東京レイヴンズ~英霊を従えし陰陽師~   作:スペル

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お待たせしました!!
八月中に一話更新したかったのですが、間に合いませんでした、すみません

そしていよいよ、衛宮が動きます
楽しんでもらえたら、嬉しいです!!


第十六夜 夜の影に当たる日

神宮外苑。今回祓魔局が動的霊災である鵺の修祓に選んだ場所であり、その中でも特に広い軟式のグラウンド。とにかくだだっ広いその場所に、多くの闇鴉(レイヴンズ)たちが集まっている。

修祓のためだけではなく、逃亡防止用の結界に加え二機のヘリなどその他もろもろの逃走された場合に必要なものが揃っている。

そしてそのグラウンドの中心の上空50メートルの夜空を、金色の竜で夏目の使役式である北斗が旋回している。もう何十分も同じ場所を旋回するだけであり、北斗自身だいぶイラつきがたまっており、今にもどこかへ飛び出しそうな顔をしている。

そんな北斗を夏目は我慢強く使役し続けている。その近くには、四季や凛や京子そして小暮に言峰に比良多が揃っている。

 

「無理はするよなよ、夏目君。君に倒れられたら、元も子もないからな」

 

今までにない程の北斗の使役による疲労。それを察知した木暮が夏目に声をかける。木暮の言葉に夏目は「はい」と答えるが、視線は決して北斗からそらさない。そんな夏目達の周りには祓魔官たちが北斗の霊気を霊脈に流すための呪文を永遠と口に出している。そのほかの祓魔官たちは、ただ無言で夏目を見ている。

 

――――ある意味、皮肉な光景ね

 

集まる視線を見据えながら凛は、今の状態をそう評す。今の陰陽界は、表向きに言えば土御門家を切り捨てているのだ。この状態を生み出したのが、土御門家なのだから仕方はないのだが、それを祓うために切り捨てたはずの土御門の力を借りている。そして技術だけではなく家自体にも協力を仰ぐ。一体どんな思いが渦巻いているのであろう。そしてそれを一心に受けねばならない重圧はどれほどだろうと、ふと考えてしまう。

 

――――ホントよくやるわ

 

ただひたすらに北斗の方を見る夏目の姿に凛は内心で感嘆の言葉を告げる。そして今度は少し悲しそうな顔をして、夏目の少し後ろにいる四季に視線を向ける。此処にいる人間の全てが四季の正体については知らされている。だからこそ思う。今四季はどんな思いで、その視線を受け止めているのだろうか。全く身に覚えのないご先祖の仕出かしたとされる責を背負わされ、その技術を継承する。そして今、四季は彼らの渦中に自分の意思で立った。

周りの祓魔官たちは、どんな思いをしているのか。きっと心情は複雑を超えているだろう。自分たちが嫌悪に近い感情で日陰に追いやった存在に縋らねば、事態を収拾できない事に、そして自分たちが縋ったのが、まだ幼い雛鳥という事実。

風評被害はある意味で呪いに近い。それも陰陽界のそれは、もはや呪いと言っても過言ではないだろうと、凛は考える。

だからこそ、今の状況が皮肉だと告げる。共に陰陽界から日陰者とされた家の力に縋るしかできない状況。

 

――――勝手と言えばそれだけなんでしょうけど…

 

様々な考えが頭をよぎる。しかし、時間は一刻一刻と過ぎ去ってゆき。その時が来る。

 

『動的霊災発見!北東の鬼門より、鵺が接近!』

 

拡声器からその報が告げられると同時、場の緊張感が今まで以上に張り詰められる。

 

「――――来たか」

 

木暮が言峰が静かに己の武器に手をかける。そして上空の北斗も気配を感じたのか、北東の方向をにらんでいる。

 

――――来るッ!!

