ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

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 本当はもっと早くに更新する予定が、寝落ちた上に想定以上の長さで遅れてしまったり……





第22話:新たな眷属は間違っているだろうか

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 感極まったサーシャに抱き付かれたユートだけど、そんなどさくさ紛れに確りと抱き寄せている。

 

 勿論、サワサワと柔肌を堪能するのも忘れないが、サーシャは嫌がる処か頬を朱に染め受け容れていた。

 

 アテナという〝神〟だとはいっても、サーシャ自身は人間の腹より誕生をしているから、精神も城戸沙織より人間に近い。

 

 沙織は人間として数年を暮らし、その後は城戸光政から戦女神アテナの化身だと教えられ、自覚を持って神と人間の二重生活をしていたのだが……

 

 肉体的には人間をエミュレートした神体だ。

 

 それは兎も角、サーシャだって思春期を人界で過ごした事もあり、恋愛に興味が無かった訳ではない。

 

 アテナだから聖域の周りの男に惹かれず、だからといってハーデスの器だった兄のアローンは論外だし、テンマはやっぱり兄妹? 姉弟? 枠だろう。

 

 それでも聖戦を生き残れていれば、擬似的な恋愛はテンマとも出来ていたかも知れない。

 

 が、所詮は訪れる事の無かったifに過ぎないし、この世界のアテナとして生まれ変わって数億年。

 

 二度と会えないテンマや兄より、僅かながら可能性があるユートを想ってきたからか、ユートのえっちぃ行為を受け容れる程度に、好感度は高かったらしい。

 

「もう、相変わらずだね。けどちょっと嬉しいかも」

 

 因みに、相変わらずとは言うが別にサーシャへこれをヤった事は一度も無く、ユートがセリンサ達候補生や巫女達に対して軽くスキンシップをしているのを、彼女に道すがらなどで見られていただけだ。

 

 当たり前だがサーシャもそれを羨ましいだとか思って見ていた訳ではなくて、『またやってる』と苦笑いをしながらである。

 

 だが側付きの巫女達はといえば──『あれ、気持ち良いのよね』と頬を朱に染めていた。

 

 候補生だろうが巫女であろうが、聖域という一種の閉ざされたコミュニティに所属をする以上、どうしてもストレスが嵩むもの。

 

 ユートはそんなストレス持ちの彼女らにマッサージを施していく。

 

 そう、最初は当たり障りの全く無いマッサージで、次第に触れる部位を必然的に増やしていき、向こうが触れられても嫌悪感を持たない様に精神をアンロックさせていくからか、次第にエスカレートをした。

 

 肩を首筋を腰を……と、本当に当たり障り無い場所からうなじ、脇腹、果てはおっぱいまで到達せしめればしめたもので、相手だってそこまでくればナニをされているか理解をするが、マッサージされているのだと蕩けた頭で受け容れて、最終的には最後まで赦す者までもが居たくらいだ。

 

 悪魔の如く手腕は教皇も『頭が痛いわい』と言わしめ、後のシオンが統治をする聖域でも頭痛に悩まされたとか……

 

 今ではサーシャも理解が出来た、皆がいったい何を求めてユートに身を任せていたのかを。

 

 だからこそ、今は素直な気持ちでユートからの接触を楽しめているのだ。

 

 とはいえ、ユートもだがサーシャもいつまでも抱き合ってはいられない。

 

 何しろ、真っ赤になっているヘスティアとやれやれとジト目なヘファイストスが見ていたし、ヴェルフも目を逸らしてポリポリと指で頬を掻いている状態で、衆人環視とまでは云わないまでも人前なのだから。

 

 それにユートは訊きたい事だっていくつかある。

 

 温もりと柔らかさを惜しみつつサーシャを引き剥がすと、両肩へと手を置いてまるで子供に質問でもするかの様に優しく訊ねる。

 

「どうしてサーシャがこの世界に居るんだ?」

 

「……その前に教えて欲しいんだけど」

 

「教える? 何を?」

 

「ユートが最後に私を認識したのはいつ頃?」

 

「ハーデスとの決戦が終わってから十四年くらいか、カイロスが聖域を襲撃しに来て、教皇となったシオンと共に双子座(ジェミニ)として対処していた時、君とテンマの小宇宙を感知……カイロスをアテナの楯が持つ力で討ち祓い、ペガサスとアテナの聖衣を置いていった際だね」

 

「そっか……」

 

 何処かホッとした様子のサーシャは……

 

「ちゃんと私の知っているユートだね」

 

 文字通り、女神の微笑みで不安が払拭されたのだと吐露をした。

 

