とある幽波紋の世界   作:逸環

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さて、第二話です。
どうぞ。


銀と黒と赤

「………ここか…」

 

 

あの後、簡単な説明と簡易的な検査を受けた俺は、病院で渡された書類に記入されていた、俺の住所とされている場所に向かった。

どうやら住処はよくあるような神によるアフターサービスの様なものなのだろうが、病院がそれを知った方法が俺の学生証から学校を知り、そして学校に連絡して知ったというから中々に個人情報の保護というものを考えさせられた。

何故簡単に喋った、学校側よ。

 

まあ、終わったことはもう仕方がない。

それに、俺も自分の居住地は知りたかった。

そして今、目の前に目的地があるわけなのだが、なるほど。

 

 

「……分かりやすいまでに、安い学生寮だな…」

 

 

道中で購入した電子タバコを咥え、独り言ちる。

俺の目に前にあるのは、鉄筋コンクリートで建てられた古い大型集合住宅形式の学生寮。

どうせならもう少し良いところに住みたかったが、そこまで文句は言えないだろう。

 

 

「しょうがない」

 

 

そして入口に足を踏み入れ、

 

 

「………おい、マジか」

 

 

そこで足は止まった。

そして俺は、動けなくなった。

『ザ・ワールド』が暴走し、俺も含めた全ての時が停止したわけではない。

入口に足を踏み入れた俺の目の前に、

 

 

「……これもまた、運命の重力とでもいうのか…?」

 

 

血だまりに沈む、長い銀髪の少女がいたからだ。

止まった足が動かない。

いや、正確には動いている。

明確な震え(恐怖)として。

 

初めて見た、血だまりに沈む人という残酷な現実を前にして。

思わず吐き気が込み上げて来るが、手を口に当て、それを必死に押さえつけ飲み下す。

歯を食いしばり、徹底的に精神的負荷(ストレス)を抑え込む。

そうしなければ、耐えられない。

 

 

「……インデックス!!?」

 

 

そんな俺の後方から聞こえてきた、一人の若い男の声。

この声を、俺は知っている。

何度も何度も聞いていた。

画面の向こうから、だが。

 

 

「お前がインデックスをやったのか!?」

 

「ッッ!!?ち、違う!俺じゃない!!」

 

 

咄嗟に振り向き、その声の主に対して答える。

上条 当麻(ヒーロー)』に、応える。

 

 

「じゃあ、他に誰がいるってんだ!!」

 

「俺が知っているか!!俺も今ここに来て、この現場を見たんだ!!正直今だって吐きそうなくらいだ!!」

 

 

黒髪ツンツン頭のヒーローに対し、自分の現状をありったけ叩き付ける。

それしか、できないから。

得た能力(理想)さえも満足に扱えない、弱い俺にはそれしかできなかった。

 

 

「……それは、本当なのか?」

 

 

俺の言葉と剣幕に、どうやら信じたらしいヒーローは、それでも疑いの言葉を向ける。

 

 

「………本と「本当だよ、それはね。彼女を攻撃したのは、僕たちだ」ッッ!!?」

 

 

忘れていた。

この男の事を。

背後から迫る、炎の熱を孕んだかのように熱く、そして全てを凍てつかせるような冷徹な声と、煙草の香りの主を。

ヒーローの衝撃で忘れていたが、しまった。

失敗した。

ある意味では言葉でどうにでもできるヒーローよりも、厄介な存在のことを忘れてしまっていた。

 

 

「ああ、僕の名前は『ステイル=マグヌス』。その子を狙う、魔術師(・・・)だ」

 

「魔術師だと!?」

 

 

ヒーローが受け答えをしているが、その間にも俺の頭は動いていた。

 

 

「ああ、そうだとも。もっとも、学園都市の住人には分からないだろうけどね。……さて、と。取りあえず君たちには死んでもらわないといけないな(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「ハッ!?」

 

「『我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)』。まあ、殺し名と言うやつだ」

 

 

俺の頭は、会話に入ることを許さずに必死に思考を繋ぐ。

 

 

灰は灰に(Ash To Ash)塵は塵に(Dust To Dust)…!『吸血殺しの紅十字(Squeamish Bloody Rood)』ッッ!!」

 

 

必死に思考する俺をよそに、ステイルの両手に現れる二振りの炎剣。

その意図は明確。

俺たちを殺すために、その剣はある。

 

それでも、俺は思考する。

もう二度と、死なないために。




主人公の人間性の一端が、今話で如実に表れました。
再び死ぬ事への恐怖に怯える彼が今後どうなるのか。

次回の更新を、お楽しみに!!
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