ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

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第12話:黄昏の館に帰るのは間違っているだろうか

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 最後の最後でトラブルな道中記っぽくなったけど、取り敢えず下級冒険者には被害が及ばなかった事へは素直に喜び、摩天楼の螺旋階段を昇り切る一行。

 

「やれやれ、やっと戻ってこれたか……」

 

「ああ、上層にミノタウロスを逃した時は焦りを覚えたが、何とか殲滅も叶ってホッとしたよ」

 

「そうじゃのぅ。ユートも頑張ってくれたし、助かったわい」

 

 LV.6のロキ・ファミリア最高幹部と首領による三人の話し合い、地上へと戻れた安心感はやはりこの三人を以てしても感じてしまうものらしい。

 

「さあ皆、帰ろうか。僕達の【黄昏の館】へ」

 

 フィン・ディムナからの号令を受け、ロキ・ファミリアの面々は摩天楼施設──ダンジョンの蓋とも呼べる天を衝く白亜の塔を出ると各々、漸くストレスから解消されたのだとばかりに開放感に満たされていく。

 

「あ、待ってくれないかなユート」

 

「うん? 僕も帰ろうと思ってるんだが……」

 

「折角だし、うちのホームに御招待したくてね」

 

「黄昏の館とやらに?」

 

「ロキに紹介をしたいし、あっちで僕を怨めしそうに睨むティオナが居てね」

 

 成程、これでユートだけ別の方向へと帰るというのはKYだろう。

 

「それにしても、人ってのは変われば変わるもんだ。あの花より団子なティオナが男に執着だからね」

 

 苦笑いのフィン。

 

「いったいどんな手練手管で籠絡したのやら」

 

「一回、抱いただけだよ。とはいえ……僕がイクまでに三回はイカせたからね。存外と快楽にハマったんじゃないかな?」

 

「ふむ、つまりは下半身によるテクニックでかい? 僕には真似が出来そうにはないね。いざという時には使いたいけど……」

 

「ま、すぐに帰らなけりゃならない訳でもないしね。御招待に与ろうか」

 

「助かるよ。序でにあの子の相手も頼みたいね」

 

 視線の先にはティオナ・ヒリュテの姿。

 

 元々、ヒリュテ姉妹とはアマゾネスの変わり者だと自らでさえ認識しており、種族の本能とも云える男を求める気持ちが無かった。

 

 勿論、生まれ付き持ち合わせていないのではなく、そういった気持ちが喚起されないに過ぎない。

 

 事実、姉のティオネ・ヒリュテは他ならないフィンに惚れ込み、色々と熱烈なアタックを仕掛けている。

 

 ティオナも相手に恵まれなかっただけで、その気になったら恐ろしいまで執着を見せていた。

 

 その証拠に、黄昏の館へユートが来ると知ってからのティオナの喜び様、腕を組んで先々と進む。

 

「フム、確かに変わった。それはレフィーヤもだ」

 

「リヴェリア、それはどういう意味だい?」

 

「見てみろフィン。彼女の視線の先には彼が居るし、ティオナと腕を組んでから百面相をしているぞ」

 

「……えっと、レフィーヤにも手を出したのかな?」

 

「いや、そういう訳では無い様だな。どうもティオナと彼との情事に聞き耳を立てていたらしいし、何より抱き抱えられた時に一切の拒絶感を感じなかったと、本人から聞いたのだ」

 

「へぇ?」

 

 この世界のエルフとは、排他的過ぎるきらいがあって肌に触れるだけにせよ、激しく拒絶する。

 

 レフィーヤの住んでいた森は、流石に其処までではなかったからか多少は融通が利いていた。

 

 それでもエルフ。

 

 そんなレフィーヤだが、ファミリアの人間でもない初対面の異性、そんな相手に無遠慮なまでに触れられながら、まったく気にならなかった上に王族(ハイエルフ)より清々しい精霊の気配、エルフ族として興味は尽きなかったのだ。

 

 しかも情事を見て自分で耽るとか、恥ずかしい処を見せてしまっている。

 

「ティオナさん、そんなにくっ付いていたら歩き難いじゃありませんか!?」

 

「大丈夫だよ。私達は相性が良いみたいだからね」

 

「そんな訳無いでしょう! ほら、離れて下さい」

 

「ふっふん! レフィーヤってば羨ましいんだ?」

 

「な゛っ! そ、そ、そんな事はありません!」

 

「じゃ、別に良いじゃん。私とユートがどうしていようとさ」

 

 更にギュッと組んだ腕に力を籠める。

 

