かなり長くなってしまった気がする。
私の名前は小野寺小咲、中学3年生の私は恋をしています!相手は同じクラスの一条宗次郎君、成績優秀スポーツ万能でありいつもみんなの前で笑顔を浮かべる彼の事が好きだった。しかし私は最初の頃は彼がヤクザの息子という事もあってか、嫌な噂が色んな所から流れて来てとても苦手だったんです。
彼とは3年生になって同じクラスになり、出席番号で座るといきなり隣の席が噂の彼で少し怯えていました。すると彼の後ろの席の人が話しかけてきて、
「小野寺!同じクラスだったんだな!」
「一条君!これからよろしくね。」
その人は2年生の時に同じクラスだった一条楽君だった。彼もヤクザの息子と言われているが誰にでも優しく、真面目な人でした。
「あれ?楽のお知り合い?」
「うん。前まで同じクラスだったんだ。」
「初めまして。一条宗次郎です。えーと、小野寺さん?」
「は、初めまして、小野寺小咲です。」
「これからお隣さんだから仲良くしようね!」
「お隣さん……。うん!よろしくね。」
そう子供らしい言葉を笑顔で言われると(あれ?なんか思ってたより雰囲気違う?)なんて事を考え始めていました。嫌な噂の事を『多分嫉妬とかそういう類の嫌がらせだと思うけど』と親友が言っていた事を思い出し、少し不安が解れた時先生が入ってきてその会話は中断された。(ちなみにその時に初めて一条君達が兄弟だということを知りました。)
それから数ヶ月が経ちわかったことは、彼は学校が大好きだということだった。勉強も運動も行事も全て楽しそうに全力でやっている姿をいつの日か自然と目で追ってしまい、その姿を見ると笑顔になれた。それは私だけではなくクラス全員が感じているだろうと思う。
席替えをして、席が離れてしまい喋る事も少なくなってしまったが彼の『おはよう』と『またね』を聞くのを楽しみに学校に通っていた。
進路希望調査表が配られたその日の昼休みにある会話を聞いてしまった。どうやら彼は凡矢理高校を受験するらしい。私はその時尾鳥女子高校を受けるつもりだった。当たり前だが卒業したらほとんど会えなくなる。あの笑顔も、あの優しい声も、半年もしないうちになくなってしまう。そう考えるととても胸が苦しくなる。この時初めてこの気持ちに気付いた。
ーーーもっと話したい、一緒に笑っていたいーーー
「るりちゃん!私、凡矢理高校を受験します!」
「………。急にどうしたの。」
一条君達の会話を聞いた次の日、私の親友である『宮本るり』ちゃんに宣言した。
「あんた確か尾鳥女子高校に行くって言ってたよね?」
「え、えーと確かに言ったけど、それはその、なんというか……。」
「……(そういえば一条君達も凡矢理に行くって騒いでたような……。)ははぁん?へぇ?ふーん?」
「え、な、なにその声?(るりちゃんにはなんとなくばれてる気がする。)」と内心ドキドキしながら彼女から目を逸らす。
「じゃあ私も凡高にしようかな。行きたい大学はあるけど高校は特に決めてないし。」
「本当⁉︎じゃあそうしようよ!」
「でもあんたの学力じゃちょっと厳しいかもね。凡高は地味に頭良いから。」
「うっ………。が、頑張ります……!」
好きな人と同じ学校に行くという理由は少し不純かもしれないけれど、今まで夢や目標をあやふやにしてきた私にとって初めて真剣になれるものを見つけたのだからそれぐらいは大目に見てほしい、そう神様に願いながら家でも学校でもずっと勉強し続け、ついに試験当日となった。
「ありゃ〜?小野寺ちゃんにるりちゃん。2人も凡高だったんだね〜。」少し余裕そうな舞子君。
「あんた少しは緊張しなさいよ。」舞子君の顔を見てイライラしているるりちゃん。
「ま、まじかよ!教えてくれりゃあ良かったのに!」嬉しそうに言ってくれる一条君。
「う、うんちょっと言うの忘れてた。」緊張で心臓が爆発しそうな私。
「小野寺さん?顔、ガチガチだよ⁉︎笑って笑って!」私の目線まで顔を下げてニッコリと笑いかけてくれた。
その笑顔につられ笑うと「それでよし!」と言われ緊張が一気に吹っ飛びました。大丈夫、あれだけ勉強したんだから、みんなで一緒に受かりたい!