「私はその後、本来であればオリンポス山の本拠地で眠る私の本体に還り、再び分体を降ろすまで天界にてアテナとして過ごす筈だったのだけど、分体が還ったのは確かなのに(サーシャ)はこうしてこの世界のアテナとして生まれ変わってしまった。容姿も見ての通り昔の私の侭で」

 

 当然、ヘスティア達みたいな地球と同じロールを与えられた神々が居るなら、サーシャではないアテナが彼女とは別の容姿で誕生をしていただろうが、それがサーシャを取り込む形を以て別神として再誕させた。

 

 そういう事だろう。

 

「私が地上に降りたのも、億に一つの可能性を求めて……ひょっとしたらユートに逢えるかもって考えて、ヘスティアにくっついて来たんだよ?」

 

「成程……」

 

 どうやらユートがこの地に喚ばれた理由の一つは、神の何億年にも亘る想念であったらしい。

 

「テンマやアローンを喚ぼうとは思わなかった?」

 

「それは百パーセント無理だと解ってるからね。私だって仮にも神なんだよ? 死と転生を神たる私が確認した以上、最早決して覆らない宿命だもの」

 

 アローンはまだ兎も角、テンマは決戦後に死んでの星矢として転生、この流れは確定した未来となった。

 

 であるからにはテンマという意識は存在しないし、記憶すら喪われている。

 

 喚び出せる筈がない。

 

「私が逢いたかったのは、テンマであって城戸沙織の星矢じゃないから」

 

「次善で僕……か」

 

「う、ごめんなさい」

 

「いや、サーシャに再会出来たのは嬉しいからね」

 

 周りはいまいち理解が追い付かないが、本人レベルではすっかり解り合っているから問題は無い。

 

 サーシャはユートから聞いて知っていた。

 

 仮に死んで転生しても、テンマやアローンとは違って記憶と意識を保有して、次代に引き継げる事を。

 

 だから逢うならユート、それしか希望は無かった。

 

 事実としてユートはスプリングフィールドから柾木へと転生をしているけど、前世の方も確りと覚えているのだから。

 

「それで、サーシャは僕と逢えたらどうする心算だったんだ?」

 

「うん、私のファミリアに入って欲しくって。だから今回だってヘスに間違いなくユートだったら、改宗を頼んでいたんだよ」

 

「ふ〜む、ヘスティア! 僕の改宗(コンバージョン)の準備を頼むな」

 

「アッサリ見限られた?」

 

 これにはヘスティアとてショックを隠せない。

 

 きっと泣いても赦されるのではなかろうか?

 

「ひ、酷くないかい?」

 

 実際に涙目で縋り付く。

 

 先にもヘスティア自身が述べたが、ユートは彼女のファミリアに於ける謂わば稼ぎ頭というやつであり、新人でしかないベルなんかとは比べ物にならない程、ダンジョンでは稼げる。

 

 ベルだと一万ヴァリスも現在だと一日で稼げない、それがユートなら軽く潜るだけで一日に十万、二十万ヴァリスと稼げるのだ。

 

 こればかりはヘスティアが如何にベルスキーであろうとも、決して覆す事など出来ない事実だった。

 

 第五層で更新無しのソロプレイ、これでベルが稼げるのは精々が二〜三千程度でしかなく、二人が慎ましく食べていくなら何とでもなるかも知れないのだが、装備品やギルドに納める為の税金や普段で使う品物、更にはいざという時の為に貯蓄もと考えると、これは如何にも足りないだろう。

 

 せめてステイタス更新が赦されれば、それでも倍額は稼げるかも知れない。

 

 然し、ベルの将来の為の修業を毎日の糧の為に食い潰すのは、主神として如何なものかとも思う。

 

「別にベルを見限った心算は無いから安心しろ」

 

「ボクは!?」

 

「サーシャ。今は僕も大した事が出来ないが、いつか聖域(サンクチュアリ)みたく御殿を建てて暮らそう」

 

「無視されたっ!?」

 

 ヘスティアの様子が余りにもおかしくて、遂に噴き出してしまうサーシャ。

 

「ユート、人が悪いわ」

 

「そうだな」

 

 当たり前だがヘスティアを見限った心算も無い。

 

「それで? アテナもだけどユートはどうするの?」

 

 黙って事の成り行きを聴いていたヘファイストス、だが到頭というべきか口を出してきた。

 

「うん、そうだね……僕がサーシャのファミリアへと改宗するのは決定事項だ」

 

「……アテナ・ファミリアが誕生する訳ね?」

 

