東京レイヴンズ~英霊を従えし陰陽師~   作:スペル

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お待たせしました!!

PCが壊れ、部活の幹部の引継ぎ、期末テストに期末レポートとありえないほど重なり、執筆出来ませんでしたが、漸く落ち着き更新できました

楽しんでももらえたら、うれしいです!!


第十七夜  雛鴉たちの決意

結界に捕らえられた二匹の鵺を視る。禍々しく、淀んでいる瘴気は視るだけで意識を失いそうになるほどの圧と重みを含んでいる。

それでも視線を逸らさずに視ることにより

 

――――よし、思っていた以上に魔術的な防御は甘い。これなら一括でも行ける

 

霊災の状況を無事に把握する。無意識に息を吐き、徐々に意識を切り替えていく。

 

――――焦るな。思い出せ、さんざん言われてきたことだろう

 

魔術を使う。そう意識を切り替える。カチンと意識の中でナニカが切り替わる。

 

「行くぞ」

 

その言葉を口に出した瞬間、四季の怯えは消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその変化はその場にいた誰もが感じ取れるほどにハッキリとしていた。

 

――――四季…

 

――――衛宮君

 

不安を胸に抱える者。

 

――――行けるのか?

 

――――ほぉ、すでに此処までとはな

 

何が起きても動けるようにする者、自分の想定を超えている事に歓喜を示す者。

そして

 

「———————」

 

ある者は隠しきれぬその感情を必死に隠しつつ、誰もが四季の動作一つ一つに意識を向ける。視線が集まる中で、四季はゆっくりと行動を始める。

 

『いいか、四季。この術は完全に会得できれば、霊災を修祓するほどだ。だから、ひとまずはこれを完璧にこなせることを目標にするといい。衛宮の基礎にして奥義の方の一つだ』

 

思い起こすのは、魔術を学ぶ上で最初に告げられたる父の言葉。まだ完璧に会得できたわけではないが、少なくとも今の魔術的防壁を祓う事は出来る。

 

「主の恵みは深く、慈しみは永久に絶えず」

 

その声音は普段の四季の声を知る者たちからしても驚くほどに澄んでおり、精神に直接響くように聞こえてくる。

そしてその言葉に呼応するように四季の足元を中心に淡い光が立ち昇り始める。

 

「あなたは人なき荒野に住まい、生きるべき場所に至る道も知らず」

 

足元より立ち昇った光が、突き刺さった黒鍵の方へと進んでいく。その光景は、このような状況でありながらも美しい。

 

「飢え、渇き、魂は衰えていく」

 

光は黒鍵に重なり、結界の周りを囲み、輝きがさらに増してゆく。誰もが初めて見る魔術の現象に十二神将たちも目を奪われる。

 

「彼の名を口にし、救われよ。生きるべき場所へと導く者の名を」

 

地面に円を描くように輝き循環していた光が徐々に上空にある札の方へと進んでいく。

 

「渇いた魂を満ち足らし、飢えた魂を良き物で満たす」

 

光が札へと達し、光が結界を覆う檻のような結界を形作る。鵺たちは、ここにきて危機を感じ始めたのか、先ほどからは考えられないほどの勢いで暴れ始める。

 

「深い闇の中、苦しみと鉄に縛られし者に救いあれ」

 

札をなぞるように光が円を生み出し、結界の中へと光が降り始める。

 

「今、枷を壊し、深い闇から救い出される」

 

上に呼応するように下からも黒鍵の場所から光が結界の内部へと流れ込んでいく。この時点で最初に貼られていた簡易結界が、光に圧迫される形で崩れ去る。

 

「罪に汚れた行いを痛み、不義を悩む者に救いあれ」

 

「むっ!」

 

「————言峰さん!!!」

 

詠唱する四季の元に呪術が迫るが、言峰が切り捨てる。一歩遅れて夏目や京子の口から悲鳴が、凜からは息をのむ音が聞こえる。木暮と言峰はあたりを見渡すが、目の前の現象のせいでうまく見鬼を働かせることができず、襲撃者を見つけれない。

 

――――まるで、強大な霊脈を直に視てるみたいだ!!

 

――――それよりも自分が攻撃されたというのに、全く動じずぬとは、完全に意識が切り替わっている証拠か?

