ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

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第25話:閃姫達のユート探索は間違っているだろうか

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 柾木家。

 

 今現在、柾木優斗が居なくなった事で騒然となっている訳だが、特に酷いのが砂沙美である。

 

 砂沙美は一番心が折れそうだった時、ユートにより救われた為か愛と依存が凄まじいまでに高まっているからだ。

 

「優斗さん……」

 

 しかも普段からご飯を作るのは砂沙美とノイケで、よってノイケにこの辺での負担がのし掛かる。

 

 まあ、ノイケが来るまではそもそも砂沙美が一人でやってきた作業であるし、ノイケ本人も問題無いと言っているのだが……

 

 何処に居るのかどうして居なくなったのか、砂沙美は疎かユートと天地の祖父である柾木勝仁でさえ解らないのでは、もうどうしようもなかった。

 

「ただいま〜」

 

 其処へ明るい声で柾木家に帰って来たのは……

 

「祐希ちゃん!」

 

 緒方祐希、ユートにとっては義妹であり恋人にも等しい存在──比翼連理だ。

 

「祐希ちゃん! 優斗さんが居なくなっちゃった!」

 

「はい? 兄貴が?」

 

 砂沙美に突撃されてしまったユーキ、昔ならユーキの方が身長も僅かに高かったものの、今では圧倒的に身長や胸が大きくてちょっと泣きたい。

 

「えっと、状況が解んないからどうしたものか」

 

 津名魅との完全な融合を果たした砂沙美にも捜せない時点で、少なくともこの地球(せかい)に居ないのは確定しているが、それでも情報が少な過ぎた。

 

「兎も角さ、何がどうなったのか説明をしてよ」

 

 砂沙美はユーキの求めに応じて話す、ユートが行方知れずになったのだと判ったその状況を。

 

「成程、それなら兄貴は今地球には居ないね」

 

「そうなの!?」

 

「恐らく完全な異世界か、若しくは異世界レベルにまで違う平行異世界の地球に跳ばされてるよ」

 

「異世界は良いとしても、平行異世界の地球?」

 

 砂沙美は意味を理解しかねたらしく、可愛らしくも小首をコテンと傾げる。

 

「解り難かったかなぁ? つまり、この世界の国とか全く無い異なる歴史やら、或いは喪われた歴史を歩んだ地球だよ」

 

「はぁ……」

 

 例えば、ドラゴンボール世界の地球は地球と呼ばれながら国も恐らく地形も、全てが本来の地球とは異なる世界だ。

 

 ハンター×ハンター的な世界もである。

 

 どんな歴史でどう成立した世界かは明かされていないが、弓状列島は在ったけど普通に全く異なる国々。

 

 これなら、異形が犇めくハイスクールD×D世界の方が近いくらいだ。

 

 まあ、ハンター世界だって異形が犇めくけど。

 

 津名魅でさえ感知が不能な世界となれば、そういった遠い世界か異世界。

 

 つまりはそういう事だ。

 

「じゃあ、どうしたら? 私の中の津名魅ちゃんでさえどうにもならないって、捜せないって事かな?」

 

 良い具合にベッタリで、しかも年月を経た砂沙美は今や嘗て津名魅が取っていた容姿なだけに、ユートにとっては美味しい女性。

 

 ユーキはニコリと笑みを浮かべて方策を言う。

 

「ボクが捜そう」

 

「どうやって?」

 

「ボクら閃姫は兄貴とラインが繋がっているからね、それを通じてゲートへ入れば運次第だけど、誰かしら見付けられるでしょ」

 

「ゲートって?」

 

「日本だと埼玉県の麻帆良というアンタッチャブル、其処に存在している」

 

 この世界で埼玉県に在る麻帆良は【触れざる土地】として、誰も入らないから開発も全くされていない。

 

 入ろうにも入れない。

 

 【双子座之迷宮】っぽいのが敷かれているのだ。

 

 入れるのはユートと閃姫のみであり、ユーキも資格は有るからゲートを使う。

 

「うう、お願いします」

 

「任された」

 

 麻帆良地方へと到着後、閃姫をある程度集合させたユーキは事情を説明した。

 

