ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】 作:月乃杜
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ユートは予めアイテム・ストレージから出しておいた金属の塊──漆黒に煌めくインゴットを袋から取り出してヘファイストスへと見せてやる。
「こ、これは!?」
「ヘファイストス、貴女になら理解も出来る筈だよ。その金属がいったいどんな代物なのか……を」
ヘファイストスは目を見開き、手にしたインゴットを色々な角度から見たり、或いは指で弾いて音を鳴らしてみたりと、様々な方向から検証をしていた。
ヘスティアにはいまいち解らない様だが、ユートが準備をしていた漆黒の金属のインゴットは、ヘファイストスみたいな鍛冶職人なら正に……
「欲しいわね」
そう思わせる物だった。
「強度、粘性、重量の軽さを鑑みれば……アダマンタイトに一歩を譲るけれど、金属自体に含まれた魔力がそれを覆すわ。見た事もない金属だけどね……」
「名前は
「君が?」
「それは兎も角、ソイツなら担保には充分な筈だね。仮令、僕が逃げたり死んだりしても担保は残るから、決して貴女に損は無い」
「然し、これだけの物だ。君がこれを売れば武具など幾らでも買えるだろう?」
「まあね。だけど僕としてはソイツで商売をする心算も無いんだ。飽く迄も僕は冒険者として糧を獲たい。それに問題はヘスティア」
「ヘスティアが問題とは? 何かしらやらかしたか」
「って、ヘファイストス? ボクを何だと!?」
ヘファイストスの絶叫にヘスティアが文句を言ってくるものの、完全に黙殺をして会話を続ける。
「ヘスティアは貴女の所でニートってか、ぶっちゃけヒモ生活をしていたな?」
「その通りよ」
ヘスティアは不満そうではあったが、事実であるのは認めているから何も言う事が出来ない。
というか、ヘスティアがそもそもユートに自分の恥を教えていた。
「で、だ。そんなヘスティアが今度はファミリア対象にヒモを始めました、と。外聞が悪いにも程がある。だから、借金は名目上だけでもヘスティアがするって事で、僕はそれで装備やら道具を揃えてダンジョンに潜るという訳だよ」
「成程、それならファミリアにタカる駄神なんて話にはならないわね」
「だ、駄神……って……」
流石はタカられ続けて、友情を食い物にされてきたヘファイストスだけあり、言う事がいちいちキツい。
「貴方も災難な所を選んだものね?」
「いや、まあ……正直に言ってしまえば何処でも良かったんだ。それこそロキのファミリアや貴女のファミリアでも……ね。【
「へぇ、自信アリ?」
「少なくとも、【
「……それは流石にどうなのかしら?」
「何ならまだ【神の恩恵】は得てないけど、ものは試しに貴女のファミリアの誰かと試合しても構わない」
「そうは言っても、ウチは鍛冶の為にレベルを上げてる口だから、高くて精々がレベル3なのよね。一応はレベル4も居るし、団長はレベル5なんだけどね」
レベルが上がったならば【発展アビリティ】が発生するが、これは割かし便利なモノが多かった。
鍛冶のアビリティを得る為には、どうしたって必ずレベルは一つだけでも上げなければならない。
そして力試しの為だけに彼らを呼び付けるというのも憚られ、ヘファイストスもどうしたものかと首を傾げてしまう。
「レベル3……確かそれはドラクエで云えばレベルというより」
ドラクエ6や7での職業熟練度、レベルの様な上がり方はしないのだろうし、何よりもヘスティアが曰く現在の最高レベルは【
