東京レイヴンズ~英霊を従えし陰陽師~   作:スペル

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口調が最近こんがらがってき始めてます
その為違和感とはあったらすぐに教えてください

本編は大舞台に移動する直前のお話となってます・・・・最近四季に全然スポット当てれてない気がする

楽しんでもらえたら、嬉しいです


第十五夜 それぞれの役割

霊災の影響だろうか、いつもは賑やかな渋谷の街が重い静けさに包まれている。人がいない訳ではないが、歩く人の顔には僅かに恐怖が浮かんでいる。

その僅かな人ごみの中を一人の少年冬児が歩いている。足取りはおぼつかず、その顔は病人の様に真っ青であり、まるで幽鬼のようだ。

誰もが触れるのを恐れ、距離を取る中で――――

 

「おっと、すまない」

 

不意に冬児の体に軽い衝撃を感じる。下に向けていた視線を上に向ければ、白い髪に赤い外套を纏う男が目の前にいる。

普段ならば、詫びの一言でもいい頭を下げるのだろうが、生憎今はそのような気にもなれない。

 

「怪我はなさそうだな。すまないな。だがこちらにも落ち度はある。あまり下を向きながら歩くのは危険だぞ」

 

僅かな皮肉を混ぜながらも自分を気遣う男。今はその気遣いが図々しく、舌打ちをこぼしながら早々に離れるつもりだったが――――

 

「まあ、少し待ちたまえ」

 

「ッ!??」

 

離れようとする自分の肩を男がつかみ、動きを止める。その動作がよりウザったく振り払おうとするが、男の手はビクともしない。

あり得ない(・・・・・)。今、自分は確かに力を使った(・・・・・)のだ。それなのにビクともしない。

 

「呑まれかけているが…ふむ、どうやら、いらぬ心配だったかもしれんな」

 

「あんた…何を言って―――」

 

独り言のように呟かれた言葉。その言葉を聞いて冬児は、胸の中に湧き上がったその感情を認識する。

目の前に立っているのは、自分の中で封じられているモノよりも明らかに高位のナニカだと。

僅かな恐怖が冬児の足を一歩後退させる。しかし、目の前の存在は害意を見せない様でありながら皮肉気に笑みを浮かべる。

 

「君の事は()に任せて大丈夫そうだ。幸運に思いたまえ、そしてそれを手放すな。大丈夫だ、君は一人ではない」

 

その言葉と共に冬児の意識が沈んでいく。最後に見た光景は、皮肉気な顔をしながらも、どこか安堵の表情を浮かべている男の顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

力なく倒れこむ冬児を男は容易く受け止める。

 

「さて、場所はやはり、あそこだろうな」

 

冬児を抱きかかえた男は、僅かに膝を落とす。そして地面を蹴ろうとした瞬間――――

 

「全く、変わらずのお人よしだな、お前は」

 

短い王冠の様な金髪に二メートルになろうというほどの巨漢の男が背に現れる。

 

「やれやれ、いきなり背に立たないでもらいたいものだ」

 

「それは、すまないな。最近、いきなり背に立たれた事があってな」

 

深い溜息を吐く男に、金髪の男は面白そうに返す。その言葉に男は「全く…」と先ほどとは違うため息を吐く。

 

「それにしてもよく気が付いたものだな。念のため(・・・・)にと結界を張っていたのだが」

 

「…あまり見くびるなよ」

 

称賛に近い言葉に、金髪の男の声音が僅かに落ち、場に重圧が圧し掛かる。両者無言の時間が生まれるが、先に男の方が息を吐き、言葉を紡ぐ。

 

「無礼、すまなかった。少々口が軽かったようだ」

 

先ほどの皮肉さが嘘の様に真っすぐとした表情と言葉で頭を下げる。すると、圧が消える。金髪の男もわかればいいといった表情を見せている。

 

「皮肉も大概にしておけ、いらん怒りを買うぞ」

 

「ああ、今しがた身に染みたところだ。以後注意するとするさ」

 

先ほどとは打って変わっての世間話。先ほどの緊張感がまるでない。

 

「それはそうと、君がいるなら都合がいい。()の案内は任せても構わないかね」

 

「まあ、それぐらいならな」

 

「そうか…では、また近いうちに(・・・・・)

 

それだけ言って、男は冬児を背負い、姿を消した。それを確認した金髪の男は、一度だけ息を吐き己の役目を果たさんと動く。

「本来なら俺の役回りじゃないんだがな」と、どこの誰に言ったかはわからない不満の言葉。一瞬、金髪の男は星がすまなそうに面白そうに笑った様な気がした。

 