「んで、ファミリアが出来たらヘスティア・ファミリアと同盟を組む」

 

「同盟?」

 

「そうさ。昔、ゲームでもファミリア──ゲーム中ではギルドと呼んでたけど、ギルド【ZoG】とギルド【レリック】で同盟を組んでいてね、二つの小規模なギルドが組んで大規模ギルドに拮抗していたんだよ」

 

「ゲーム……ねぇ」

 

 とはいえ、ヘファイストスにバーチャルやらテレビゲームやら言っても理解は出来まい。

 

 それはヘスティアもそうだが、文明レベルが二百数十年前なサーシャもだ。

 

「同盟……見限られた訳じゃないのは嬉しいけれど、改宗はするんだね?」

 

「ヘスティアがベッドの中で僕を受け容れてくれるのなら考えたけどね、それは出来ないんだろう?」

 

「うっ! ごめんよ、ボクにはベル君が……」

 

 真っ赤に顔を染めながら言うヘスティア、どうやら遊び心ではなくはたまた、美の女神みたいなのでもなくて、割と本気でベルの事を想っているらしい。

 

 処女神とか云われても、純潔神アルテミスとは違っていて、またギリシア神話での二柱とも異なり、決して処女性に拘りがある訳ではないヘスティアは、相手が眷属(こども)だとはいえ乙女の恋心が燃えている。

 

 いつかは処女を捧げて……とか考えていそうだ。

 

 ユートは趣味ではなかったらしく、ベルが居なければ或いは転んだかもだが、どうやらそうはならなかったらしい。

 

「それで、同盟を組んだとしてどうするのかしら?」

 

「本拠地はあの廃教会の下で充分、改装もしたから。ヘスティア・ファミリアとアテナ・ファミリア共同で使える広さが今はある」

 

「確かに……」

 

 ヘスティアが頷く。

 

「改装? まあ、誰も使わない辺鄙な場所の教会だったから構わないけどね……それで僅かな時間で広さを確保したの?」

 

「まあね、いずれ遊びにでも来れば良いよ。鍛冶工房も在るから、ヘファイストスもヴェルフも楽しめると思うからさ」

 

「へぇ? それならいつか寄らせて貰おうかしら」

 

 腕組みをしながら愉しげなヘファイストス。

 

「ミッテルト君も改宗するのかい?」

 

「うん? ああ、ミッテはその侭でも良いよ。あの娘は基本的にメイドをさせておくから。アテナ・ファミリアには別の娘を入れる」

 

「別の娘?」

 

「昔に回収した娘が居るんだよ。ずっと放置してきたけどね、折角だから封印から解除しよう」

 

 ユートは、アイテムストレージからカードを出す。

 

 仮面ライダー剣みたく、誰かしらを封印する為の札をハルケギニア時代、最終決戦後の放浪時でザールブルグ在住の時に製作して、その後に移動した世界にてとある少女を封じた。

 

 元々は敵対者だった悪女だけど、分体の少女と統合された事で再び良心を獲ており、悪女だった頃の性格は偶に戦闘時にS化するくらいでしか残ってない。

 

 いっそ気持ち良いくらい悪女だったが、容姿は割と美少女にカテゴライズされるから、分体の少女に頼んで再び分離したのだ。

 

 記憶も力も、基本的には分体の少女に残した謂わば搾り滓レベルでしかなく、残されたのは美少女としての容姿と、力と記憶の残滓程度だった。

 

 記憶も明確なものでなど決してなく、無意識に残るくらいの僅かなモノ。

 

 本人に残った明確な記憶は名前と、幼い頃に幼馴染みと唄った歌くらい。

 

「さあ、数百年は放置したけど開封の時だ!」

 

《REMOTE》

 

 カードの大元が剣である以上、クラブのカテゴリー10【リモート・ティピア】で開封される。

 

 まあ、このカード自体がユートの権能──【至高と究極の聖魔獣】で再現した物だが、効果は仮面ライダー剣の劇中で使われていたラウズカードと同じ。

 

 だからこそ可能。

 

 闘神都市で生活していた頃に、這い寄る混沌が転生者を送り込む際の特典として喚び込んだが、上手く逃れた女神サラスワティへとクラブスートは預けたが、今は返還されている。

 

 カードから光が溢れて、ブランク化すると同時に顕れたのは、黒髪をボブカットにした吊り目がちな顔、それなりには肉付きの良い肢体、それを覆い隠す様に着ているレオタードっぽく服装に、何故か背中からは虫系の羽根が二枚生えている美少女であったと云う。

 

「あ、私は……」

 

