東京レイヴンズ~英霊を従えし陰陽師~   作:スペル

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お持たせして申し訳ありません
色々と大学のテストやら身内の不幸やらで遅くなりました

事態の繋ぎの話なので全然物語は動きませんが、それでも約一名のキャラを地味ながら目立たせれるように頑張りました
楽しんでくれたらうれしいです!!


第十二夜 急転

言峰が差し出した手を老講師はゆっくりと取り立ち上がる。そして時を同じくして、吹き飛ばされた鵺が、咆哮を上げながらこちらに迫ってくる。

 

「い、いけない!!」

 

迫る脅威に急いで生徒たちの安全を確保しようと駆けだそうとする老講師を言峰が止める。

 

「やめたまえ。巻き添えを食らうぞ」

 

「なにを………」

 

生徒たちが危険だ!!そう叫ぼうとした老講師の言葉を遮り

 

「言峰さん。こいつは俺の獲物だっ!たとえあんたでも邪魔をするなら、容赦しねぇ」

 

その場を支配するような霊圧とともに鏡の言葉が場を掌握する。その圧に鵺の動きまで停止する。

 

「無論そのつもりだ。まさか『十二神将』たる君が、私ごときに助けを斯うはずなどないのだからな」

 

神経を逆なでるするような挑発と取れる言葉に、鏡の纏う雰囲気がより凶暴性を増す。その霊気に当てられ、何人かの生徒は尻餅をつき、体の震えが極限に達する。それは最も近くにいた四季も例外なく体を震わせ、無意識に後ずさりする。だが、特にそれが顕著なのは冬児だ。何かにこらえるように頻りにヘアバンドを抑えている。

そんな中、己が畏縮させられたのがプライドに触ったのか、今までとは違う明確な「敵意」をもって鵺が、鏡に向かって吠えるが……

 

「うるせぇ、目障りだ。黙れ(・・)

 

当の本人である鏡は、まるで眼中にないと言わんばかりに視界にすら収めない。一言。たった一言のつぶやき。されど、恐ろしいほどにその場にいた全員の体の芯に響く。そして言葉の通り、鵺は強制的に黙らされた。その現象に誰もが驚き、その中で夏目や凛を含む数名が「甲種言霊」であると察する。人の動きを強制的に支配するその術を霊災相手に発動させる。その事実に誰もが鏡が口先だけの者でないと察する。

 

――――っていうか、フェイズ3の霊災が眼中にないって、どんだけ化け物なのよ!!むしろ今彼の眼中にあるのは、あの言峰っていう男だけ…味方のはずでしょうに

 

凛は騒然となる事態の中で、その思考を働かせ現状を理解する。ゆえに、現状の危険度をいち早く理解する。

 

――――不安要素が多すぎる。早く逃げないと…

 

頭では理解している。しかし体が震え全く動かない。理性に反して本能が体を縛る。動け動けとうなるが、全く動かない。

そんな誰もが震え硬直する中で、声を封じられた鵺が鏡に向かって突進する。獣のようなしなやかさで、敵意と怒りを込めた攻撃を放とうとするが、鏡の放ったあまりにも短い種子(しゅじ)に阻まれ、その姿が激しいラグを起こし吹き飛ぶ。一瞬、上空で待機していた北斗が攻撃する動作を見せるが、思いとどまったように距離を取る。明らかに鵺ではなく鏡を言峰を警戒している。

 

「鏡よ。やはり手を貸そうか?獲物をいたぶると、思わぬ反撃を食らうぞ」

 

「チィ。手持ちが少ないんでね、少しめんどくさいんすっよ」

 

「そうか。ならば尚更、早々に決着をつけたまえ。それが出来ない君ではないだろう」

 

場違いなほど二人は平然とそれでいて日常会話のように乙種を交差させる。しかし、二人の顔を見れば鏡は苦虫を潰した顔を言峰は愉しそうな顔をしている。どちらが優勢かなど聞くまでもない。

しばし視線を交差させていた鏡が、視線をそらし鵺に視線を向ける。

 

「ノウマク・サラバ・タタギャテイビャク・サラバ―――――」

 

