明治平成偽恋浪漫譚   作:aoh

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第八幕 ナカヨク

ペンダント探し2日目

 

 

「(日本語って難しい……。あ!まだ消さないでよ!)」千棘は日本語を喋ることには慣れているが、文字を書くのは慣れていないため授業にノートを取るのに必至になっている。

 

 

「おい、宗次郎。桐崎が……」それを見た楽が声をかけてくる。

 

「大丈夫、わかってるよ。ちゃんと綺麗に写してあるから後で見せる。」気付いていた宗次郎もいつもより綺麗にわかりやすくノートをまとめていた。

 

「さすがだな。じゃあ頼むわ。」

 

「りょーかい。」

 

 

授業が終わり周りが道具を片付けている中、千棘はまだノートを書いていた。

 

「む〜〜、漢字難しい……。(ちょっと黒板の前通らないでよ!)」とイライラしながらも書き続ける。

 

「桐崎さんはい、これ貸してあげるよ。一応綺麗にまとめといたから。」

 

 

少し驚きながら受け取りノートを開くと確かに綺麗にまとめられていた。難しい漢字にはふりがなが振られており、簡単にだが先生が喋ったことまでまとめてある。

 

 

「返すのはいつでもいいからね!」と笑顔で言う。

 

「あ、あの、ありがと……。」顔をノートで隠しながら言う。

 

「どういたしまして。無理しないでいいからなんでも言ってね。」宗次郎は普段の楽への態度からして文句を言われるかと思っていた。しかし想像とは違い、可愛らしい態度の礼で思わず笑ってしまう。その事で顔を赤くした千棘から睨まれるが、それを見て本当に子供みたいだなと考えていた。結局この日もペンダントが見つかることはなかった。

 

 

 

ペンダント探し4日目

 

 

「なぁなぁ、お前らいつの間に桐崎さんと仲良くなったんだよ?放課後もなんかやってるし。」体育の授業中、集が突然に言う。

 

「はぁ?あれのどこが仲良く見えんだよ?」若干怒りながら言う楽。

 

「ほら桐崎さんって美人だからな。気になってるやつも多いわけよ。なんでこんな変な時期に転校してきたんだ?とかな。」

 

「確かに時期はちょっと変だよね。普通だったら入学式に合わせて来るだろうし。」宗次郎は確かに疑問を感じていた。入学から2週間で転校してくるなんて少しおかしい。

 

「あいつが美人?ないない!一緒にいるのも事情があるだけだし、断じてあんな猿とは仲良くねぇ!」そう言った楽にバスケットボールが飛んで来る。

 

「あんたまた言ったわね‼︎もう手伝わないわよ⁉︎」千棘には聞こえていたようだ。

 

「悪かったって‼︎」

 

 

 

ペンダント探し6日目

 

 

「一条君、このエサはここでいいの?」

 

「うん、ごめんね手伝ってもらっちゃって。」

 

「ううん!全然大丈夫だよ!」

 

飼育小屋には宗次郎と小野寺が仲良く作業していた。理由はあの2人がいると作業が全く進まないので、宗次郎が追い出したのを小野寺が見かけて手伝ってくれている。

 

「あの2人ももう少し仲良くしてくれればなぁ……。」

 

「でもあの2人の間であたふたしてる一条君は面白いよ。」

 

「面白いって……。」

 

「でもやっぱり一条君優しいよね。桐崎さんの為にノート取ってたでしょ?見てたよー!」

 

なんか改めて見られていたと思うとちょっぴり恥ずかしい。そう思い目線を外す。

 

 

「まぁ大したことないよ。」

 

「そうかな?そうだ!一条君は探してるペンダントどこで買ったのかな?」

 

「ん?あぁ楽ね。あれは10年くらい前に貰ったんだよ。」

 

「10……!物持ち良いんだね……。」

 

「ちょっとした約束でね。大事にしてるんだ。」

 

「約束かぁ……。」

 

この後も2人は探しにいったが見つかることはなかった。

 

 

そしてペンダント探し7日目

 

 

 

「「ねえねえ桐崎さん?」」笑顔で歩み寄ってくるクラスの女子。

 

「なに?」話しかけられた事が嬉しいのか笑顔の千棘。

 

その後の会話で千棘の顔がどんどん歪んでいく。そして会話が終わると外へと駆け出す。

 

 

「おせーぞ桐崎。早く手伝え……」楽がようやく来た千棘に催促しようとすると声が遮られた。

 

「もーーーーガマン出来ない‼︎やってられるかこんな事‼︎」

 

「な、なんだよいきなり。」

 

「…さっきクラスの子に言われたの……。『桐崎さん一条君って付き合ってるの?いつも放課後で楽しそうに話してるって聞いたよ〜?』って……。誰が楽しそうなのよ!私は親切でこのバカと一緒に探してるだけなのに!」

 

「な、なんだと!誰がバカだ!」といつもの口喧嘩が始まる。

 

 

 

「じゃあもう仕事終わったからペンダント探しに行くね。」と宗次郎。

 

「待って一条君!私も探すよ!」と小野寺。

 

「毎日無理しなくてもいいよ?」

 

「ううん!私もここまできたら見つけたいし。」

 

「そっか、ありがとう!楽が喜ぶよ。でも雨降りそうだから降ってきたら中止だね。」

 

そう言っていつものように2人は並んで飼育小屋を出る。するとこちらもいつものように口喧嘩が聞こえてくる。またかと宗次郎と小野寺は同時にため息を吐く。

 

