ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】 作:月乃杜
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朝食時、フィンに紹介をされる形で壇上に上がったユートは、本当に短い間ながら供に出来た事へ感謝を伝えると共に、今日の換金にも付いて行く意向を話す事となる。
一緒に行くのはアイズ、レフィーヤ、ヒリュテ姉妹の四人だとフィンが言う。
四人は四様であっても、歓迎をしてくれていた。
また、換金を終えてから遠征後の御約束の宴会にも出る事になる為、その時も『宜しく』と一言。
朝食を済ませた直後に、何人か女の子をロキが集めていたけど、ユートは特に不審には思わずティオナに引っ張られて外に出た。
既にアイズもティオネもレフィーヤも揃っており、準備万端に整っている風情で此方を見ている。
勿論、換金に出かけるであろう面子も集まっているらしく、大勢が中庭にワイワイガヤガヤと騒がしく、これがロキ・ファミリアの御約束だと理解が出来る。
「やあ、遅くなったね」
後ろからフィンが笑顔で皆に声を掛けてきた。
フィンは小人族であり、故に他の種族に比べてしまうと小柄だが、LV.6でロキ・ファミリア最強たる団長の名は伊達ではなく、全員が直立不動となった。
ダンジョンから持ち帰った戦利品──魔石やドロップアイテムや拾得物の換金というのは、謂わば遠征後の最大イベント。
勿論、消費したアイテムの補充や消耗した武具などの修復は元より、様々なる仕事が目白押しなのだ。
しかも最大派閥といった肩書きは伊達でも酔狂でもなく、人数が人数なだけに扱う量も半端ではない為、留守番も居るが団員殆んど総出で街に繰り出す。
それぞれが役割に従い、皆で換金をするのだ。
今回、アイズ達に振られた役割はいつものものだけではなく、ユートの案内や換金のやり方初心者編を見せるという事。
他派閥のユートに随分と親切だが、当然ながらロキにも考えあっての話。
「みんな〜! 夜は恒例の打ち上げやからな〜っ! 遅れんように〜!」
ロキからの送り出しに応えしゅーっぱーつ、進行! とばかりに歩き出す。
目抜通り──位置的には八本が存在する中でも北西のメインストリートへと出ると、通称【冒険者通り】を全員で進んでいった。
有名ファミリアの進行、それは多くの者が目撃をするし、ヒソヒソと遠巻きに見ながら話もしている。
「う〜ん、何かやだな……こういうのって。ベート辺りなら喜びそうだけど」
「ベートとて其処まで下品ではないぞ、ティオナよ。アヤツはアヤツなりに第一級冒険者として矜持と自覚がある」
「ええ? うっそだー! ガレスってば何でベートの肩を持つの?」
「蔑むのと増長して傲るのは違う。少なくともアヤツの中ではきっちり線引きが為されておるらしい」
「意味解んないよー」
「少なくとも、ベートには強さに関する拘りってのが有るみたいだよ」
ユートが言う。
「そうなのかな?」
現在、ベートは本拠地で雑用を押し付けられて待機をしている処だ。
そんなベートの話題を挙げつつも、ユートを含めてロキ・ファミリア一行は、白い柱で造られた荘厳なる
ギルドの本部なだけに、佇まいは立派なもの。
ユートも登録やら何やらで何度か訪れてるのだが、目的は基本的にエイナ・チュールと会う事。
美人なハーフエルフで、仕事も有能らしい。
何故かユートは妖精種族──殊更にエルフ族関係やドワーフ族から好意を寄せられ易いらしく、ハーフとはいえエルフのエイナからも軽い好意を感じた。
レフィーヤの時みたく、直接的な某かをしなければ
それ以上の関係にはならないだろうが、ユートとしてはそういうのもアリかな〜とは思っている。
彼女の持論には閉口してしまうけど。
