名前はよろず屋と同じですが別人と思ってください。
名前考えるのがめんどくさいので…。
大魔宮バーンバレス。
大魔王バーンの超魔力によって空を駆ける巨大な居城。
大鳥を型どった「それ」は地上から遙か上空をゆっくりと漂っていた。
そして此処はバーンバレスの再奥、大魔王の間だ。
勇者ダイは今正に大魔王バーンと対峙していた。
しかし戦況は極めて劣勢。
ほぼ無傷なバーンに対してダイは激しく傷つき体力も落ちている。
そんなダイに大魔王は無慈悲に猛攻を加えていく。
イオナズン級のイオラを連発し、驚異的な体術で、ダイの小さな体を打ちのめす。
ダイの肉体が床に叩きつけられる。
大魔王は手刀を振り上げた。バーンの闘気が膨れ上がる。
自身の最強の技の一つでもある『カラミティエンド』だ。
ダイがこの技を受けるのは二度目、直撃すれば唯では済まないだろう。
バーンは無慈悲に手刀を振り下ろした。
「カラミティエンド!!!」
轟音と砂埃。
床は凄まじい破壊の痕が刻まれる。
しかしその場にダイは居なかった。
バーンが視線を移動させると、そこにはダイを間一髪の所で救出した仲間たちの姿があった。
ダイを救出したのは大魔道士ポップ。
瞬間移動呪文『ルーラ』によってダイを助けだした彼は不敵な笑みを浮かべて言った。
「俺らを殺らなきゃ勝ちとはいえないぜ」
「うざったい雑魚どもが」
大魔王の額の眼が怪しく光る。
次の瞬間、仲間たちの姿は消え掌大サイズの宝玉が床に転がった。
これが大魔王バーンの能力の一つ。
力量が遥かに離れた相手は戦うまでもなく宝玉の中に閉じ込められてしまうのだ。
初めにダイと共に此処に辿り着いたレオナ姫も同様、既に宝玉の中だ。
しかし希望はあった。
宝玉に閉じ込められずに済んだ者達がいたのだ。
ポップ、アバン、ラーハルト、ヒム…。
ダイは心強い仲間と共に再び大魔王バーンと対峙する。
しかしバーンの実力は、ダイ達の想像を遥かに上回っていた。
アバン、ラーハルト、ヒムの最大の技による同時攻撃も『天地魔闘の構え』の前に砕け散ってしまう。
それも一切のダメージを与える事も無く…。
そして3人は激しく傷つき、アバンは宝玉に閉じ込められてしまう。
バーンの猛攻は更に続き、ダイ達はダメージを蓄積させていく。
ダイ達は為す術もなく地に伏してしまう。
バーンは完全に遊んでおり、余裕の笑みを浮かべている。
そして戦いを終わりにする事に決めた。
「つまらん…、少し早いが終わりにしてくれる…。カラミティウォールでまとめて吹き飛ばしてやる」
そして放たれる暗黒闘気の壁。
全てを飲み込むほどの津波のような暴力の壁はゆっくりと無慈悲にダイ達に迫る。
より苦しみと痛みを与えてやろういうバーンの心をそのままに。
激しく傷ついたダイ達は満足に動くことも出来ない。
その時だった。
ヒュンッと空を切り裂くような音、同時に暴力の波が掻き消えた。
「な、なんだ…と?」
バーンは目を見開く。
カラミティウォールは確実にダイ達を消し去るはずだった。
しかし自身が放った闘気の津波は掻き消え、その結果ダイ達は無事で。
「おお、間に合ったようだな…本当にいるよ。大魔王バーンだ。むかし漫画で見た通りの姿だな…ちょっと感動だよ」
全員が声の方に視線を向ける。
そこには一人の男が立っていた。
十五、六くらいの黒目黒髪の少年は目を輝かせて軽い足取りで場に乱入してくる。
その傍らにはダイ達が見たこともない魔物が浮かんでいた。
スライム、一目見てそれが分かるのだが同時にもう一つのイメージが浮かぶ。
天使…。そのスライムの尖った頭部の輪っかと白い羽がまさにそのイメージにピッタリだった。
「何者だ…」
「……え?もしかしてオレに言ってるのか?…おおっ!大魔王バーンに話しかけられた!?」
少年は自分を指さしながら興奮した面持ちで傍らのスライム?に話しかける。
そして軽くコホンと咳をする。
周りを見渡す。
満身創痍の勇者パーティーと大魔王バーン。
少年はダイ達を一瞥すると、バーンに向き直った。
「オレの名前は大江タケル。モンスターマスターだ。突然だけどさバーン…。お前オレの仲間になれ」
タケルと名乗った乱入者の思いもよらない言葉。
その言葉にはダイ達は勿論、バーン自身の思考も一瞬停止した。
何を言っているんだコイツは…。
理解が追いつかない。
見たところ黒髪の少年は間違いなく人間だ。
そして現在は人間と魔王の大地の存亡をかけた戦いの真っ最中なのだ。
云わば人類と魔族または地上と魔界の戦争だ。
その最中に乱入してきたと思えば大魔王相手の勧誘?