 

陰陽師としての直観が、夏目と四季にそのその存在を悟らせる。風に乗り、咆哮が聞こえてくる。そしてその歪なシルエットが視認できる距離にまでくる。

 

『目標視認!接近まで、およそ二分!』

 

「迎撃用意」

 

その言葉と共に祓魔官たちが慌ただしく動きがはじめ、矢継ぎ早に指示が飛び交う。その中で木暮と言峰が夏目と四季に向き合う。

 

「よし、夏目君。いよいよここからが本番だ。先ほど指示したとおりに竜を操ってくれ。そして――――」

 

「覚悟はいいか。衛宮四季よ」

 

木暮と言峰の言葉に二人の表情が否応なしに強張る。その中で言峰が何かを告げようとした瞬間、再び拡声器から――――

 

『第二の動的霊災を確認!南西の裏鬼門より接近!』

 

新たな霊災を発見したと報が響く。その報に祓魔官たちが今以上にざわつきを見せる。そしてそのざわつきは未だに幼い四季たちに重い焦りを生ませるが――――

 

『これより北東の鵺を「キマイラ01」南西の鵺を「キマイラ02」と呼称。そしてこれより当作戦は「プランC」に移行する。繰り返す、「プランC」だ!キマイラ02接近まで、およそ六分』

 

即座に持ち直すのがプロの実力。ざわつきは消え、各々各自が役目を果たさんと動く。その中で木暮がプランCの説明を夏目達に告げる。

 

「要は二つ同時に修祓するってだけの話なんだが――――」

 

「タイミングがシビアになるだけならばよかったのだが。……衛宮四季よ、いけるか?」

 

木暮の説明を補う形で言峰が四季に問う。そう今回の作戦には、四季の魔術の力が不可欠だ。そしてそれを理解できるのは、四季以外にいない。二つ同時にすることの難しさも危険も向こうは把握せずに勝手に決めたのだ。その事に夏目が驚き、京子と凛が怒りを覚える。

しかし四季は、一度つばを飲み込むと―――

 

「いけます」

 

断言して告げる。その答えが満足したのか言峰は「ふむ。ならばいい」と笑みを浮かべ木暮は「俺たちも全力でフォローするさ」と肩を押す。同時に四季たちは場所を譲るように少し離れた噴水付近まで下がる。そしてそれに連動する様に先ほど四季たちがいた場所に三人の人影が現れる。

一人は男、一人は女、そして最後の一人は『鬼喰い(オーガ・イーター)』の鏡だ。彼らが其処に揃うと同時―――

 

「やはり進行が速いな」

 

「ええ、かなり手が加えられていると考えるべきでしょう」

 

双頭の竜。それも西洋版のドラゴンの形で鵺の一体がその場に現れる。その姿に京子はふざけるなと言わんばかりの声を上げ、四季と凛はあふれ出る冷や汗を止めれない。動きが止まる四季たちをしり目に小暮たちは事態の深刻さに舌を打つ。

 

「まずいな」

 

「ええ、いつフェイズ4――――百鬼夜行に変わってもおかしくありません」

 

「ああだが、間に合ったというべきでもあるな」

 

言峰がそう言った瞬間、稼働護摩壇が一斉に点火。焦熱の炎が燃え上がると同時に

 

――――ノウマク・サラバ・タタギャテイビャク・サラバ・ボッケイビャク・サラバダ

 

祓魔官たちが一斉に火界咒を唱える。次々に炎の弾丸が鵺へと放たれる。着弾した火界咒が鵺に迫るが、一歩手前で見えない壁のようなものに阻まれる。その攻撃に鵺が威嚇するように瘴気を纏った咆哮を上げるが、鵺に最も近くにいた鏡が術をもって散らす。全体に散らばる瘴気は焼かれ燃え尽きるが、範囲が広く夏目や四季のいた場所にすら届くが、言峰と小暮が刹那の時間で祓う。

その中で鵺に向かい北斗が威嚇の声を上げる。それを見た夏目が「バカ」とたしなめるが、止まる気配を見せない。その光景に言峰と木暮が動かんとするが、それよりも早く呪具である独鈷杵(とつこしょ)が鵺に迫る。呪術では今の鵺にダメージを与えられないが、込められた呪力が鵺をグラウンドへと押し返す。その光景に「流石、宮地さん」と小暮がこぼす。その余りの技術に夏目や京子に凛は驚いて何も言えない。

しかしその中で四季だけが、静かに鵺を視続ける。

 

そして――――

 

『キマイラ02接近!!』

 

