IS学園の中心で「ロマン」を叫んだ男   作:葉川柚介

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第32話「この我のものとなれ」

ざざん、ざー、ざざん

 

 波の音がする。箒達を助けた森の先、システム中枢解放のために一夏が進んだ先に広がっていた景色はその音からの予想を裏切らず、白い砂浜と青い空がどこまでも続く海辺だった。海原から寄せては返す波が白く泡立ち、空と海に交じってどこまでも続く光景は電脳世界であることを差し引いてもこの世の物とも思えないほど幻想的だったが、この場所。どこか見覚えがあるような。

 一夏は既視感に襲われ立ち尽くす。

 

「ふう、参ったな。さっきまで『我は影。真なる我』とか言ってくる自分の偽物と連戦したと思ったら、今度はこれか」

 

ざざん、ざー、ざざん

出て来いシャザーン

 

「おい待て、今なんか明らかに波音じゃないの聞こえたぞ!?」

 

 思わずツッコミを入れるが、残念なことに辺りには変わったところがなかった。おそらく電脳世界特有のバグか何かなのだろうと、仕方なしに自分を納得させる一夏。ともあれ気を取り直し、とにかく歩いてみることにした。もしここがシステム中枢であるならば、なんとかして学園の制御を取り戻さなければならない。

 

「あれ、あんなところに誰か……ラウラ?」

 

 しばらく波打際をうろうろとさまよい、束さんあたりがまた人魚フォームで打ち上げられてきたりしないか不安になり始めたころ、ようやく一人の人影を見つけた。ぽつねんとただ立っているのは、背格好からしておそらく少女。じっと海の方を向き、何をするでもなくただそこにいるだけ。しかし海風に揺れる髪色は頭上の黄金立方体が放つ光を受けてきらきらと輝く銀色で、一夏の記憶に照らし合わせるならばこんなにきれいな銀髪はラウラ以外に見たことがない。

 

「あなたが、織斑一夏ですか」

 

 近づく一夏に気付いたのだろう。一夏に向き直り、少女はそう呟いた。顔立ちもどこかラウラに似たその少女。海を見ていたのかと思ったが、両目は閉じたままなのが少し意外だった。

 

「えーっと、君は……?」

「私はクロエ。クロエ・クロニクル。本日は参上のご挨拶に出向いたまでですので、いずれまた」

「あ、ちょっと!?」

 

 そして、言うだけ言ってぺこりとお辞儀をするなり風景に溶けるように姿を消してしまう。一体なんだったのか、さっぱりわからない。あの口ぶりからするに、おそらくAIの類ではなくれっきとした人間だったはず。だがシステムダウンしたIS学園の電脳空間の奥深くに現れるということは……。

 クロエと名乗ったあの少女がなぜここにいたのか、その真相を想像する一夏であったが、すぐにやめた。あの子の正体が何であれ今は優先すべきことがあるのだから。

 そう思い、再び歩き出した矢先。

 

――……

「あれ、あなたは……」

 

 少女に続いてもう一人、黒髪の美しい女性を見つけた。しかしその人が一夏に気付いて笑顔を向けたように思えた直後、意識が遠のいていく。まるで、ここがゴールであるかのように。一夏があの女性と出会うことこそが今回の一件の本当の目的であったかのように。

 

 その印象が正しいのかわからないが、一夏は薄れゆく意識の中で既視感に浸る。

 あの女性、確かに一度会ったことがあるように、思えたのだが。

 

 

◇◆◇

 

 

(……私がIS学園のシステムダウンをさせたのに乗じて余計なことをする輩もいましたが、任務完了ですね)

 

 IS学園が見えることが売りとなっている、臨海公園のカフェ。おしゃれなロケーションを楽しむご婦人と、IS学園に目が釘付けになっている大きなお友達が主な客層であるこの店のオープンテラスに風変わりな客が一人いた。長い銀髪と閉じた両目、まったく口をつけていないカフェオレを前に先ほどまでピクリとも動かなかった少女。名前はクロエ・クロニクル。

 つい先ほどまでこの場から束が製作した彼女の専用機<黒鍵>にてIS学園のシステムに侵入してネットワークを掌握していた、束に娘扱いされている少女だった。

 

 目的は既に果たした。最後に一夏と接触したことは少々予定外ではあったものの、学園内に安置されている暮桜を目覚めさせるための起動プログラムを送りつけるという束に頼まれた「おつかい」は見事に成功。束以外の存在に興味のないクロエとしてはさっさと帰ってたっぷり束に褒められるしかない、と平坦な胸を期待に膨らませて席を立つ。

 立とうとした、そのときに。

 

「相席させてもらうぞ」

「彼女持ちの人間をいきなり『デートだ、ついてこい』とか言って連れ出したと思ったら……なるほど、千冬さんとこの子のデートだったんでへぶあっ!」

「お前は黙っていろ、真宏」

「……っ!?」

 

