ご了承ください
楽しんでくれたら、嬉しいです!!
その日、
それはつまり、東京の霊相が乱れている証拠。そして数分後には、逢魔が時に入る。故にオペレーション・ルームのメンバーは静かに緊張の糸を張り付ける。
そんな中課長がモニターに映る一点に気がつく。
「うん?あの渋谷の霊災はどうなっている?未だに修祓されていないが、後回しになってるのか?」
「ああ、それはあれですよ。一昨日連絡のあった」
そこまで言われて課長は納得のいったという表情をする。
「試験に使うと言っていた疑似霊災か。わざわざ表示しているのか?」
「ええ、一応霊災には違いないので」
そこから話題は、陰陽塾へと移行する。現在、陰陽庁の中でも腕利きな面々のほとんどが、陰陽塾の卒業生なのだ。陰陽師に慣れる人間は限られるため、能力の高い人物は貴重なのだ。
「そういえば、あの噂って本当ですかね?何でもあの衛宮が通ってるって…」
「なんだ?お前は否定派か」
「課長は違うんですか?」
「そうでもないが‥‥人手不足だからな。たとえどんな噂を持とうが、実力があるなら欲しいさ。猫の手も借りたいほどだからな」
「なるほど」
緊張を張り詰めながらも、のどかに会話が出来たのはここまでだった。
最初は普段通りの光景。しかし何時もなら、ある程度したら止まる筈のコールが全く止まらない。
そこで課長は初めて異変に気がつく。
「…なんだ?どうした」
「それが‥‥れ、霊脈に乱れがあるそうです。それも尋常ではない程の」
「場所は?」
オペレーターの言葉に課長は緊張した声音で問う。問われたオペレーターは震えながら報告する。
「…‥と、都内全域‥‥‥‥少なくとも我々が感知できる範囲全ての霊脈で乱れが起きています」
報告を聞いた課長は即座に指示を出す。
「司令室には、私から連絡する。それと特視官に連絡…‥…‥独立官は何人残ってる?」
陰陽庁が誇る特機メンバーへの連絡を急がせる課長。問われたオペレーターが時計を見ながら告げる。
「本部には、
その直後、更なる変化が起きる。
「だ、第六小隊から連絡!!れ、霊災がフェーズ3へと移行とのこと」
「バカなッ!?早すぎる、さっきフェーズ2に入ったばかりじゃないのか!!」
その後も次々とフェーズ3に移行したという報告が入って来る。帰宅ラッシュの時間帯それm駅に近く、被害は想像を絶する。映し出されるモニターに映る水柱が。徐々に生物の形を作る。瞬間、報告というよりも悲鳴に近い声がモニターから発せられる。
現したのは、体長五メートル以上で、宙を躍動する姿は、鎖から解き放たれた野獣を連想させる。
フェーズ3。実体化した「魔」。陰陽法が定める移動型霊的災害通称「動的霊災」。
『動的霊災発生!水気を帯びているが、五気が偏在している模様ッ!!「タイプ・キマイラ」飛行型・
その報告に課長は厄介だとうなり、即座に待機部隊に全体を
それは二度目の経験。一度目は最悪の事態の前兆として現れた。そして今の状況酷似しすぎている。
「まるで‥‥‥
誰もが「霊災テロ」の名を頭に思い浮かべる。東京の『鬼門』と『裏鬼門』。陰陽においても重要視される部分で起きた霊災。そしてまだ一つ全く変化の起きていない場所がある。
「まさか…‥」
そこまで考え付き、課長は恐怖した様な声をこぼす。そしてその考えの正しさを裏付けるように
「渋谷にて、新たな霊災が発生ッ!!」
最後の霊災が発生した。
その男は、山手線の内回りの電車に乗車していた。公共機関にも関わらず、男は一つの座席を独占し、のけぞる様に座っている。既に帰宅ラッシュの時間帯にも関わらず、男の半径一メートルに全く人が寄り付かない。その場の空気を男は紛れもなく支配している。近づきたくないという一種の恐怖で。
二十歳前後で細身で銀髪。何よりその服装は、男の雰囲気を具現化したかのように攻撃的だ。周りの事などお構いなしに携帯用の音楽プレイヤーからは激しいビートがこぼれている。そして何より、世界の全てを嘲笑う様な冷笑が張り付けられている。
