Chinzyuhu produced Waiting Bar Avanti   作:Pubの親父

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今日のAvantiは・・・
おや?華やかですねぇ・・・

なんでも、司令官主催の晩食会があったとか?
その中でも一際目を引いたのは、商船出身の姉妹と警備府の広報担当艦だとか・・・?

さてさて、どうなることやら・・・

聞き耳を。


「タカ姉妹の回」

Chinzyuhu produced Waiting Bar Avanti

 

紳士「やぁ、またお会いしましたね。あなたも行かれるのですか?では、ご一緒しませんか?北海道は余市町、その片隅にある小さな役所、余市警備府。その一角にあるWaiting Bar Avanti。週末の夕方ともなると鎮守府にいる艦娘・妖精さん・勤務のスタッフで賑わうレストランのウェイティングバーがお目当ての場所です。おや、着きました。私がドアをお開けしましょう。」

 

Chinzyuhu produced Waiting Bar Avanti 「タカ姉妹の回」

 

紳士「やや、ベル。今日はいつものを・・・と言いたいところですが、夜も更けてきましたので、いつものウィスキーでお願いします。」

ベル「かしこまりました。」

そういって、私のリクエストしたウィスキーのボトルを開けると、モルトグラスに注ぐベル。モルトウィスキーのボトルを開ける時の「キュッ」という音と、ほのかに漂ってくるその香りが食後の一杯の始まりを飾ります。

ベル「どうぞ。」

紳士「ありがとう」

そういって、私は一口口に含みます。もちろん、ストレートで。

紳士「あぁ、うまい。ところでベル、今日は何があったか知っていますか?」

ベル「ええ、司令官主催の“お前ら!豪華な夕食を食いたくないか?!”デーですよね?月に一回の。」

紳士「ええ。私もそこに呼ばれていたのですがね?なんでも今回は、何を思ったのか、昭和初期のお偉いさん主催のコースにしようとか・・・」

そういって、紳士は今晩のメニューを取り出した。

 

紳士「前菜・オードウヴル。清羹・コールド コンソメ。鮮魚・ベーキド フイツシ タータルソース。幼鶏・ローストスプリングチキン。龍鬚菜・アスパラガス。冷菓・モカアイスクリーム。果賓・アウソーテツドフルーツ。珈琲・コフイーアラビカ。以上」

紳士はそうメニューを読み上げた。

ベル「なんだか、あっさりしたメニューですね。」

紳士「ただ、このメニューは実際に、1937年8月22日に、当時の南満州鉄道株式会社総裁、松岡洋介主催の晩さん会で出されたメニューっぽいのですよ。実際に出されたかどうかは知らないけれど、当時のオフィシャルな席でのメニューが垣間見れますね・・・おや、あちらのテーブルでは、今回たまたま寄港した飛鷹さんと準鷹さんが、警備府の広報担当艦と一緒に何やら話し込んでいらっしゃいますよ。では、聞き耳を・・・」

 

飛鷹「先輩。ここで会えるとは思いませんでした・・・」

私は、涙が止まりません。寄港時のあいさつに警備府司令部に出頭した際、今回のホストシップとして紹介されその姿を見て、私も妹の準鷹も驚きました。まさか、あの氷川丸先輩に私たちのホストシップをしていただけるなんて・・・

氷川丸「氷川丸、入ります。」

司令官「どうぞ。」

司令官に呼ばれて、執務室に入ってくる姿はやはり、太平洋の貴婦人と言われたその美しさに変わりません。若干、現代的と言いますか、事務官的と言いますか、パンツスーツなのはびっくりしましたが、私たちの知っているどの艦娘よりもその美しさは変わりません。凛々しいです。私たちはこうなるはずだったのに・・・

氷川丸「初めまして?でもないのよね。この姿では初めまして、だけど、お久しぶりです。出雲丸に橿原丸。いえ、飛鷹さんに準鷹さんと呼べばいいのかしら?」

ずいぶん懐かしい名前です。自分でも言い間違えることはありますが、他の艦娘からそう呼ばれるのは初めてかもしれません。準鷹もいつもと全く違って緊張しているのが、ふと脇を見たときにわかりました。