その昔、ハルケギニアの時代にユートはアルビオン戦役の後に、冒険者が稼ぐ為と仲間を鍛える為に自らがダンジョンを構築して、それを使ってのレベルアップに励んだもの。
トリステイン王国の隅、決して人里に近くない場所であり、ダンジョンの内容は地下百階層にも及んだ。
一階層の広さは空間湾曲技術も使い、この世界に於けるダンジョン並には拡がりを見せていた。
モンスターは地下一階層から地下十二階層までは、ハルケギニアの魔獣や亜人──オーク鬼やトロル鬼やオーガーやミノタウロス──などを転移させて湧出、十三階層以降は別の世界のモンスターなどを転移召喚するシステムを構築して、様々なモンスターが蔓延る凶悪なダンジョンと化す。
まあ、余りにも凶悪が過ぎたらしくてギーシュ達は最初、泣き叫びながら這う這うの体で逃げていたりした訳だが……
もう遥かな過去の話だ。
それから二度の転生を経ており、相対的には数百年を越える時間が経つ。
あの頃の者は閃姫契約をした娘達以外、もう存在もしてはいないのだ。
それが少し寂しくて。
「僕とリヴェリア、ガレスは魔石の換金に行く。此処からは各々の目的地に向かってくれ。換金したお金はどうかちょろまかさないでくれよ? ねえ、ラウル」
「あれは本当に魔が差しただけっす! 本当にあれっきりですよ、団長!?」
「はは。じゃあ、一旦解散をしようか」
こうしてロキ・ファミリアは解散して、それぞれの目的を果たすべく動く。
ユートも先ずは魔石の方を換金するべく、フィン達に続いて換金所へと向かう事となった。
勿論、一時はアイズ達もフィン達と一緒である。
「ふむ、此処が換金所か」
職員が座り、カウンターが設置されている。
どうやら現在は冒険者が換金中らしく、どんな感じかを見学してみる事に。
「待てよ、こんだけな筈がねーだろ? もっぺん数えてみろよ!」
「どう言われようとこの額に変わりありませんよ」
「ふ、巫山戯んなよ!? これじゃ……クソ!」
修羅場っていた。
「何だあれ?」
「ああ、ソーマ・ファミリアの団員だよ」
ティオナがユートの疑問に答えて教えてくれる。
「ソーマ・ファミリア……つまり、神ソーマの派閥。ソーマって神酒の事か?」
ユートがパッと思い出せるのは、【真・女神転生】などに出てくるアイテムの【ソーマ】だったり。
大元はインド系神話に於ける飲み物で、ゾロアスター教の【ハオマ】と起源を同じくする。
ソーマは神格化されている筈だから、確かにソーマという神がこの世界に存在してもおかしくない。
何故ならこの世界の神は地球の神々と同じ名前を持っており、ある程度であれば似た関係を持つ神も居るみたいだから。
例が神ミアハと神ディアンケヒトだろう。
これはミアハから聞いた話だが、どうやらディアンケヒトとは仲違いをしているのは確からしい。
果たして彼らが地球みたいな親子かは知らないが、そういった事象も加味されているのだ。
「随分と必死だな」
「よくは判らないんだけどねぇ? 何かソーマ・ファミリアの連中って稼ぐのにすっごい必死なんだよ」
「だから、ああやって食い下がるみたいね」
「成程……」
ティオナとティオネは、どうやら彼らソーマ・ファミリアの無様にも見えるだろう必死さに辟易しているらしく、嘆息しながら白けた瞳で見ながら説明する。
ユートからしても少しばかり不愉快だったが、人はそれぞれで違う……異なる視点に立って行動するのだと割り切って、見学を止めると別の空いたカウンターへ向かう為に歩く。
フィンもリヴェリア達とカウンターに向かった。
「そういやさ、ユートって荷物とか持ってないけど、換金する魔石やドロップアイテムは?」
「ああ、ちゃんと持っているから心配は要らないよ」
「そう?」
まあ、実際にもユートはモンスターをこれでもかと斃しまくっていた訳だし、それでも荷物を持っていなかったから、何らかの手法で荷物を持っているのだと考えるしかない。
「スキルかな?」
「訊いてみたら?」
「そだね」
