ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】 作:月乃杜
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魔力で
それなら初めから広範囲に影響を及ぼす詠唱型で、普通に魔法を行使した方がアイズが見ている今だと、目立たないであろう。
「さて、何を使うか?」
ふと脳裏に浮かんだのは【魔法先生ネギま!】系の氷結魔法で、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが得意としていたアレ。
始動キーは再転生の折りに破棄したし、普通に初心者用の始動キーで唱えれば良い訳で、ユートなら間違いなく解放後のエヴァンジェリン以上の力で行使可能である筈だ。
「む?」
考え事をしているユートの頭上にキラキラ輝く粉、禍々しいだけの気配を放つそれをユートは避けると、懐から紅い薔薇を取り出して投げ付ける。
ドガン!
薔薇が触れた途端に爆発をする粉。
「成程、これが奴の攻撃という訳……か」
大した威力でもないが、乱発されても面倒臭い。
「とっとと斃すか……」
ユートは浮かび上がり、アイズに向けて叫ぶ。
「アイズ、僕が奴を凍結させるから君は剣でトドメを刺してくれるか?」
「……判った」
相変わらず無表情に近いのだが、それでも何処かしら愉しそうな雰囲気が感じられるアイズは、ユートの言葉に対して素直に頷く。
まあ、この魔法はその気になれば中身ごと粉々に壊せるのだが、折角アイズがユートを心配して残ってくれたのだし、その心意気を無碍に扱う心算も無い。
先のヴィルガ──芋虫との戦闘では先頭に立っていたからアイズの実力も見れなかったし、存外と丁度良かったとも云えた。
「君は……翔べるんだね? 頑張って」
ニコリと微笑まれる。
何と云うか、可愛らしくて実年齢より幼く見えた。
というか、翔べる事への疑念は無いのだろうか?
実はアイズも僅かながら魔法で風を纏い、空を翔ぶ能力を有していたからか、疑問は無かったのだが……
「さて、始めますかね? プラクテ・ビギ・ナル」
初心者用の始動キーを口にしたユート、ヘンテコな芋虫だか人型だかのモンスターもそれに気付いたか、攻撃を開始しようと動く。
契約に従い
我に従え氷の女王
来れ常の闇
永遠の氷河
「ト・シュンボライオン・ディアー・コネートー・モイ・ヘー・クリュスタリネー・バシレイア・エピゲネーテートー・タイオーニオン・エレボス・ハイオーニエ・クリュスタレ……」
本来、世界独自の言語で呪を唱えても別世界の精霊には言語が理解を出来ず、発動はしない。
英語に堪能でない日本人が米国人旅行者から頼み事をされ、そそくさと逃げてしまうようなものだ。
だが、この世界では魔法スロットにステイタスとして刻まれた影響からか? 地球の言語で普通に精霊へと通じていた。
一五〇フィート四方という広範囲に亘り、ほぼ絶対零度と云える極低温にまで温度を下げて凍結してしまう氷結系高等魔法。
【燃える天空】や【千の雷】に匹敵する古代語魔法(ハイエンシェント)。
本来ならこれに付随し、【おわるせかい】と【こおるせかい】のいずれかによって破砕か凍結かを選ぶ。
だが今回は……
「殺れ、アイズ!」
敢えて、アイズ・ヴァレンシュタインに任せよう。
「
ユートの言葉に頷くと、アイズも魔法を発動した。
「エアリエル……」
風を纏いて浮かび上がったアイズは、自らの武器たるデスペレートを構えて、閃光の如く突進。
「リル・ラファーガ!」
ガシャーンッ!