 目の前の席に当たり前のように座った二人の人間に気付き、ぎくりと心臓を跳ねさせた。

 さっそく小芝居が繰り広げられた気もするが、声を聞けば相手が何者なのかはすぐにわかる。

 一人は、世界最強のIS操縦者にして束の盟友、織斑千冬。そしてさっそくボケをかまして千冬にしばき倒されたらしき男は、束ですらいろいろ伝染りかねないと危惧していた妖怪、神上真宏だった。

 

「お前の分のコーヒーだ。まあ飲め」

「それはいいですけど、問答無用でブラックはよくないですよ。そんなだからいつまでたっても生活能力ないままで弟離れできないんです。はい、砂糖とミルク」

 

 逃げることなどできるはずもない。神上真宏はなんでいるのかよくわからないが、織斑千冬は間違いなく事情を知ったうえで自分の所在を掴みやってきた。ここで自分を逃がすようであれば世界最強は名乗れず、束の友でいることも出来はすまい。大口を開ける獅子の面前に置かれたウサギのように、クロエの命運はいまや千冬の手の中にあった。

 

「まあ、なんだ。いつぞや束の奴が娘ができたと自慢していたのでな、顔を見に来たというのが一つ。……それともう一つ、伝言を頼みたい。ヤツに、余計なことはするなと伝えておいてくれ」

 

 いっそ、殺すしか。

 クロエの心中にその考えがよぎった。

 織斑千冬は、そもそも知りすぎている。束の過去も目的も達成のための手段も。その上で束と同じ道を歩めないのであれば、いずれ必ずや強大すぎる壁として束の目的の前に立ち塞がるだろう。それを排除するならば、千冬がISを使えない今この時を置いて他には……。

 

「やめておけ。お前では私は殺せない」

「……俺の幼馴染の姉と知らない女の子が修羅場すぎる。むしろこの場合片方は束さんであるべきではないのか」

 

 絶好の機会と思った瞬間、心を読んだかのように、ただ一言でクロエの出鼻をくじいた千冬。何より恐ろしいのは、ISを所有するクロエが、完全に丸腰でこの場に来ている千冬を殺せないと、実際に思わされてしまったことだ。思わずクロエは普段決して開かない両目を見開き。

 

「生体同期型、か。束のやつ、一人でどこまで行くつもりだ……」

「お、すごい。アメイジングでマイティな目だ」

 

 白目が黒く瞳が金色の、自然ではありえない色をした、電脳世界に現れた一夏の偽物と同じ目を二人の前に晒す。

 そして同時に、千冬と真宏の視界全てが白に染まる。

 カフェのテーブルも他の客も、遥か彼方のIS学園の景色も全てが白に塗りつぶされた異空間だ。

 

「うおわー! なになに、いつの間にメンタルとタイムのルームに!?」

「電脳世界では相手の精神を操り、現実世界においては幻覚を見せるか。大したものだな」

 

 二人の反応は対照的だった。騒ぎ出す真宏と、冷静にコーヒーをすする千冬。千冬はもちろん真宏の方も全く怯えていない気もするが。

 千冬と真宏の眼に、現実の光景は映っていない。自分の体すら見えないただ真っ白なだけの無限に広がる空間と、にょきにょき生えている光るタケノコ。

 

「見てください千冬さん。こんなにタケノコが光っている。タケノコは光りますか? おかしいと思いませんか? 千冬さん」

「おかしいのはお前の頭だ。初めて会った頃から今に至るまで大体常に」

「否定はしませんけどさ」

 

 しかし、これは紛れもない攻撃だった。なんか見せた覚えのない幻覚を見ている気もするが、クロエはとりあえず真宏を無視して千冬にナイフを突き刺さんと狙った。相手はこちらの姿が見えていないからこその、大胆にして鋭い刺突。喉元を確実に切り裂けるだろう軌道と速さだった。

 

「無駄だと言っているだろう」

 

 しかしそれも、相手が織斑千冬でないならば、だ。千冬は気配だけを頼りにナイフの腹を正確に指で打つ。ただそれだけなのに、クロエはナイフを握っていた手全体が痺れるような衝撃を受けて思わず取りこぼし、気づいた時には眼前に何かが迫っていた。正体はコーヒー用のスプーン。眼球からわずか数mmしか離れていないところに突きつけられている。

 

「抉られたいか?」

「千冬さんが何をしているのか全く見えません。でも、いまだ! スプーンを使え、目だ! みたいな状況ですねわかります」

 

 たらり、とクロエの額に冷や汗が垂れ、彼女の専用機<黒鍵>の能力<ワールドパージ>を解除する。もはやクロエが生き残る道は、それしかなかった。

 クロエが目を閉じるのと逆に、ふっ、と千冬たちの視界が元に戻る。その時にはもうスプーンを戻した千冬が優雅にコーヒーを飲み、真宏も普通に砂糖とミルクを入れた自分の分のコーヒーを飲んでいた。こいつら動じなさすぎる。とクロエはなんだか悲しくなった。なんだこの平常心。