身も蓋もないティオネからの提案に、考えるのが少し苦手な肉体派のティオナはあっさり頷き同意した。
「ねぇ、ユート?」
「うん?」
ティオネなら未だしも、ティオナが腕に組み付いても柔らかな双丘は無くて、だけど程よく鍛えられている肉体のしなやかさには、ユートも満足をしながらも問い掛けに応える。
「ユートの荷物って結局、どういう理屈で運んでるのかなって思ってさ」
「ああ、魔法だよ。創作魔法の【ステータス・ウィンドウ】と云ってね、恩恵によるスロットとは無関係に扱えるモノなんだ。更にはフルスペックで制限解除、だから僕は無制限に魔石やドロップアイテムを身軽に運べるって訳だ」
正にサポーター要らず。
「え、ナニソレ……怖い」
流石に引いたらしいが、すぐに有用性に気付く。
「恩恵と無関係って事は、可成り便利だよね。しかも無制限にアイテムを仕舞えるとか……」
「若しかして、後付けとかも可能なのかしら?」
ティオネは肉体派だが、妹よりは頭が切れる。
だから気付けた。
「うん、そもそも【ステータス・ウィンドウ】の魔法は術式をカード化してて、それをインストールし焼き付ける事で、簡単に使える様になるからね」
四人──アイズとレフィーヤとヒリュテ姉妹が一斉にユートの方を向く。
「本当に?」
「ああ……こいつを使えばあっという間に」
「ほしい!」
「……私も」
「確かに便利よね」
「はい」
いの一番にティオナが、次にアイズが欲した。
そして、ティオネとレフィーヤも同じ意見。
「百万ヴァリスで最低限のスペックのモノを売る」
「ひゃ、百万……」
「少し、高いね」
別に第一級冒険者であるティオナとアイズならば、百万ヴァリスは高いと云える程でもないが、いつ大金が必要になるか判らないのだから余り不用意には使えなかった。
「最低限……という事は、何段階か有るのね?」
「ティオネ、正解」
「最低限だとどの程度?」
「アイテムは五種類を五つずつ格納可能、お金はだいたい五万ヴァリスくらいを仕舞える。後は魔法に付随したスキルを一つ、付ける事が可能となるな」
「可成り限定的ね。スキルというのは? 恩恵と関係は無いのよね?」
「無い。僕が編纂してきたスキルが有るから、それを使える様になる。例えば、【疾走】だと走る速度などが習熟度に応じて速くなる……とかね」
基本、SAOやDQなどのスキルが使える。
例えば、【
「それは便利ね。フルスペックとやらは?」
「格納が可能な金額及び、アイテム数に制限が無くなるのと、スキル数が二十個にまで増える」
「……後からスペックを上げる事は?」
「勿論、出来る」
ティオネからの質問に、ユートは淀みなく答える。
「それで、フルスペックの値段は?」
「十億ヴァリス」
時が凍り付く。
余りにも余りでべらぼうな価格に、全員が固まってしまったからだ。
因みに、アイテムの自動収納はフルスペックでないと実現はしない。
「貴方のはフルスペックってやつよね?」
「勿論だよ」
暫し考え込むティオネ。
ユートは今の内にと換金をするべく、ギルドの職員へと話し掛けた。
とはいえ、換金が出来る魔石の数がロキ・ファミリア総出並ときては、小さなカウンターで並べるなんて不可能だ……という訳で、別室を用意して貰う。
何のモンスターの魔石で幾つ有るか、それも【ステータス・ウィンドウ】には表示されている為、価値の審査も数えるのもすぐに済んでしまった。
キラーアントの魔石など千を越えており、数えるのに一人では難儀をする。
仕方無く職員はロキ・ファミリアの遠征並な魔石を数名で、割かし時間を掛けて数えるしかない。
「後、これらだね」
比較的というのも莫迦らしい大きさの魔石、どれくらいかと云えばそれは小さな子供程の物だ。
「こ、これは?」
三つの巨大な魔石を見ながら、ユートへとギルドの職員が訊ねてきた。
「ゴライアスとウダイオスとバロールの魔石だ」
「っ!?