 戦えない者や他に忙しい者は呼んでいない。

 

「つまり、優斗君を捜す為にゲートでランダムジャンプをするんだね?」

 

「そうだよ、すずか」

 

 月村すずかの質問に頷くユーキ。

 

 ラインで繋がりを持つが故に、成功率は万に一つであってもゼロではない。

 

 仮に砂沙美や阿重霞がやった場合、閃姫契約をしていない以上は確率的にゼロなのだから当然の帰結だ。

 

 まあ、阿重霞は契約していないだけで既に出逢った時点で実年齢が七二〇歳、生理年齢が二〇歳だったのだから、砂沙美とは違って閨は供にしている。

 

 初めてユートと出逢ったのは、皇家の船の第二世代艦……龍皇の中の寝室。

 

 持っていた天地剣は奪われていたし、額の木製サークレットである龍皇のマスターキーも砂沙美に献上していたとかで、船のバックアップが受けられない状態な上に、封鎖領域とかいう結界でガーディアンを呼ぶ事すら封じられた。

 

 最早、生体強化をされた身体しか残されてないが、身体能力すらあっという間に組み敷かれるくらい負けていては、どうあっても詰みというやつである。

 

 その後、遙照の情報と引き換えに閨を供にした。

 

 初めての証の赤い染み、それが布団を染めていたのを悲しい表情で見つめて、頭を振ったものである。

 

 今は唯、愛しい相手。

 

 大好きだったお兄様との決別、そのケジメも付けてしまっているのだ。

 

「私達がユートを捜して、ゲートを潜るのは解ったのデスが……」

 

「見付けられなかったら、私達はどうなるの?」

 

 訊ねたのは何故か閃姫の契約をした二人。

 

「見付けられないなら次元の狭間を彷徨う事になるんだろうけど、誰かが見付けて報告が上がった時点で、君らをボクが引き揚げる。だから心配は要らないよ」

 

「そうデスか」

 

「安心した」

 

 納得したらしい。

 

 まるで大規模な鏡の迷宮みたいなゲートの向こう、それを閃姫達はちゃ〜んと知らされている。

 

 何しろ、万が一にユートが一緒に連れて行く段になって、行き成りゲートへと入ると混乱してしまうし。

 

「それじゃ皆、行ってらっしゃーい」

 

 迷わずゲートに飛び込む閃姫達、但しその場に残るユーキとシエスタ。

 

 シエスタは、カトレアやジェシカとは異なり戦えるのだが、とある理由から残らざるを得ない。

 

「私とユーキさんは招喚をいつ受けるか判りません、仕方ないんでしょうね」

 

 そう、招喚頻度で云うとユートの為に存在するとさえ謂わしめる比翼連理たるユーキ、そしてユートの為のメイドを自他共に認めるシエスタが同率一位。

 

 何故なら、余り自分では生活面で考慮しないユートは自分の生活向上の為に、シエスタを喚ぶ。

 

 或いは副官が欲しいならユーキという認識が強い。

 

 だから基本的には二人がまず喚ばれる。

 

 この天地世界に転生した折りには、生活面で云えば母親や姉が数年間は見ていてくれたし、それ以降だと父親の秘書っぽい女性が何やかんやと世話をしていてくれたから、副官のユーキを最初に招喚している。

 

 尚、父親の柾木信幸とは後妻として正式に結婚し、【柾木剣士】というユートや天地の異母弟が誕生。

 

 元々は異世界人らしく、然し柾木清音とは仲良しだった為か、柾木家にはよく出入りをしていたのだ。

 

 生活能力が割と高かった信幸が居たから、シエスタを喚ぶより副官のユーキだったのは間違いないけど、彼女の役割も小さくはなかったのだろう。

 

 津希媛(つきひめ)が居たから、仮に生活面でのサポートが全く無くとも食いっぱぐれはしないにしても、やはり凡夫に見える信幸も何処か超然的だった。

 

 少しだけユートが存在する世界の未来──

 

 ダンジョンの中に突如、次元震が発生をする。

 

「此処にユートが?」

 