 というか千冬はいいとして神上真宏は何をしに来たのか、心底疑問なクロエだった。

 

「それでいい。……さて真宏、ここからはお前の番だ。こいつの友達になってやれ」

「織斑千冬……何を言っているのです?」

「千冬さん、それ友達作りと違います。肉の芽植え付ける口実に友達になろうって言って近づく吸血鬼の理論です。基本的に束さんしか友達がいないからって、そういう友達作りは……」

「なっ!? 私にだって束以外にも友人くらいいる! 真耶とか、ワカとか……」

「学生時代からの友人のうち、現時点で仕事上の付き合いがないのに連絡取ってる人挙げてみましょうか」

「ぐぬぬ……っ!」

「あっ」

 

 とかなんとか思っていたら、千冬が説明してくれた。しかし、なんだ友達って。

 あと真宏になんか言われて悔しそうに言葉を詰まらせている。クロエが思わず察してしまうほど、千冬のコミュニケーション能力が悲しかった。

 

「なに、どうせ束のことだから自分以外の人間との接触などほとんどさせていないだろう。それでは教育上よろしくないからな、同年代の友人の一人もいた方がよかろう、と」

「え、本気だったんですか? 俺が友達になったら確実に染まりますけど。むしろ染めますけど」

「……束一人の影響のみを受けるよりマシだ」

 

 そして繰り広げられる恐ろしすぎる会話。なんか自分の命運が現在進行形で底なし沼に飲まれつつある気がしてならないのはなぜか。人付き合いの経験値が絶望的に低いクロエは、さっきまでとはまた違った恐怖に晒されているのだとようやく理解した。

 

「ま、いいや。それじゃあさっそく自己紹介から。俺は神上真宏。よろしくね」

「わ、私はくおえうえーーーるえうおお」

「……ほら見てください千冬さん。散々怖がらせるから噛んじゃったじゃないですか」

「私のせいではない」

「失礼、噛みました。クロエ・クロニクルです。……い、いえっ、そんなことはどうでもいいのです。正気ですか、神上真宏!?」

「正気って?」

「いきなり友達などと……! そ、それに私の目を見たでしょう。怖いとは、おかしいと思わないのですか!?」

「はっはっは、全然怖くない。俺は子供のころから世界一怖い目に睨まれ慣れてるから。……よく見ておくといい。本当に怖い目に睨まれると、人間こうやって動けなくなるんだよガクガクブルブル」

「それはただの自業自得です」

 

 どうやら、束に気にかけられているだけあって真宏も相当おかしなやつらしい、とクロエも大体わかってきた。千冬に横目で睨まれだらだらと冷や汗を垂らしているが、自分の目を見ても全く動じないのだから、相当だ。

 真宏がそういう人間であるとわかったことは、不思議と悪い気分ではなかったが。

 

「さっき千冬さんが生体同期型のISとか言ってたけど、つまりファクターか超進化人類みたいなもんでしょ。ISと人間の中間の存在なんて割とよくいそうだし、気にすることないって、えーと……嵐のような時代を傍から見る子さん」

「それではただのクロニクルです」

「……うん、いい友達になれそうだ」

「しかし、友達ですか。……束さまからは、『トモダチは、ゴチソウ』と伺っていますが」

「千冬さん大変です。翻訳機の調子が悪いみたいですよ」

「知らん」

 

 ただし、同時になんか取り返しのつかないことになりそうだ、とも思えるあたりはさすがであった。この二人の相性はいいんだか悪いんだかわからん、と千冬はコーヒーをすすりながら考える。

 

「あまり失礼な口を聞くなよ真宏。これでもこいつはラウラの姉のようなものだからな」

「違いますよ、織斑千冬。彼女は妹ではなく、私がなれなかったモノ。本当のラウラ・ボーデヴィッヒです」

「え、むしろラウラの方が姉なんじゃ……ああ、すみません。これは別の世界線の話でした」

 

 とかなんとか、いろいろ危惧はありつつも割と楽しいお茶会になりつつあることが、クロエは不思議といやではなかった。

 無言でコーヒーを飲む千冬、他愛がなくそれでいてツッコミ所しかないことを次々ほざく真宏、そしてそんな真宏を淡々と切って捨てるクロエ自身。あるいはこれが、とクロエは思う。

 これが千冬の言う友達というものならば、たまに味わうのも悪くないかもしれない、と。さっそくほだされている自覚は少々あるのだが。そしてもし、束に曰く真宏が友達になるのよりさらに女を落とすのが速いという一夏がこの場にいたら自分の心はどうなっていたのか。その想像に戦慄もまた禁じえなかった。