軽快な音を立てながら、気持ちの悪い人を不気味に擬く芋虫を粉砕する。
「Congratulations!」
ユートはモンスターを斃したアイズに祝福の言葉を投げ掛け、地面に降りると残っているであろう魔石の確保へと向かった。
ヴィルガの魔石からして予測は出来ていた訳だが、やはり大きさはヴィルガの倍以上なのは良しとして、色は元来の紫紺色とは異なる色合いをしていた。
「どうした、の?」
勢いを付けていて翔んで行ったアイズが戻って来るなり、訝しい表情……というには無表情に近いけど、兎にも角にもユートへと話し掛けてくる。
「ああ、魔石を回収していたんだけど……ね」
「? 回収出来たんだね」
「ん? 破裂させたら魔石もドロップアイテムも溶けて無くなるけど、凍結させて砕いたから魔石は普通に残ったんだよ」
魔石を見せながら言う。
「色が……違う……?」
「そう、ヴィルガ──芋虫もそうだったんだけどな。どうもコイツらは他のモンスターとは毛色が違う」
「……そう」
ロキ・ファミリアでは、基本的に難しい事はフィンやリヴェリアが担当して、他の第一級冒険者は脳筋とまでは云わないが、スルー状態な事もあってかアイズも『フム』と何か考えてはみたものの、『後でフィンやリヴェリアに相談してみよう』という答えに落ち着いてしまった。
「さて、こうしていても何も始まらない。フィン達と合流をしようか」
「うん」
あのモンスターの魔石はアイテムストレージに入れなかったし、ドロップアイテムも手に入らなかったが故に、名前を確認する事は叶わなかった。
どうでも良い話だが……
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「うう……アイズさんが居なくなってて吃驚したんですよ〜?」
「うん、ごめんね?」
胸の内で泣くレフィーヤの頭を撫でながら謝る。
既に独断専行に関してはフィンやリヴェリアからの御叱りを受け、ティオナとティオネからも色々と言われてしまっている。
ベートは特に何も言っていなかったが……思う処はあったらしい。
あのモンスターの魔石は売却した場合、七:三という比率で分ける事に。
勿論、七がユートだ。
ぶっちゃけ、アイズは単に砕いただけでしかなく、居なくても砕く事が出来たのだから当然だし、フィンも寧ろ九:一でも良かったくらいだと言っていた。
とはいえ、こいつは曰く付きの魔石なだけに売却が可能かどうか、仮に可能だったとしても変な連中にでも目を付けられたらと思うと憂鬱となる。
「さて、それじゃあ地上に戻ろうか」
フィンの号令を受けて、ロキ・ファミリアとユートは地上への帰路に着く。
ユートとしてももう攻略といった気分ではないし、アイズやレフィーヤやティオナといった綺麗所と一緒に帰った方が嬉しいから、同じく帰る事にした。
何よりも、ヘスティアは兎も角としてヘファイストスとミアハとゴブニュには小宇宙使用許可の御礼くらいはしておきたかったし、稼ぎそのものは充分だったというのも大きい。
序でに言えば【
「間違いなく、十二程度だがティオナのステイタスは上がっていた」
「ホント? リヴェリア」
「ああ、主に力だな。次に俊敏が上がっていた」
「ヤッホー!」
「ロキ……神による更新とは無関係に上がるとはな。然し、スキルは基本的には持ち主の
喜ぶティオナを見遣り、溜息を吐くリヴェリア。
えっちぃ行為に正当性が表れ、ユートによる性交は冒険者を相手に限りステイタスを上げる為だと言え、更にはこういう行為が好きだからこその顕現であり、しかもヤってきたのだろうと当たりを付けた。
僅か十二と言う無かれ、一発ヤれば十二も上がるのなら、幾日も掛けてダンジョンに潜り続けるより遥かに効率的な上昇値。
しかもユートは時間さえ許せば、それこそ一晩中でも抱き続けられると言い、つまり一晩で三百くらいは上げられるという事。
更にはステイタス上限、S999を天元突破してのSSすら可能らしい。
アイズが知ればロキなど無視してでも、あの美しく儚い肢体を肉の欲望による宴に投げ出すだろう。