独特の抑揚をつけ鏡の紡がれるのは火界咒(かかいしゅ)。呪力によって生まれた炎は、もはや本物の熱風と大差ない。放たれた炎は、空を走る鵺を容易に炎で包み込む。火界咒に飲まれた鵺は、重力に従うように落下する。――――落下する真下には、ほかの塾生を避難させようとしていた京子がいた。

 

「京子ッ!!」

 

「倉橋さんッ!!」

 

叫んだのはいったい誰だったか。その叫び声で京子は自身に迫る危険に気が付くが、わずかに遅い。京子は二体の護法式を展開し衝撃に耐えようとするが…瞬間、巨大な剣ともいえる二刀が、鵺をビルに刺しつける。

 

「やれやれ、大丈夫かね」

 

唖然とした表情の京子の隣に、先ほどまで老講師の近くにいたはずの言峰の姿。京子を労わるように手を差し出し、その場から退避させる。それだけで放たれた刃が言峰の物であると理解する。

 

「倉橋!!?ど、独立官!民間人の安全に考慮しろ!!」

 

少し遅れ、老講師が鏡に向かって怒鳴る。

 

「倉橋~~~っ?」

 

老講師の言葉の姓の部分と先ほどの言峰の動きを見て、漸く鏡は周りにいる塾生たちを眼中に収める。

 

「倉橋ってことは……陰陽塾!!つまりそこのアマが局長の娘か。………あ?待てよ。確か今年の陰陽塾と言ったら…この場所に本物の竜がいることだって説明が付きやがる」

 

――――まずい!!

 

春虎が四季が凛が鏡の言わんとしていることを察する。そして鏡は面白いおもちゃを見つけるように塾生たちを見渡しながら告げる。

 

「つまりいるんだな此処にッ!嘘かホントか知らねぇが、例の夜行の転生者(・・・・・・)って言われている、土御門のガキがよ!!」

 

辺りを見渡した鏡が、上空にいる北斗と霊的につながる人物を見つけるのは簡単。ゆえに鏡は迷うことなく夏目の前に立った。止めようとした老講師は、鏡の言霊によって動きを止められている。

 

「へぇ…思ったよりもいい子ちゃんなガキじゃねぇか。お前だろ、土御門?」

 

「そ、…そう…です」

 

「名前は?」

 

「つ、土御門夏目」

 

「おいおい、そんなに脅えるなよ。別に食おうってわけじゃねえんだぜ。それに聞いたぜ?お前、大連時のゴスロリ娘を、負かしたそうじゃねぇか。あんなガキでも『十二神将』の一人だ。そいつを負かしたんだから、もちっと胸張ってもいいんじゃねぁか?少なくとも、俺はそっちのほうが好きだぜ?」

 

鏡はケラケラと笑いながらさらに続ける。

 

「なんせ―――――そういった粋がったガキの方が、色々と『やりがい(・・・・)』があるからな。テメェで手前を賢いと思ってるやつの方が、からかいがいもやりがいもある。テメェで手前を強いと思ってる間抜けの方が、潰しがいがある。土御門の跡取りともなりゃ、なおさらだ」

 

鏡の言葉に夏目は唇をかむ。既にこの場は鏡が支配している。ゆえにこの場で彼に意見を言えるのは

 

「未来ある若者を脅すのは関心せんな。そもそも我々の仕事はまだ終わっていない。ここでこれ以上時間を食えば、品川の霊災もこちら側に来てしまうぞ。そうなってしまえば、いささか面倒ではないかね?」

 

同じ化け物である言峰しかいない。言峰の言葉に鏡は舌打ちをこぼし、夏目から視線を外す。

 

「さて鏡よ。あれは私が滅しても構わんかね?ああ、もちろん手柄は君に挙げるさ。陰陽塾の生徒たちを守り切り、見事滅したと上に報告しておくさ。だから、構わんだろ(・・・・・)?」

 

まるで聞き分けのない子供に親が折り合いをつけ宥めるように、言峰は優しくつぶやく。

対する鏡は、一瞬怒りで顔を染めるが、即座に自重する。そうなればどうなるかは、既に経験積みだから。

 

「それとも何かね?未来ある雛闇烏である、そこの少年に修祓させる気かね?確かに、本物の竜を使えば鵺如きには遅れはとるまい。そもそもの格が違うのだからな」

 