 どうやら自分はまだ人間のことを知らなすぎるらしい。一つ賢くなったクロエである。

 

 

「じゃあせっかくだし、アドレス交換でもしときます? ……簪も許してくれるよね、多分」

「あなたの事情はよくわかりませんが……ええ、もうどうでもいいでしょう」

 

 何くれとなく話して、そろそろ千冬たちは帰らなければならないのだろう。連絡先を交換しよう、という話になった。携帯電話を取り出す真宏に、こいつらの行動原理について考えることをやめつつあるクロエは、そこはかとなく緊張しながら自分の携帯電話を取り出す。こういうことは初めてなので、今一つ勝手がわからないせいだ。

 

「……えーと、それが携帯?」

「そうですが、何か? 束さまが作ってくださったもので、最新型のガラケーというものだそうです。さすが束さま。束さまは315(サイコー)です。世界一可愛いです」

「うん、ガラケーだね。……どっちかっていうと殻ケーだけど」

 

 言葉の上ではわかりづらいその違い。クロエが取り出したのはどっからどう見てもピンク色の貝だったのだから、そうもなろう。それでもぱかりと開けば中にはばっちり携帯のディスプレイとキーが配置されているあたり、束がまた趣味に走ってロクでもないことをしたのは一目瞭然だった。

 千冬さん言ってくださいよ。これだけ嬉しそうにしてるのに言えるか、などと真実を伝えるか否かでさりげない暗闘が繰り広げられたことを、クロエは知らない。

 

「なんの、こっちも負けてられるか! 俺だってシロガネデンワー持ってるもんね!」

「きゅー」

「……白鐵はこんな形態も持っていたのか」

「携帯電話だけに、ですか。シャレていますね」

「やっぱり千冬さんも一夏の姉だから……」

「そういう意図はない!」

 

 そして何故か無駄に対抗心を燃やす真宏。マスコットモードの白鐵の首が取れたり胴体が変形したりして電話のような形になって出現した。何がしたいんだこいつは。

 

「まあいいや。これで交換完了、と。……さて、それじゃあついでに、お近づきのしるしのこれをどうぞ」

「これ、とは……バンダナと、ISの装備ですか? 小型のガトリングのようですが」

「公共の場で平然とそんなものを出すな馬鹿者」

 

 額にぐりぐりと千冬の拳を押し付けられながら、真宏が渡した物は二つ。最近こいつは物を配りすぎではないかと千冬は思うのだが、どうしてこうも用意がいいのだろう。

 ともあれ千冬も覗き込む。クロエの手に渡されたのは彼女も言った通りいたって普通のバンダナと、空き缶大の緑色をした円柱。円柱の方はどうやらIS用のガトリングらしい。

 

「バンダナは目隠し用に使ってもらえれば。『心眼』て書いてあるんで、それを目のあたりに巻いておけば目を閉じたまま周りのことがわかっても納得してもらえるはず」

「なるほど、それは便利です」

「……私は、お前をクロエに紹介したことをさっそく後悔しつつあるのだが」

 

 千冬が頭痛を堪えるように頭を押さえる傍らで、もはや警戒するのも馬鹿らしくなったらしいクロエが真宏と和気あいあい。さっそく心眼バンダナを巻いてそこはかとなく楽しそうにしているあたり、こいつらはある意味会わせてはいけない人種だったのではないかと、千冬は自分の判断を呪った。

 

「で、そっちは見ての通りのガトリング。6000発装弾可能な優れものなんで、ぜひ使ってくださいな。……クロエはISとのサイボーグみたいなものだし、これを使えば今日からあだ名はサイボーグク……っ!?」

「だからそういうことはやめろというに」

「……ご愁傷様です。ですが、ありがとうございます」

 

 ちょっと見過ごしがたいあだ名をつけかけたせいで、二本指で目を叩かれて悶絶する真宏のことを心配など全くせず、もらったものを胸に抱くクロエ。良くはわからないが、これはきっと友達からのプレゼント、というものなのだろう。

 

 クロエは元々何も持たない存在だった。それが今では名前も、命も、生きる意味も全て束からもらった。それだけでいいとも思っている。そのことに悔いはないし、幸せだ。

 だが、これはこれで悪くないのだと、そうも思えるクロエだった。

 

 その後も、主に真宏がボケて他愛ないことを話し、コーヒーが飲み終わる頃に三人は席を立った。千冬たちはクロエがどこへ行くのか、そこに束がいるのかを確かめようとすることはない。また会おう、そんな言葉を残して、まるでただの友達と会っただけのように別れるのみ。

 クロエは目を閉じているので気づかない。

 カフェのガラスに映る自分の表情が、嬉しそうな笑顔を浮かべていることに。

 

 

◇◆◇

 

 