とある理由から強くなる事に忠実で、強くなれるのなら如何なる事すらやり遂げてみせると意気込む程。
それはロキ・ファミリアの参謀役としても、アイズの母親(ママ)役としても、決して見過ごせない所業。
実際に抱かれたティオナの感想は……
「スッゴいスッゴい鮮烈で激しくって、もっとシてたらハマりきっちゃって抜けられなくなるかも!」
真っ赤に頬を染めながらはにかみ、どう見ても既にハマっていますという風情な女の貌をしたティオナ、流石に骨抜きにまでされてはいないが、果たして彼女が言う──『またヤりたいなぁ』なんて要望を叶えるべきか迷う。
女の貌をしながら無垢な少女の表情をする様になったティオナは、たった一晩で男共が違う視線を向けている程だ。
相変わらず胸はティオネに奪われたと言われて納得する格差だが、ティオナの今の顔はティオネより女をしていた。
「あのティオナを、たった一晩であそこまで変える、変えてしまう……か」
それはきっと空恐ろしい出来事であろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ユートは現在、何をするでもなくアイズやティオナ──第一級冒険者達と共に上へ向かって歩いている。
先の一件から更なる深層へ潜る気も失せた事だし、折角だから換金所で魔石やドロップアイテムを換金しようかと思う。
まあ、ティオナ達が曰く魔石だけであるのなら兎も角として、ドロップアイテムは他のファミリアに交渉して売った方が稼げる場合もあると教わり、ロキ・ファミリアが換金に行く際に一緒に行こうという話に。
歩きながらユートは自身のスキルの考察をする。
あの【
ステイタス上昇値12、何週間も深層に潜り続けて漸く増える値を、ユートと一発ヤっただけで上がる。
それこそ、ユートならば一晩で二十発でも三十発でもヤれるし、確かに三百を一晩で増やすのも可能だ。
問題は射精の場所。
ユートの感覚的に視て、恐らく外出しは論外であるだろうし、直腸や口内への射精も効力は半減する。
試したい……などと思って苦笑いをした。
こんな風にいつの間にか『ヤりたい』という思いが先立つ様になり、だからこそヘスティアはあのスキルを発掘出来たのだろうと、自らを理解する。
考えてみればユートは、今までも口八丁手八丁にて色々とやらかしてきた。
レ○プは嫌いだし、自発的に他人の女へと手出しはしていなかったユートも、抜け道を以て人妻にすら手を出した事もあった。
所詮は精神的な問題で、それさえ解決すれば幾らでも……というのが何とも。
最近でも、正確には最後までヤってこそいないが、船穂や美沙樹とも可成りの際どい行為に及んでいる。
勿論だが樹雷皇には内緒であるし、阿重霞や砂沙美になど言えやしない、
しかも、そんな内緒行為を向こうから何度も要求してくる辺り、樹雷皇はもう少しだけ性に於いて妻二人を満足させるべきである、なんてアホ過ぎ且つ身勝手な感想を懐いていた。
「暇だからこんなアホな事ばかり考えるんだな」
解ってはいるのだけど、勇者フィンからロキ・ファミリアを統括する団長として頼まれてもいる。
中層のモンスターは団員の中でも、下位〜中堅層の経験値稼ぎをしたいから、手出しをしないで欲しい──という。
実際、中層にまで登れば第一級冒険者は戦わずに、第三級以下の冒険者が戦いのメインとなるらしい。
まあ、第一級冒険者──LV.5やLV.6ともなれば中層で獲られる経験値なんて、基本アビリティの上昇の役にも立たないのだろうから、フィンとしてはまだ成長の余地がある団員を押し上げるべく、そうしているのであろう。
指揮すらラウルという、LV.4が執っていた。
だけど今回は何だか少し様子がおかしいというか、第一級冒険者でも若手達が殺気立っている。
ティオナなんて
多少とはいえステイタスが上がったから試したい、そんな気持ちが犇々と伝わってきている。
本当に多少だから試す程の効果はあるまいに。
「ああもう、まだまだ行けたのに! ちっとも暴れ足んないよぉぉっ!」
如実に語るティオナ。