 

「もう1週間経つのよ?いい加減諦めなさいよ⁉︎」

 

「あのなぁ!あれは俺にとっては……。」

 

「なによペンダント1つ無くしたくらいで、どーせ昔好きだった子に貰ったとかでしょ?あーやだやだ女々しいったらないわ!その相手もあげた事なんて忘れてるに決まってんのにバッカみたい‼︎」

 

「うるせぇな‼︎だったら探さなくていいからもう帰れよ‼︎」

 

 

いつもと違う雰囲気だと気づいた宗次郎と小野寺が駆けつけた時には遅かった。楽のペンダントに対する想いと、千棘の楽に対する不満が爆発して取り返しのつかないことになっていた。その爆発と同時に雨が強くこの場の空気を叩きつけていた。

 

 

「わかった……。」千棘はそれだけ言うと傘も差さずに背を向ける。

 

「小野寺さん。桐崎さんのこと頼めるかな?あのままじゃ風邪ひいちゃうし。」

 

「うん!こっちは任せて!」と小野寺は千棘を追う。

 

「楽も。風邪ひくよ。」

 

「女に本気で怒鳴るなんてな、本当男らしくねぇよ。あんなやつでも一緒にペンダント探してくれたのにな。」

 

「うん、そうだね。謝りなよ、桐崎さん楽の事情も知らずに一週間も探してくれたんだから。」

 

「あぁわかったよ……。」

 

 

しかしその次の日も楽は謝れないでいて、千棘もすっきりしないという顔で1日を過ごしていた。

 

「今日は僕1人で飼育小屋行くから小野寺さんは、楽と一緒に探してくれる?」宗次郎は頼み込む。

 

「わかった!一条君行こう?」

 

「あ、あぁわかった。」楽が千棘になにか言いたそうに見て出ていく。

 

 

「はぁ。楽も根性ないなぁ。桐崎さん、ペンダント探すつもりでしょ?」そう言った途端隣で座っている千棘がビクッと震える。

 

「えぇ!な、なんで私があんなやつの……。」

 

「このままじゃすっきりしないって顔に書いてあるよ?」

 

「なっ‼︎」顔を慌てて隠す。

 

「僕も手伝うからさ。さっさと見つけて楽にご飯でも奢って貰おう?これだけ探してるんだからそれぐらいしてくれてもいいと思う。」

 

「……わかったわよ!こうなったら意地でもあいつより先に見つけてあのバカ面にペンダント叩きつけてやる‼︎」机を叩き立ち上がる千棘。

 

 

 

それから数日経ちペンダント探し10日目

 

 

「あった!あったわ!」と大きな木を指しながら言い放つ千棘。

 

「木に引っかかってるなんて……。道理で見つからないわけだよ。」

 

「でも登らないと取れない……。どうしよう……。」と考えていると

 

「よいしょ!」あっさりとジャンプしてペンダントを掴み取る。

 

「あんたどんなジャンプ力してんのよ!」

 

「まあ取れたから気にしない。はいどうぞ。」ペンダントを手渡す。

 

「あ、あんたから返しておいてよ。」

 

「だめだよ。桐崎さんも言い過ぎたと思ってるから探してくれてたんでしょ?だったら返すついでに謝りなよ。」

 

「う……。もやしのくせに〜、わかったわよ!」

 

「うん!じゃあ呼んでくるね!」その場に背を向け楽達の方に走る。

 

 

 

「楽、桐崎さんが来て欲しいって。」

 

「あいつが……?なんだよこんなとこ呼び出して。」

 

「まあまあ楽しみにしてなって。」

 

 

すると遠くの方で千棘が構えをとり、なにか光ったと思うと楽の顔面にペンダントが直撃する。

 

「ギャアァアーー‼︎痛ってえぇ‼︎何すんだあんにゃろう‼︎」

 

「だ、大丈夫⁉︎一条君⁉︎」心配して駆け寄る小野寺。

 

「え…、俺のペンダントじゃねえか!なんであいつが……?」当たった物がペンダントだと気付いて呟く。

 

「桐崎さんね、あの後僕と一緒に探してたんだ。楽に見つからないようにね。」

 

「そうだったのか……。ん?」ペンダントに結ばれている紙を解くと英語でなにかが書いてあった。

 

「読めねえけどバカにされてる事だけはわかるな。でもあいつの言うことももっともなんだよな。いい加減こんな約束忘れちまった方がいいのかな……。」

 

「そんなことないよ!たとえ10年前の子供の約束でもその人にとっては大切かもしれないよ?」

 

「えっ…?小野寺なんでその事……?」

 

「僕がこないだ教えたんだよ。」

 

「宗次郎!なんで勝手に教えてんだよ!」

 

「だって探してくれてるのになにも教えないのはおかしいでしょ?まぁ桐崎さんは探してくれたけどね。」

 

「ごめんなさい一条君!私聞いちゃって……。」

 

「い、いや気にすんな!そうだよな、約束の子に会えなくても俺にとっては大事な約束だからな!色々サンキューな小野寺。またな!」

 

「小野寺さん、ありがとね!またねー。」2人で並んで帰る。

 

「あ、うん!またね。……はあ、また聞けなかったな……。」

そう呟き手に持っている鍵を2人の後ろ姿と合わせて見る。

 

「私のバカ……。」そう言って肩落としながら帰る。

 

こうしてペンダント探しの10日間はようやく終わったのだった。

 

 

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