余りにも空気を読めないKY行動に全員の時間が停止する。
「オレと一種に星降りの大会で優勝を目指そうぜ!」
更に空気を読まずに良い笑顔で( ・´ー・`)な少年。
次の瞬間、少年の胸を一筋の光が貫く。
バーンの第三の眼光だ。
しかし少年の傍らにいたスライム?が庇うように前に出て光を一心に受け止めた。
結果、少年は宝玉に閉じ込められるのを免れる。
そしてスライム?も閉じ込められないのが当然のように得意そうにフンと息を鳴らした。
「あぶねー、サンキュなエルゼちゃん」
「貴様、どうやってこのバーンバレスに侵入した。余は貴様など知らぬ…貴様は何だ?」
大魔王バーンは事態の急転を受け入れ戦いの思考を取り戻す。
しかしやはり受け入れられないことが続き、心の中は穏やかなものではなかった。
それも無理なことではないだろう。
まず此処大魔宮バーンバレスは自身の懐の中も同然の場だ。
侵入者には当然気付くしバーンバレスの全容を常に把握できる。
いかにダイ達に意識を向けていようと異物が入りこめば直ぐに気づく。
大魔王である自分が気づかなかった…バカな。
目の前の少年は何処からか侵入したと言うよりも、まるでいきなりこの場所に現れた様な。
そしていきなりの勧誘行動。
相手の意図は読めないが、愚弄されている錯覚を覚える。
先程まで自身の敵を圧倒的な実力で思うまま弄び自身の力に酔いしれ楽しむ。
圧倒的強者である自身が力を振るうなど、此処数百年は無かった。
その為、この機会に存分に自身の力を振るうことが出来る状況は自身にとっては愉悦以外の何物でもなかった。
そして思うままに敵を嬲りに嬲り、そろそろ飽きてきたので最後はゆっくりと敵が苦しみ消えていくさまを見ようと最後の攻撃を繰り出したのだ。
しかし自身が繰り出した暴力の波はダイ達の命を奪うこと無く突如現れた第三者の手によって掻き消された。
「あいつ、一体…?」
「わからない。敵じゃないみたいだけど味方でもない?」
ダイ達もただ唖然と少年の背中を見つめている。
「何者かは分からんが…余のカラミティウォールをかき消したのはそのスライムか?」
バーンは意識をダイ達からタケルとスライムへと移した。
満身創痍のダイ達と正体不明の不気味ない相手。警戒する方は考えるまでもないようだ。
「あ、やっぱりバーンも知らないんだ。エンゼルスライムっていうんだぜ」
まるで友人に話しかけるような馴れ馴れしい口調。
その軽口にバーンの心は更に苛立ちを募らせる。
「小僧…、何者かは知らんが、その無礼な振る舞い…覚悟は出来ているのだろうな」
「げ?もしかしなくても怒ってる?」
少年は額に手を当てて項垂れる。
あちゃ~、やっちまったぜ。そんな軽いノリだ。
「これから仲間になる相手に…いや初対面な相手に失礼だったなぁ…いや本物の大魔王バーンに会えたのが嬉しくて…そういやミルドラースやゾーマの時もそうだったな…」
タケルはしみじみと反芻して一人頷く。
「何を言っている…本物の、だと?どういう意味だ…」
「いや、まぁ気にするな」
タケルはそう言いながらカバンを探り何かを取り出した。
瞬間、その場を如何にも食欲を唆られそうな芳醇な香りが辺りを満たした。
エンゼルスライムは目をハートに変えてよだれを垂らし始める。