 

内心の驚きを隠しつつ、木暮は必死に探索を続ける。対する言峰は、四季の精神に達しぐわいに僅かな感動を覚える。

 

「正しき者には喜びの歌を、不義の者には沈黙を」

 

上下から伸びる光は螺旋を描きながら霊災を飲み込んでいく。

 

「————去りゆく魂に安らぎあれ(パクス・エクセウンティブス)

 

 

詠唱を終えた瞬間、今まで以上の光があたりを包む。その輝きに誰もが一瞬視界を奪われる。

視界が戻ったと同時、彼らの目に映りこんだのは、修祓されたかのように瘴気の質が落ちた二体の鵺。

そして大量の汗をかき、膝をつく四季の姿。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

驚きの中、誰よりも早く動いたのは言峰と凜の二人。言峰が周りの隊員に指示を出す中、凜は四季の元に向かって駆けだす。一歩遅れて木暮が、凜を静止させようと腕を伸ばす。

しかしそれよりも早く――――

 

「なにっ!!??」

 

霊脈が突如うねる。否、四季たちの試験の時と同じように火山の噴火といえる規模で霊脈が暴走している。

そして放出された霊気が、弱っていた二体の霊災を飲み込む。

 

「これはいかんな」

 

「わっ!?」

 

一番近くにいた言峰は消耗した四季を抱え、その場を後にする。対する木暮は「結界を急げ!!」と指示を飛ばすが数手遅い。

『01』を閉じ込めながらも『02』を取り逃がして、結界が完成してしまう。そして更に―――

 

『れ、霊災連鎖確認!!「キマイラ01」フェーズ4に移行しました』

 

「くそっ!!双角会だ!!どこから仕掛けている!!??」

 

初めて見る魔術という技術の迫力によって周りの警戒が疎かになっていた。その僅かな隙に付け込まれる形となった。

もしも前もって打ち合わせや認識の共有をしていれば、防げたかもしれない事態。

 

――――結局、俺もってことか

 

脳裏をよぎる後悔の念。それに捕らわれようとした木暮に――――

 

「木暮っ!!」

 

木暮が宮地と呼んだ男の声が届く。声が届くと同時、己の成すべきことを自覚した木暮は「言峰さん!!」夏目たちの元にまで下がってきていた言峰に声をかける。

それと同時に噴水の裏手に置かれていた彼のバイクが独りでに動き出し、木暮の前にまで駆け寄ってくる。

 

「比良多!今の奴を探せ!!言峰さんは、俺と一緒に」

 

「はい!」

 

「わかっている」

 

木暮の言葉にそれぞれが即答し、役目を果たさんと動き出す。そして木暮は、今までからは想像もできないほどに鋭い目で、逃げた鵺を見据えている。

 

「夏目君!それに他のみんなも!悪いが、俺たちは少し離れるっ。誰でもいいから、近くにいる祓魔官に保護を求めてくれ!此処の心配はいらない。このメンバーで修祓できな霊災はないからな!だから――――」

 

木暮が言い切るよりも早く、彼のバイクの後ろに夏目が飛び乗る。突然の事態に、京子も凜も驚いて何も言えない。

その中で木暮が怒りをあらわにするが――――

 

「鵺を引き付けるなら、北斗の協力が不可欠なはずです!同行します」

 

「うむ」

 

夏目の言葉に反論することができずに押し黙り、言峰は納得したような表情を見せる。木暮の答えを待つように夏目は視線を小暮からそらさない。

想定外の事態に比良多の足も止まり、結果を見守る。

 

「わかった。代わりに、陣には黙っておけよ」

 

「はい!」

 

木暮が答えると同時にバイクがうなりを上げる。その言葉に京子が泡を吹いたように慌て始めるが

 

「倉橋さん、遠坂さん、衛宮君!行ってくる!」

 

それよりも早く木暮のバイクがスタートした。

そして言峰がそのあとを追うとした瞬間、

 

「俺も連れて行ってくれ」

 

「うん?」

 

「ちょっ四季!!」

 

四季の手が言峰の動きを止める。その動作に凜が驚きをあらわにする。対して言峰は静かに四季の瞳に視線を向ける。

 

「………いいだろう。しっかり捕まっていろ」

 

言峰の言葉を聞いた瞬間、凜の怒りが爆発する。

 

「何考えてんのよ、バカ!!あんたは役目を果たしたでしょうが!!これ以上あんたが義理を立てる必要もないでしょうが!!こうなったのも祓魔局(むこう)のせいなんだから!!」

 

もはや隠す気なしに告げられた言葉に、四季は僅かに笑みを浮かべる。

 

「そうかもな。でも、まだ首謀者が捕まっていない状況で、逃げた鵺に魔術を仕掛ける可能性がある。そうなった場合、俺がいないと始まらないだろ?」

 

「————っ!!??」

 

正論に凜は口を塞ぐしかできない。そんな反応に四季は、一度言峰の手を放し、凜の頭に軽く手をのせる。

 

「心配しなくても、必ず戻ってくるから」

 

「……わかったわよ

 