「久しいね、ラブレス」

 

「ユート……さん?」

 

 ユートに敵対した悪女とは思えないくらい弱々しく訊ねる様は、庇護をしたくなるくらいに可愛い。

 

 元々、その世界の守護者の一つの王女で、本来だと心優しかったのを敵の黒幕が慈愛や良心を分離したのが悪女ラブレス。

 

 然し、分体が本体であった彼女を吸収してしまい、お陰で再び分離した彼女は分体だった少女の良心とか慈愛を得ている。

 

 それが故の現在だ。

 

「あの、私を封印から解除したという事は何か用事があるのですよね?」

 

「まあね。君には其処に居る女神の眷属になって貰いたいんだ」

 

「女神様?」

 

「初めまして、サーシャ……女神アテナです」

 

「あ、初めまして。私の名はラブレスです」

 

 お互いに何とも間抜けな挨拶を交わす。

 

「細かい話はサーシャにして貰うとして、早速だけどヘファイストスに場所を借りて【神の恩恵】を刻んで貰おうかな」

 

「うん。ヘファイストス、何処か借りれない?」

 

「貴女に貸していた私室にベッドが在るでしょう? 其処を使いなさいな」

 

「あ、そっか。それじゃあラブレス、行こっか」

 

「えっと、はい……」

 

 サーシャに手を繋がれ、ラブレスは建物──ヘファイストスの本拠に入る。

 

「それじゃ、さっさと話を詰めておこうか」

 

「うん、そうだね……」

 

 ヘスティアは何とも言えない顔で頷いた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 レオタードタイプな服装だから、背中を晒すとなれば産まれた侭の姿になるか上半身だけ晒すかのいずれかになる訳だが、ラブレスは八〇センチくらいのサイズのおっぱいを腕で隠し、頬を朱に染めて立つ。

 

 レオタードの肩紐部分を外して、上半身だけ裸体を晒したという訳だ。

 

 幾ら女同士でも完全に脱ぐには抵抗があった様で、ラブレスもサーシャも普通の対応となった。

 

「あ、この羽根って本物なんだね」

 

「あ、はい。私達の一族は個人差こそありますけど、誰しも羽根を持ちます」

 

 そのくらいは覚えていたらしい。

 

「へぇ」

 

 ベッドに俯せとなって、背中を晒したラブレスの上に馬乗りとなり、サーシャはナイフで指を傷付けた。

 

 プツッと小さな傷が付いて流れ落ちる血液、聖衣に着ければ進化すら促して、更には小宇宙を極限にまで高めれば、神衣(カムイ)というオリンポス十二神しか纏う事を許されない闘衣に最も近い神聖衣となる程、強力な神威が籠ったモノ。

 

 それを使ってラブレスの背中に描かれるものこそ、【神の恩恵(ファルナ)】と呼ばれるモノだ。

 

 シュッシュッと指を動かすサーシャ、これが初めての経験だからか少しばかり興奮気味であった。

 

 

 

ラブレス・ソーディアン

所属:アテナ・ファミリア

種族:シャーマン

LV.1

力:I8

耐久:I6

器用:I15

俊敏:I38

魔力:I66

 

《魔法》

【神雷降臨】

・雷系超短文魔法。

詠唱式『剛魔神雷降臨』

 

【鬼光術】

・自然と内なる力を融合、【鬼光】と換えて放つ剛魔人族の術。

・本来の内なる力は氣だがシャーマン故に魔力使用。

 

【鬼光剣】

・超短文魔法。

・剛魔神族の持つ鬼光術の最終奥義。本来はシャーマンが使える術と異なるが、シャーマン族の伝説の戦士イシュタルの娘で、僅かなアネスとしての精神からの再現が可能となった。

詠唱式『来たれ鬼光剣』

 

《スキル》

体感学習(ラーニング)

・受ける事で習得する。

・資質が無ければ無習得。・資質が低い場合は複数回を受けて習得。

 

神霊乃術(シャーマニズム)

・本来の魔法。

・系統立てて使用可能。

・基本的に魔法名だけでの発動。

 

 

「な、何……これ?」

 

 数値こそそれ程に高くはなかったが、魔法スロットを三つ使って意味不明なる魔法が顕れ、スキルも二つが発現していると云う。

 

 しかも、スキルは前者が完全なレアスキルであり、後者がどうやらシャーマンとやらが本来使える魔法を編纂した魔導書的なモノ。

 

「恩恵を与えたのは初めてだけど、これが普通って事は無い……よね?」

 

 流石はユートの知り合いというか、非常識に過ぎる能力を持つらしい。

 