「はい、ボク達が顕現したなら間違いなく居ます」

 

「洞窟……か? 矢鱈と広いんだが」

 

「ダンジョンですかね?」

 

 嘗て、ユートがハルケギニアに創ったダンジョン、その事を知っている二人は顕れた先でキョロキョロと辺りを見回す。

 

 そんな時、ダンジョン内に男の絶叫が響いてきた。

 

「目を、目を開けてくれ! 俺は……俺は仲間を喪いたくないんだ!」

 

 絶叫の元へ向かってみると数名の人間が、複数匹の黒い犬や白い兎などに囲まれており、筋肉質なざんばら髪の男が倒れ伏している少女に叫んでいた。

 

 解る。

 

 少女の心臓は鼓動を停めており、既に息もしていない死者である事が。

 

 背中に刺さる斧が致命傷となり、失血死をさせたのであろう事は明白。

 

「残念だがオレ達に彼女を救う術は無いな」

 

「そう……ですね」

 

「だが、あのモンスター共から残りの連中を助ける事は可能だろう」

 

「は、はい!」

 

 そして二人は駆け出す、己れの心情に従って。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 本来の時間の迷宮都市、ソーマ・ファミリアの主神ソーマの部屋。

 

 神酒の謂わば完成版とも云えるソレは、まるで麻薬の如く飲んだ人間を虜にして常習させてしまう。

 

 リリも一度は飲んで獣に堕ちた神酒、だけどユートは事も無げに言い放った。

 

『美味い』

 

 酒の味が解らない訳ではなく、然し普通に飲んでしまったユートは味を反芻しているが、瞳に濁りなんて見当たらない。

 

「神樹の酒程じゃないが、確かにこれの為に必死だって連中は居るだろうね」

 

「神樹の酒? 聞いた事も無いがそれは何だ?」

 

 ソーマが訊ねる。

 

「とある樹の果実を酒にした代物だよ」

 

 飲んでも神酒(ソーマ)みたいな事にはなるまいが、味そのものは【神樹の酒】の方が上だと認識した。

 

 ユートは皇家の樹の主、それも津名魅が直に下賜をした樹であり、津名魅を除けば全ての皇家の樹を従わせる事すら可能な。

 

 始祖の樹たる津名魅──その一部から生誕した娘とも云える樹、スレイヤーズの魔族や神に近いやり方で生まれた真祖の樹。

 

 ユートが名付けた名前は【津希媛】と云う。

 

 樹雷皇阿主沙と何故だか決闘騒ぎに発展をした際、津希媛の力で【霧封】との契約を解除してやった事もあり、危険視をされたのはもう十数年も前の話。

 

 異母弟の柾木剣士が生まれる前、それ処か柾木信幸が継母となる柾木玲亜との婚姻を行うより以前の事。

 

 樹雷が津希媛を初めて知った瞬間でもあった。

 

 第一世代以上の樹と契約したマスターで、第一皇女たる柾木・阿重霞・樹雷と第二皇女の柾木・砂沙美・樹雷を樹雷皇の名の許に、婚約させると口に出させたユートは名実共に次期樹雷皇と名高い。

 

 実際に柾木・優斗・樹雷の名前を拝命している。

 

 しかも、ユートはあろう事か【瀬戸の盾】や【鬼姫の金庫番】にまでコナを掛ける剛の……業の者。

 

 因みに阿主沙も知らない事ではあるが、あの当時に言っていた──『何なら、アンタの奥さん方も貰おうか?』という科白が半分だけ本当になっている。

 

 ユートは偶にやって来る二人──船穂と美沙樹への過剰なスキンシップを敢行しており、流石にヤってはいないがとんと御無沙汰な二人は女を感じていた。

 

 それは兎も角、酒の話にソーマは食い付いた訳で、【神樹の酒】の事を聞きたそうにしている。

 

 簡単な概要だけでは納得がいかないらしい。

 

 それはそうだ、自分の作る酒に酔い痴れる眷属達に嫌気が差して趣味に集中をしてきたソーマ、それなのにユートは酔いもしないで味の感想を言って、しかも神酒より美味い酒を知るとまで言う。