タケルの手の中には色艶やかな肉、最高級の魔物のエサ『霜降り肉』が握られていた。
そしてバーンに向かって付きだして左へ右へと揺らす。
まるで餌付けだ。
それを見たバーンは血が滲み出るほど強く拳を握る。
「何の真似だ小僧…」
「要らないのか?」
殺そう。
しかし唯では殺さん…。
じわじわとなぶり殺してくれる。
バーンは掌に火炎呪文を生み出そうとして。
「………なに…っ!?」
呪文の発動を止めた。
掌には火の鳥『カイザーフェニックス』が雄々しく羽ばたく。
しかしバーンは火の鳥を消すと同時に口元を隠した。いや拭った。
なんだこの感覚は?
あの小僧の持つ肉から目が離せん。
どういう事だ?アレは何だ?余の知らぬ伝説のアイテムの類か?
バカな…。
あのエンゼルスライムといいコレはどういう事だ?
「なんだ、やっぱり欲しいんじゃん?」
タケルは意地悪そうな笑みを浮かべる。
そして傍らのエンゼルスライムに霜降り肉を差し出した。
エンゼルスライムは嬉しそうに大きく口を開けると霜降り肉を一呑みにした。
肉が無くなる。同時にバーンを支配していた得も言われぬ感覚『食欲』が消えた。
「…っ、余に何をした」
「別に何もしてないって…あ、さっきのは別に恥ずかしがることはないぞ?アレは魔王であっても関係ないから…『そういうものだから』気にすること無いって」
得体が知れない。
眼の前に居るのは何でもない唯の人間の子供のはずだ。
魔界の神と恐れられた自身が警戒するほどの相手ではないはずだ。
しかし得も言われぬ感覚がバーンの全身を駆け抜け、いや断じて認められない。
「………き、消えろ…消えろっ!」
バーンは自身の最大の呪文『カイザーフェニックス』を放った。
「エルゼ!メラガイアーだ!」
「ぴきーっ」
その愛らしい鳴き声はスライムそのもの。
しかし解き放たれた暴力は大魔王級。
本来有り得ないはずのメラ系の極大呪文は大魔王のメラゾーマと衝突、相殺した。
「バカな…」
信じられなかった。
いかに正体不明とはいえ、先程とは違い全力で放った最大魔法。
それをスライムに正面から相殺された。
認めたくない事実だ。
「焦るなって。お前の相手はエルゼちゃんじゃない」
タケルはカバンから何かを取り出す。
「あれは魔法の筒?」
「そうそう、便利だよなコレ。この世界にはコレがあるからなぁ」
タケルは手の中にある魔法の筒を弄びながら笑う。
掌の中には魔法の筒が二つ。
「でさ、バーン様よ。さっきの話の続きだけど、オレの仲間になってくれよ」
「正気か?あいつ本気でバーンを勧誘してるってのか?」
「バカな…」
ポップとアバンは信じられない面持ちで事の成り行きを見守っている。
バーンはじっとタケルの目を見る。怒りの深く飲み込む。そして漸く構えを解いた。
「フッ…、小僧、さすがの余も貴様の意図が読めん。初めから答えろ…正気で言っているのか」
バーンの言葉にタケルも真顔になる。
そして力強く頷いた。
「聞かせろ」
「さっきも名乗ったけどオレはモンスターマスターだ。魔物たちと心を通わせて従わせることが出来る。そしてオレは異世界から旅の扉を使ってやってきた」
「異世界だと」
「ああ、目的はより強い魔物を求めて」
「余はモンスターマスターとしての貴様も目に止まったという事か…」
「まぁね。大魔王バーンといえば魔界の神として有名だから」