少々、苦手なフレイヤのファミリアに所属する猪人という巨漢の亜人。
最高値がレベル7なら、レベル3というのは謂わば中堅層となるのだろう。
とはいえ、ヘスティアも実際には最近になってからの降臨だったし、それから暫くはヘファイストス・ファミリアのアジトで堕落な生活をしていたし、常識の範囲でしか知識が無い。
まあ、積極的な情報収集なぞしてもファミリアが居なければ使えなかったし、そもそも怠惰に暮らしていた頃も、バイトで食い扶持を獲ていた頃も情報なんて集めようがなかった。
「そういえば彼が今日は居たわね……」
ヘファイストスがちょっと手を回し、とある人物を呼びに行かせる。
ややあって、現れたのは首に青い布を巻いた赤毛の青年だった。
「ヘファイストス様、呼んでいると聞きましたが?」
「ヴェルフ。最近の調子はどう?」
「いつも通りですよ。いつも通りにレベル1で発展アビリティの鍛冶も得られない下級鍛冶師な訳ですが、それで用事とは?」
「彼とちょっと戦ってみてくれないかしら」
「誰です?」
ユートを見遣り、見覚えが無い顔に訝しむ青年──ヴェルフ。
「彼の名前はユート。神友に出来た初めてのファミリアの候補でね、まだ恩恵を得てないらしいけど可成りの自信家みたいなのよ」
「それで腕を見たいと?」
「私が防具を打つに相応しい腕か見たいのよ」
「っ!? ヘファイストス様自らが!?」
いつの間にか彼女自身がユートの防具を造る話へとワープ進化をしたらしく、ヴェルフは疎かヘスティアも驚愕に目を見開く。
恐らく【Hφαιστοs】のロゴ付きの防具。
「ヘファイストスが打ってくれるのかい?」
「良い物を見れて興が乗ったのよ。但し、それなりに実力を示して貰うわよ」
眼帯を着けていない左目がキランと輝いた。
「了解した」
ユートが知るヘパイトスも鍛冶の神、ならば
場を移動して暴れるのに相応しい広場に出てきて、ユートとヴェルフは神二柱が見守る中で対峙した。
「折角だから賞品を付けましょう」
「賞品?」
「そうよ、ユート。貴方には私の打つ防具を半額に、ヴェルフはそうね……レベル2になれる様に周囲へと計らいましょう」
ヴェルフは急にやる気……というか殺る気が満々になって、背後には何故だろうか? ヘファイストスのオーラが浮かんでいた。
「さっきまでダルそうだったのに、急に覇気が出てきたな。確かヴェルフ……だったか?」
「ふん、あんたにゃ解らん苦労ってやつがあんのさ」
大刀を片手に肩で受け据えながら言う。
「そうか……取り敢えず、自己紹介する。柾木優斗」
「ヴェルフ・クロッゾだ」
ヴェルフは大刀を持つが一方のユートは無手。
「おい、まさか俺を舐めてんじゃねーだろうなぁ?」
「そんな心算も無いけど、君にはそう見えるのか?」
「あ?」
「なら、未熟だね」
「てめえ……」
ピキキッ! 額に青筋を浮かべながら半ばキレる。
そりゃ、武器は持たないわ【
「とある白龍皇は言った、相手の強さが
「チィッ! 言ってくれるじゃないかよ! ヘファイストス様、合図を!」
したり顔で講釈を垂れるユートに、ヴェルフ・クロッゾはいい加減で暴れ出したくなるくらい怒り心頭にキていた。
ヘファイストスはやれやれと頭を振り……
「始め!」
ヴェルフ・クロッゾの望み通り合図を出した。
その瞬間、大刀を両手に持ったヴェルフが駆け出してユートに上段から斬り下ろさんと振り上げ、無防備──に見える──な頭からかち割らんと振り下ろす。
普通なら終わる一撃だったろうが、ユートは瞑目をするとあろう事か右手にて手刀を作り、それで大刀の迎撃を行う。