だが、何よりも目を引くのが、額に刻まれた刀傷のような「×」のタトゥーだ。
と、男の携帯に着信が響く。男は、顔を僅かにしかめながらも携帯を取る。
「…‥‥‥残業かよ」
携帯のディスプレイを見た男は、鋭く舌打ちをする。直後、電車が駅に停まる。すると男は、他の客を押しのけて悠々とホームから出ていく。
逢魔ヶ時の夕暮れが男の身に着けたサングラスに反射する。
一瞬、猛獣の様に荒々し炎を宿しつつ、戦士のような氷の瞳と表情が、男の顔を彩った。
そしてもう一人の男は、古びた協会に一人でいた。薄暗い中、聖母を祀る十字架の前で膝をつき、手にした十字架を額にかざしている。
四十手前だろうか、しかしその身体は年を感じさせない程に若い。服装は、祓魔官の服装と神父の服装を合したような独特のモノを身に着けている。
何処か現実離れした雰囲気を醸し出す、男のポケットから着信音が鳴る。薄暗い中、男はゆったりと立ちあがり、ポケットから携帯を取り出す。ディスプレイの光が照らす中で、男はディスプレイに映る文字を見て、ゆっくりと携帯をしまう。
「さて‥‥‥‥仕事と行こうかね」
万人が見て、
「そういえば‥‥‥お前の息子が、今東京に居るのだったな、衛宮士郎」
男は本当に
――――順調ね。この調子なら、大丈夫そうね。
渋谷の一角のオフィスビルの近くの小広場のような場所に、陰陽塾の一回生たちは集まり、その中央付近に発生している霊災一歩手前の瘴気を修祓している。
霊気の祓いを行っている凛は、僅かに気を緩めるが、即座に気を張り戻し集中する。一体何が起きるかわからない現場での少しの気の緩みは、間違いなく油断となり、自分だけではなく仲間も危険にさらす。
だからこそ、深呼吸をして再び集中し始める凛の耳に
「ちょっ!春虎、強気すぎるってお前!!もう少し弱めろって!!」
「わっ!春虎君、今度は弱すぎだよ!!上げて上げて!!」
「何やってんだよ、ツッチー!!今度は目測からずれてるって!!目の前の霊気に合わせろってッ!!」
「俺かっ!!?俺なのかっ!!?全部俺のせいなのかっ!!お前ら、自分のミスも俺のせいにしてないかっ!!」
ある意味緊張感のない声が届く。その声を聞き、凛はため息をこぼすのを我慢する。霊災の修祓において、凛たちは修祓を行う班と結界を貼り霊気が広がるのを抑える班の二つに分けた。凛、京子、冬児は前者で、四季、春虎、天馬は後者だ。凛たちは上手く連携がとれているが、四季たちはそうはいっていない。理由は先ほどから名前が挙がっている通り春虎が原因だ。学年でもトップクラスの霊力を誇る春虎だが、それを呪力に変換するとは苦手であり、宝の持ち腐れ状態なのだ。変換を任せてきた錫杖の持ち込みは禁止とされており、春虎は「刀印」を斬り必死に呪力を出しているのが、これが全くもって安定しない。その姿に試験を免除された夏目が、アワアワと心配そうに見ている。
「くっそーッ!!何で出来ねえんだッ!!」
「は、春虎君!!強い、強すぎるよ」
「わっ悪い!!」
イラつくように斬られた印により再び呪力が乱れる。天馬の指摘で慌てて抑えるが今度は弱すぎる。
「春虎‥‥‥弱くてもいいし強くてもいいから、頼むから安定させてくれ」
「悪い!!本当に悪い!!」
結界班を指揮する事となった四季が、疲れた表情と声で春虎に懇願する。春虎が呪力を乱す度に、四季が調整しているのだからそんな言葉が出ても無理はないだろう。
現状での不安要素は、春虎ともう一人。
――――まあ、こっちは大丈夫そうね。
凛が向ける視線の先には、若干苦しそうにしながらも己の役目を果たす冬児。霊災の被害者である彼にとっては、かなりの苦行の筈だが、それでも今の現状では大丈夫そうだ。
ふと視線を講師側に向ければ、夏目の必死にさに苦笑しながら、そろそろ止めようとしている。
その瞬間だった、僅か。本当に僅かに噴き出す霊気の質が変わる。
――――なにっ?