 ジュウジュウ、と肉が焼ける。金網の下で赤く燃える炭火の色、肉に浮かぶ脂と肉汁、垂れ落ちれば炭に焦がされ煙の香りに食欲がいやおうなしにそそられる。いい焼き加減になったところでさっと取り上げ、タレに浸してすぐさまパクリ。冷める間もない肉の熱さと食感が、香ばしさが、タレの甘辛い味と混じって舌を刺激する。

 次は野菜を食べよう。みずみずしくさっぱりしたピーマン、辛みが消えて甘みが引き立てられたタマネギ、柔らかくなりつつも油がしみたニンジンとほくほくのジャガイモ。たまらない。

 もう一切れ肉を食べる。いい肉なのだろう、適度な霜降りで脂と肉の味の両方が楽しめて、ぐいと煽るビールがさらに美味くなる。

 

 ただ、不満があるとするならば。

 

「早くご飯こないかなあ。焼肉と言ったら白いご飯なのに。……この店なってないよねー。まーくんなら最初からどんぶりご飯を用意してくれるんだよ?」

「そ、そうですか……」

 

 いつまでたっても束ご所望のご飯が来ないことと、目の前に座っている女の表情が妙にひきつっていることだろうか。

 

 どことも知れぬ地下レストランの中、本来ならば最高級の料理が供されるこの店に、今は客が二人しかいない。

 一人は、さっきから焼肉を貪り食っている世界最高の天才にしてISの開発者、篠ノ之束。

 もう一人は、束がいきなり焼肉を食べたいと言い出したせいでせっかくの高価なドレスが再起不能なレベルで煙の匂いまみれになってしまったスコールであった。

 普通のレストランなのになぜ七輪だの炭だのと焼肉ができるような用意があるのだこの店は。シェフも無駄に気を利かせて、焼肉のタレなど置いていないのに有り合わせのソースと香辛料でさっと作って見せるし。自分がセッティングしたにもかかわらず、スコールは心の中でこの店に悪態をつく。

 

 神出鬼没にして国際的な指名手配の目を平然とかいくぐる束にどのようにして連絡をつけたのかは、スコールしか知らない秘密。なんかもういきなり出鼻くじかれまくりはしたものの、こうして自分の土俵に上げたのは決して道楽のためではない。

 肉うめー、と健啖ぶりを発揮している束とは既に密談という空気ではなくなってしまっているが、とにかく仕事をしなければ。

 

「お、お気に召していただけたようで幸いです。ところで、あの話はご検討いただけましたか?」

「あの話ってー? あ、ご飯来たー! ハム、ハフハフ、ハフッ! くーっ、これだよね。束さんの体は製鉄所、胃は溶鉱炉だよ」

「た、束博士……?」

 

 ……いっそ諦めた方がいいんじゃないか。年頃の女性としてはなんかもう致命的なくらいに肉を食いまくっている束を前に、思わずそんな感想を抱いてしまうスコール。

 しかしファントム・タスクはくじけない。束に何としても、要望を飲んでもらわねばならないのだ。

 

「以前からの依頼通り、我々に新造ISを提供していただきたい、というお話です。コアも込みで」

「えーめんどーい。……っていうかうるさいんだよ。モノを食べるときはね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……」

「そこをなんとか」

 

 遊ばれている気がするのはなぜだろう。なんか無駄にごっこ遊びに付き合わされている気しかしない。

 しかし、今の言葉によってとある確信も得られた。状況からほぼ確定的ではあったことだが、束はまだまだISを、そしてコアを作成することができるのだ、と。

 ならばこの交渉は無駄ではない。それこそ、ジョーカーを切る価値があるほどに。

 

「なんでしたら、こんなものもご用意していますが」

「なーに? 今よりおいしいお肉かな?」

「ええ、ある意味」

 

 嫣然と微笑むスコール。ようやく自分のペースになって来たなーと内心ほっとしながら、指を鳴らす。細い指からよく響いたその音に従い、部屋の隅から現れたのは二人の人影。

 

 一人はオータム。もう一人は、オータムにつかまり首筋にナイフを突きつけられている、クロエだった。

 

「……申し訳ありません、束さま」

「いかがでしょう、束博士?」

 

 唇を噛んで謝罪するクロエ。スコールの笑みは自然と深くなるが、それは偽りだ。

 ただ頼んで聞いてくれるような相手ではないとはいえ、束に対してこの脅しがどれほど効くかは全くの未知数だからだ。しかし、咥えた肉をむぐむぐと噛んで飲み込む一連の動きが無表情に為されたことからして、決して全く効果がなかったわけではないだろうとも、スコールは思う。

 慎重に束の出方を伺うスコール。身動きの取れないクロエ。焼肉おいしそうだなーとちょっとお腹が減ってきたオータム。束は三人の視線を一身に浴びながらごくごくとビールを飲み干して、笑った。

 

「あはははは、面白いことするねえ。くーちゃんを人質にするなんて、そんなことに意味があると思ってるの?」

「それは、あの子に人質としての価値がない、ということでしょうか?」

「……っ!」

 