「莫迦が!」
「莫迦はそっちだ」
手刀と大刀が接触をした途端、ユートはまるで導くかの如く右腕を下ろして、大刀はそれに沿う様な動きで流され、果てには地面を強く叩いてしまった。
「うがっ!」
斬れもしない地面を叩いた瞬間、振動がヴェルフを襲って堪らず大刀を手放すしかなくなる。
「終わりだ、ヴェルフ・クロッゾ!」
「ぐっ!?」
自慢の大刀を受けた手刀が首筋に当てられており、僅かな〇.一ミリの動きが首の薄皮を裂いて出血を強いられる。
「っ!」
「僕の手刀は聖剣も斯くやな切れ味を誇る。少しでも動けば素っ首が落ちるぞ。それとも逝くかね、ポトリ……と」
冷や汗がダラダラ流れ、背筋に氷水でも入れられたかの如く寒気、ヴェルフには理解が出来てしまった、ユートの言葉に偽りは無いのだと。
「ま、参った……」
「勝者、ユート!」
小宇宙を使えないから、基本的に魔力を媒介に技を発動しているが、ユートは本来に近い威力も出せる。
流石に今の村正抜刃で、紫龍がやったみたいなクリュサオルのゴールデンランスを破断は無理だろうが、だけど恐らくこの世界にてアダマンタイトと呼ばれている超硬度金属の武器であれば、その気になったなら両断も出来るだろう。
因みに、ギガースが纏う
例えるならば、野球選手の王 貞治とどっかの中小企業な会社員の王 貞治さんくらいの違いだろうか?
それは兎も角、ヴェルフは四つん這いになって絶望を湛えた表示となり、怒りか哀しみか悔しさか涙さえ流していた。
「は、はは……俺は、俺って奴は……【
ヴェルフ・クロッゾ──彼は冒険者ではなく
だけどヘファイストスから【
当然ながら【神の恩恵】を受けない一般人に負ける道理など有りはしないし、況してやステイタスを発生させていない一般人など、彼らからすれば赤子や雑魚と云えるくらいだ。
「待て! ヴェルフはこう見えて一応は十階層にまで到達している。だとしたら君は、【神の恩恵】無しで十階層クラスの者を倒せる力を持つ事になるわね? 貴方、何者なの?」
勿論、
とはいえ、本来は神々は疎かダンジョンの一階層のモンスターにさえ翻弄される人間や亜人が、中層にさえ届こうかという者を打ち倒す……余りにも無茶な話だろう。
ハッキリ言えばヘファイストスは警戒していた。
「僕が何者か……か。僕の名前は柾木優斗。岡山県の片田舎で柾木家次男として誕生した。即ち、この地に何の所縁も無い……
「異邦人?」
「そう、異世界から転移をしてきた異邦人。因みに、僕の能力は彼方側でも可成りのものだからね。そも、【
「ぐっ!」
ヴェルフが呻く。
現状では地球と異なり、ユートは小宇宙は使えない訳で、つまり既知外レベルの能力は持たない。
全くの素の状態。
この世界での冒険者的に換算して、レベル5の上位くらいが精々だろう。
だけどユートはこの事態を善い機会と捉えた。
まだスプリングフィールドだった頃、VRMMOに閉じ込められた事があったのだが、その際にも小宇宙は当然ながら使えずゲームのアバターが持つ能力と、何とかかんとか引っ張ってきたシステム外スキルで、攻略組の上位陣として君臨をしてきたのだ。
それに、異世界で小宇宙が使えない事態というのもそろそろ慣れてきたから、折角の機会でもある。
【
冒険者として糧を獲て、更には小宇宙を使わず素の身体能力の強化、一石二鳥とはこの事であろう。
或いは砂沙美が迎えに来た後も続けて良いかもと、寧ろ何人が来るかは判らないが仲間達もファミリア入りさせ、暫くはこの世界で楽しむのもアリだろうか?