「恐らく、彼女の中の無意識下にある知識や経験値、それを私が暴き出した形なんだろうけど……」

 

 まだ基本アビリティの方が低めだし、今はそれ程の力にはなるまいが、それでも凄まじい魔法にスキル。

 

 尚、彼女らに姓は存在していないが、ユートが与えていたから真名として顕れたらしい。

 

「これはユートに要相談……かな?」

 

「あの、何か問題が?」

 

「ううん、貴女は気にしなくても良いんだよ」

 

「そうですか?」

 

 恩恵は刻み終わったし、サーシャはそれを羊皮紙にコピるとロックを掛けて、盗み見するには解除薬を使うしか無い様にする。

 

 ヘスティアはロックを掛けるという知識が無いが、サーシャはちゃんと勉強をしていたらしくて、確りとそれを応用していた。

 

「さあ、終わりましたよ。それじゃあ服を着直して戻りましょう」

 

「はい」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ラブレスを連れて戻ったサーシャは、ユートが決めたヘスティアとの同盟関係に関する条約を聞く。

 

 まず、本拠は教会の地下を引き続き使う。

 

 次に、ベルの修業はやはり引き続き行われる。

 

 次に、ダンジョン探索は基本的にベルがユートに追い付くまで別々に行うが、訓練目的の場合は別。

 

 次に、必要とあれば互いに補助をし合う。

 

 他にも細かく決めたが、だいたいがこんなものだ。

 

「それでサーシャ、ラブレスのステイタスを見せて」

 

「うん」

 

 サーシャがステイタスをコピーした羊皮紙を渡す。

 

 其処に書かれた内容に、ユートは難しい表情。

 

「元々、シャーマン一族は魔法に長けた種族でフィジカル面は低い。だけど彼女の父親たるシャーマン王はシャーマン族の伝説の戦士だったから、肉体は剛魔神と同等の能力にシャーマンの魔法を使った。剛魔神族の伝説の戦士も王族だった事から、そもそもが伝説の戦士とは王族から顕れるという事だろうが、少なくとも伝説の戦士の子供が伝説の戦士の力を直に引き継ぐなんて話、シャーマン王から聞いてはいない。しかもフィジカルが剛魔神並な訳じゃなく、鬼光術を扱える様になっているとかね」

 

「おかしな話なの?」

 

「シャーマンの魔法は魔力を元に、剛魔神の鬼光術は氣と自然界のエネルギーを融合したモノを使うから、そもそも魔法の成り立ちからして違うんだよ」

 

 神雷降臨は剛魔神の伝説の戦士が最初に使った魔法であり、ラブレスはそれを喰らっていた筈である。

 

「記憶喪失がこのスキルに影響を与えた訳か。恐らくラブレスが神雷降臨を喰らったから、鬼光術の片鱗を覚えていたんだろうね」

 

 まさかそれで扱えるとは思わなかったが、サーシャの神の血を受けた影響とかもあるのだろう。

 

「ま、神すらも千年の間に自分達が与える恩恵については理解仕切れてないし、こういうバグみたいな事も起きてもおかしくないか」

 

 何より、自分自身もだがミッテルトもラブレスも、異世界からの来訪者だ。

 

 この世界の住人とは違う効果が出ても、決して有り得ないとは云えない。

 

「そういえば、ヴェルフが居るのは何故かしら?」

 

「ヘファイストス様、今更ですか?」

 

 赤毛の鍛冶師は嘆息し、経緯──ユートがヘファイストスに防具の感想を言いに来たが不在で、物の序でにヴェルフの造ったバックラーの感想を言うべく呼び出された事を話す。

 

「そうなのね。それで? 私の造った防具はどうだったかしら? 貴方の提供してくれた黒鍛鋼を使ったとはいえ、それなりに巧く造れた心算だけど」

 

「良かったよ。基本的には躱すタイプだから攻撃を受ける回数は少なかったが、働きは充分にしてくれた。流石は【神匠】だね」

 

 短いながら、最高の誉め言葉で感想を伝える。

 

 ヘファイストスは最高の笑みでそれに返した。

 

「じゃあ、ヴェルフ。ベルの新しい防具は頼むよ」

 

「任せろ!」

 

 取り敢えず、用事も終わったから四人──ヘスティアとサーシャとユートとラブレスは本拠へ帰る。

 

 その際にはサーシャが右腕を、ラブレスが左腕を、両手に華状態で本拠に帰ったからか? 男共の視線がとてもキツかったと云う。

 

 

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 新キャラは、マイナーな漫画から登場しました。


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