ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

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第9話:対価で背中を晒すのは間違っているだろうか

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 ヘスティア、ヘファイストス、ミアハ、ゴブニュからの許可によりユートが使える様になった小宇宙は、従来なら普通に使える能力とはいえ、現状では僅かに一分三〇秒のみ。

 

 だが然し、真っ直ぐ突き進むだけのヴィルガの群れを潰すのなら、それだけの時間が在れば充分だ。

 

 フィンから副団長であるハイエルフ、リヴェリアに伝言を頼まれているから、ユートは小宇宙を全開にしてロキ・ファミリアが展開するキャンプ地に向かう。

 

 どの道、ヴィルガ殲滅には其処からが一番やり易いというのもあった。

 

 ヴィルガを無視しつつ、駆け上がったユートは前線で指揮を執るハイエルフの女性──リヴェリアだと思われる彼女に話し掛ける。

 

「リヴェリア・リヨス・アールヴで間違いないか?」

 

「な、に……?」

 

 気を張っていたのにも拘わらず、自分に気付かせずにすぐ傍まで接近していたユートに驚愕したらしく、僅かに後退った。

 

「敵じゃない。ヘスティア・ファミリアに所属をする柾木優斗だ。貴女がロキ・ファミリア副団長リヴェリア・リヨス・アールヴで間違いはないな?」

 

 再度問われたハイエルフは僅かに黙考後……

 

「そうだ」

 

 頷いて肯定する。

 

「現状は理解している」

 

 ヴィルガに強襲をされ、リヴェリア・リヨス・アールヴの指揮の下、ロキ・ファミリアの面々は戦闘をしていた訳だが、こんな絶望的な状況でも戦線が瓦解をする事無く、維持を続けてる辺り彼女のカリスマ性と指揮能力の高さが窺えた。

 

「ロキ・ファミリア団長のフィン・ディムナから伝言を伝える」

 

「フィンからの?」

 

「後で確認しても構わないけどね、間違いなく本物の伝言だから」

 

「……解った」

 

 暫くの黙考後リヴェリアは頷く。

 

 周囲が驚愕をしながら、『リヴェリア様!?」などと絶叫を上げるが、ユートは何処吹く風と謂わんばかりにフィンの伝言を話す。

 

「『今は彼に従ってくれ』──以上だ。金髪の小人族(パルゥム)……からのね」

 

「了解した。どうすれば良いのだ?」

 

「下がれ。後は僕が奴らを──ヴィルガを討つ!」

 

「ヴィルガ? あの芋虫の名前か……解った」

 

 すぐにリヴェリアが仲間を下がらせる。

 

 胡散臭い餓鬼の言い分ではあるが、リヴェリアが信じた以上は否やは無い。

 

 すぐに前線を下げた。

 

 下がる間はユートが魔力を使った結晶障壁(クリスタルウォール)で防いで、戦線離脱するロキ・ファミリアの援護に回る。

 

 充分な距離を取ったロキ・ファミリア、リヴェリアがユートの隣に立った。

 

「全員を下げたぞ?」

 

「了解。障壁解除後すぐに攻撃をする。この一発で終わらせる威力だから気を付けてくれよ?」

 

「判った、そうしよう」

 

 さて、勘違いが無い様に記すが……小宇宙を使える時間は飽く迄も使用と維持の時間であり、今のユートは小宇宙を使っていない。

 

 結晶障壁も防御力に難がある魔力による展開だし、駆け上がるのに使った数秒しか消費してないのだ。

 

 よって、まだ制限時間は一分二〇秒以上ある。

 

 尚、制限時間まで使った後のインターバルとして、二十四時間は使えない。

 

「モンスターだとはいえ、所詮は蟲に過ぎないなら……こいつで!」

 

 死ねば爆発をして溶解液を撒き散らすのであれば、そうならない様な攻撃によって斃すのみだ。

 

 ユートは両手を前方にて組み合わせ、腕を真っ直ぐと上に向けて挙げる。

 

「今こそ翔けろ、僕の小宇宙よ! セブンセンシズの──黄金の領域まで!」

 

「む、むう……これは? 背後に水瓶を手にしたヒトがまるで黄金のオーラの様に見える!?」

 

 リヴェリアは驚愕した。

 そう、ユートが使う技は水と氷の魔術師と呼ばれし水瓶座のカミュ最大の拳。

 

極光処刑(オーロラエクスキューション)!」

 

 絶対零度に到達をする程の凍気がユートの拳より放たれて、下から真っ正直に上がってくるヴィルガ共を舐め上げる。

 

 ピキィィィィンッッ!