 

「若し本当に神酒を上回るなら飲んでみたい……」

 

「神樹の酒は僕らの所だとオークションに一回だけ出た際、世界を一つ手にするだけの金額が動いたぞ? 一升瓶を一本だけでだ」

 

「なっ!?」

 

「だから飲みたいなら代価は可成りなモノでないと。実際、希少価値と需要なんかを含めれば相当だしね」

 

「む、ウウム」

 

 とはいえ、このオラリオではそもそも流通すらしていない以上、希少価値くらいしか無いのだが……

 

「どうすれば飲める?」

 

 自分の神酒で酔い痴れないユートに興味を懐いて、更にそんなユートが推している【神樹の酒】の味……気にならない訳がない。

 

「そうだね、なら現時点で貯蔵しているのや隠しているのを含めた全ての神酒、それとこの……」

 

 懐から出す振りをして、アイテムストレージから出した小さな酒瓶。

 

「一升瓶から十分の一を分けたこの小瓶を一つと交換なら良いが?」

 

 リリとザニスは顎が外れそうなくらい、あんぐりと口を開けて呆然となる。

 

 失敗作の神酒が一升瓶を一本で約六〇〇〇〇ヴァリスはするのだから、完成品を市場に出した訳ではないが少なくとも数十倍、下手したら百倍、千倍の値段が付いてもおかしくはない。

 

 そんな神酒を全て出して一升瓶の十分の一程度による交換だとか、ザニスからすれば有り得ないレート。

 

「判った」

 

「ソーマ様!?」

 

 だがソーマはアッサリと承諾してしまった。

 

 有り得ない、本当に有り得ない話である。

 

 ソーマ・ファミリアの者が神酒を一口飲むのにどれだけ稼いでいるか、ソーマは全く知らないのだろう。

 

 それにしたって自信作の筈の神酒を全て吐き出し、僅か小瓶を一本だけ手に入れようなどと、あの酒にはそんな価値が本当にあるとでも云うのか?

 

 ザニスには解らないが、主神の命令では仕方ない。

 

 本人はソーマを小馬鹿にしているものの、好き勝手を出来るのは彼が居るからだとも理解していた。

 

 小賢しい故に。

 

 ソーマが雑事をザニスに任せるから勝手が出来て、欲しいモノも幾らでも手に入れられる。

 

 欲しい。

 

 酒も食い物も女も全て。

 

 そんなザニスであるが故にソーマの機嫌は損ねる訳にもいかず、だから神酒の全てを──隠してあるモノまでも出すしかなかった。

 

 神は地上人(こども)の嘘を容易く見破るからこそ、一切の嘘を吐けないザニスは〝全て〟を吐き出す。

 

「また、随分と溜め込んでいたもんだな」

 

 ユートは感心する。

 

 一升瓶は約一.八リットルな訳だが、それが四斗の酒樽で四十升分が入っているのが百樽は有った。

 

 約七千二百リットルだ。

 

 よくもこれだけ溜め込んだものだと、ユートが言うのも無理からぬ事。

 

「然しな、出したは良いがどうやって持ち帰る?」

 

 一樽でも普通は人間一人で持ち上がらない重量で、それが百樽も有っては当然ながらソーマにもどうしようもなかった。

 

「問題は無い」

 

 右手でステータス・ウィンドウを操作、アイテムストレージへ百の酒樽を一瞬にて収納してしまう。

 

「これが、サポーター要らずの秘密……ですか」

 

 リリが呟いた。

 

「確かに対価は戴いた……これが【神樹の酒】だ」

 

 一.八リットル瓶の僅か十分の一、一.八デシリットル程度の量しか入っていない小さな小さな瓶。

 

 ユートはそれわソーマに渡してやる。

 

「これが……」

 

 コルク栓を開けると匂うは果実の香りか?