 

私たちは、氷川丸先輩の後継として、日本と北米太平洋岸を結ぶ客船の花形として就航するべく建造されました。しかし、その建造費用に海軍の予算が入っていたため、時勢の緊張という名のもと、空母へと改装されました。結局、夢の太平洋航路に就航することはありませんでした。

準鷹「氷川丸先輩。私は・・・」

隼鷹の目から涙がボロボロ落ちていきます。私も泣きそうです。

あの戦争では結局、日本の客船は氷川丸先輩しか生き残れませんでした。1932年のロサンゼルスオリンピックで日本選手団を運んだ龍田丸先輩も、太平洋の女王と言われた秩父丸先輩も、みな太平洋の水底に沈んでしまいました。

私たちは、商船改装空母です。先輩を守れなかったことが悔やまれます。その中で、唯一生き残ったのが氷川丸先輩です。

氷川丸「私も、あなたたちのことが心配でした。海軍さんの軍艦に比べて、装甲も薄いですし、民間出身ということもあって、海軍の中でも浮いていないかどうか心配だったのですよ。」

先輩が優しく私たちに微笑みかけます。そういって、先輩は私たちのそばまで来ました。優しく、私たち姉妹を抱きしめてくれます。もう会うことはなかったと思っていました・・・

とてもうれしいです。

 

司令官「ああ、そうだ。今日は月に一回の趣向を凝らしたディナーの日だった。氷川丸君、かわいい後輩も一緒に来たらどうかね?」

司令官はそう私に言って、3枚の招待状をちらつかせます。

この司令官は艦娘に対してセクハラ行為はしませんし、もちろん組織の内部統制には厳格な人ですが、ひどいジョークや危険球ぎりぎりの発言をする、別の意味で危険な司令官です。本人はそれを楽しんでいるのですが、周りからするとドン引きすることもしばしばで・・・

ただ、今回の司令官の誘いには素直に従います。なにより、フネの時代から心配していた後輩に会えること、その後輩と食事をできる機会があるのはうれしいです。

多国籍の寄り合い所帯な本警備府にあって、共通語と言えば音楽と食事、そしてくだらないおしゃべりなのです。その意味では司令官が主催する月に一回の“趣向を凝らした”ディナーというのは艦娘にとっては楽しみなのですが・・・

なんでしょうか?今回はやけに注意事項が多いです。その主たるものは、“男性は全員タキシード以上のフォーマルな服装”、“女性は全員イブニングドレス以上の服装”となっています。それを見た飛鷹さん姉妹は若干顔が引きつっています。「そんなもの持っていないよ!」と顔が訴えています。

司令官「ああ、飛鷹さんと準鷹さんは大丈夫ですよ。氷川丸君、確か和装があったよね。君もそうだが、日本の艦娘は全員和装だよ。」

そうウィンクする司令官に、私たち3人は唖然としてしまいました・・・

 

結果的に、日本の艦娘は全員和装をしたんだ。

アメリカやイギリスやロシアの艦娘はドレス姿だったけど、その中で日本の艦娘は全員和装ということでやっぱりインパクトがあったらしい。招かれていた余市町長やら市議会の議長はあたしたちに見とれていたよ。

飛鷹「隼鷹、鎮守府ではこのことはくれぐれも内緒にしておきましょうね。」

隼鷹「ああ、わかったよ・・・」

さすがの私でもわかる。こんなことが知れたら、周りが何というか・・・

きっと、笑いものになってしまう。

 

しかし、さすがは余市の司令官。妖精さんに指示を出したらしいけど、警備府のホールを本格的なバンケットルームに改装していた。本来なら私たちにもこんな部屋があって、太平洋を航行する中で紳士淑女が食事や酒を楽しみながら、葉巻や煙草を吹かせて歓談をしていたんだ・・・