 

 第五〇階層全体が凍結してしまったかの如く瞬時に静寂に包まれ、目標であったヴィルガの群れの全てが凍っているのが見えた。

 

 今迄の騒然とした雰囲気が静寂に閉ざされており、ヴィルガは凍結された状態となったのを、フィン・ディムナが率いる第一級冒険者達も驚愕している。

 

「まさか、これ程とはね」

 

「ウム、氷結の魔法ならばリヴェリアも使えるがな、規模も威力も段違いよ」

 

 フィンが、ガレスがその力に戦慄を覚えていた。

 

「凄い……」

 

「は、はい。アイズさん」

 

 アイズとレフィーヤも、静かな第五〇階層を見つめて唖然としている。

 

 

「すっご、私達を置いていく訳だねぇ」

 

「そうね……」

 

「ケッ! ま、此処までをソロで来たなら雑魚じゃあねーって事だろ?」

 

 やはり驚くヒリュテ姉妹と口が悪いベート。

 

 そんな第一級冒険者達を他所に、ユートは構えを再び取り──それはペガサスの一三の星の軌跡を描く。

 

「ペガサス流星拳!」

 

 その衝撃により、凍結していたヴィルガが一斉に砕け散っていった。

 

 ヴィルガは死んだのだと判断されたか、ユートの持つアイテムストレージ内に大量の魔石とドロップアイテムが格納されていく。

 

「ふぃぃ!」

 

 これで良しとばかりに、一息吐いたユート。

 

 それを皮切りに静寂に充たされた空間が、ロキ・ファミリアにより再び騒然となるのであった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 取り敢えずは疲れた事もあり、ロキ・ファミリアは第五〇階層に今日は留まる事を選択したらしい。

 

 怪我人の治療に当たる者も居れば、アイテムの整理をする者も居るし、夕飯の準備を行う者も居る。

 

 一際大きなテント内で、フィン・ディムナを頂点に第一級冒険者──幹部達とユートが話をしていた。

 

 因みにレフィーヤはといえば、リヴェリア・リヨス・アールヴの後継者的にも云われるが、今は飽く迄もレベル3でしかない為に、普通に夕飯の準備を手伝っている。

 

「助かったよ、君の速度と攻撃力のお陰で被害も大分減ったろうし」

 

「まあ、こういう時くらいは助け合うのも良いから」

 

 流石に『冒険者は助け合いでしょう』とも言い難いからか? ユートは無難に言葉を返す。

 

 実際、そんな冒険者など少ないだろうし。

 

「それに、リヴェリアが信じてくれたから速攻で攻撃が出来たんだ」

 

「私は君の言葉に嘘を感じなかっただけだ」

 

 胡散臭いのは自分だって理解はしていたし、あっさりと信じてくれたのは僥幸だと云っても良い。

 

「然し、本当にソロだとは恐れ入るけど……君の名前は寡分にして聴かないな。ヘスティア・ファミリアというのもね。失礼を承知で訊ねるけど、君のレベルは幾つなんだい?」

 

「まあ、レベルくらいなら構わないけど……1だよ」

 

『『『……』』』

 

 シンと静まり返る。

 

「えっと、もう一度訊ねるんだけど……レベルは?」

 

「何度訊かれても1としか答えられない」

 

「おいおい、吹かしてんじゃねーぞ? LV.1風情がこんな深層までソロで来れる訳がねーだろーが!」

 

 ベート・ローガが青筋を立ててがなるが、ユートとしてはLV.1としか答え様が無い。

 

「ヘスティア・ファミリア自体が一ヶ月近く前に設立されたばかりだし、其処の構成員のレベルが高い筈もないだろうに」

 

「確かに、我々が遠征に出るまでで神ヘスティアなど名前を聞かないな」

 

 リヴェリアが顎に手を添えて言う。

 

 実は改宗(コンバージョン)でレベルを引き継げるのだが、ユートはその事実を知らない。

 

「言い方が悪かったかな、僕は素でLV.5くらいはあったから、【神の恩恵】を受けてからLV.6相当にはなっているよ」

 

「そ、それは……」

 

「古の英雄並だな」

 

 絞り出す様に言うフィン・ディムナと、汗を流しているリヴェリア・リヨス・アールヴの二人。

 