差し当たり……
「ヘファイストス、約束は守って貰うよ?」
「判ったわ。それじゃあ、担保用のと防具を作成用のブラックメタルを。それとどんな防具をお望み?」
「チェストガード、レッグガード、アーム、ベルト、それに
「結構、軽装ね」
「逸さがウリの動きだから重武装は合わないんだよ」
「成程……」
尤も、ユートが普段から使っている双子座の聖衣は重武装以外の何物でもなかったりするが……
「ま、待ってくれ!」
「うん? 何だ?」
ヘファイストスと広場を出ようとすると、ヴェルフが落ち込んだ表情を一変、真面目な顔で叫んだ。
「あんたは防具を欲して来たのか?」
「ああ、武器は準備が出来ているからね」
「なら、一つで良いから俺に造らせてくれ!」
「ハァ? ヴェルフの腕はヘファイストス並なのか? それなら任せるが……」
「うぐぐっ!」
神の力は封じているが、天界では【神匠】と呼ばれたヘファイストスである、それが潜在力は兎も角として現状、彼女に抗する程の腕前では有り得ない。
況して、未だにレベル1だという事実はつまり……発展アビリティが生じていない証左なのだから。
発展アビリティ──基本アビリティの力、、耐久、器用、俊敏、魔力の五項目の事を指しており、これらは
神秘や耐異常や鍛冶と、様々なアビリティが存在しており、ヴェルフは当然ながら発展アビリティなど持ってはいないのである。
これもヘファイストスの許でニートをしていたが故にヘスティアが知った情報であり、ユートが此処に来る前に聞いていたのだ。
上級鍛冶師ではないが、ヘファイストスはヴェルフの腕が高いと知っている。
勿論、ヘファイストス・ファミリアの上位に位置する上級鍛冶師には全く及ばないし、況んやヘファイストスに届く筈もない。
「やめなさい、ヴェルフ!」
「くつ、ヘファイストス様……俺は……俺は!」
悔しい、敗けたのが悔しいし鍛冶師としても信頼されないのが悔しい。
まるで〝クロッゾ〟としてしか価値が無いと言われたみたいで、余りにも悔しかったヴェルフにユートは向き直る。
「なら、円形盾を造ってみて貰おうか。どうせ最初は上層からなんだ、神様仕込みの防具でなくとも充分。見込みがあれば今後も頼むかも知れないし、気合いを入れて造ってくれ?」
「っっ! 解った!」
バッと顔を上げて大きく目を見開いたヴェルフは、すぐに頷くと広場から駆け出して行ってしまう。
「ふぅ、良かったの?」
「構わないさ。上層なんてモンスターも──スライム相当だからな」
「そう、なら良いわ。防具はそうね……ヴェルフのも含めて一週間後に取りに来て頂戴」
「了解した」
「あ、防具との差額を渡さないとね」
一度部屋に戻った三人、ヘファイストスは黒鍛鋼のインゴットを担保として、一つに五十万ヴァリスの値を付け、十個を受け取ると五百万ヴァリスの半額──二百五十万ヴァリスを借金として渡す。
ユートは更に防具作成用の黒鍛鋼を渡し、ヘスティアと共に廃教会の地下となる本拠地へと戻った。
そしてその夜……
「それじゃあ、始めるよ」
上半身を裸となって俯せに寝転ぶユートの腰に座ったヘスティアは、針で指に傷を附けてユート風に云うと
【
但し、好き勝手に刻めるという訳では決してなく、神様が行うのは
「えっ? これは……」
柾木優斗
種族:カンピオーネ
LV.1
力:I20
耐久:I15
器用:I32
俊敏:I60
魔力:I75
《魔法》
【精霊干渉】──精霊との交信で魔術を発生させる。詠唱は魔術により区々で、水火風地>雷氷光闇影樹となっている。
【黒魔術】──異世界に住まう魔の眷属の存在力へと干渉して力と成す。
【神威魔術】──この世界の神々との交流によって、存在力へと干渉をする事が可能。それを魔術に変換をする事が出来る。
《スキル》
【
【
【
基本アビリティが高く、既に魔法スロットが最大とスキルスロットまでも埋まっていたと云う。
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サブタイトル考えるのが面倒……