 残念ながらナイチチ属性なティオナでは、どれだけ力を籠めてこようと胸の柔らかさを堪能は出来ない。

 

 だけど、程良く鍛えられた褐色肌な肢体、その柔らかさと温もりは楽しめた。

 

「ほら、喧嘩してないで。何ならレフィーヤもくっ付いてみるか?」

 

「へ? あの、そのぅ……宜しくお願いします」

 

 真っ赤になりながら頷くレフィーヤ、ティオナとは反対側の腕に組み付く。

 

 エルフとはいえティオナより肉感的で、ふにょんと美乳がユートの腕を沈め、レフィーヤの温もりが腕に強く感じられた。

 

 そんな様子をリヴェリアは苦笑いを浮かべながら、然しまるで娘が彼氏にくっ付く様を見ている母親みたいに優しい表情でもある。

 

「意外だね」

 

「何がだ、フィン?」

 

「レフィーヤはエルフ族としては潔癖症な部分が薄いけど、それでも出逢って間もない異性を相手にあれだけくっ付くなんてね」

 

「確かに。だが、レフィーヤの気持ちが理解出来ないでもないのだよ」

 

「へぇ、その心は?」

 

「彼が漂わせる濃密な精霊の気配、それにまるで多くのエルフと肌を合わせたのではないかと思われる程、心地好い感覚。私だとて、レフィーヤ並に若ければなとも思うよ」

 

 ロキ・ファミリア初期のメンバーであり、フィンやガレスと共にファミリアで最高位のレベル持ち、彼女は見た目は二十代中盤でも通用するが、実際はもっと年齢が高めである。

 

 フィンが実は四十路というのも冗談にしか聞こえないが、リヴェリアはエルフなだけに顕著だった。

 

「ティオナもすっかり参っておるのぉ」

 

「一回だけ抱かれたけど、よっぽど良かったのかな」

 

 ガレスの言葉にフィンが苦笑いで言う。

 

 高が一発、然れど一発。

 

 下手くそが調子に乗っても白けるだけだが、極上のテクニックで相手を腰砕けにしてしまえる輩も居る。

 

 ユートは大元の世界では〝とある理由〟から、童貞の侭で死んでしまったが、前世と前々世では可成りの経験をしていた。

 

 二番目の相手に酷評されたが故に、彼女と再会したらその時こそ満足させたいという欲求もあり、愛しい相手を存分に味わったものである。

 

 因みに、初めての相手の時には男として最も恥ずべき大失態を犯した。

 

 その苦々しい経験こそ、今日(こんにち)のユートのセ○クス・テクニックを支えている要因。

 

 尚、二番目の相手であるエセルドレーダに対して、再会した際には及第点こそ頂いたが、まったくの余裕な態度からまだまだであると理解させられている。

 

 まあ、再会したのは再誕世界で過去に跳んだ時期、一九九二年の事だからそれ程にテクニックが向上していない頃だし、今なら或いは満足させる事も可能かも知れないのだが……

 

 何しろ、相手は数十年の単位を数億……下手をすれば数兆すら越えるループを過ごした存在、大十字九郎並のニトロ砲を備えている彼の獣殿との閨の回数は、更に数倍にも及ぶ筈。

 

 とはいえ、ユートは彼の二代目を襲名したからにはそれが睦事とはいえ、敗けるのは悔しい。

 

 だからこそ、小賢しいが弱点を自らの分身で直接的に責め立てるなど、色々と女性を悦ばせる方法を考えてきたのである。

 

 時々、自分は半生を費やしてナニをやっているのかと自問自答をしていたりもするが、概ねは上手く成功しているから複雑だった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 迷宮都市オラリオに於ける北方のメインストリートからやや外れた位置、其処こそ神ロキが拠点として構える【黄昏の館】の場所。

 

 ロキ・ファミリアは漸く此処へ帰って来た。

 

「おっかえりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!」

 

 館の門が開かれた瞬間、赤毛に絶壁な糸目の女性? が女の子に飛び掛かる。

 

 勿論、ティオネもアイズも簡単躱したし、ティオナも一時的にユートから離れて避けてしまう。

 

 冒険者としてはまだまだなレフィーヤは、オロオロしながらユートの腕に胸を押し付ける様にギューッと抱き締めて、女性の襲来に思わず目を閉じる。

 

 フワッ!

 

 行き成り身体が浮き上がった感覚に戸惑うが……

 

 ドガンッ!