そこから蓋を開けた様に膨大な霊気が瘴気となって放出される。それを見て講師たちが慌ただしくなる。その中で凛たちは、少しでも霊気の勢いを弱めようとするが、全く効果がない。「マズイわね」と呟こうとした凛の耳に、京子の悲鳴が届く。
――――しまったッ!!
悲鳴のする方を見れば、冬児が歯を食いしばり
僅かな時間で起きた異常事態が、塾生たちの動揺をうみ。遂に結界を維持できなくなる。
瘴気が結界を突き破り、辺りに満ちようとし始めた瞬間
「聖域を満たせ、
四季が小さな緑色の宝石を投げ、魔術を行使する。瘴気に触れた緑の宝石は、緑の柱となり瘴気の暴走を止める。
「夏目ッ!!」
「ッ!!――――北斗、主たる命にて、陰なる邪気を払えッ!!」
四季の呼び声に驚いた夏目だが、一瞬にして己の役目を思い出し、己の式たる竜を呼び出す。呼び出された北斗は、まるで吸い寄せられるように緑の柱に高速でぶつかり、瘴気を散らす。
一瞬の沈黙のあと、誰もが無事だったことに安堵する者や尻餅を付く者など様々だ。
凛も一度深く息を吐く。無事だったと誰もが判断しようとしたが…‥
「ッ!!」
「まだだッ!!」
冬児が吠えると同時に四季も符を取り出し、コンもピクリと反応する。舞い降りてきたのは、容姿を変更しながらもまるで伝説に記されるような魔物の姿をした怪物。視てみれば、数多の気が己を主張しぶつかり合っている。
「フェーズ3…‥‥
一人の講師が信じられないといった様に呟く。誰もがその存在に畏怖し、動きが止まる。その中で一人の老講師が囮に成ろうとするよりも早く‥‥
「雷光よ、魔を滅せ
四季が黄色の宝石を投げ、魔術を行使する。放たれた雷光が、鵺に直撃し悲鳴と怒りの声を上げる。
「逃げろッ!!」
誰もがその威力と事態に唖然とする中、四季が声を張り上げる。その声に発せられて、全員が動き出す。それを視界に納めながら、四季は目の前の脅威を視る。
「こいつ‥‥」
それに気がついた四季。そして春虎の命令すら無視して、鵺を見ていたコンも警戒する様に呟く。
「あやつ…手負いです」
「恐れている?」
けん制のつもり放った魔術に対するあの反応。明らかに大きなダメージを負っていた証拠。
一体誰に?と四季の頭に疑問が過った瞬間、四季の視界に異端な霊気が映ると同時、鵺が何かを威嚇する様に吠える。
瞬間、全ての視線と意識がその男に注がれる。
「なんで、ガキどもが俺の得物を囲んでやがる?おまけになんだ、マジ物の竜までいるじゃねえか」
その存在を知る者は、先ほどとは別の意味で動きが止まる。知らない者も、その発せられる霊気を視て動きが止まる。
「オ、『
その者の通り名といえる名を講師の一人が告げる。
「おい、俺をその名前で呼ぶんじゃねえよ、ジジイ。俺の名前は
その名に反応し鏡は、イラつくように告げる。瞬間、鵺が鏡に向かって明確な敵意と攻撃を見せる。しかし、肝心な鏡は全く動じない。むしろ蚊をウザがる様な表情を見せ、その手を動かそうとした刹那
「やれやれ、慢心とは感心せんな鏡よ」
新たな声が届くと同時に、鵺に幾重の剣が突き刺さり、その衝撃で吹き飛ぶ。
「…‥言峰さん」
吹き飛ばされた鵺の存在に全く気にせず、さも当然のように受け入れ声のする方を振り向く。
「ふむ。全員無事かね?」
辺りに倒れる生徒達を見渡しながら、言峰と呼ばれた男は確認する様に老講師に尋ねる。
神父の服装と祓魔官の服装を合した独特な服装をみて、講師は呟く。
「『
「あまり、その名は好かんのだが‥‥‥その通り、『
鏡のように威圧する訳でもなく、まるで友達をご飯に誘う様に淡々と男
いかがでしたでしょうか?
良かったら、感想をお願いします
少し早いですが、今年の更新はこれで最後となります
来年も東京レイヴンズ~英霊を従えし陰陽師~をよろしくお願いします