぁ、このババアはよ逝かんかな…」

 

去りゆく三毛猫の式神に嫌味を言うが、すでに姿は何処にも見えない。一度深くため息を吐いた後、大友は後処理を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春虎達が転校してきて初めての日曜日。当初呪力を使い果たした四季は、一日丸々寝ていたが、凛と天馬のお蔭で講義に遅れることはなかった。宿題を終わらせた四季は、息抜きの為というか、最近できた友人が心配になったために様子を見に行こうと思ったのだ。

そして案の定、春虎は今までの無理がたたり何度か講義を休んだため、頭から煙を出しそうな勢いでノートを写している。

 

「大丈夫か?」

 

「なに何時もの事さ」

 

先に部屋にいた冬児に問う四季。問われた冬児は、面白そうな笑みを浮かべながら「前の学校でもこんな感じだったからな」と告げる。それを聞いた四季は何とも言えない表情をする。そして冬児から、事の顛末を聞く。

 

「結局、全ては闇の中って事か」

 

「ああ、呪術的なプロテクトが掛けられていて全く繋がりも背景もわからないらしい」

 

「あの角行鬼は?」

 

「遠坂の言う通り、市販の式符を改造しただけの物だったらしい」

 

全てはあの呪捜官の妄言だったと言う事だ。そんな中四季は、鬼の話をしている冬児の目線が僅かに鋭くなっている事に気がつく。

ふと、四季は隣の部屋がうるさい事に気がつく。そしてそれはノートを必死に写していた春虎も気になったのか、隣の部屋の文句を言いに行くと‥‥突然驚きの声が聞こえる。四季と冬児の二人は、顔を見合わせ春虎の後を追うように部屋から顔を出す。そこには何か言い争う春虎と夏目の姿。

 

「おい!此処は男子寮(・・・)だぞ!」

 

「僕だって男子だ!!」

 

「いや、まてまて!!お前には無理だって!!」

 

「なあ、何で春虎はあんなに拒絶してんだ?ってか、夏目って確かマンション暮らしじゃなかったか?」

 

「さあ、な。俺にも分らん」

 

言い争っていた二人。四季と冬児そしてコンは、野次馬の様に二人のやり取りを見ている。

 

「あれ?何やってるの、春虎君」

 

「天馬…っと倉橋。それに遠坂も」

 

そこへ天馬、倉橋、凛の三人が姿を見せる。三人の姿と四季のの姿を確認した夏目は、僅かに戸惑う春虎をしり目に前に出る。

 

「四季君。天馬君。倉橋さん。遠坂さん。この前は、本当にありがとう。迷惑を掛けて、すまなかった」

 

居るとは思っていなかった、夏目が突然現れ謝罪したのだ。四人は驚き動きが止まる。

 

「い、いいよ。気にしないで。僕自身‥‥そんなに役に立てなかったし」

 

「迷惑なんて思ってないわよ。こっちが首を突っ込んだわけだしね」

 

「同じく。友達だしな。これからも頼ってくれると助かる」

 

「本当にありがとう」

 

天馬は戸惑いの声を、凛と四季は気にするなと告げる。それでも夏目は、何度も裏目の無い態度で謝罪した。

 

「なんだか知らないけど、賑やかになりそうね」

 

「そうだな」

 

そんな中、春虎と京子が何処かへ行っている内に、凛はお詫びの代わりに今後も四季と自分と仲良くしていってほしいと告げる。それに対して夏目は、勿論と告げる。

 

「これからよろしく、四季君。お互いに大変かもしれないけど、互いに頑張ろう」

 

「ああ、こちっこそよろしく」

 

夏目と四季は握手を交わす。その後、なかなか帰って来ない二人に焦れたのか夏目が呼びに行くと告げてその場を離れる。

四季は、今後の塾生活が凛の言ったように賑やかになると感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――これは今から何十年も昔の一幕

美しい月が照らす中

 

「決意は変わらねえのか」

 

一人の槍兵が尋ねる。かつて二人はある人物に仕えていた。しかし、ある理由から今は

契約を一時破棄されており、完全にフリーな状態だ。そして主自身も、来たる時まで自由にしてくれて構わないと告げた。それが自分達二人の仕事(・・)なのだ。そして槍兵は、主のそう言う所を好いていた。従者の誓いを交わしながらも、友し戦友とし、家族とし接してくる彼が、槍兵は本心から好きだった。そしてそれは他のメンバー全員がそうであろう。

だからこそ、家に縛られる必要もないのだが

 

「ああ」

 

何の迷いなく躊躇いなく剣士は告げた。待ち続けると決めたのだと、そして自分が見守ると決めたのだと告げた。

 

「だからしばしの間、時が来るまでお別れだ」

 

「相変わらず、堅てぇ奴だな」

 

剣士の意思が変わらないことを悟った槍兵は「わあったよ」と告げ、剣士の前から姿を消す。

月と槍兵だけが、剣士の決意を見届けた。

 

―――――もう何十年も昔、一人の槍兵が記憶する。一人の相棒との一時期の別れの記憶。




どうでしたでしょうか?
良かったら、感想をお願いします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。