 

 

 

 

 

冬児は気が付けば先の試験会場にいた。

 

「どういうことだ…」

 

自分の最後の記憶は、確か妙な男に会ってからの記憶がない。意識がなかったというよりも完全に意識を失っていた気さえする。

混乱している冬児の聴覚に――――

 

「冬児!!」

 

聞き間違えるはずのない悪友の声が届く。瞬間、冬児の中の何かが疼いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏目と四季が案内されたのは本部ではなく目黒支部の方だった。案内されるままに移動する四人。ピリピリとした緊張感に包まれているが、パニックになっている者は一人もいない。その事が彼らが歴戦の猛者である証であり、同時に頼もしさも感じる。

しかし、今回の件には魔術が関わっている。そう考えると、その状況は少し不気味だった。

 

――――末端には情報を教えてないのかしら

 

場の様子を見定めながら凛はそう思考する。僅かに視線を逸らせば、緊張した趣きの夏目と京子の姿。そして表面上はいつも通りの四季の姿。しかし、その手はきつく握られており、その心情は理解しやすい。

無理もない。なぜなら、彼自身がこの作戦の核たる存在ともいえるのだから。その重圧は並ではないだろう。

そうこうしてる間に、四人は指定された部屋に入る。そこは対策本部といった場所ではなく質素な待機所のような場所だ。ある意味肩を透かされた四人は、少し脱力するが、そこにいる人たちを見て夏目と京子は「あっ」という声をこぼし、四季は僅かに眉をしかめ、凛は露骨に「げっ」といった表情を見せる。

 

その場にいた二人は、四人の入室を確認すると席に座るように促す。

 

「かしこまる必要はないぞ。リラックスしてもらって構わない。先ほどは、ドタバタして自己紹介が遅れたが、小暮禅次郎だ。初めまして。そしてこちらが―――」

 

「言峰綺礼だ。君たちの護衛を任された」

 

小暮と言峰の二人が自己紹介を述べる。そのあと、軽い世間話の様に小暮が夏目や四季たちに話しかける。

その中で夏目が、自分たちに貴方たちの様な実力者が護衛任務で、作戦は大丈夫かとこぼすが、小暮と言峰は笑ってそれを否定する。

自分たちがいなければ、何もできないほど陰陽庁は脆くないと言わんばかりだ。

 

「それに今回は魔術という我々にとっても未知なる部分がある。それに唯一対抗できる者を護るのは当然の事だ」

 

言峰の言葉に視線が四季へと集まる。

 

「ああ、そうだな。不甲斐ない、俺たちの代わりに君の様な未成年を前線に立たせることになって、本当に申し訳ない!!君の身の安全は、俺や言峰さんが責任をもって護るから安心してくれ!!…そして決断してくれて本当にありがとう。陰陽庁を代表して、感謝を伝えるよ」

 

言峰の言葉を聞き、小暮が頭を下げる。そもそも一番最初にしなければならなかったはずだが、言峰がいきなり頭を下げられても返って緊張を促すだけだと言われ、タイミングを計っていたのだ。

突然、頭を下げられ困惑する四季はどうにか言葉をひねり出す。

その後、鏡の仕出かしたことに対する謝罪もすみ、先ほどの緊張が僅かに緩められていく。

その中で会話が進む。

 

「あっ!そいえば、君らの担任教師って陣なんだって?どう、あいつ?真面目に教師してる?」

 

ふと出た名前を理解するのに全員が時間を要した。「陣」その名が自分たちの担任である大友の名であることにいち早く気が付いたのは、凛だった。

 

「失礼ですが、大友先生とお知り合いで?」

 

「知り合いも何も、俺と陣は陰陽塾の同期でな」

 

凛の質問に小暮は種を明かすマジシャンの様に面白そうな笑みを浮かべんがら答える。その言葉に京子が驚きの声を上げる。その反応が意外だったのか、小暮は陰陽庁には多くの塾生の卒業生がいることを告げる。

 

「ちなみに、君らって何期生?」

 

「よ、四七期生です…」

 

「うげ。もうそんなにたってるのか…なんかショックだな。自分が年取ったって認識されられるよ」

 

「ふむ。小暮よ、君は十分若いではないか。そういうセリフを吐くには、数十年速いな」

 

何処か精神的なショックを受けている小暮に言峰の言葉が鋭く突き刺さる。暗に、私の年齢を知っているであろう。という意味が込められたセリフに、小暮は分が悪いと察して、急いで話題を変える。