 

「ぎゃびりぃぃーん!?」

 

 壁に激突する音と共に、女性の悲鳴? が上がったので恐る恐る目を開く。

 

「は、はわっ!?」

 

 否応なしに自分の現状を知り、頬を真っ赤に染めて変な悲鳴をあげた。

 

 所謂、お姫様抱っこ。

 

 

 細身だと思っていたが、意外な程に鍛えられた筋肉を持つ腕が背中と脚を支えており、硬い胸板に左側の身体が押し付けられ、顔は吐息が長いエルフの耳に掛かるくらい近い。

 

 否、実際に熱い吐息が掛かって耳を擽る。

 

 異種族の異性がこんなに間近なのは初めての経験であったし、それが興味津々な男の子だったりするのだから、レフィーヤの胸から心音がドキドキと高鳴るのが自分でも判り、ユートに聞かれたらと思うと更なる紅潮で真っ赤となった。

 

 英雄譚のお姫様の如く、英雄に浚われたいなんていう変な衝動が沸いたけど、流石に頭を振ってそこら辺はリセットする。

 

 此処まで間近に居るから理解も出来たが、ユートの精霊の気配は濃密濃厚過ぎていて、そこら辺の精霊が加護を与えているにしては強過ぎるモノだ。

 

 そしてエルフが無警戒に好意を懐く、王族(ハイエルフ)でさえ例外でなく。

 

 まるでレフィーヤにとっては良く云えばフェロモンであり、悪く云えば麻薬の如く効果だった。

 

 正確にはエルフにとってと言うべきか。

 

 胸の高鳴り、子宮の奥がジュンジュンとする感覚、今すぐにでも全てを捧げたくなるくらい強いナニか。

 

 若いレフィーヤは感情の暴発さえ有り得るそれは、ハルケギニア時代には既にある程度は発露していた。

 

 故に、未亡人なシャジャルが夫を失ってからユートに心惹かれ、ハーフとはいえエルフなティファニアも怪しむより受け容れたし、鉄血団結党のファーティマ達とて、最終的にはユートを受け容れている。

 

 ルクシャナだって婚約者のアリィーが居なければ、ちょっと怪しかったのではなかろうか?

 

 再誕世界でもハイエルフのテュカやユノに好かれ、ホドリューなど飲み友達的なくらい仲が良かったし、某・戦記世界ではハーフなあの娘やハイエルフっ娘と仲良しだった。

 

 ハイエルフっ娘に特定の男が居なければ、これも怪しかっただろう。

 

 エルフ族との仲は概ね、良好だったのだ。

 

 レフィーヤは目を閉じ、ユートの身体の温もりへと身を任せる。

 

「痛たたた……ちょい酷ないか? つーか、レフィーヤを抱っこしとる彼は誰やのん? 入団希望者か?」

 

「いや、違うよロキ。彼は客人なんだよ」

 

「客人なぁ……」

 

 フィンの説明でチラリとユートを見遣るロキ。

 

「レフィーヤが堕ちとる様な気ぃがするんやけど?」

 

「色々とあってね。深層域で会ったんだけど、僕らも助けられたんだ。それと、【カドモスの泉水】を根刮ぎ先越されてね。買い取りの交渉も含めて歓迎会でもしようかと」

 

「ふーん、LV.6が三人も居って助けられるとか、何やエライ目におうたか」

 

「それらも込みで報告をさせて貰うさ。彼のお陰もあって今回の遠征での犠牲者は無しだ。到達階層も増やせなかったけどね」

 

「うん、了解や。フィン、お帰りな」

 

「ああ、ただいまロキ」

 

 

 とても騒がしい場所で、だけどアイズはこの拠点(ホーム)は落ち着く。

 

「アイズもお帰りぃ」

 

「ただいま、ロキ……」

 

 ツンツンとアイズの身体に触れて……

 

「うん、身体がズキズキと痛むなぁ? ちゃ〜んと、休まなあかんよ?」

 

 真面目な目で言うロキ。

 

 今度のターゲットとなるのはリヴェリア、クルリと踵を返してしまった。

 

 ユート以外はリヴェリアやフィンすら気付かなかったダメージに、ロキは割とアッサリ気付いてしまう。

 

 仕方がない(ひと)でもやはり神様なのだ、アイズはそんな風に思いつつも、荷運びをしようとするのだけど……

 

「あ、アイズさん! 片付けは私らがやりますんで」

 

「お先にシャワーどうぞ」

 

「え、でも……」

 

「良いです、良いんです。順番ですから……ね?」

 

 よそよそしい態度。

 

 急に居心地が悪くなり、ティオナから誘われた事も手伝い、アイズはシャワールームへと向かった。

 