普通なら単独撃破なんて現実的ではなく、そんな事が出来るのは彼の【猛者】くらいで、次点が【勇者】であろうか?
序でにドロップアイテムも換金していく。
数が余りに多かったし、中には普通なら御目に掛かれないレアアイテムなんかも有り、換金しなかった物を除いても魔石とドロップアイテムで一億ヴァリスを悠に越えていた。
他のレア物なドロップアイテムは、ティオネからの忠告からこれから移動する所で売る事にしている。
「後は……」
どうにも色がおかしい、ヴィルガの魔石だ。
本来、魔石とは紫紺色が普通なのだがヴィルガのはケバい極彩色。
ちゃんと換金が出来るのかも怪しかった。
「少し良いかね?」
ヴィルガの魔石を出そうとしたその時──背後から突如として話し掛けてくるフードを被る男?
「別に構わないが、連れが驚くからそういう現れ方はしないでくれるか?」
「ふむ、それは済まない」
悪びれた風でもなく謝罪の言葉を口にする。
「何の用かな?」
「君が持つ特殊な魔石……それを全て買い取りたいのだが、どうだろうか?」
「へぇ、随分と良い目を持っているみたいだねぇ? 幾らで買う?」
「通常の三倍出そう」
「良いだろう。此処で出すのは困るのだろうから……どうするのかな?」
「付いて来て欲しい」
ユートは頷くと……
「アイズ達は暫く待っていてくれないか?」
彼女らへと声を掛ける。
「ん、判った……」
声を掛けられたアイズを始めとして、残りの三人も頷いてくれた。
「それじゃ、案内してくれるか」
「此方へ」
段々と下へ降りている様に感じるが、道は灯りの一つも点されていないからか真っ暗である。
それなりに歩いて辿り着いた先には、まるで玉座に座る王の如く巨大な人。
「神……だな?」
「ウラノスだ」
「ウラノス?」
ユートの世界ではギリシア神話体系の天空神。
「フェルズ、この者か? 彼の魔石を大量にギルドへ持ち込んだのは」
「ああ、そうだよウラノス……本来なら斃せば魔石も喪われる筈が、彼は持ち帰ってしまった。余り出回らせたくはないからね」
「……そうだな。買い取りは任せる」
「判った」
フェルズと呼ばれた黒衣がユートに向き直る。
「魔石を出してくれ」
右腕を振り、ステータス・ウィンドウを展開して、アイテム欄からヴィルガの魔石をタップすると大量の魔石が部屋に顕れた。
「ほう、面白い魔法だな。ふむ……まさかこれ程の数だとはな」
「六三七個だ」
「ふむ……」
フェルズが紙に何事かを書き記して、書き終えたのかそれを渡してくる。
「先程のカウンターの職員にこれを渡せば、君に金を支払ってくれるだろう……何も詮索せずに受け取ってくれ給え」
「詮索はしないさ。だけど質問がある」
「何かね?」
「今後も同じ種類の魔石を手に入れたら、買い取りはしてくれるのか?」
「私の名を呼べば伺おう」
「フェルズだったか?」
「そうだ」
「了解した。それとヴィルガのドロップアイテムの方は普通に換金するのか?」
「そちらは問題無い」
訊きたい事を訊いたら、ユートは手を振りながらもさっさと出口に向かう。
「毎度あり」
そしてアイズやティオナらが待つ換金所へ戻った。
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取り敢えず、ウラノスとフェルズとの顔合わせ。