 

 ソーマはそれを煽った。

 

「っっっ!?」

 

 飲んだ瞬間目を見開き、何処か恍惚とした表情となって飲み込んだ。

 

「ま、まさか……この味は天界で作った神酒さえ凌駕するのか!?」

 

 驚愕するソーマだけど、何しろこの酒の素材となるのは皇家の樹の実、津名魅という頂神の一柱が樹雷に贈った神の()の実。

 

 ソーマが神だとはいえ、天界版の神酒の素材は天界に存在する物で、其処へ以てソーマが【神の力(アルカナム)】を用いて作り上げたというモノ。

 

 素材としてはどうしても二段は劣り、それが味へとダイレクトに反映された。

 

 結果、天界版神酒と神樹の酒では後者に軍配が挙がったという。

 

「さて、それじゃあこれがリリの脱退金で一千万だ」

 

 ユートが袋をアイテムストレージから取り出すと、それをソーマとザニスの前に置いた。

 

「一万ヴァリス硬貨で千枚が入っている」

 

「くっ!」

 

 何だかよく判らない内、要求額たる一億ヴァリスが一千万ヴァリスになってしまったが仕方ない、ザニスが取り敢えず袋を受け取ろうと手を伸ばす。

 

「その前に袋のエンブレムを見て貰おうか」

 

「エンブレム? これは、ウィンクする道化師!?」

 

 それが意味する処は──

 

「ロキ・ファミリア?」

 

「そう、そいつは僕が先に手に入れたとあるアイテムを買い取るべく、ロキ・ファミリアの団長フィン・ディムナが手ずから数えて封をした金だ。若し、それにケチを付けるならその場合はロキ・ファミリアに──延いては【勇者(ブレイバー)】と【怒蛇(ヨルムガンド)】に喧嘩を売る行為だと知れ」

 

「何故に【怒蛇(ヨルムガンド)】まで?」

 

 リリが首を傾げる。

 

「【怒蛇(ヨルムガンド)】ティオネ・ヒリュテってのはフィン・ディムナを愛しているから、フィンを虚仮にされたとなればぶちギレるんじゃないかな?」

 

「うわぁ……」

 

 ぶちギレるLV.5……恐ろしい結果にしかならないだろう。

 

「わ、解った」

 

 ザニスは大人しく頷き、一千万ヴァリスの入った袋を受け取る。

 

「後は、改宗が出来る様にして貰おうかな」

 

「了解した」

 

 ソーマはリリの背中に在る恩恵に手を加える。

 

 その作業に時間は殆んど掛からず、僅か一分足らずで終了した。

 

「これで別の神が恩恵を引き継ぐ形で眷属に出来る」

 

「そう、ならそろそろ失礼させて貰うか」

 

 リリの手を取り踵を返すユート、リリは真っ赤になってされるが侭だ。

 

「待ってくれ!」

 

「何かな? 早くリリを連れ帰って改宗させたいんだけどな……」

 

「あの酒の素材が欲しい、手に入らないだろうか?」

 

「……元から希少品だから難しいな」

 

 嘘ではないからソーマは気付かないが、実は真実ともちょっと異なる。

 

 実は【津希媛】であれば割と手に入るから。

 

 けど、その【津希媛】は地球側に置いてきている。

 

 一応、皇家の樹の実なら幾つかアイテムストレージにキープしており、渡せない訳でもなかったのだが、ホイホイと渡す代物でもないのは確かなのだ。

 

「ま、もう一つくらいなら渡しても良い。サンプルに上げるよ」

 

「神樹の酒……」

 

 新たに渡された酒瓶を、ソーマは大切そうに懐へと納めるのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 リリとお手々を繋いで、ファミリアの本拠地へ戻るユート。

 

「ふん、予想の範疇だな」

 

「え?」

 

 行き成りの言葉に疑問を感じる前に、十人くらいの者に囲まれてしまう。

 

「あ、カヌゥさん?」

 

 犬人(シアンスロープ)なオッサンは、どうやらリリの知り合いであるらしい。

 

「へへ、神酒とアーデは返して貰うぜぇ」

 

 厭らしい笑いを浮かべるカヌゥとその一味。

 

「本当に予想の範疇内にしか動かんな」

 

 ユートは嘆息をしながらザニスからの刺客を冷やかに見つめ、愚かなオッサン達とザニスの末路を決める手に出るのだった。

 

 

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