「異世界にも余の名が」
「そうそう!有名なんだって!オレも大ファンでさ~。そういうわけだから」
「余に貴様の配下の魔物の一体となれと?」
「うんうん」
「……消えろ」
「やっぱり?」
「話は分かった。だが余は嘗てコレほどの侮辱を受けたことはない…楽には殺さぬ」
「いや多分、更に侮辱することになると思うけど」
「…なんだと」
「オレだってそう簡単にバーンが手に入るとは思っていないって…そこでさ、オレと賭けをしよう!」
既に自分を『物』扱いなモンスターマスターに更に怒りを募らせるバーン。
「賭けだと?」
「ああ。モンスターバトルだ。ルールは一対一、お前とオレの手持ちのモンスターで戦う。オレが勝てばお前はオレの魔物になってもらう」
「相手はその変わったスライムか?」
「いやコイツだ……デルパ!」
タケルの持つ魔法の筒から現れたのは…。
「な、なんだと?」
「バカな…」
「ス、スライムだってぇ!?」
「おう、何の変哲もない普通のスライムだよ」
「正気か」
「おう!そうそう、オレの賭けるものだけどさ…当然『命』を賭けるよ。どのみちオレを殺す気だろうから賭けるものになるかは分からんけど」
「そのとおりだ。余は貴様を許す気はない」
(まぁ俺らモンスターマスターはバトルで負けると所持金半分にされて国に強制送還だけど…しかも全財産はすでに貯金済み)
タケルはボソりと誰にも聞こえないようにつぶやき邪悪な笑みを浮かべる。
「ふんっ…どれほどの強敵かと思えばまさかスライムとは…、大魔王たる余が相手にする必要はない。だがまあいい…このゴミを始末した後は貴様の番だぞ」
バーンの第三の目が怪しく光る。
魔界の神のプライドだろう。
流石にスライムと正面から戦うなどという状況になる事は許容出来るはずもない。
しかしスライムは瞳の宝玉にはならずに。
「バカな…」
「おいおい、さすけ…お前、舐められてるぞ」
「ぴきっ!」
さすけと呼ばれたスライムは怒ったように鳴くとバーンを睨みながらピョンピョンと跳ねる。
「さっき言っただろ?もっと侮辱するかもって…けどさ、コイツは今まで何人もの魔王を倒してきた強者だぞ?あんまり舐めんなよ」
タケルは飛び跳ねるさすけの頭を撫でると後ろに下がった。
もう自分の出る幕はないと言う様に、戦いの邪魔にならぬように。
自分の魔物の力を信じて戦いを託す。
それが自分に出来る唯一の事だ。
「そうそう、いくら鍛えているとはいえスライムに負けるって大魔王としては終わりだよな?すべての魔物を支配するはずの魔王が最弱の魔物であるスライムに敗北する…コレ以上の屈辱はねぇよな?」
タケルはその如何にも悪役っぽい笑は勝利を確信しており…。
味方ではないが敵ではない筈なのに…。
ダイ達勇者パーティーの心境は一致していた。
-なんて嫌なやつなんだ-
「じゃあ早速始めるかな…モンスターバトルを!準備はいいか?さすけ」
「ぴきーっ!」
「よし!作戦は勿論『ガンガン行こうぜ!』だ!」
「この大魔王バーンを舐めるでないわっ!」
恐れずに正面から向かってくるスライムの姿に遂にバーンのいらだちが限界を越えた。
そして両雄の影が重なった。
いやな主人公ですね。
書いていて私も思いました。
しかしスライムで大魔王を倒したいという私の願望がありまして…つい書いてしまいました。