明治平成偽恋浪漫譚   作:aoh

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早く原作に繋げたい自分がいる。


第三幕 ヌクモリ

宗次郎視点

 

 

楽と友達になった僕の生活は毎日が充実していた。家にいると息が詰まりそうになるが、外に出るだけで自然と笑顔になれた。雨の日は楽が持ってきた『げえむ』というのをやらせてもらった。中々面白いが、やっぱり僕は体を動かしたりする方が合っているようだ。だって楽に勝てないし!僕は負けず嫌いなんだってことも初めて気付いた。でも負けても嫌な気分じゃない。これが友達なのかなと思うと悪くないなぁ。

 

 

 

 

 

 

それからの夏休みは色んな友達が出来ていった。

 

「わたし桐崎千棘!よろしくね!」

 

元気がよく見た目からは想像出来ないほど流暢に日本語を喋る金髪の女の子に、

 

「私はお嬢の護衛をしている、鶫誠士郎です」

 

その金髪の女の子に振り回され困り果てているが、それが嬉しそうな女の子に、

 

「名前は橘万里花…。お父様はマリー言うばってん」

 

体が弱く他の子に比べると声に元気がない栗毛の女の子に、

 

「え、えっと……。わ、わたひ、わたしはお、小野寺小咲ですっ!」

 

言葉に詰まり、噛みながら顔を少し赤くして自己紹介をした内気な女の子に、

 

「私は奏倉羽!困ったらなんでも私に言って!」

 

他の子より年上だからか、すぐにお姉さんぶりたがる長い黒髪の女の子など個性的な子供達が集まっては暗くなるまで遊び続けていた。女の子が多いことについては、楽は気にしていたようだが宗次郎は全く気にしてはいなかった。

 

気がつけばすでに8月の下旬で子供達は少しずつ減り始めた。内気な女の子は家族に連れられ自分の家に帰り、金髪の女の子とその護衛の女の子はアメリカに帰ってしまった。そして体の弱い栗毛の女の子が九州に帰ったその日に事件は起きた。

 

 

辺りは暗くなり家に着いた宗次郎なにやら違和感を感じていた。いつもならば明かりが点いている家が真っ暗であり、外に漏れている大きな音量のテレビの音も聞こえない。扉を開け中へ入り電気を点けてみるといつもは散らかっている机の上が綺麗になっており、ひとつの封筒が置いてあった。それを手に取り中を見てみると手紙が1枚入っていた。そこには、

 

 

「急なことによりあなたを捨てていく。ごめんなさい」と、

 

 

その母親の字からは焦りと冷たさを感じ取ることが出来た。最後の謝礼からは全くと言っていいほどその意思は感じられなかった。宗次郎は、

 

「またこうなるのか……。」と呟いた言葉には悲しみが含まれていた。あんな母親でも自分に愛情をかけてくれると思っていた。しかしそんな希望もあっさりとこの1枚の紙で粉々にされた。ここ最近、せっかく出来た友達がばらばらになっていくのも合わせて、宗次郎は、

 

「そうだ。最初から僕は1人だった」と自嘲気味に笑い始めた。

 

 

今日は楽と羽が帰る日であり、宗次郎と楽は久しぶりに2人で遊んでいた。すると、

 

「宗次郎、なにかあったの?」と砂山を作りながら不意に言いだした。

 

「急にどうしたの?なんにもないよ」と最初は驚きながらも笑いながら砂山を作る。

 

「なんか笑顔が変な感じがしたからさー」

 

「………。楽にはわかるんだね」

 

「なんとなく、時々びびっとくるんだよね!」と楽はスコップを向けながら言った。

 

「実はね………………」と昨日の出来事を全て話した。すると楽は

 

「じゃあこれからどうすんの⁉︎」と表情をコロコロと変えながら宗次郎の心配をしていた。

 

「楽は優しいなぁ」

 

「のんきなこと言ってる場合か!」

 

といったやりとりをしている間に楽の父親が近づいて来ていた。

 

「おめぇかあ!楽と仲良くしてくれてるガキってのはぁ!」

 

「親父!そんなことより聞いてくれよ!実は……………!」と楽が事情を説明する。しかし楽は怒りで興奮して上手く伝える事が出来なかったため宗次郎が解説をしていた。

 

 

「おめぇ……。名前は……?」

 

「瀬田宗次郎です」

 

(やっぱりあそこの子供か……。どうするか…本当の事を話すべきか……)

 

「???」と子供2人が首を傾げていると、

 

「あぁ……おめぇの親は少し遠くに行っちまったからもしかしたらしばらく会えねぇかもしれねぇ」

 

「はぁ⁉︎意味わかんねえよ⁉︎」と楽が怒る。それに対して、

 

「大丈夫ですよ。頑張れば1人でだって生きていけますし」とニコニコと笑いながら言う。

 

その笑顔を見て楽の父親は驚きながらも心の底から沸いてくる怒りを鎮めていた。

 

(こんな小さな子供になんて顔させやがる………あんなクズでも前はウチの組のモンだったんだ……,こいつは組長である俺の責任だ)

 

楽の父親は子を持つ親だからわかるのか、それとも職業柄なのかはわからないがこの子の笑顔は偽物であると見抜いていた。そしてもう既にこの街から逃げ出している宗次郎の親達を思い、一児の親として拳を握りしめていた。

 

「なぁ、おめぇ」

 

「はい?」

 

「ウチへ来ないか?いや、来い!そんでもって俺の息子になれ!」

 

「はい⁉︎」

 

突然の親子宣言に戸惑う宗次郎。

 

「いいじゃんそれ‼︎宗次郎は弟な‼︎」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

「なんだおめぇ嫌なのか⁉︎」

 

「嫌じゃないです!むしろ嬉しいくらいですけど………。僕あなたに何もしてあげられないです……」

 

「子供は難しい事考えなくていいんだよ!親にいい笑顔を見せてくれりゃあそれで満足なんだ。だから俺に見せてくれ。俺はオメェのことを目一杯愛してやる!」と楽の父親の目には涙が浮かんでいた。

 

この人なら僕が1番欲しかったものをくれるかもしれない。宗次郎は無意識に涙を流しながらそう悟った。

 

「よろじく、おねが、いしまず!おどうさん!」

 

涙混じりの言葉は目の前の2人にはっきりと伝わり楽は笑い、父親はその大きな掌で宗次郎の頭を撫でながら、

 

「親父でいいぞ。宗次郎!」

 

その掌から頭へ温かいなにかが流れ込んでいるのを宗次郎は感じ取っていた。

 

そして月日が経ち彼は瀬田宗次郎を改め、一条宗次郎として生きていくことになった。確かな温もりを手に入れた彼が本当の笑顔で笑う日はそう遠くないだろう。





次からは時間軸が結構飛びます!多分!
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