氷川丸先輩に案内されてバンケットルームに入った時、私は何とも言えない感情に包まれた。空母として生きたあの戦争のころ、そして今の深海棲艦との戦いには悔いはない。ただ、こういう部屋が自分の中にもあったかもしれない世界が、実は存在しえたのかもしれないと思うと、ふと涙が出そうになる。平和な海、私たち艦娘がほしい、平和な海・・・

 

司令官の乾杯のあいさつでパーティーが始まりました。

給仕の妖精さんがきちんと、定められた手順とタイミングで料理と飲みものを持ってきます。さすがです。隣に座っている氷川丸先輩の話ですと、この給仕たちは氷川丸先輩直々にしごきあげたそうです。

さて、妹の隼鷹は大酒のみで同じ軽空母の千歳とくだをまき、時には重巡洋艦の那智さんや足柄さんと張り合っているので、このような席でも飲むのではないかと心配でしたが・・・

やはりここは商船出身ですよね。ほどほどに飲んでいます。

夢のようなひと時です。さっき、隼鷹がハンカチで涙を拭いているので心配になって尋ねたのですが、自分たちにもこういうものがあったかもしれない世界がありえたこと。それが私たちのほしい平和な海そのものだということに気づいたのだと話してくれました。

やはり気になって傍についてくれた氷川丸先輩もその言葉に、ただ頷くだけでした。

 

食後、バーに席を移動して私たちは飲んでいます。

飛鷹「先輩、今日はありがとうございました。

私と隼鷹は先輩に礼を言います。楽しいひと時でした。私達が、太平洋航路の花形客船として期待されていたころのメニューに飲み物。そして・・・

準鷹「食後の一杯」

飛鷹「隼鷹、今日はべろんべろんになってはだめですからね。」

氷川丸「あら、隼鷹の酒癖はそんなに悪いの?だったら、私が矯正してあげましょうか?鎮守府に連絡して、技術交流とかの名目でしばらくこっちにいれば、立派な淑女にできますよ?」

隼鷹「いいえ!先輩!その必要はありません。飛鷹、今日は節制して飲むよ・・・」

先輩の言葉に隼鷹がびっくりして遠慮しました。その隼鷹の様子を見て、私たちは大笑いしました。

 

しばらく、紅茶を片手に優雅なひと時を過ごします。鎮守府でも、金剛さんが「tea partyネ!」と言って、お茶会を開いていますが、私はどうもあの会が好きではありません。あのお茶会は、金剛姉妹の、金剛姉妹による、金剛さんのためのお茶会で私たちが積極的に入っていける雰囲気ではありません。お茶会はもっとこう、ゆったりするためのものだと思うのです。英国帰りの帰国子女との違いなのかもしれませんが・・・

なので、いま、ディナーの後に大好きな先輩と語り合っているこの空間と雰囲気は大好きです。

 

氷川丸「これを頼みます。」

私は近くのウェイターにオーダーを出します。

鷹姉妹が気に入ってもらえてよかったです。今回、鷹姉妹と駆逐艦数隻が入港すると事前に連絡があった時の、あの司令官の楽しみの口実が一つ増えたといわんばかりの眼光の鋭さに私は頭を抱えてしまいました。うちの司令官は普段は至って普通の人なのですが、面白そうなことがあるとすぐに飛びつきます。今回もその連絡を受けてから、「今回の夕食会は昭和初期のパーティー形式だ!格式ばるぞ!」と叫んで、嬉々として関係各方面に指示を出す司令官を見て、私も、副艦のベルナップ級巡洋艦娘ベルナップも、補佐艦のO・H・ペリー級フリゲート艦娘スタークも、いつもの癖が始まったと生暖かく見ていたものです。

そうはいっても、司令官はディテールまでこだわるので、最高のパーティーになったと思います。さて、最後は私が彼女たちを感動させるとしましょう。

 

ウェイターが3つのカクテルグラスを持ってきました。

氷川丸「満鉄のあじあ号で出していたカクテルです。緑がその名も「グリーン」、赤いほうが「スカーレット」。グリーンは隼鷹さんに、スカーレットは飛鷹さんにどうぞ。私は、「ヨコハマ・カクテル」で。」