しぶしぶといった感じで呟かれた小さな言葉を聞き取った四季は、今度こそ言峰の腕に捕まる。

 

「行くぞ」

 

「おう」

 

次の瞬間、二人はその場から文字通り消える。その姿を凜は、己の無力さと噛みしめながら見届ける。その背を京子が何とも言えない表情で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四季や夏目が決意をもって更なる前線へと進んでいる時を同じくして、陰陽塾に冬児と塾長の姿。

塾長の口から聞かされたのは、わざと自分にかけられた封印を弱めることで、自分の意志で鬼の力をコントロールするという、今まで考えもつかなかった方法。それは独立祓魔官でもある『鬼喰い』鏡伶路と同じ次元だという。

そしてその為に必要なのが、悪友ともいえる春虎の存在とも聞いた。

 

『幸運に思いたまえ、そしてそれを手放すな。大丈夫だ、君は一人ではない』

 

その話を聞いたときに、脳裏を過ったのは顔も覚えだせない男の言葉。あの時は全く意味も分からなかったはずの言葉が、話を聞いて恐ろしいほどしっくりと胸の中にはまった。

だからこそ、覚悟は決まり、自分がすべき行動も分かっている。

 

「行くのですね」

 

そんな冬児の思いを察していたように呟かれた塾長の言葉に冬児は付き物が落ちた表情で「ええ」と答える。

その言葉を聞いた塾長は満足そうに笑みを浮かべる。

 

塾長の言葉に答え終わると同時に冬児は校門まで歩を進めていた。

 

「おお、主よ。今宵は一段とご機嫌が良いようで」

 

「然り然り。何か良いことでもございましたか」

 

外へと出る間際にアルファとオメガが楽しそうに嬉しそうに声をかけるが、冬児はただ前を見据え答えず、塾長はただ微笑みを返す。

 

「見送りはここまでで結構です」

 

「そうですか。では、一つ私からあなたへ餞別を」

 

そういって塾長が印を切ると、神馬のごとき堂々たる気高い風格を持つ白い馬が現れる。そして冬児はその存在を知っていた。だからこそ、驚きを見せるが。

 

「ちょうど夕方に土御門家から届けられました。彼も星を読みます(・・・・・・・・)。きっと、こうなる予感があったのでしょう」

 

その驚きの答えを塾長が告げる。一瞬、冬児は自分が全てが大人たちによって揃えられた道を歩まされているような嫌悪感を抱くが、すぐに振り払う。

今必要なことは、己の意志で選び進むこと。例え揃えられた道であろうと、選んだのは自分だと胸を張って言えるように。

 

「春虎から聞いてる。すげぇ式神なんだってな。俺に気にせずに全速力で駆けてくれや」

 

雪風はその言葉に答えるように蹄を鳴らす。冬児が雪風に跨ると同時、陰陽塾から錫杖を持った天馬が現れる。

 

「間に合った!!」

 

「天馬?」

 

「冬児君、これを春虎君に届けて上げて」

 

天馬が手渡したのは、大友先生より春虎に作られた専用の呪術補助具である錫杖。しっかりと天馬から錫杖を受け取った冬児は、天馬が笑っていることに気が付く。

 

「なに、笑ってるんだよ」

 

「ううん。別に大したことじゃないんだけど、安心して。僕ちょっと自信なかったから…」

 

「自信?」

 

「うん。冬児君の事情を知った後でも普通に接することが出来るかって。ほら僕、結構そういうところ頼りないからさ。でも……全然大丈夫みたい。やっぱり、生成だろうが冬児君は冬児君だよ」

 

「天馬、お前…」

 

まっすぐ普段と変わらない声と表情でそう告げられ、冬児は言葉に詰まる。

 

「春虎君たちの事、お願いね」

 

普段と何も変わらない友人からの頼み(・・・・・・・・・・・・・・・・・)に冬児はいつもの笑みを浮かべて返す。

 

「ああ、任せろ」

 

「うん、お願いね」

 

二人のやり取りを塾長は微笑ましそうに見つめている。

そして冬児は塾長の方へと視線を向け

 

「…行ってきます」

 

「ええ、気を付けて」

 

そうして雪風と冬児は、東京の夜を駆けて行った。

 

 

 

そして教え子の背を見送りながら塾長は

 

「…ほんと、期待以上に先生役が嵌ってくれそうね。あとは、任せましたよ、大友先生」

 

小さな声でささやいた。塾長のその言葉に答えるように一瞬、陰陽塾の影の一部が不自然に揺らいだ。




次はもう少し早めに更新出来たらいいな・・・・・・・・できるかな?
三巻ももすぐクライマックスなので、気を抜かずに頑張っていこうと思います
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