「どうしてくれんのよ‼︎恥かいちゃったじゃない‼︎」先程の一件でクラスメートから少し距離を置かれた千棘が怒鳴る。
「なんで俺が怒られんだよ。殴られたの俺だぞ!」それに対して楽が反論する。
「うっさい!日本での新しい生活の第一歩を華々しく飾るつもりだったのに……。あんたのせいで全部台無しよ‼︎」
「知るかよ!先に手ぇ出したのお前だろ!」
そんな2人のやりとりを遠目に見る宗次郎と集。
「なるほどなぁ。あの女の子が楽の怪我の原因だとはね〜。」
「まあ正確には楽に鞄がぶつかっただけだけどね。」
「それにしても仲悪すぎだな……。」
「そうなんだよね。楽があそこまで怒るのも珍しいよ。」
すると楽と千棘のやりとりを同じように見ていた先生が、喧嘩している2人に向かって、
「なになに、お前ら知り合いだったのか?それならちょうどいいな。」
「「は?」」なにがちょうどいいのかわからない2人は首を傾げる。教室に戻ると千棘の席の場所が変わっていて、
千棘 楽 宗次郎
「「えええーーーっ⁉︎」」
「なんでこいつが俺の隣に……‼︎」嫌そうな顔をする楽。
「断固抗議します!」泣きそうな顔の千棘。
「だって桐崎も日本に来たばっかで色々不安でしょ?だから頼んだぞ一条兄。」2人の叫びも虚しく先生は教室から出ていってしまった。
「こっち寄ってこないでよね。女々しさがうつるから。」
「こっちこそ。猿っぽさがうつったら迷惑………なにも言ってません‼︎」途中で拳が飛んできて一気に弱気になる。
「いい加減にしなよ。楽。」隣の席から少し怒ったように宗次郎が言う。
「な、何怒ってんだよ。てか宗次郎、席交換してくれないか?」
「そりゃ怒るよ。先生も言ってた通り転校初日で不安だったのにいきなり猿なんて言ったら可哀想だよ。」
「う……。悪かったよ。」
「それは桐崎さんに言ってあげて。席は桐崎さんが良いなら僕は構わないよ。その方が静かになるしね。」最後の言葉は笑みが浮かんでいた。
「わ、悪かったな桐崎。」
「ふんっ!最初から謝りなさいよねー。」
「(……なんなんだこの女!)、宗次郎と席変わるけどいいか?」宗次郎指しながら言う。
「宗次郎?」楽の向こう側にいる宗次郎と目が合う。
「あ、あの時の……。」みるみるうちに顔が赤くなっていく。
「えーと、二度目まして。一条宗次郎です。そこの楽の弟です。」
「弟⁉︎全然似てないわねぇ。」
「あはは、よく言われます。席移動しますねー。」
「はいどーぞ!隣はそいつじゃなければ誰だって良いわ。」楽を睨みながら言う。楽はそう言われて文句を言い返そうとするが宗次郎に目で制され、頭を抱えてもがいていた。
宗次郎が楽の事で謝り、千棘がそれを止めさせるというやりとりが数回繰り返された時、楽が叫び声をあげながら立ち上がる。
「無い!俺のペンダントが無い!一体いつから……どこでだ⁉︎」少し考えた後千棘睨みつけ、
「お前とぶつかった時に落としたかもしれねぇ!お前も探すの手伝え!」
「なんで私が探すの手伝わなきゃいけないわけ?そんなの1人で探せばいいじゃない……。」
「そんな頼み方で探してくれるわけないでしょ……。ぶつかった時に落としたのかもわからないし。」と呆れた表情の宗次郎。
「どうしたの一条君?」
「お、小野寺。いや、大事なペンダント無くしちまって……。」
「そうなの?私手伝うよ?」
「こいつのせいで無くしたんだ。こいつが探すのが筋ってもんだ。」
「なんですって⁉︎どんなペンダントよ?」
「あーこんくらいのチェーンの先にこんな形の錠がついた……。」指で大雑把に説明していく。
「えっそれって……。」
「どうした小野寺。もしかしてどこかで見たか?」
「あ、ごめん。多分勘違いかも……。」
「桐崎さん。面倒かもしれないけど少しだけでいいから探してくれないかな?一応大事な物なんだ。」楽よりは丁寧に頼む宗次郎。
「……わかったわよ。その代わり見つけたらもう私に話しかけないで。私、器の小さい男と友達なんて思われたくないから。」楽を指しながら言い放つ。
「おー望む所だっつーの!」
そしてようやく話が丸く収まるところに、帰ってきた先生により新たな爆弾が投下される。
「そうだ一条達。桐崎に学校の事教えてやって欲しいからさ、桐崎をお前らと同じ飼育係にしといたからよろしくな。」
場所は変わり飼育小屋前。呆然とする2人と動物達に挨拶する宗次郎の姿があった。相変わらず口喧嘩をしている2人を無視して宗次郎は植物に水をあげる。すると早速、
「そんなに水やったら根腐れすんだろーが!」と楽。
「このくらい平気よ……多分。」と千棘。
「普通はバケツで水あげないよ桐崎さん……。」と宗次郎。
「お前には任せられん。俺が動物のエサ用意するからそれを運べ!」
「何よ命令しないでくれる⁉︎」
「えーとニワトリ一羽のエサの適量はーっと。」動物図鑑を片手に一匹ずつのエサを測り始める。
「あんたは細かすぎんのよ!そんなことしてたら日が暮れるわよ!男なら一気にどん‼︎」そう言うと金魚のエサ一ヶ月分を水槽にぶち込む。
「男らしすぎるだろ⁉︎こいつらはお前と違って繊細なんだよ‼︎」そう言った途端千棘のアッパーが炸裂し、この会話は強制的に終わらせれた。
「僕が全部やるから2人はもうペンダント探してきて。邪魔だから。」宗次郎の笑顔の中の静かな怒りを感じとった2人は、ビクつき小声で口喧嘩をしながら出ていった。
「全くあの2人を見てると疲れる……。」そう呟き金魚のエサを取り除きながら肩を落とす。ようやく1日目が終わりこれがペンダントが見つかるまで続くと思うとお腹が痛くなりそうな宗次郎であった。