落ちてしまった。
あんなに頑張ったのに。『おはよう』も『またね』も聞くことはなくなってしまった。あれだけ勉強教えてくれたるりちゃんにも合わせる顔がない。一条君にも今は会うのが怖い。そう思った私は無心で家に帰った後、気が付いたら雪の中公園のベンチに座っていた。すると後ろから、
「……小野寺さん?どうしたのこんなところで⁉︎」
「いっ、一条君こそどうしたの……?」そこには私の好きな人、凡高を目指していた理由の人がこちらを見つめていた。
「合格祝いでうちの人達が宴会してて……その買い出し。」言いずらそうに答えてくれた。私の結果を知ってるのだろう。
「そっかぁ……。」
「結果、聞いたよ。」
彼はそう言いながら私にマフラーを巻いてくれた。
「寒いでしょ。手袋も貸したげる!」
「いいよ⁉︎悪いよ⁉︎風邪ひいちゃうよ⁉︎」
「そんな格好で言われても説得力ないよ〜。」と彼は笑顔でそう言った。
確かに今の私は上には制服にカーディガンを着ているが下は素足にスカートという格好で、気付いてしまうと今さら寒さを感じ少し震える。今は首に巻かれたマフラーと手にはめている手袋から温もりを感じて、とても幸せな気分だった。これで合格していればなんの問題もなかったのに。そう思ったら隣に彼がいるのにも関わらず泣き出してしまった。彼は私の頭を撫でながら、
「僕は知ってたよ。小野寺さんが凡高受けるの。」
「……うそ……いつから?」
「席替えしてさ、また隣の席になったでしょ?それからちょっとして、小野寺さんが授業中寝てた時に寝言で『凡高……凡高……』ってちょっとうなされてたのを聞いたんだ。」
そう、三学期になってすぐに席替えをしたら隣の席に彼が座ってきてとても嬉しかったのを覚えている。しかし家でやる試験勉強が忙しかったため、授業中に寝ることも数回あった。その時の寝言を聞かれていたなんて……。……待って、ということはもしかして寝顔も見られた?よだれを垂らしていたかもしれない⁉︎次第に恥ずかしさで顔が真っ赤になっていくのを感じた。
「そうだったんだ……。勉強したんだけどね。」と受からなかった自分を思い出しまた肩を落とす。
「後悔……してる?」と聞かれ私は無言で首を横に振る。
「凡高に行きたい理由はわからないけれど、泣けるほど真剣になれるもの見つけたんだから凄いと僕は思うよ。誰だってそういうものを探すことに努力するんだから。………僕自身小野寺さんの頑張りを隣で見ていて励まされたんだ。本当にありがとう。」
私は優しい彼の言葉でもう1度だけ泣いた。彼は黙って私の事を泣き止むまで撫でてくれた。そして私は彼にこの想いを伝えたい、そう思った。
「い、一条くん!わ…私言いたいことがあるの!」と急に言うと、少し驚いた顔で彼は私を見つめていた。
「あ、あのね、実は、私が凡高に行きたかった理由はーーーーー」と言いかけた時、
ピロリロリン♪ピロリロリン♪
携帯電話の音が鳴り響いた。その画面には『お母さん』という文字が書かれており、それに気付いた彼は、
「多分心配してかけてきたんじゃない?出た方が良いよ?」
「う、うん、ちょっとごめんね。(なんでこんな時にーーーっ⁉︎)」
私は少し離れた所で電話にでる。その声はさっきまで会話をしていた私達の声よりも大きく、雪で覆われた公園に響き渡った。
「こらーーーっ⁉︎小咲今どこなの⁉︎早く帰って来なさい⁉︎」
お母さんの怒鳴り声が私の耳を貫いて一条君まで届く。彼は噴き出すように笑い、私はその姿を見て恥ずかしくなる。携帯を落としそうになり、慌てて携帯を掴む。そして次に出たお母さんの言葉に、意識が飛びそうになった。
「あんた合格だって!良かったじゃない最後まで諦めなくて!」
「へ………?………合格?嘘⁉︎なんで⁉︎だって私落ちたのに……?」
私の頭の中はさっきまでの悲しさと合格したという嬉しさと、なぜ合格なのかという疑問でごちゃ混ぜになっていた。すると隣から、
「僕は宮本さんから補欠合格だって聞いたけど……?」
そうだった。私は合否結果を見てどう見ても私の前と後ろの番号はあるのに自分の番号がないという事を確認してからは記憶に残っていない。私は落ちたというショックで補欠合格の事を忘れていた。
「そっか……。私……!凡矢理に行けるんだ……!」
「おめでとう!これからもよろしくね?」
「うん!こちらこそ!」と涙を浮かべながらも笑ってそう言った。
すると既に電話は切れており、辺りは暗くなっていた。
「はやくその顔、家族に見せてあげなよ。すごく喜ぶと思うよ。」と私のニヤけた顔を見てそう言ってきた。
「うん!走って帰っちゃう!」と私が言うと、
「転ばないようにね?小野寺さん、落ちたと思うくらいおっちょこちょいだからなぁ。」とクスッと笑われた。
「〜〜〜もう!一条君の馬鹿っ!」と顔を赤くしながら、私は顔を見られないように背を向けて公園から出ようとすると後ろから、
「小野寺さん、『またね』。」と優しい声がする。私は振り返って、
「『またね』!宗次郎君!」と、どさくさに紛れて名前で呼び逃げるように走り去った。帰り道で2回転んだのは内緒です!
家に帰ると外にはかなり怒っているお母さんと泣きそうな顔をしている妹、そしてその2人をまあまあと抑えながら笑っているお父さんがいてとても暖かい気持ちになった。私はこんな家族が大好きで彼の事も同じくらい好きなんです。今度は必ず想いを伝える事を決心しながら、
「ただいま!」
と笑顔で言い私の為にお母さんと妹が用意してくれたご馳走を頬張った。
小野寺宅
「どおしよ〜⁉︎一条君のマフラーと手袋持ってきちゃった……。返さないと……。」
周りを確認して、マフラーを鼻に近づける。
「一条君の匂い……。おひさまの香りがする……。」
「小咲〜。ちょっと入るわよ〜〜ってなにやってんのあんた?」
私は急に入ってきたお母さんにびっくりして、マフラーを隠しながらなぜか机の下に潜り込んでいた。
「な、なんでもないよ!」
「あらそう?洗濯物ここに置いとくわねー。それより……。」
その時私はお母さんの顔が嫌な笑顔に変わったのを見逃さなかった。
「電話の向こうで聞こえた男の子の声……、もしかして彼氏⁉︎」
「ブフォ⁉︎ち、違うよ!一条君はそんな……!」
「一条君って言うのか〜。今度家に連れて来なさいよ!私がきっちり判断したげるから。」と嫌な笑顔のまま部屋から出て行った。
「もうっ!お母さんったら!………でも一条君が家にかぁ……えへへ〜いいなぁ〜。」と妄想を膨らませながらもう1度だけマフラーに顔をうずめた。