とある幽波紋の世界   作:逸環

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スタンドとは、精神エネルギーの像である。


幻想憧憬
憧れの黄金


気が付けば、俺は死んでいた。

簡単な話だ。

交差点で信号が青に変わるのを待っていたら、居眠り運転のトラックが突っ込んできただけのこと。

まあ、ありえない話ではない。

 

だが、ありえないことが一つあった。

俺が死んだ理由は、神のミスだというのだ。

神は言った。

詫びとして、好きな能力を一つ付けて創作物の世界に転生させてくれると。

転生先はランダムであり選べないが、最低限俺が原作をある程度は知っている世界が選ばれるとのことだった。

 

そして俺は選んだ。

俺が崇拝し、憧れた方の能力を。

 

 

今、俺は転生先の路地裏にいる。

たまたま、そう。

たまたまこの場所に転生したわけだが、周囲に人通りもないここなら存分に試せるだろう。

俺の精神エネルギーを(パワー)ある(ヴィジョン)とする、この能力を。

憧れ、焦がれ続けたあの黄金に輝く漆黒の意志の具現を。

 

その名を叫び、呼び出す。

 

 

「『ザ・ワールド』ッッ!!!」

 

 

瞬間、俺の傍に立つ黄金の(ヴィジョン)

これこそが世界を支配せんとした、闇の帝王の力。

時間を止める、まさしく世界を支配する圧倒的な能力。

素の戦闘力もあらゆるスタンドの中で随一。

まさに、最強のスタンド。

 

 

「は…はは……」

 

 

思わず口から息が漏れ、笑いとなる。

今俺の目の前には、散々憧れ続けたスタンドがそびえ立っている。

 

 

「………ハハハハハハハハハハッッッ!!!!!」

 

 

自然と溢れる哄笑は、俺の歓喜と高揚をそのままに表していた。

だが、それもすぐに終わる。

 

 

「…ッ!?」

 

 

突如呼吸が停止し、息苦しさに膝をつく。

 

 

「カ…ッ!カハ……ッ!」

 

 

突然の事態に戸惑いながらも、転生して早々に何者かに襲撃を受けたのではないかと頭を過り周囲を見渡すも、近辺には誰もいなかった。

ならば、ザ・ワールドの視点で確認しようとしたその瞬間だった。

 

 

「ッ!!?」

 

 

気づいてしまった。

ザ・ワールドが、まったく動かないことに。

動揺と息苦しさがピークに達したとき、とうとう俺の意識は途絶えそれと同時にザ・ワールドも消えた。

そして俺はまた、呼吸ができるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ここは…?」

 

 

目が覚めたとき、俺の視界に映ったのは真っ白な天井。

まるでそう、病院の様な。

 

 

「…病院!?」

 

 

横たわっていた体を無理やり起こし、現状の把握に努めるも全くつかめない。

せいぜいが、ここは病院であろうということが想像できる程度だ。

ベッドから降りて周囲を探索しようとするも、上手く体が動いてはくれない。

しょうがなく、なぜ自分の身にあのようなことが起きたのかを考察する事にしたが、さて……。

いったいなぜ俺は転生して早々に意識を失ったのか……。

いや、理由など一つしか思いつかない。

 

 

「……『ザ・ワールド』のせいか…」

 

 

それ以外に理由など、まずないだろう。

『ザ・ワールド』は最強のスタンド。

そしてスタンドとは精神エネルギーの具現。

闇の帝王という存在の、強大な精神エネルギーそのものと言えるそれが、たかが一高校生の俺に御せるわけがない。

むしろその圧倒的な力を前に、俺の精神と肉体の方が負けてしまった。

 

 

「………クソッ」

 

 

思わず頭を抱え、髪を掴む。

憧れに届いているわけがない。

それは分かっていた。

だが、ここまでとは思わなかった。

瞬きの一瞬ならば、俺でも時を止められるかもしれないと思っていた。

だが、それ以前の問題だった。

出せば自滅する『枷』。

それこそが、俺の憧れの今の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、どうやら目を覚ましたようだね?調子は…良くはないのかな?」

 

 

自分の今に絶望していた俺の思考を打ち破ったのは、突然病室に入ってきたカエル顔をした白衣姿の初老の男。

この男を、俺は見たことがある。

いや、違う。

俺はこの男の事を、知っている。

 

 

「…いや、大丈夫です……。貴方が…?」

 

「ああ、なら良かった。そしてそうだね。僕が君の主治医だよ。…『神定(しんじょう) 徐星(じょせい)』君」

 

 

確信した。

この世界は『とある魔術の禁書目録』だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『科学』と『魔術』。

そして『世界』が交差する時、物語は始まる。

 

 

 

 

 




はい、というわけでザ・ワールドを手にした青年の物語はここから始まります。
その運命の引力は、いったい何を引き寄せるのでしょうか。
どんな運命が、待ち受けているのでしょうか。

次回、とある幽波紋の世界。
『神定 徐星』

次回の更新を、お楽しみに!!
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