「じゃあ改めて紹介するぞ。こいつがギャング組織『ビーハイブ』のボス、アーデルト•桐崎•ウォグナーだ。そしてこっちがその娘の桐崎千棘お嬢ちゃんだ。」楽と宗次郎の父親は1度咳払いをして紹介し始めた。
「君達のことはよく聞いているよ。よろしくね楽君、宗次郎君。」アーデルトが千棘と同じ金髪を揺らしながら言う。
「初めまして、宗次郎です。」
「楽です。どーも……じゃなくて!」
「パパは知らないのよ!なんで私がこんな兄もやしと⁉︎」
「誰が兄もやしだコラ⁉︎親父!俺達学校じゃめちゃくちゃ仲悪いんだからな!」
その後もいつもと同じように口喧嘩が始まる。それを見ていた宗次郎にアーデルトが話しかける。
「あの2人はいつもあんな感じかい?」
「そうですね。最後は桐崎さんが殴って終わりますよ。あ、ほら。」
そんな会話をしている間に楽が宙を舞っていた。その後も楽が起き上がり口喧嘩が再開される。その光景を見た親2人は口を揃えて、
「「なんだ仲いいじゃないか!」」
「「良くない‼︎」」
「(似た者同士だなぁ。)」とそんな呑気な事を考えていると爆発音と同時に壁が破壊され、破片が飛び散り殴られて少し離れていた楽にだけその破片がぶつかっていた。
「見つけましたよお嬢……。どうやら集英組のクソ共がお嬢をさらったというのは本当だったようですね……!」
「ク、クロード‼︎さらわれてなんかないから‼︎」
クロードと呼ばれた男は全身白のスーツで固めてあり、仲間を引き連れずれてもいない眼鏡を直しながら殺気を放っている。
「「「大丈夫ですか組長ーーーっ⁉︎」」」
「なんじゃあ今のは……、てめぇらビーハイブじゃねえか‼︎」
先程の爆発音に気付いたヤクザ達が次々に部屋に入ってくる。その中で若頭の竜か一歩前に出てきてクロードと睨み合う。
「これはこれはビーハイブの大幹部さん……。今までは手加減してやったけんどのぉ、今度という今度は許さへんぞ‼︎」
「いいだろう……。お嬢に手を出したらどうなるか教えてやる‼︎」
殺気がぶつかり合いその間で楽と千棘が焦る。そんな雰囲気を破るのは2つの組織のボスであった。
「なんか勘違いしてるやつがたくさんいるようだからはっきりさせておくか。嬢ちゃんをさらったなんてのは誤解だ。なんせ……。」と宗次郎の肩を掴む。
「そうだよクロード、だって千棘はこの子と……。」と千棘の肩を掴み宗次郎へと寄せる。
「「ラブラブな恋人同士だから。」」
そう言い放つとその場にいる全員が驚愕の表情を浮かべ叫ぶ。
「「「なぁあにぃぃーーー⁉︎」」」
「ボス!それは本当なのですか⁉︎」
「あぁ、僕らが認めた仲だ。」
すると沈黙が流れ、竜の言葉で周りが騒ぎ始める。
「そ、そいつはすげぇ‼︎宗の坊っちゃんにようやく彼女が‼︎心配だったんすよそんな顔して全然出来ねえから‼︎いやー本当にめでてぇなあ‼︎」
「ようやくとか言わないの!」宗次郎が顔を赤くして少し怒る。ヤクザ達の盛り上がりに恥ずかしくなっている。
「お嬢。いつの間にかそんな年頃になっていたのですね……。これは喜ばずにいられません‼︎」
「ちょ、ちょっとクロード泣かないでよ⁉︎」
さっきまで敵対していたヤクザとギャングが肩を組みながら笑いあっている。そして2人の親の思惑通り抗争は中止され交際については全力でサポートされることとなった。その後はヤクザとギャングの質問コーナーが行なわれ、大きな問題もなく終えることが出来た。そして今はそんな彼らから解放され2人で縁側に座っている。
「なんでこんなことに……。こうなった以上やるしかないのね……。」ため息を吐きながら体育座りの千棘。
「ごめんなさい桐崎さん。楽の方が良かったかな?」宗次郎が謝る。
「それこそ死んでも無理!でもカップルって言っても何すればいいのかしら?」
「僕は付き合った事とかはないので……。」
「あたしだってないわよ!恋愛とかよくわからないし。」
「意外ですね、桐崎さんは綺麗ですから周りがほっとかないでしょうに。」
「や、やめてよそういうこと言うの!」
「?、すいません。」なぜかはわからないがとりあえず謝る。
「でもこれからはあいつらの前では恋人頑張らないと!バレたらただじゃすまないし。」
「もうあの白スーツの人は疑ってましたけどね。」
「嘘⁉︎絶対にバレるわけにはいかないわね……。」
すると後ろの障子が開きこの2人も中で行われていた宴会に巻き込まれた。そして日付けも変わりギャング達も帰った後、宗次郎の部屋には楽がいて2人で話している。
「本当に大丈夫か宗次郎?あんな奴と恋人なんてさ。」
「あんな奴って……。なんとかするよ、それとも楽がやりたかった?」
「んなわけねぇだろ‼︎あいつと付き合うのは死んでも無理‼︎」
「そうかな?僕はちょっと楽が羨ましいけどね、桐崎さんに本音ぶつけられてる所とか。」
「本音と一緒に鉄拳が飛んできたら世話ねぇよ……。」
「あはははっ!まあそうだね。僕はもう疲れたから寝るよ?」
「あぁ、わかった。これから気をつけろよ?」
「はーい、おやすみー。」
そう言って布団に倒れこむ。
「(でもあの人達の前でだけ恋人のフリすればいいんだからそんな大したことじゃないか。)」
そんな甘い考えをしながらゆっくりと夢の中に引きづり込まれていく。これからの彼の生活は大きく変わっていくことに宗次郎は気づくことはなかった。
「お、おはようダーリン!突然で悪いんだけど今からデートに行かない⁉︎」
寝起きの宗次郎に聞こえてきた言葉は頭を混乱させるのに十分な威力だった。ヤクザ達に無理矢理連れてこられたと思ったら千棘がこんなことを言っているのだ。よく見ると口元には怒りを感じさせ、目には少しだけ涙が浮かんでいる。
「今日はいい天気です。こんな日にデートに行かないカップルはいませんよねぇ?おやぁ?そんな顔しているということは行きたくないんですかねぇ?」
隣のクロードがこちらを睨みながら言ってくる。
「いや、寝起きだったもので。(さっそく仕掛けてきましたね。)外で待たせるのも悪いですから、桐崎さん部屋に来てくれる?」
「う、うんわかったわダーリン!」
「あ。あなたは結構ですよ?白スーツの人?早くおかえりください。」
「わ、わかりました。お嬢をよろしくお願いしますね。ちなみに私の名前はクロードです、お見知り置きを。」額に青筋を立て、歯ぎしりをしながら去って行く。
「(今日は絶対に見張られるだろうなぁ)」
千棘を部屋へ案内しながらため息を吐く。千棘は初めて男の部屋に入ることで緊張していてそんなため息に気づくことはなかった。長くなるであろう1日はまだ始まったばかりだ。