東京レイヴンズ~英霊を従えし陰陽師~   作:スペル

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前回からだいぶ時間がたちましたが、どうにか復活です
思った以上にリアルが立て込んでいたので、申し訳ないです
色々不甲斐なさとかありますが、とにかく楽しんでもらえたら、嬉しいです!!


第十八夜 日陰者たちの戦い

言峰の腕を掴み凛と別れを告げた直後、四季の視界を霊気の流れが覆う。瞬間、それが『卯歩』による移動だと理解する。そして霊気の流れを四季が理解すると、ほぼ同時に再び四季の視界が変化する。

 

「うおぉっ!!」

 

「ふむ」

 

立て続けに変化する視界に四季は少し酔ったように足元がふらつくが、どうにか転ぶことだけはこらえる。対する言峰は、くまなく辺りを視る。その行動は、道に迷ったというわけではなく、見鬼を使い先に行った小暮たちを探しているのである。

 

「あちらか…」

 

辺りを見渡していた言峰の視線がある一点で止まる。言峰の言葉と共に、四季もも彼が向いている方角を視る。

言峰が指し示す方角には、陰の気であり瘴気とそれを追うように走る竜の気が視える。

 

「あんたなら、一度確認しなくても土御門達に追いつけたんじゃないのか」

 

なんでこんな回りくどい真似をと四季が言峰に問う。問われた言峰は、視線を四季に向けることなく、口を開く。

 

「なに、霊脈の流れをズラされていたのでな。何処へと飛ばされる前に、抜け出しただけだ」

 

「っ――――!!」

 

何気なく発せられた言葉に四季は驚愕し何も言えない。つまりもう霊脈での移動ができないということ。そうなれば追いつくのは至難の業だ。

 

「だが、恐らく急ごしらえの罠だろう。霊気への細工がほとんど隠せていなかった。今一度霊脈へ霊気を流して確認してみたが、もう細工の後はない。次で追いつく」

 

四季の戸惑いなど関係ないと言わんばかりに、言峰はただただ事実を述べる。語られる高次元な話に、四季は理解が追いつかない。それでも体を動かし、必死に食らいつかんとするように言峰の腕を掴む。

 

「ふ、行くぞ」

 

「おう」

 

四季の感情を察してか、言峰は笑みを浮かべながら再び『卯歩(うほ)』を使って、二人はその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木暮と夏目をのせたバイクは、グランドを出て車道から鵺を追跡する。鵺の姿を視認した木暮は、

 

「削ぐよりも足止めが先決だな。黒竜(こくりゅう)獺祭(だっさい)醴泉(れいせん)鳳凰美田(ほうおうびでん)!」

 

びんっ!と響く声で、己の式神が呼ぶ。その声に答えるようにバイクがエンジンの唸り声をあげ、四つの霊気を放出、その霊気が愛くるしい鴉天狗の姿を形づくる。

余りにも特異な実態を持った式神である機甲式(きこうしき)に夏目も驚きの声を上げる。そんな夏目の反応が簡単に予測できたのだろうか、木暮は「変わった奴らなんだ」と短く説明する。

 

「神宮球場へ鵺を誘導しろ!そこでケリをつける!」

 

主のオーダーを受けた四匹は鵺へと接近し、互いに連携して鵺を球場へと落とす。愛くるしい外見とは対照的に纏う霊気は十二神将の式神ということで強力の一言だ。

 

「よしっ!」

 

鵺が落ちたことを確認した木暮がバイクの速度を上げ、一気に球場内に入ろうとするが、

 

「なにっ!」

 

轟音と共に再び、鵺が空中へと舞う。自身の式神の失態に木暮が吠える。

 

「カアァ!あいつ賢いっ!フェイントかけられたぁ!」

 

「ゼンジローの目論見、見抜かれてる!」

 

「何でもいいから、次こそちゃんとしろっ!。この先の秩父宮(ちちぶのみや)ラグビー場から先は、もう青山通だぞっ!!」

 

「北斗――――っ!鵺を逃がすな!!」

 

バイクを反転させながら、木暮が怒鳴る。そして夏目もまたキッ!と唇を結び、待機させていた北斗を召喚する。その動作に木暮が何か言うよりも早く、「手伝いますっ」と夏目が鋭い声で答える。

 

「…よしっ!俺たちも追うぞ!」

 

木暮がアスファルトを蹴り、バイクを発進させる。上を見上げげれば、鴉天狗と北斗が協力して、うまくラグビー場へ鵺を落下させている。その光景に木暮が「よしっ!」と声を上げる。

今度こそ逃がさぬようにと、木暮が先ほど以上にアクセルを踏み、スピードを加速させる。

その瞬間

 

「夏目!」

 