 実際、これでも身体強化しまくった連中を相手にしたり、神々とバトったりと洒落にならない事をしてきた身だし、素でもこの世界に於ける強者──LV.5程度は有って然るべき。

 

「やっぱ信じられるか! 背中見せてみろ!」

 

「見せる訳が無いだろ? マナーくらい守れよ」

 

 ベートの叫びにジト目で断わるユート。

 

 SAOでも、能力関連は秘密にするのが普通だし、訊くのはマナー違反だったのだが、この世界の冒険者も其処は同じらしい。

 

「うっせーよ! てめえが素直に背中見せりゃ全部が済むんだ!」

 

 強引に背中を見ようとするベートだが……

 

「はっ!」

 

「がはっ!?」

 

 柔よく剛を制するとばかりに投げた。

 

「そもそも、ベートは神聖文字(ヒエログリフ)を読めるのか?」

 

「読めんよ。私やアイズは読めるがな」

 

 静謐な声でリヴェリアが笑いながら言う。

 

 クイクイ。

 

「アイズ?」

 

「……私も知りたい。貴方のステイタスすら超克する力の一端を」

 

「?」

 

 リヴェリアを見遣ると、フルフルと静かに首を横に振って……

 

「アイズは力を求めているのだ。その理由までは話しかねるが」

 

 ……と、答えてくれた。

 

「力を……ねぇ? 等価交換って知っているかな?」

 

 コクリ、頷くアイズ。

 

 全てに於いて何かを求めるなら、基本的に対価を示し払わねばならない。

 

「ならば、僕のステイタスを見る対価に何を支払う? 等価交換だ」

 

「えっと……」

 

 いまいち思い付かないのだろうか? リヴェリアをチラチラと見ながら頭から煙を出している。

 

 頭は悪くなさそうだが、だけど知識に偏りがある様な気がした。

 

「そうだねぇ、例えば僕の背中を見るんだしアイズの裸を見せてくれるとか?」

 

 ピシリッ!

 

 そう言った刹那テントの内部が凍り付く。

 

 アイズにだって羞恥心は普通にあるし、流石に今の台詞には真っ赤になってしまい、胸を両腕で隠す様に覆って下がった。

 

「アッハハハッ! 良い、君って最高だよ!」

 

 笑い出したのはティオナ・ヒリュテ、バンバン! とユートの背中を叩きながら大笑いだ。

 

 双子の姉のティオネ・ヒリュテも可笑しいのか? チラリと見遣ると噴き出しそうになっている。

 

「てめえ、ムッ殺すぞ!」

 

 ベートは怒り心頭で青筋を浮かべ、ムッころさんの如く叫んだ。

 

「フッ、アイズ。それで、お前はどうするのだ?」

 

 リヴェリアが訊ねる。

 

「そ、それは……」

 

「お前は彼のステイタスを見たいのだろう?」

 

 コクリと頷く。

 

「本来、ステイタスというのは他派閥の者に見せて良いものではない。それを見せようというのだからな、確かに相応の対価は求められるだろうさ」

 

「う、うん」

 

「訊ねたいが、アイズの裸を見るだけなのだな?」

 

 リヴェリアの確認に対してユートは、当然だと言わんばかりに首肯した。

 

「触れたりはしないさね。一ヶ月近くダンジョン内に居たからね、女の子の肌が恋しくなったって処だよ」

 

「ふむ? それならば私も何も言うまいよ。アイズ、後はお前次第だな」

 

 瞑目しながらリヴェリアも黙ってしまう。

 

 ベートは未だにギャーギャーと煩いが、ティオナによって押さえられていた。

 

 リヴェリアが黙ったのには理由がある。

 

 まず、ステイタスを見たがったアイズに対する対価だと云う事。

 

 そして、仮にアイズから背中を見せて貰ってもロキは抜かり無くステイタスにロックを掛け、とある薬品を使うなりなんなりしなければ見れない事が二つ目。

 

 最後にユートに確認した〝見るだけ〟という約束。

 

 これならアイズのステイタスは見られまい。

 

「おい、フィン! 黙ってねーでお前も止めろ!」

 

「ベート、僕も彼のステイタスは気になるんだ。知れるなら知りたいね」

 

「ま、ワシはアイズが良いなら構わんしな」

 

 フィンは賛成派らしく、ガレスはアイズ自身の好きにさせる心算の様だ。

 

「そもそも、最初に背中を見せろと言ったのはベートじゃないか? 男の彼が君の裸に興味が無いのは当然だしね」

 

「うっせーよ!」

 

 やはりジタバタしているベートを他所に、アイズは下を向いて黙考中である。

 

 裸を見せるのは恥ずかしいけど、ユートのステイタスは見たいという乙女心?