 息を呑むクロエ。今のクロエにとって束は全てだ。束に必要とされること、愛されることこそがクロエの存在意義であるだけに、スコールの言葉は深く胸に突き刺さる。

 

 しかし、それはクロエにとってもスコールにとっても思い違いだった。

 けらけらと笑っていた束は、その笑顔のまま平然と言った。

 

「そんなわけないじゃん。くーちゃんを人質にする意味がないっていうのはね」

 

 束はずっと笑顔のままで、淡々と言った。

 

 

――どんなことをしても助け出すからだよ。

 

 

「っ!?」

 

 スコールはその言葉を聞くや否や、咄嗟に目の前で腕をクロス。もしそうしていなければ、顔面に束の靴跡を刻まれていたことだろう。IS操縦者として熟練の経験と技術を持つスコールですらまともに反応できないほどの速度で、束が椅子から跳躍したせいだ。ISを展開する暇すらなく、束はスコールを蹴りつけて天井付近まで飛びあがる。

 

「私を踏み台にした!?」

「言ってる場合じゃねえぞスコール!?」

 

 束は踏まれて転倒したスコールに構わず空中で逆さになり、天井を蹴ってオータムに接近。振るわれたナイフより先へと手を差し込んで手首を掴み、そのままくいっとひねり。

 

「アームロック!」

「がああああああ!?」

「ちなみにこの技は腕を折るか近くの誰かが『それ以上いけない』と言うまで続くよー」

 

 オータムもまた、無力化された。

 

 

「ごめんねーくーちゃん。大丈夫だった?」

「は、はい怪我もないでむぎゅう」

 

 ひとしきり腕を極めてから飽きて放り出した束は、今度はクロエを真正面から抱きしめる。胸の谷間に顔を埋められたクロエは少し苦しそうであったが、抱く腕の強さは本当に心配してくれていたが故だと思うと、申し訳なくも幸せな気持ちが体に満ちる。

 

「束さんってさー、天才だからよく頭はいいけど身体能力は、みたいに思われたりもするんだけど、違うんだよね」

 

 肘があらぬ方向に曲がっているオータムと、砕けた椅子の残骸を払いもせず体を起こしたスコールに、束はぞっとするほど冷たい目を向ける。これは侮った報いだ、と言うように。

 

 

「束さんは、全身の細胞一つ一つから規格外なんだよ」

 

 

 今日は美味しい焼肉も食べたしね! とか続けるあたり、変なクラゲの細胞でも移植したのではないかと思えたりするのだが、ツッコミ不在のこの場において束を制することができる者はいなかった。

 

「それに、自己再生、自己増殖、自己進化もしてるからどんどん……」

「黙れ。動くな」

 

 それどころかますますヤバい細胞で体ができてるのではないか、と思われたその時、割り込む一人の声があった。

 店の外で待機していたマドカが、ISを展開してやってきたのだ。エムナイス! と思わず内心で喝采を上げるスコールとオータム。

 

 しかしそれでもまだ埋まらないのが、束と人類との差であった。

 

「束さんて実は二つ名があってね?」

「!?」

 

 気づいた時には束の姿が掻き消えて、何故か無駄に大きなサングラスをかけた束が、自身に突きつけられていたレーザーライフルの砲身の上に立っていた。

 そして屈み、たおやかな指先でそっとライフルをなぞると。

 

「その名もずばり、『分解』の束さん」

「なっ、ライフルが!?」

 

 まるで初めから部品が組み上げられていなかったかのように、砲身がバラりと崩れ落ちた。

 砕かれたのでもなければ切り刻まれたわけでもない。傷一つつけられることなく、工具の一つも使わずに、この一瞬で正確に部品単位に「分解」されたのだ。

 

「本当は溶解もできるんだけど、今回そっちはなしね。それそれ、ばらばらーっと」

「く、うぅっ!?」

 

 砲身、機関部、ビット、装甲。次々分解されていく機体はまともに動かず、マドカはそもそも体を動かせずにいた。バラバラと大量の部品が零れ落ちる端から光となって消えていく中、少しでも動けば四肢の関節くらいは躊躇なく外される。その確信があった。

 

 あるいは抵抗しなくてもそうなったかもしれない。

 だが、運命はまだマドカの退場を望んでいなかったようだ。

 

「って……あれ?」

「な、なんだ……?」

 

 調子よく分解していた束の手が、バイザーを分解したところで止まった。きょとんとした顔でマドカの顔を覗き込んで、すぐに満面の笑みへと変わる。

 

「お、おおお」

 

 丸く口を開けて驚いた、とあからさまに表現する束。マドカは自分の顔が千冬に似ている自覚を持っているし、それが束に対してなんらかの影響を与える可能性は十分にあるだろうと覚悟もしていた。