 その後、シャワールームでは裸の少女達がガールズトーク? に花咲かせていたりするが、ロキの乱入とか色々とあったらしい。

 

 ユートは見ていないが、夜中の客室で寝物語代わりにティオナから聞かされただけである。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「うん、このくらいの価格だろうね」

 

 【カドモスの泉水】を採ったユートから、フィンはこれを買い取る交渉をしていた訳だが、ハッキリ言って今回の場合は利益よりもファミリアの信頼の為に、ユートから買い取る。

 

 この【カドモスの泉水】とは、ロキ・ファミリアがディアンケヒト・ファミリアから依頼を受けた代物、だからロキ・ファミリアが渡せないとなると、手酷くはないがダメージだ。

 

 ディアンケヒト・ファミリアは薬物系のファミリアであり、【カドモスの泉水】は薬品を作るのに適したアイテムである。

 

 だからこそ、恐らく売値となるであろう値段に近い額でも買い取った。

 

 正確には万能薬を二十本ばかり、物々交換的に支払いが行われる。

 

 ディアンケヒト・ファミリアの万能薬は、最高品質で一本が五〇〇〇〇〇ヴァリスで取り引きされる為、二十本となれば一千万。

 

 それ故に、九五〇〇〇〇〇ヴァリスで必要となるであろう量を引き取った。

 

 一応、物々交換だとはいえ価格的に五十万の稼ぎ……ではあるが、やはり先に取られたのは痛い。

 

 残りはユートが自分自身で使うから、何処かに売りに出す心算は無かった。

 

 ユートが客間に案内されていくのを見守り、その後にロキへ今回の件の報告。

 

 ユートに会う前の行動、出逢ってからの行動などを細かく報告していく。

 

「ほう……ドチビんトコの眷属やったんか」

 

 ドチビ──ヘスティアの事をロキはそう呼ぶ。

 

 確かに【ロリ巨乳】などと云われるくらい背は低いヘスティア、それに反比例するあの巨乳がロキはムカつくらしい。

 

「しっかし、ドチビんトコ以外でもユートや何て名前は聞かんで? 深層域までソロで潜れるんならLV.かて高いやろ」

 

「いや、LV.1だよ」

 

「は? 何の冗談よソレ」

 

「いや、リヴェリアが確認をしているからね。間違いは無い筈さ」

 

「ちゅー事は、恩恵を得る前からLV.5相当は固いやろな……古の英雄か? アイツは」

 

「英雄並か」

 

 昔はそもそも次々と殺されていたとはいえ、ダンジョンのモンスターに恩恵無しで挑み、故にこそ現在で云う第一級冒険者並な人間も現れていた。

 

 現代では恩恵を与えられるのが常識となり、素では種族的な力しか持たない。

 

 人間も亜人種も。

 

 氣や魔力による強化すらされておらず、だからこそ恩恵だけであの力は逆説的におかしかったり。

 

「それとスキルだね」

 

「スキル? 何や、教えてもろたんか?」

 

「ああ、【情交飛躍】といってね。有り体に言うと、性行為をしたら相手の基本アビリティを十前後かな? 強化するらしい」

 

「ハァ? 何やねん、その面白美味しいスキルは!」

 

 明らかなレアスキル。

 

 というよりも、ユニークスキルと呼んで差し支えは無いだろう。

 

「ティオナが試したけど、リヴェリア曰く実際に力を中心に上がってたらしい。ロキによる更新無しにね」

 

「ホホゥ? そらまた……んでか、ティオナがどっか女の顔をしとったんは」

 

「……だろうね」

 

 本当によく見ている神、だからこそフィンとしても付いて行ける。

 

 ティオナはヤってからであるが、レフィーヤはヤる前からあんな調子であり、ヤったらファミリアを抜けて改宗しかねないな……とフィンは思った。

 

「恐らく、今夜はティオナが彼の部屋に入り込むよ。邪魔はしない方が身の為だと言っておく。アマゾネスのアレは手に逐えない」

 

「実感が篭っとるなぁ」

 

 ティオネに狙われているフィンとしては、ロキが言う通り実感をしている。

 

「まあ、そういう事ならな……明日にでも更新して、どんなもんか見てみよか」

 

 尚、翌朝になってシャワーを浴びたティオナのステイタスを更新したロキは、三百以上も更新無しで上がった基本アビリティを見てツッコミ叫んだ。

 

「己らはいったい、何十発ヤっとんねん!」

 

 それはきっと、黄昏の館中に谺したと云う。

 

 

 

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 一回、消えたよ……


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