そういって、私たちは各々、グラスを手に取ります。

氷川丸「再び出会えたことに。乾杯。」

そういって、私たちはグラスに口を付けました。酒飲みの隼鷹さんも少しずつゆっくりと味わいながら飲んでいます。

飛鷹「おいしいです。」

隼鷹「おいしいです。先輩。」

氷川丸「それは良かった。」

 

私たちの後ろの方で、何やら騒がしくなってきました。ディナーの後でのパブタイムということもあり、店内は多くの正装したお客さんで賑わっています。

その店の奥の方にある大きなステージではバンドが準備を始めました。

そして、しばらく音合わせをしたのち、音楽が始まりました。

 

“あわれ春風に なくうぐいすよ”

歌手の方の歌声が聞こえてきます。

 

隼鷹「イエライシャン、ですか?」

私たち姉妹は日満航路にも、日支航路にも就航する予定はそもそもなかった。マリアナ沖で沈んだ姉貴はもちろん、私も戦後、復員船になることもなかった。ただ、中国や満州からの引揚者がよく口ずさんでいたこの曲のことはよく覚えている。

私は一気にカクテルを呷った。飛鷹が少し驚いたような表情でこっちを見ている。そんなに驚くなよ・・・先輩の手前、いつものように泥酔しないって。

お代りに私はジョニ黒を頼んだ。先輩も、そんな私を見て、ニコニコしながら同じものを頼んでいる。

 

いつの間にか、店内の多くのお客さんがイエライシャンに聞き入っている。

隼鷹「ここは上海の外灘ですか?」

氷川丸「だったら雰囲気が出るのですけどね・・・」

隼鷹「まさかあの歌手の方は李香蘭とかじゃないでしょうね?」

笑いながら私は先輩にそうたずねる。

氷川丸「いえいえ。当警備府の広報担当艦娘「プルクワ・パ?」です。私の同僚で、フランス娘ですよ。フランス語はもちろん英語もロシア語も日本語も堪能です。」

なるほど、確かによく見ると日本人や中国人じゃないな。しかし、歌がうまいな・・・

 

“Le Temps Des Cerises”

飛鷹「サクランボが実るころ、ですか?さすがにシャンソンはうまいですね。」

そういって私は感心します。

氷川丸「仕事でもすごいのよ。イクさんにゴーヤさんですよね。音紋はばっちり押さえていますし、どういう泳ぎ方の癖があるかもばっちり。」

隼鷹「え!?」

隼鷹がグラスを落としそうになりました。私もそうです。しばらく前に、鎮守府に来航したこちらの潜水艦娘スコーピオンさんから聞いたのですが、潜水艦には独特の指紋のようなマークがあり、それでその艦を特定できるのだとか・・・

氷川丸「私たちをなめちゃいけませんよ。私は広報専門ですが、彼女の本職は海洋観測ですからね。潜水艦の音紋収集は仕事ではないのですが、この間“すぐそこの海で潜っているのがわかりました!ばっちりとれています!”って言っていましたよ。」

そう、先輩は笑いながら言っていますが・・・

これで鎮守府所属の潜水艦の半分は丸裸にされてしまったようです・・・

 

氷川丸「今度、私たちに酷いことをしたら許さないからね。それだけは覚えておきなさいよ。」

もう、酔っているとかいないどころの話ではないよ・・・

氷川丸先輩、マジで顔が怖いよ。噂ではこの警備府所属のフネで、内地に好意的な感情を持っているフネは少ないとは聞いていたけど・・・先輩もそうですか?!