間違えるはずのない己の式神の声が届く。その声に夏目は笑みを浮かべ

 

「春虎!」

 

 

愛しき、己の式神の名を呼ぶ。突然の乱入者に木暮が誰かと夏目に問おうとした瞬間、木暮はバイクを急ブレーキ。大きく態勢を崩す夏目をかばう形で、ジャケットから護符を取り出し

 

急急如律令(オーダー)!」

 

展開すると同時、呪符自体を隠形していた札と護符がぶつかり合う。最初の札を皮切りに、絶え間なく正確に木暮だけを狙って札が投げ込まれる。

 

「夏目!」

 

突然の事態に春虎が己の主の安否を問うような声を上げる。その瞬間、春虎の方に札が迫る。

 

「やべっ!」

 

護符を出そうにも遅すぎる。視界の端には、顔を青くした夏目の顔と迫る札を斬り裂いた木暮が動くのが見えるが、明らかにワンテンポ遅い。

やられると思った瞬間

 

「ふむ、間一髪といったところか」

 

春虎のそばに現れた言峰の呪力を纏った拳が札を叩き潰す。突然の乱入に春虎が驚きの声を上げ、その傍にいる四季の存在をみると再度驚きの表情をする。それは四季も同じなようで「春虎!」と驚きの声を上げる。

二人が驚いているさなか、木暮と言峰の二人は銀杏並木の歩道を鋭い目つきで見つめる。

 

「…六人部か」

 

木暮の言葉に答えるように、流浪人のような風貌ながら学者としての知性を感じさせる男六人部が隠形を解除して姿を現す。

 

「言峰さんっ!此処は貴方に…」

 

任せてもと木暮が問おうとした瞬間、轟音と共に鵺が鴉天狗と北斗の包囲網を無理やりに突破して、再び逃亡を図る。

なおさら決断を急がねばならなくなり、木暮と言峰がアイコンタクトのみで動き出そうとした瞬間、

 

「っ―――――!!ヤバイっ!!」

 

四季が何かを感じ取り声を上げる。四季が声を上げると同時、六人部の懐から札が独りでに踊り出て、鵺へと吸い込まれる。

 

「魔術っ!」

 

「むっ」

 

急ぎ二人は、札を施された鵺を視る。霊的には何も変化がない。しかしこの状況で何の効果もないなどありえない。ともなれば、答えは一つ。その事実に二人が苦虫を潰したような苦い表情をする。

だが、策を弄したはずの六人部もまた木暮や言峰と同じような苦い顔を一瞬見せ「法師」と、誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。

鵺の逃走、主犯格の六人部、魔術の行使。混沌と化す状況下の中で、木暮と言峰はどうするべきが最善か高速で思考する。それは援軍が期待できな上での二人が優秀であるが故の初速の遅れ。決して責めれるわけもない遅れ。だからこそ、未熟であるがゆえに二人の行動は早い。

 

「夏目ぇっ!」

 

「逃がすかっ!」

 

向かい合う形となっていた春虎が夏目の名を叫び、四季は鵺を追って駆けだす。春虎の呼びかけを聞いた夏目もバイクから降り、鵺を追うように駆けだす。

考えてもみなかった三人の行動に、木暮は止めることが出来ない。そして言峰は、四季の瞳を見て、笑みを浮かべる。

 

「ええいっ!言峰さん、此処は俺に任せて、あなたは鵺を…」

 

追ってくれ。と木暮が告げるよりも早く、事態は悪化する。今まで気が付かなかった方がおかしい程の霊気の乱れ。まるで二人の足を縛るように霊気が絡みつく。

 

「しまっ!」

 

「いかんっ!」

 

瞬間的に、自分たちが何かの術式に掛かったことを悟る。しかしそれは、木暮の知識には全く当てはまらない未知なるもの。

 

――――まさかっ

 

「木暮よ、気を抜くな。これは魔術だ」

 

金縛りに類似したものだろう。という言峰の言葉に木暮は、祓魔官としてこの目の前の男を全力で相手せねばならないと覚悟を決める。だからこそ、同時に腹が決まる。それは言峰も同じ。

 

醴泉(れいせん)鳳凰美田(ほうおうびでん)!は夏目君たちのフォロー!黒龍(こくりゅう)獺祭(だっさい)は戻ってこい!」

 

「衛宮四季をフォローしろ」

 

木暮が己の式神に指示を飛ばし、言峰は簡易式神を飛ばす。そして互いに、己の動きを捕縛する霊気をどうにか断ち切らんと動く。

その間、六人部は式神を展開し、静かにたたずんでいる。

 

 

 

 

