東京レイヴンズ~英霊を従えし陰陽師~   作:スペル

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凛と春虎を話しさせようと思っていたのに、出来なかった
期待していた方がいたら、本当にすみません
次こそは必ず!!

まださして話は動きませんが、楽しんでくれたら嬉しいです


第五夜 土御門 その3

講義も終わり放課後。四季は、未だに机から立たずに、一点を見つめている。その表情は唖然と呆れで染められている。

 

「なあ‥‥遠坂」

 

「言わないで」

 

視線を動かさず、隣で同じような表情をしている凛に声を掛けるが、本人も何を問われるかを察している分、何も言いたくない。

それでも四季は言わずにはいられなかった。

 

春虎(あいつ)って本当に訳ありなのか?」

 

「言わないでって言ったでしょ」

 

四季の言葉に凛も頭を抱える様にうずくまる。原因たる春虎は、先ほどから夏目と冬児に囲まれ何かを言われてる。

発端は、春虎の余りの無知さ加減だ。陰陽師を目指すならば、知っていて当然というべき知識すら春虎は知らなかったのだ。最初誰もが、ふざけていると思ったが、次第に呆れ果て皆が彼の存在を無視した。

凛としてもあれだけのセリフを言った手前これでは恥ずかしいし。何より自分達の仮説が本当かどうかすら疑いたくなる。

 

「まあ、ともかく明日に成れば何か変わるかもしれないわ。それにアンタが聞いた話が話が本当ならば何かが彼にはある筈よ」

 

「‥‥たぶん」と告げる凛。いつも物事を断言する彼女にしては珍しい。しかしその想いが分からない訳ではない。何しろあの土御門家の人間がそうなのだ。

 

「それじゃあ、私は先に帰るわね」

 

「おう、また明日」

 

「ええ」

 

席を立った直後には、先ほどまでの気配を隠し、優等生に成り切る凛。その姿を見送り、しばし春虎達を観察していた四季だが、なぜかとても阿保らしくなり自身も寮に帰る為に席を立ち、教室から出ていく。

 

「うん?」

 

教室を出て、廊下を歩く中でふと、何か視線を感じ振り返る。入塾してからと言う物、そう言った視線には慣れてきたはずだが、今のは違う。もっとどドロドロとして濁った暗い狂気に似たナニカだ。

辺りを見渡すが、帰宅する生徒達やスーツ姿の男性などしか見渡らない。その視線は感じられない。気のせいかと割り切り、四季は再び歩き出す。しかし、ふと視界に映った黒いスーツ姿の男の姿が、四季の記憶に不思議と焼き付いた。

 

 

 

 

 

 

 

翌日、変わらずに陰陽塾の教室で講義を受ける四季。話を聞きながら、四季の視線は何処かに話している様にボケっとしてる春虎に向けられる。

 

「こらあ、何ボケっとしてんねん、新入生、春のつく方」

 

「わっ!すみませんでした!!聞いてます聞いてます!!」

 

「だったら、何で謝ってねん」

 

大友の言葉に驚き席を立つ春虎の姿を見て、クラスメイト達はクスクスと笑ってる。凛は頭を抱え、四季はため息を吐く。

 

「あかんなあ、春虎クン。入塾二日目でそれじゃあ、遅れは取り戻されんで・ただでさえ、君、えらいぐらいもの知らんって、講義の先生方の間でも評判になってるんやから」

 

嘆く大友の姿見ながら、四季は春虎に視線を向ける。渋面しているが、何処か意識が別に向いている様に見える。

そんな中で大友が、講義の復習を提案する。しかしそれに待ったをかけたのが、やはりというか京子である。

 

「たった二人の新入生の為に、カリキュラムを捻じ曲げるなんて、それこそ特別待遇ではなくなんなんですか!!」

 

正論の前ですら大友はペースを崩さない。のらりくらりと京子の話を躱し、此処にいる塾生たちの復習になると告げる。しかし四季からしてみれば、復習とは己に知を収着させる物であり、あくまで講義の中でする必要はないと思う。それは凛も京子も同じなのか、凛も顔を顰め、京子は食って掛かる。

 

「みんながついて来る事が前提なのが、陰陽塾のカリキュラムです。講義に遅れている自覚のある者なら尚更、自分の責任で復習するのが当然ですっ。その為に真面目に受けている者達が被害を被るのはおかしいと思います」

 