隼鷹「先輩?少し飲んでいらっしゃいます・・・?」

氷川丸「飲んでいる?いいえ。そんなことありませんわ。ただ、後輩に言ってもしょうがないけれど、旧海軍には憎さ百倍よ!」

どうやら、先輩は仲が良い面子で飲むと悪酔いするみたいだ・・・

隼鷹「飛鷹?どうしよう・・・」

隼鷹「どうしましょう・・・このままにしてもいけないし・・・」

ひょいと見ると、天の恵みか、歌い終わったプルクワ・パ?さんが私たちを見つけたみたいだ。私は急いで合図を送る。

プルクワ・パ?「あらあら・・・氷川丸寝てしまったのね。」

確かに先輩は寝落ちしたみたいだ。静かに寝息を立てているのがわかる。

プルクワ・パ?「あなたたち、氷川丸の後輩なのですってね?楽しみにしていたのよ、彼女。あなたたちの来航スケジュールが決まってから、総務部内での仕事を片付ける傍らで今日の宴席の設営を全部取り仕切って・・・後輩に、戦前の日本郵船北太平洋航路の栄光を伝えるんだって、それが、私に残された仕事なんだって・・・・」

先ほどまでのような、優しい声でプルクワ・パ?さんが話をする。そうか・・・先輩も楽しみにしていたのだ。

飛鷹「そうだったのですね・・・」

プルクワ・パ?「うち(フランス)もそうだけど、外航航路は大戦後、軒並み廃れたでしょう?戦後も氷川丸は残れたけど、それ以外の船はみんな改装されるか、解体されるか、売りに出されるかでもう残っていないのよ・・・太平洋航路も大西洋航路も。で、司令官に相談に行ったわけ。後輩が来るから、最後の機会だからそれを伝えたい。それが最後の役目の一つだって・・・・」

そういいながら、彼女は優しく寝入ってしまった先輩をさすっている。先輩、今日を楽しみにしてくれていたんだ・・・空母になってしまったけど、日本郵船の北太平洋航路に就航するはずだった客船、出雲丸と橿原丸として迎えようとしていたんだ・・・

隼鷹「プルクワ・パ?さん。先輩を私室(キャビン)まで送りたいのですが、教えていただけますか?」

飛鷹「私も一緒に送っていきます。」

プルクワ・パ?「では、一緒に送っていきますか?」

そういって、私は先輩をかついだ。先輩って、こんなに小さかったんだ・・・

それで、大戦中は病院船として、戦後は外貨獲得の手段として海を渡ったんだ・・・

そう思うと、泣けてきた。飛鷹も同じだったみたいだ。部屋に送るまでの間、私たち姉妹は、涙がこらえられなかった・・・

 

紳士「あの戦争で、日本はほぼすべての大型外航客船を失いました。戦後生き残ったのは、氷川丸のみ。」

紳士は静かに客もまばらになりつつある店内を眺め、視線をバーカウンターに戻してから話を続ける。

ベル「そうらしいですね。潜水艦、航空機、水上艦・・・すべてを沈めました。」

紳士「戦後の日本初の太平洋航路はアメリカ系船会社の独壇場になり、日本郵船も商船三井も結局は定期客船から撤退。」

ベル「でも、それは日本本土の経済成長で経済的意味での移民がいなくなったことと大洋間の交通が航空機の発達で足の遅い船が必要なくなったことが大きな原因なのでしょう?」

ベルの話に、紳士は静かに頷きながら話を続ける。

紳士「その通りだよ。でも、氷川丸が戦後太平洋航路に復帰したのは終戦から12年経ってから。干支が一回まわっているんじゃそりゃ客は戻らないよ。老朽化もしているしね。それにさ、68年にはもっと華やかだった大西洋航路だって終わっているんだぜ?」

そういって、紳士はグラスに残っていたジョニ黒を一気に飲み干した。

紳士「テクノロジーの進歩もそうだけど、戦争が文化を破壊することのいい例じゃないのかな?僕は時たまそう思うよ。」

ベル「そうですね・・・私も、戦うことが本分ですが時たま自問することがあります。“敵から何を守るために私たちは戦うのだろうか?”と・・・」

ベルの言葉を、あえて紳士はスルーしました。

紳士「じゃあ、ベル。ごちそう様。」

ベル「行ってらっしゃいませ。」

ベルはそのことに気づいているのかいないのか、悟らせないいつもの表情を浮かべて、紳士を見送った。

 

Chinzyuhu produced Waiting Bar Avanti

This program presented by Chinzyuhu

 