鵺に魔術が施されたことを悟った瞬間、四季は鵺を逃がさぬように駆けだす。ふと視線の端には、夏目が駆けだすのが見える。

明らかに追える足ではないのだが、そんなものは関係ないと駆ける。そんな四季の隣に、巨大な虎の式神が現れる。

 

「乗るがいい、衛宮四季よ。こいつがお前の足になろう」

 

機械的な言峰の声を聞き、四季は迷うことなく虎に飛び乗る。

 

「我々は六人部の妨害に合い、鵺を追えぬ。ゆえに、我々が追いつくまで鵺は任せるぞ」

 

そのメッセージと共に虎は口を閉ざす。言峰の言葉を受け、四季はゆっくりと息を吐き意識のスイッチを切り替える。

そんな四季の耳に

 

「つかっ、お前!免許あんのかよっ!!」

 

「そんなのあるわけないじゃないですかっ!!」

 

ここ最近聞きなれた、友人たちの怒鳴り声は聞こえる。そんな緊急事態とは思えぬ言葉の応酬に四季の肩から力が抜ける。

気が付けば虎とバイクは並走している。

 

「おい、土御門、春虎!よく聞け」

 

「四季!」

 

「ど、どうしたんですか、衛宮君」

 

「あの鵺には魔術要素の防御膜が貼られている。だから普通の攻撃じゃ、易々とはいかない」

 

「そんな…」

 

四季の言葉に夏目は顔を青くさせる。春虎も驚いたように、上を見上げる。そこには攻撃を仕掛ける、醴泉と鳳凰美田そして北斗の姿。しかし四季の言う通り、その攻撃は鵺に通っていない。

その光景に春虎が大きく舌打ちをかます。

 

「だから、とにかくあいつの動きを止めてくれ!俺の魔術でその防御膜を破壊する。修祓はそこからだ!」

 

四季の要望に夏目は息をのみ、一瞬答えに詰まる。しかし代わりに春虎が真っ直ぐとした瞳で四季を見る。

 

「いけるのかっ?」

 

「お前は役目をはたして、此処に来たんだろう?なのに俺が役目を果たさないのは、かっこ悪いだろ」

 

春虎の言葉に四季も真っ直ぐとした瞳と言葉で返す。その言葉を聞いた春虎は、いつもの人の好い笑みを浮かべ「任せろ」と告げる。その言葉に聞いた四季は虎に速度を上げてくれと頼む。四季のオーダーを受けた虎は一声吠えると、ぐんぐんとスピードを上げていく。

 

「近くに交差点があったはずだ!そこに鵺を」

 

「わかった!夏目っ!」

 

「はい、わかりました」

 

夏目の覚悟を決めたのか力強く答える。二人の返事を聞きながら、四季は一人先へと進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、車も通らない交差点の真ん中に四季は降り立つ。僅かに鵺の叫び声が聞こえる。時間はそうないと、四季は早速準備を始める。

 

「よしっ!」

 

霊気を製造する地点を決め、四季は一気に札を展開する。札で囲まれた地点の霊気が、ゆっくりと変化を見せ始める。

 

————去りゆく魂に安らぎあれ(パクス・エクセウンティブス)を準備する時間はない。だから、最大火力で防御膜のみ(・・)を破壊することだけに集中する。

 

元々の体力でも修祓は不可能だったのだ。消耗した状態では、より無理だろう。だが、それのみに特化したならば、可能だ。

 

「こっちの言語は苦手なんだが……やるかねぇよな――――Assimilation(同化)

 

札ので作った界の中に四季は呪文を唱えた宝石を投げ込む。青い宝石は、四季の声に呼応するように青く輝き、霊気の流れと質を変化させて霊気の中に消えていく。

霊気の流れがより一層激しくなる。印を結びながら、四季はその霊気の流れに己の霊気を混ぜ合わせ、流れを生み出していく。

 

――――よし少しミスったが、どうにか落ち着けた。

 

ドイツ語による術の発動は、強力な分魔術要素が強くなるため、どうしても扱いが難しい。今回も僅かに配分が狂ったが、どうにか戻すことに成功する。

造られた霊気が、四季の手を離れようと暴れているが、うまく手綱を握れている。

 

――――よしっ!」あとは、二人を待つだけだ

 

四季が術を完成させるとほぼ同時に、交差点から僅か10メートルといった場所に鵺とそれを追う醴泉と鳳凰美田に北斗。そして北斗に騎乗した春虎とその式神のコンが姿を現す。予想外の場所にいる春虎の姿に驚きをあらわにしながらも、四季は笑みを浮かべる。

 

「ホント、よくやるぜ」

 

その耳にバイクのエンジン音を戦闘音を聞きながら四季は、その僅かなチャンスを逃さぬようにより集中を高めた。




次回で原作三巻を終われるようにしていきたいなと思っています

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