言峰の言葉に反応したのは鏡ではなく春虎たちである。確かに言峰の言う通り格が違う。鵺如き、北斗の本領を発揮すれば敵ではないだろう。しかし北斗は式神であり、その実力は夏目に依存する。夏目は確かに強いがあくまで「優等生」でしかない。ゆえに満足に北斗を使役できず、ましてや鵺を修祓する実力はない。

 

その言葉が夏目の限界だったのだろう。

 

「あ、あなたはそれでも祓魔官ですか?」

 

「あ?」

 

突然意識外からの言葉に、再び鏡の視線が夏目に向けられ、言峰は面白そうだと笑みを浮かべる。

 

「霊災はおもちゃではありません!それもフェイズ3ですよ?こんな真似をするよりも前に、まずはきっちりと修祓すべきだ!!」

 

面罵(めんば)に近い言葉に鏡の瞳がスゥと細められる。そしてその腕が夏目に伸びそうとした瞬間、二人のわずかな足元の空間に刃が差し込まれる。

 

「流石にそれは見逃せんな」

 

放ったのは言峰。しかし彼はそれだけをするだけで、夏目を助ける素振りを見せない。むしろにこの状況を愉しんでいるようにも見える。言峰に乗せられている感じがするが、今の言葉に言い返さないのは自分らしくないと鏡は、薄く笑みを施しながら夏目に告げる。

 

「いかにも優等生らしいお言葉だ。頑張ったなぁ、夏目クン。名門の優等生らしく、正義と勇気を振り絞りましたってか?―――――いいね。実にいいぜ。そういうのは『やり甲斐』がある」

 

「いい加減にしやがれ、バッテン野郎(・・・・・・)

 

その罵倒に震え上がったのは、当人ではなく周りの人間だった。瞬間、鏡の眼光が罵倒した春虎に向けられる。その事態に夏目は「バ、バカ」と春虎を叱るが、当の二人は夏目の言葉など聞いていない。

その事態を一歩引いてみていた言峰は、面白そうだといわんばかりに笑みを深くする。

 

――――今わかった!!あいつ絶対に性格悪い!!

 

近くでその笑みを見た凛は悪態をつく。が何かをしようにも自分に今できることは何もない。優秀であるがゆえにたどり着く無情な真実に凛は唇をかむ。

 

「テメェは?」

 

「土御門春虎!分家の息子だ!」

 

「分家だぁ~」

 

恐怖よりも身を焦がすような怒りが春虎の恐怖心を焼き尽くし、目の前の存在に吠える。鏡は春虎を値踏みするような視線を向ける。そしてその中で、全く別の何かを感じ取る。目の前の春虎でない、同じくらい弱者だが、潜む物は自分が全く知らないもの。どこだと、鏡は瞳だけを動かしそれを探る。

しかし以外にもその正体に先に気が付いていたのは、全体の状態を見ていた言峰だった。

言峰の視線は、四季に注がれている。今も体を震わしながらも、息を整え呼吸を安定させ、ポケットにから取り出したであろう宝石を手に持っている。その姿が、言峰にはある人物と被る。

 

――――そうか、あの少年が…

 

これは傍観に徹するにはあまりにも状況が美味しすぎる(・・・・・・)。土御門夜行の転生者と言われる存在にあの男の息子(・・・・・・)。しかも今ならば、監視の目もない。鏡は厄介だが、厄介なだけで壁ではない。ゆえに、言峰は行動を起こすことを決める。

そう決めた言峰の顔に刻まれた笑みを、凛は見た。だからこそ、凛は即座にその危険度を理解する。

 

「し…」

 

凛が四季に向かって叫ぼうとした刹那、言峰と鏡の二人が別々に動き出そうとしたが………その二人の動きを止めるように事態が急転した。

それに気が付いたのは、当然のように鏡と言峰。そして扱う術がゆえに(・・・・・・・)四季がわずかに遅れた反応する。

 

「―――なに?」

 

「これは――――?」

 

「ッ!!」

 

大地が沸騰し、見知らぬ札(・・・・・)が大地の沸騰に飲み込まれた。

 

 

 




如何でしたでしょうか?
いよいよ次回より、本格的に事件が動きます
上手く描けるように頑張ります

存在感出たかな……どこぞの神父さん?
あと、文字変換のアドバイスを沢山いただき、本当にありがとうございます!!

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