本作品を書くにあたり、以下の本を参考・引用いたしました。

著者の資料収集の熱意と、作成に感謝いたします。

・コース料理参考

満州鉄道まぼろし旅行 2002年 文春文庫 川村湊著

(作中のメニューは38/39ページのものをそのまま使いました)

・太平洋航路関係

時刻表世界史 2008年 社会評論社 曽我誉旨生著

 

 

 

 

 




今回の酒は「グリーン」「スカーレット」「ヨコハマ・カクテル」

ちなみに「グリーン」「スカーレット」に関しては、札幌と銀座に実際に飲める店はありますが、実はそのレシピが本物であるかどうかはわからないらしいのです。
満鉄の消滅とともに、そのレシピも消えて、現在のレシピはいわば復刻版とか・・・

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1294970552
(ちなみにそれに関してのYahoo!知恵袋)

「ヨコハマ・カクテル」は戦前に編集されたカクテル・ブックにも載っている由緒正しいカクテル。
https://www.asahibeer.co.jp/cocktailguide/search/?CMD=onEdit&ID=1010401125
(そのレシピ)

基本、カクテルは・・・
①作り手の腕次第で味が大きく変わる
②いろいろなものを混ぜるので総じて高い
③その分カロリーが高い
という理由であまり飲みません・・・

ただ、このカクテルに関しては機会があれば飲みたいですね。
きちんとしたところで飲むと、金が溶けていくんだよね・・・
(まぁ、DMMに献上するよりは生産性があるかもしれないけど・・・)


さて、次の主軸はコース料理。
これは参考になるものがないので、本文にあるように、川村先生の著作より引用いたしました。
しかし、これが当時の満鉄総裁主催のディナーメニューなんですよね。
結婚式に招待されたときに出されるメニューよりもシンプルかもしれません。

ただ、当時の日本人が洋食慣れをしていないこと、食材調達の困難さを考えるとこの通りなのかもしれませんね・・・

今回のホストシップは氷川丸!
お前は”艦”じゃなくて”船”だろうという突っ込みはいいとして・・・
あの、横浜市山下公園に係留されている氷川丸です。
経歴は本文中の通りですが、実際に鷹姉妹のベース、橿原丸級の客船は太平洋航路に投入されるはずでした。その際には、当時就航していたアメリカ船と並ぶサイズになっていたので、氷川丸はメインの航路から外れることになっていたかもしれません・・・

ただ、戦後に日本郵船が太平洋航路に戻ってくる際には使える客船は氷川丸しかなく、さらには客船のメインオペレーターは商船三井に移っていたため、氷川丸の引退とともに郵船は客船のオペレーティングから事実上撤退しました。
(飛鳥というクルーズ船で戻ってはきましたが)

その意味では、鷹姉妹は日本郵船最後の定期客船になったのかもしれません。


ハードリカーは「ジョニーウォーカー黒ラベル」
あのジョニ黒です。
今では一般でも安く買える酒ですが、昔はジョニ黒と言えば高級酒の代名詞でした。
なにせ、1972年に発生したあさま山荘事件で、当時の警備実施の指揮官が現場の機動隊長に差し入れしたのがジョニ黒でした。

ちなみに先の川村先生の本でのジョニ黒価格は昭和12年で10円
現在価格では約36,000円

参考:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1349868373
より。1935年段階での映画館入場料は50銭
現在は1,800円なので、1800*10*1/0.5=36,000円

う~ん。大卒初任給が20万円で考えて、酒でほぼ20%が吹っ飛びますからね・・・
そらうかうか買えないわな・・・

今回の音楽はイエライシャンとサクランボの実るころ。
どちらも戦前のスタンダードナンバー
昨年、李香蘭こと山口淑子女史が亡くなりました。
彼女がモデルになったドラマは数本ありますが、個人的に好きなのは1989年のフジテレビの「さよなら李香蘭」
いやぁ・・・傑作ですよ。本当

サクランボの実るころは、1992年公開の「紅の豚」で加藤登紀子女史が歌っていましたね。あの作品、筆者のお気に入りです。
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