「それやと、ついて来れない人は切り捨てるって聞こえるけどな」

 

何処か試すような言葉にも京子は、狼狽える事無く断言する。

 

「それが陰陽塾のカリキュラムだと思いますけど」

 

「傲慢」と取られても仕方がない言葉。しかし京子はそれを信じているのだろう。自信に満ちている声だ。

そして驚く事に大友は淡白にそれを認める。しかし同時に告げる。「自分はその在り方が好きでないと」。矛盾した言い方。だが、四季にはまるでそれが陰陽だと感じた。矛盾を抱え、それを容認し、それでも進む。答えなき答えを知るために。

空気が変わる、全てが大友陣という存在に支配される。それも一瞬のことだが、それでも四季は改めて彼が凄腕だと再確認する。そしてそれは凛も同じだろう顔が先ほどまでの顔が嘘のようになっている。

 

「…納得できません」

 

空気を破ったのはやはり京子だった。

 

「何を言ったて、それは土御門に対する贔屓じゃないですか!!先生だって、彼のために言ったんですよね!わたしは納得できません!!」

 

昨日と同じ流れ。だからこそ誰もが夏目に注目したが、驚く事に彼は昨日の事が嘘のように沈黙を貫いている。

一向に動かない夏目に矛を向けても無駄だと悟ったのか、京子は春虎に矛先を変える。

 

「俺は…」

 

春虎が言葉を発した瞬間、教室は沈黙し春虎の言葉が辺りによく響く。凛は何も言わない。今回の件で見定めるつもりなのだろう。もしも価値なしと判断すれば、次からは凛も京子に加わり春虎を追い出すために動くだろう。いうならば最終試験。彼がこの場所で学ぶに値する人物かどうかを計る為の。

 

――――試されてる中で、お前は何て言うんだ、春虎?

 

心の中で四季は、春虎にそう問いかける。

 

「俺は確かに講義についていけてない。だから、先生が復習してくれるならすげえ助かる」

 

「悪いとは思わない訳…?」

 

「いや、すげえ悪いと思う」

 

「だったら――――」

 

直後凛もまた京子を援護せんと立ちあがろうとするが、四季がそれを止める。一瞬、交差する視線。頼むという目に凛が折れ、再び聞き手に周る。

 

「でも遠慮はしない(・・・・・・)。土御門の名なんて大層なもんだとは俺には思えない。俺からすれば、アンタらが過敏に反応している様にしか思えない」

 

誰もが息を呑む。その中でも春虎は迷いなく告げる。己の居場所を得る為に。

 

「俺は、自分が陰陽師になる事を最優先にさせて貰う。迷惑だと思うし、悪いとも思う。それでもそこだけは絶対に引けない」

 

 

その宣言に凛は感心した様に笑みを浮かべる。四季もまた面白そうな顔をする。しかし京子は怒りを感じながら宣言する。

 

「…‥土御門春虎。私は貴方に自主退塾を進めるわ」

 

「辞めろって事か?」

 

「ええそうよ。初回の講義で貴方がついて来れないというのは誰の目を見ても明らかでしょ。ここは陰陽師を目指す中でもトップレベルの場所、貴方のような才能のない人間がいるべき場所ではないわ!!」

 

怒りに任せた宣言。されど春虎は怒りを受け流し淡々と告げる。

 

「‥‥まあ、大目に見てくれよ」

 

瞬間、京子の怒りが限界に達し、春虎に踏み出そうとする。刹那に四季は確かに視た。春虎から何か霊気の塊が京子に迫るのを。

直後

 

「そこまでだ、痴れ者!!」

 

突如、怒りを含んだ声が放たれたと思えば、京子が重心を崩され床に投げ出される。誰もがあまりの事態の変化に驚く中でその存在は告げる。

 

「厳命故に大人しくしておれば、春虎様に何と言う無礼!!その愚行最早看過できぬ。即刻、我が哀悼の錆にしてくれる故に、大人しく――――」

 

直後現れた狐耳の少女の頭を春虎が叩く。誰もが驚く中で凛が四季に問う。

 

「ねえあれって――――」

 

「ああ間違いない。護法式だ。でも何か封印されてるみたいだけど、間違いねえ」

 

「ふ~ん、何だ彼相当な食わせ者ね」

 

「あんな切り札を隠してたなんて」と告げる。その言葉に四季も同意だと思う。大友もまた春虎に対する認識を変えている様だ。これで同時に流れが変わった。先ほどとは別の感情が春虎に向けられる。