 そしてその際に見られるだろう反応は驚愕か戸惑い、そのどちらかと読んでいたのだが、束の表情は違う。

 驚きこそしているものの、束が感じているのは、おそらく。

 

「あはははははは! そう来たか! ねえ君、束さんの名前は知ってるよね? 君の名前は?」

「……っ」

 

 マドカが引くほどの、喜びだった。

 

「教えてくれないんだ? じゃあ当ててあげる。君の名前は~……」

 

 愉快そうに弧を描く目が、上目遣いにマドカを見ている。心底楽しくて仕方ない、とばかりに溜めを作った束はさんざん焦らした後、そっと囁いた。

 

「織斑――ダイゴ」

「そっちは従兄弟だろうがっ! 私はマドカだ! ……ハッ!?」

「やっぱりマドカなんだ。まどっちなんだ。えへへ」

 

 思わずツッコミで自分の名前をバラしてしまったが、変わらず束は上機嫌だった。くるくるーんと回る束は気づけばマドカの背後を取り、後ろから首に腕を回して抱きしめる。マドカとしては相変わらず何を考えているのか全く分からず、背中に当たる胸の感触があまりにも豊満でちょっと悔しい。

 

「いいこと考えた。新しいISを作るって話、この子の専用機だったら作ってあげてもいいよ」

「なん……ですって……?」

 

 しかも、とんでもないことまで言い出す始末。ファントムタスクにとってもマドカにとっても、束が作った専用機が手に入るのは極めて望ましい。だが何故だろう。覚悟もしていたはずなのに、なんかとんでもないところに足を踏み込んでしまおうとしているような。

 

「でもそのかわりこの子ちょうだい。ねえねえ、束さんと契約して、この我のものとなれ、まどっちよ」

「断る! かなり本気で断る!」

 

 えー、とか残念そうに言っている束であるが、こうしてツッコミを入れている時点ですでに束のペースにはまっているマドカ。マドカの存在は極めて重要な切り札なのだが、このままではなんかもうぐっだぐだのうちに奪われかねず、スコールとしても手放しでの了承はできなかった。

 

「まあいいや、専用機はどんなのにする? 射撃重視、近接重視、オモシロ武装に装甲重視でガチガチに固めるのも面白いかもね。強羅より硬いのを望むならそれもアリだよ。ダーク強羅よりすごいの作ってあげるから。あ、いっそ可変機能とかつけちゃおうか。ちょっと体の方もいじらなきゃいけなくなるけど……ニンゲンヤメマスカ?」

「だ、誰か助けてくれええええ!?」

 

 そしてついに悲鳴すら上げるマドカ。なんかもうしっちゃかめっちゃかである。

 

「うーん、テンション上がってきた。さっそくワルプルギスの夜にISをいっぱい集めてサバトを開いて賢者の石……じゃなかった、新しいISコアを作ろうか?」

「……ISコアが賢者の石ということは、ISと同期している私はやはり神上真宏の言う通りしろがねなのでしょうか」

「しまった!? くーちゃんがさっそくまーくんの影響受けかけてる!」

 

 なんかヤバい、底なし沼に嵌ったのでは。マドカの顔色が青くなる。

 

 

「そんなに怖がらないでよーまどっち。とりあえずこういう時はご飯だね、ご飯。みんなでご飯を食べれば仲良くなれるから、焼肉の続きだ! くーちゃんもいっぱい食べようねー」

「は、はい束さま。今日こそ上手にお肉を焼かせていただきますっ」

 

 そして、事態は少し変化しつつもふりだしに戻る。るんるんと席についてクロエが肉を焼いてくれるのを待つ束と、ぽかーんと放心状態でその隣に座らされるマドカ。気合の表れか、閉じた目を「心眼」と書かれたバンダナで覆って肉の焼き加減に神経を集中するクロエ。異常すぎる光景が、そこにあった。

 

「うぅ、いてて。腕折れてやがる。……なあスコール、どうするんだ」

「……とりあえず、私たちもこっちで焼肉食べましょうか。手が使えないでしょう、あーんしてあげるわ」

「ってやけっぱちになってるー!? ……で、でももらおう。あーん」

 

 ちなみに一番の被害者は、心身両面で間違いなくファントム・タスクの二人であった。

 

 

◇◆◇

 

 

「……ん、メール?」

 

 IS学園が襲撃され、その後クロエという束さんの娘にしてラウラの姉であるという女の子に出会った日の夜に、メールの着信があった。IS学園の友人連中はたいてい直接顔を合わせれば済むので、簪とのメール以外ではあまり着信の機会は多くないのだが、この日は珍しく誰かがメールを送ってきたようだった。

 さっそく届いたメールを確認するとどうやら写真付きらしくそれなりの容量であり……さらに、差出人の名前は「クロエ」とあった。

 

「ほほう……。こりゃまたおもしろそうだ」

 

 名前の時点で期待大。そもそも差出人の時点で万が一にも公表したらエライことになりそうな予感がひしひしとするが、それでもきっと面白いメールと写真に違いない。そう思っていそいそとメールを開くと、そこには……!