ティオネが辟易としてはいても、本人がまだまだだと言わんばかりの闘志。
胸の大きさに差はあれ、根本的にアマゾネスであり双子なのだろう。
アイズがリーネとかいうサポーターを気遣うけど、ベート・ローガが『そいつらに構うな』と超実力主義者らしい科白を言う。
確かに、上に居る存在がそれを示し続けるのは義務と云えるが、ベートは少しばかり過剰なくらいだ。
第一七階層。
階層主はユートが斃しているから、インターバルが二週間程あった。
斃して既に幾日か過ぎ、今からなら一週間か其処らで復活する筈。
階層主が湧出する場から少し離れると、
「出たな牛面」
数が数なだけにユートは腰に佩いたエリュシデータを抜剣し、ミノタウロスに対して構えてみせる。
「リヴェリア、この数だし構わないだろう?」
「ああ、多少は間引かねば下の者には厳しいからな。ラウル、フィンの言い付けがある。後学の為にお前が指揮を執れ」
「はいっス!」
指名されたラウルは指揮を執って後に彼ら、忍ぶ処か暴れそうな三人を見遣って声を掛けた。
「御三方、中層では下の者に経験を積ませるのが規則なんですから、空気を読んで下さいね?」
「了解、理解、解ってる」
「ええ、理解してるわよ」
「
殺る気に本気な三人に、知らずラウルのHPゲージが下がっていく気が……
そして数分も経たない内に逃げ出すミノタウロス。
「って、逃げた?」
「おい、てめえら化け物だろうがよ!」
ティオナもベートも驚愕してしまう。
「いかん、追えお前達! パニック状態のモンスターが何を仕出かすか解らん」
リヴェリアが叫ぶと同時に駆け出す第一級冒険者、そしてレフィーヤ。
同じくユートも氣による身体強化を施し、彼らと共にミノタウロスを追う。
上層へ上がる階段を上へ上へと往くミノタウロス、ベート曰く雑魚が群れている上層に、中層のモンスターが現れては拙い。
一匹一匹を殺しながら、確実に追い詰めていく。
上層部・第五階層。
ラスト一匹の筈だけど、そうなると広いダンジョンでは中々に見付からない。
アイズはキョロキョロとミノタウロスを捜す。
「おい、ベート。臭いとかで捜せないか?」
「俺は犬じゃねー!」
「狼は犬科だ!」
「ぶっ潰すぞゴラァ!」
言い合う中でもベートは自らの役割を果たしていたらしく、すぐにもミノタウロスの居場所に気付く。
「チッ、こっちだ!」
言われた通りに臭いを嗅いで捜した訳で、やっぱりちょっと納得がいかないと目が口程に語っていた。
「よし、アイズ!」
「了解……」
三人で急いでいると……
「う、うわぁぁぁぁっ!」
何と冒険者らしき誰かがミノタウロスに追われて、悲鳴を上げながら逃走をしており、脚が縺れたのであろう引っくり返る。
「なっ!
慌てるベート。
「アイズ、僕が彼を護る。君はミノタウロスを!」
「ん!」
デスペレートを片手に、アイズがミノタウロスへと駆け寄っていく中、ユートは白髪に
これが
「
ガギィィッ!
ネイチャーウェポンによる攻撃は障壁とぶつかり、そのエネルギーはミノタウロスへと跳ね返る。
『ギャァァッ!』
踏鞴を踏んだミノタウロスが見せた隙、それを見逃すアイズ・ヴァレンシュタインではない。
「ハァッ!」
その瞬間、何度も放たれた斬撃はミノタウロスを細切れにしてしまう。
バラバラ死体となってしまったミノタウロスの血液が降り注ぐが、結晶障壁を赤黒く汚しただけで被害は特に受けていない。
「……大丈夫?」
腰でも抜かしたのか? 壁に寄り添って座り込んだ少年に、アイズが手を差し伸べるのだが……
「だ!」
「だ?」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
真っ赤になってエコーを放ちつつ、当の少年は一目散に逃走してしまう。
ベートが然もおかしそうに腹を抱えて、可愛らしくアイズは膨れっ面となる。
これがユートにとってもアイズにとっても、白兎とのファーストコンタクトとなるのであった。
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漸く原作入りしました。