 

白桜(はくほう)黒楓(こくふう)!」

 

鋭い京子の声と共に、彼女を守護する二体が彼女の背に現れる。黒と白の近代的な鎧を身に纏った彼女の護法式『モデルG2・夜叉』だ。

 

「よくも騙してくれたわね。わざわざ無能を演じるなんて、大した狸だわ」

 

「え?」

 

「とぼけないで!一体何のつもりで演じてたかは知らないけど、もう容赦しないわよ」

 

完全に頭に血が上っている。春虎の言葉すら届かず、「殺」の意思のみを見せる。不穏な空気に、冬児が腰を上げ、夏目は呪符のケースに手を伸ばす。そして四季もゆっくりと腰を上げる。その姿を見た凛も仕方がないかと呟きながら腰を上げる。

一触即発の空気が場を支配する。故にその声はひどく響いた。

 

「よっしゃ、わかった!」

 

活発的な声、が空気を壊す。声の主は大友だった。彼は更に元気よく宣言する。

 

「やる気と元気は十分。大いに結構。二人とも式神をなかなかに操れるようやし、ここは一つ、実技の手本を見せて貰おうか」

 

『は?』

 

その発言の意味を一瞬全員が、何を言っているのか理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

陰陽塾の地下には、巨大な呪練場がある。貼られている結界の強度は陰陽塾の中でも一番であり、フェーズ3までの霊災ならば耐えられるほどだ。実技では主に此処を使う。

 

「さて、どうなるかしらね」

 

観客席に座り、凛は面白そうにアリーナを見下ろす。彼女からすれば、価値のない子猫だと思った存在が、虎の子だったのだ。興味がない訳がない。

隣に座る四季もまた、何が起きるか高揚感があるのを否定できない。

二人の耳に冬児の「あいつを侮ると痛い目見るぜ?夏にも前例(・・)があるからな」という言葉が届く。それが余計に興味を引き立てる。

ふと視線を下に向ければ、京子がリラックした状態で春虎を待っている。肝心の春虎は、何か準備があるのかまだこの場にいない。

だが、アリーナに現れた春虎は、二人の想像を超えたモノを示す。何と春虎は自分も護法式と戦ういうのだ。余りにも常識外れな選択に誰もが驚き思考が停止する。

しばしの空白の中で、凛はいい方向でのバカねと判断し、呆れ6好奇心4という顔をする。

対する四季は、何が起きるかワクワクした表情で見守る。その姿を見た凛は、理解できないわねと呟きながらも、何かがるのかと評価するためにアリーナに視線を向ける。

 

京子は止めろと言い、主である夏目に視線を言葉を向ける。しかし春虎は譲らずに戦う意思を見せる。主の意思を押しのけ春虎は、戦うと告げる。その意志の固さが凛の評価を改めさせる。

そして前代未聞の戦いが始まった。

 

放課後、珍しく四季と凛の二人は揃って帰路についている。話の内容は勿論春虎と京子の試合。

 

「どう見る?」

 

しばし互いに考える時間を取ったために問われるのは、己の考え。

 

「普通に視たら当然の結果だけど、明らかに春虎は勝筋を得ていたように思える」

 

「そうよね。私も同じ考えよ。でもだとすると―――」

 

「春虎の武器が壊れた事だよな?」

 

「ええ、仮にも講師が施した術が掛けられていたはず。それも『夜叉』の攻撃に耐えれる物を」

 

「でも実際には壊れたって事は――――」

 

「ええ、春虎君の呪力が先生の想像を遥かに上回ったって事よね」

 

「ああ、間違いないだろうな。『視て』てもそう思えたし」

 

結果は当然のように京子が勝った。しかし二人はその中で見せた春虎の違和感を感じ取っていた。

 

「何にせよ、これからが楽しみね」

 

「確かにな。明日が楽しみだ」

 

果たして、明日クラスメイト達は春虎にどんな反応を示すのだろうか?少なくとも、自分と凛は春虎を認めた。あの場所で自分達と同じ場所を目指すに値すると判断した。

だからこそ、他の面々の答えが気になるところだ。

 

二人は寮の分かれ道までその話で盛り上がった。

 

そしてこの日を境に狂気が運命が、衛宮の姓を持つ四季を巻き込み動き出す。




次回から漸く物語が動くのかな・・・?
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