 

『今日は、あなたたちと別れた後うっかりファントム・タスクにさらわれ、その後なんやかんやで束さまに助けられ、知らない女の子と友達になり、束さまと三人で焼肉を食べました。少しお肉を焦がしてしまったので、もっと精進しようと思います。クロエ』

 

 という、内容のカオスに反して割と丁寧な文面のメールと、どこぞのレストランで焼肉を食べているクロエと束さん、そしていつぞや俺を銃で撃った千冬さんに激似の少女、マドカの姿が! ついでに写真奥の方のテーブルではゴージャスな女の人とヤンキーっぽい女の人も肉を食っていた。

 ……一体どういう状況なのだろう。たった一枚の写真にこの世界の黒幕が勢ぞろいしているんじゃなかろうか。

 

「……この写真、絶対世間に公表できないよなー」

 

 とりあえず写真はしっかりと保存しておいて、返事を一つ。

 

『攫われた先で女の子と友達になるって、まさに今日俺も経験したよ』

 

 さあて、これからも楽しいことになりそうだ。

 

 

◇◆◇

 

 

「……そうか、クロエがこんな写真を、な」

「一応千冬さんには見せておいた方がいいかと思いまして」

 

 後日。ヒロインズが自分をネタにしたエロ妄想をしていると知った一夏の態度がぎくしゃくした件をヒロインズにより問い詰められたり、その日のうちに夜這いを敢行するも読み通していた千冬さんによって山田先生が代わりに一夏の部屋で寝ていた日の夜、例の写真とメールを千冬さんに見せに来た。

 内容が内容なので人目があるところで確認するわけにはいかず、地下特別区画の中で、しかもハッキング事件の時よりさらに奥へ入ったところで話をする運びとなった。

 写真とメールを見る千冬さんの表情は複雑だ。懐かしさと悲しみと悔しさと安堵。成分に分けるとするならそのあたりだろうが、写真の中の束さんに、あるいはマドカに向ける感情がなんなのかは、まだよくわからない。今はきっと、そっとしておくしかないのだろう。

 

「それはそれとして、山田先生は大丈夫だったんですか?」

「問題ない。途中で一夏と入れ替わっていることに気づかれて、そのまままとっちめて説教コースに入ったとさっき連絡があった」

「や、そっちじゃなく。一夏の布団で寝てたわけですから、思わずくんかくんかして虜になったりなんてことは……」

「あとでしっかりと事情を聴いておこう。……あれは癖になるからな」

「……今度、一夏に洗濯物はしっかり管理しとけって言っておかないと」

 

 もっとも、俺が近くにいる限りそんなシリアスが長続きするはずもないのだが。

 怖い目つきをしたのも一瞬、すぐにぽっと頬を赤らめて恐ろしいことを口走る千冬さんも大概だ。

 

「で、これが噂の暮桜ですか。モント・グロッソの試合映像は何度も見ましたけど……まさかこんなところにあるとは。そして見せてもらえるとは」

「昔少し、な。……今回の事件は、束が暮桜の起動プログラムをよこすために起こしたものとみて間違いない。余計な侵入者もあったが」

 

 無数のケーブルがつながる石像と、状態をモニターしているらしきディスプレイ。どう見ても石を削って作った彫刻にしか見えないこれこそが、かつて千冬さんと共に世界最強の座に輝いた栄誉あるIS、暮桜なのだという。

 

 何があって暮桜がこれほどまでに異常な状態になり果ててしまったのかはわからない。束さんがわざわざ起動のための鍵を持ちこんだ理由も、それがありながら愛機を目覚めさせようとしない千冬さんの考えていることも。

 本当に、悲しくなるくらいに俺は知らないことだらけだ。

 

「ま、あまり気にするほどのことじゃないですね。もし俺の力が必要だったら言ってください。炊事洗濯から強羅での戦闘まで、何でも力になりますから」

「……そうならないことを祈っている。お前に頼ることになったら世も末だからな」

 

 ただ、いつも通りの軽口でほんの少しだけ千冬さんが笑ってくれるなら、俺がここにいるのも無駄ではないのだと思いたい。

 

 

「ところで、ここに来るときにすれ違ったいつぞやの特殊部隊の隊長さん、顔が赤かったですよ」

「そういえばそうだったな。二言三言話しただけだったのだが……一体どうしたというんだ。昔からそういう手合いはよくいたが、さっぱりわからん」

「……たぶん、千冬さんもばっちり一夏の姉だったってことだと思いますよ」

 

 そもそも、俺がそんなことに気を回すまでもなく織斑一族は今日も絶好調だったりもするようなのだが。


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