 

「あっ!俺や陣は三六期でさ。『三六(さぶろく)四羽烏(よんばがらす)』っていう名前で呼ばれてたんだ。最も悪名の方で、塾長の頭痛の種だったけど」

 

「ふむ。その名前は当時の陰陽庁にまで轟いていな」

 

余りにも意外な事実に誰もが開いた口が塞がらない。しかし、そこで興味が勝ったのか、かなり緊張もほぐれた京子が他の二人について聞くが――――

 

「あ~うん…まあ、大したことじゃ、ないんだけどな」

 

明らかにしまったという表情で小暮が言葉に詰まる。そんな態度に誰もがこれ以上踏み込んではいけないと悟る。

と、その時部屋の扉がノックされ、一人の男が入ってくる。長髪の穏やかそうな青年だ。しかし双眸は鋭い。何より特徴的なのは、髪の一部が赤い朱色に染まっている。

 

「言峰祓魔官。小暮独立祓魔官。お待たせしました」

 

「お!来たな」

 

話題がそれ、注目が青年に向いたことに安どの表情を浮かべながら小暮は入ってきた青年を招き入れる。

 

「紹介しよう。陰陽庁の犯罪捜査課の比良田篤祢(ひらたあつね)だ。今回は、俺や言峰さんそして比良田を含めた三人が同行する。理由は……まあ、言わなくてもわかるよな」

 

呪捜官の存在に誰もが体のこわばりを感じる。あの事件もそうだが、霊災の修祓に出てくる理由など一つしかない。

全員の反応を見た比良田は、夏目の前に歩み寄ると――――

 

「初めまして、土御門夏目さん。呪捜官の比良田と申します。こういった事は、あまり言うべきではないのでしょうが、私はあなたの事情を知っています。特に、去年は私たちの同僚がとんだご不名誉な真似をしてしまい、誠に申し訳ありません。同じ、呪捜官として深くお詫びします」

 

そう言って学生に過ぎない夏目に深く頭を下げる。その事に誰もが驚きを見せる。

 

「すぐにまた私たちを信用しろと言うのは、無理な話かもしれません。しかしあなたの抱えている問題は、一人では決して解決できるレベルを超えています。すぐにとは言いません。ですが、あなたの問題を解決するために、私たちが力を添えることをどうか受け入れてください。私は(・・)あなたの味方ですから」

 

初対面でいきなりの発言に誰もが言葉を発せない。唯一渦中の夏目だけが、どうにか言葉をひねり出した。

比良田の行為を小暮が呆れながら窘めている。

 

「全くお前は呪捜官には珍しいタイプだよな。天海の爺さんといい陣といい、あそこのメンバーは大抵がひねくれているんだが」

 

小暮の言葉と共に話題が切れる。そして小暮が全員を見渡し「座ってくれ」と告げる。たったそれだけで空気が変わる。

誰もが言われたとおりに席に着く。ただ言峰だけは小暮の背に立っている。

四季もまた言われた通り、夏目の隣に腰を下ろす。

すると

 

――――うん?

 

一瞬、どす黒い感情が自分に向けられたように感じる。そこを辿れば、そこには先ほど以上に鋭い双眸に怒りの色を乗せた比良田の姿があったが、それもほんの一瞬の事で、すぐにその色は消え失せ、先ほどの比良田の姿に戻っている。

 

その姿に四季は、自分がどういった存在だったかを再確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その光景を彼は遥か上空の離れた場所から眺めている。

 

「随分と青春をしているな。見ているこっちが恥ずかしくなる程だな、あれは」

 

皮肉気に呟きながらもその表情は、優しげでとても嬉しいそうだ。その嬉しさは、同時にあるいつかの光景(・・・・・・)を男に思い出させる。

 

「さて、一方の荷は下りた。ならば、もう一方の荷も下すとするか」

 

その言葉と共に先ほどの優し気な表情は消えうせ、鋭い鷹が顔を出す。男が見つめるはるか先に一匹の獣の姿。

 

「心配いらん。殺しはしない。それは私の役目ではない。だが―――少々お前は暴れすぎだ」

 

そう告げる男の手には、いつの間にか夜を切り取ったような黒塗りの弓が握られていた。




如何でしたでしょうか?
二人の男の会話に違和感とか無かったでしょうか

いよいよ次回から本格的な修祓の場面となります
上手く描けるように頑張ります

それにしても設定のためとはいえゴロが悪くなったな・・・・

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