 

「条件……がある」

 

「条件?」

 

「……そう、リヴェリアにも見せて」

 

「リヴェリア?」

 

 ふとリヴェリアを見る。

 

「待て、アイズ。私は肌を晒したりしないぞ?」

 

「裸を見せるのは私だけ。でも……神聖文字(ヒエログリフ)の解読はリヴェリアの方が上だから」

 

 読めない文字が万が一にも在れば片手落ち。

 

「了解した。リヴェリアに限り見せよう」

 

 十分後、ユートはアイズの戦士とは思えない肢体を確りと堪能し、満足してからアイズとリヴェリアへと背中を晒す。

 

 暴れるベートは当然ながらガレスに抑えられた。

 

「LV.1で基本アビリティも恩恵を得たばかりとしては高いが、全てがI評価でしかないか」

 

 だが然し、こんな深層にまで降りてきているからには単なるLV.1とは到底思えないし、問題なのは寧ろスキルと魔法だろう。

 

「【精霊契約】と【黒魔術】と【神威魔術】……」

 

「これはどういう事だ? 恩恵で得られる魔法とは、最大三つのスロットを埋める形になるが、この様な形は知らない」

 

 魔法はスロット方式で、魔法名と詠唱式──場合によっては解除式も有り──と魔法の説明文にて構成がされている。

 

 然し、ユートの魔法スロットは魔法名ではないし、詠唱式も書かれていない。

 

「魔法の説明文から推測をするに、どうやら詠唱式は別に彼が知っているのではあろうがな……」

 

 正に既知外な魔法。

 

「スキル……情交飛躍(ラブ・ライブ)?」

 

「ブッ!」

 

 スキルの説明を見た途端にリヴェリアが吹き出す。

 

 普段の彼女からは想像も出来ない。

 

 発現者が男の場合だと女性との情交を一回で基本アビリティに十前後上昇。

 

 同時に絶頂を迎えれば効果は倍増。

 

 絆が深まればボーナスがプラス。

 

 早い話がセ○クスをしたならば、一回につき女性の基本アビリティがある程度ながら上昇するという事。

 

 すぐにアイズの目を塞いで見えない様にした。

 

「……リヴェリア?」

 

「お前には未だ早い」

 

 溜息を吐きながら言う。

 

「それにしても……」

 

 いまいちよく解らない【権能発詔(イェヒー・オール)】は兎も角、フィン達の武器に不壊属性を附与したのは【聖剣附与(エクシード・チャージ)】の筈。

 

 しかも宝石へと用いれば恒常的に附与が可能だし、明らかに鍛冶職人に対して喧嘩を売るスキル。

 

 だがやはり際立つのは、【情交飛躍(ラブ・ライブ)】というスキル。

 

 基本的にステイタスというのは経験値(エクセリア)を積み、それを主神によって更新されねば上がる事は決して無い。

 

 然し、ユートと──下品な言い回しをすれば【一発ヤれば】上がると云う。

 

 いったい何をどうすればそんな訳の解らないスキルが発現するのか、リヴェリアを以てして全く理解不能であるとしか言えない。

 

「訊ねたいのだが?」

 

「何を?」

 

 服を着直しながら返事をするユート。

 

「君は自分のスキルや魔法について、ちゃんと把握をしているのだろうか?」

 

「スキルの【情交飛躍(ラブ・ライブ)】と魔法である【神威魔術】以外は」

 

 【神威魔術】はこの世界の神々と交流をした上で、新たに術を構築していかなければならないから、未だに手付かずの侭である。

 

 【情交飛躍(ラブ・ライブ)】は相手が居て、更には神聖文字を読めなければ実験すら侭ならない。

 

 その為、この二つに関してはちょっと把握は出来ない状態だった。

 

「ただ、感覚的に【情交飛躍】は基本アビリティに於ける限界を超克出来る筈だと思ってるけど……ね」

 

「なっ!?」

 

 本来、数値はS999がカンストとなるステイタスではあるが、ユートの言う通りならSSにも達すると云う事であり、リヴェリアはその事実に驚愕を隠せないでいたと云う。

 

 

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 主神は間違っても仲良しではないけど、意図せずしてファミリア同士は仲良くしています。

 ベート以外。


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