拡声器が吠える。瞬間、凛と夏目がその姿を視認する。それは自分たちの試験に乱入した奴だ。一回り以上体が大きくなっている。同族の気配を感じてか、01が助けを斯う様に吠える。

その瞬間――――

 

「夏目君!!」

 

「行くぞ」

 

木暮が夏目を、言峰が四季に指示を飛ばす。小暮の言葉に夏目は慌てずに北斗を操り、言峰と四季が鵺たちへと接近する。

 

「簡易結界を用意しろ」

 

言峰がそう指示を出した瞬間、青い膜が二頭の鵺を囲う。そして鏡たちと同じタイミングで現れた女性が術を構える。

四季が結界のすぐ近くに立つ。

 

「周りは気にするな。私が全力をもって君を守ろう。集中してやりたまえ」

 

札から刃を生み出した言峰が背に立つ四季に淡々と告げる。しかし四季は答えずに結界にぶつかりに行く鵺たちに意識を向けている。そして懐から、言峰が見せた黒鍵を六本取り出すと、円を描く様に結界の周りに展開させる。更に続けて四枚の札が、結界を上空から覆う形で旋回を始める。

 

その瞬間、その場にいたすべての祓魔官の意識が衛宮四季一人に向けられる。

 

刺さる視線に凍えるような瘴気。その全てが体を畏縮させる。しかしもう止まるわけにはいかない。

 

「行くぞ」

 

常夜の暗い陰に今、夜の光が当たる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その光景を離れ観察する影が四つ。一人は、公園内のから見上げる形で光景を見ている。

 

「さて、見せてくれ坊主。今のお前の実力を」

 

試す様にどこか当然の結果を知るように青髪の男は笑みを浮かべる。しかしその表情はどこか晴れない。

 

――――あの野郎、やっぱ手を出しやがったな。呪術に対する壁が若干あめぇ。削りやがったな…まあ、誰もわかりは知ねぇと思うが、今坊主に尻尾を見せる訳にはいかねぇんだ

 

これが奴の為ならば止めれたのだが、彼はおそらく人的被害を減らす(・・・・・・・・)ために動いたのだろう。その結果偶然(・・)奴を助ける形となっては手は出せない。

 

「相変わらず、気に食わねぇ野郎だぜ」

 

そう呟きながらも視線はそこからぶれずに見届けんとしている。

 

そしてもう一人ははるか遠くのビルの屋上に腰かけ見守っている。

 

「お膳立てもここまでだ。ここから先は見せてもらおう、君の真価の鱗片を」

 

常人にはいや呪的存在ですら見えるか怪しいその距離の光景を彼は鮮明に見ている。最小限出せる手は打った。削れるだけ削り、対処の難易度は下げたつもりだ。むしろこのレベルを今の状態でなしてもらわねば、困るかもしれない。

 

「忘れるな。衛宮の神髄は『創る』のみ。ただそれだけに特化したのだから」

 

まるで出来の悪い弟の初試合を見守るように白髪の男はそう呟いた。

 

そして三人目は公園の入り口から十メートルほど離れた建物の影で見守っている。その顔はどこか懐かしい物を見るような優し気なものだ。

 

「ふっ…」

 

何処か遠い記憶を思い出しながら男は笑みを浮かべる。その笑みの意味は男にしかわからない。笑みを浮かべた瞬間、男の服の袖がふわりと風に吹かれ靡いた。

 

最期の一人は黒い黒いリムジンからその光景を見つめている。その顔は枯れた死人のようだが、今は歓喜に震えるような笑みを浮かべているが、やはり死人が無理やり貼り付けたようなイメージが残る。

 

「ほぉほぉ…さて現代の衛宮は何を見せてくれる」

 

面白そうに試す様に老人は想像もつかないほどに若い声でつぶやく。それはまるで大好物を目の前で見せつけられる子供のような危うさを同時に感じさせる。

 

「やはり祭りはこうでなくてはの」

 

出したいちょっかいを必死に理性で押しとどめる。今動くのは今後の愉悦を考えるに得策ではない。それに自分が動けば、彼ら(・・)が黙っていないだろう。だからこそ必死に飴のような理性でそれを押しとどめる。




如何でしょうか?
いい感じにレイヴンズの世界を描けていたらいいのですが・・・

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