ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

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 リューとのデートです。





第30話:リュー・リオンとのデートは間違っているだろうか

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 怪物祭の当日。

 

 元から賑やかなオラリオだったが、いつにも増して騒々しい程に賑やかに人々が行き交うメインストリートに美女と称して良い薄い翠の髪の毛の女性──リュー・リオンが、いつも着ているウェイトレスとしての服装とは異なり、お洒落な余所行きの服に身を包み、ストリートでもよく目立つ噴水の前に立っていた。

 

 しかもミニスカートで、普段のロングスカートなら隠せる武器も流石に身に付けられず、本当に何年か振りに無防備に近い姿だ。

 

 というか、ヒラヒラした服装はいつもの事だけど、これは流石に恥ずかしい。

 

 エルフらしいスレンダーな体型であるリューだが、容姿そのものは非常に美しくある意味で完成されて、道行く男共の好奇の視線に晒されていた。

 

 待ち合わせ時間の三十分も前に来てしまった辺り、リューも実は昨日からソワソワしており、楽しみにしていたのかも知れない。

 

 無表情がデフォながら、何処か愉しそうだし。

 

 本来、リューはある理由から自らを厳しく律して、余り(エルフ)生を満喫していないから、友人であるシル・フローヴァはそこを気にしていた。

 

 そんなリューがまさかのデートである。

 

 本来ならシルが休みを貰って怪物祭に行く予定を、態々変更してまでリューに休みを譲り、シルのセンス全開でおめかしさせると、デートへと送り出した。

 

『お土産、期待してるね』

 

 これが男であれば瞬く間にも堕ちてしまいそうな、だけどあざといウィンクをしながらリューの背中を押してやる。

 

 いつになく頬を朱に染めながら、リューはシルに対して『行ってきます』──そう言って出掛けたのだ。

 

 普段はしないおめかし、しかも店のウェイトレス服とは異なる超ミニスカートは全力全開で白い太股を晒しており、下手に動いたら間違いなくショーツが丸見えになってしまう。

 

 これは如何にも頼り無い着心地で、チラホラと周囲を観察しながらスカートを然り気無く下に引っ張り、ショーツが見えない様にと気を付けている。

 

「シル、やはり幾ら何でもこれは有り得ない……」

 

 武器を取り出す際であれば惜し気も無く太股や下衣を晒すリュー・リオンも、こんな無防備全開な格好で晒すのはやはり意味合いが違い、先程から感じる視線に居心地の悪さを感じた。

 

 約束の時間には相当に早いから、ユートがこの場に現れるのは未だ先。

 

 シルが曰く──『待たせ待つのがデートのいろは、今回はリューが早目に現場に居て、彼が『待たせたか?』って訊いてきたら──『今来たばかりよ』って返すのよ?』

 

 なんて、いったい何処から仕入れた知識なのか? 愉しそうに教えてくれた。

 

「よー、ねーちゃん」

 

 二人組の冒険者らしき男がヘラヘラしながらリューに近付き、馴れ馴れしくも声を掛けてくるが無視。

 

 基本的にリューは余り口数が多くない。

 

 無言ではないが言葉少なに語るタイプだからだ。

 

 昔はそうでもなかったのだが、今は戒めと共に少し口数が減ったという事。

 

「おいおい、無視は悲しいじゃねーの」

 

「そうだぜ、ねーちゃん。暇してんならよー、俺らと祭を楽しまねーか?」

 

 正にオラリオのチャラ男というべきか、リューから見た感じだとLV.2だろうか? 丁度、調子に乗っている時期っぽい。

 

「私は人を待っています。貴殿方と出掛ける心算などありません」

 

 丁寧な物言いで返す。

 

 若し、こいつらが調子に乗ってリューにセクハラでもしてきたとして、彼女はそれをあっさり鎮圧可能。

 

 何故ならリューは元冒険者だったのだから。

 

 しかも主神はオラリオに居ないだけで、未だ地上に存在しているからリューの背中の【神の恩恵(ファルナ)】は生きている。

 

 主神が天界に還ってしまうと恩恵は自動的に封じられてしまい、他の神からの恩恵を再び授からない限りは冒険者としての力は喪われてしまう。

 

 リュー・リオンの主神は正義の女神アストレア。

 

 とある理由からオラリオを出たが、リューの恩恵は残された侭となっている。

 

 そして、リュー・リオン──【疾風のリオン】だった彼女のLV.は4。

 

 元第二級冒険者だった。

 

 元──とはいってみても冒険者を辞めただけでしかなくて、力が……【神の恩恵】が健在なのだから目の前の上級冒険者風情を打ちのめすのは、このリューにとって如何にも容易い作業でしかない。

 

 問題はシルの言葉。

 

『リューは美人なんだからきっと待ってる間、誰かしら声を掛けてくると思う。だけど自分で対処なんてしちゃ駄目!』

 

『シル、貴女はいったい何を言っているのです?』

 

『リューは強いよ。でも、明日のリューはデートを心待ちにするか弱い乙女! 決して相手を返り討ちにする冒険者じゃないの!』

 

 返り討ちにする処か――『イヤ、放して!』とか、弱々しく言うのがポイントだとか何とかレクチャーを受けている。

 

 今更ながら頭を抱えたいシルの授業内容、はっきり言ってしまえば無理だ。

 

 普段が普段、無表情を貫き口数も少ないキャラクターでウエイトレスをしていたリュー、それが恥ずかしがりながらユートを見て、『今日のデートは何処へ連れてってくれるの?』とか『イヤ、恐い……』とか、頬を朱に染めたり恐怖から涙目になったり、ホンッとうに今更過ぎて出来ない。

 

「シル、貴女は私を何処に導く心算ですか?」

 

 チンピラ冒険者を胡乱な瞳で見遣りつつ、この場には居ないアッシュブロンドで小悪魔チックな美少女の同僚に対して呟いた。

 

 因みに、チンピラ冒険者の二人は自分自慢に余念が無く、リューが聴いてすらいない事に気付いてない。

 

「で、どーよ? 俺らが、祭を案内してやるぜ」

 

「そーそー、んで夜は宿でしけ込もうぜぇ?」

 

 コイツら本気でナンパを成功させる気があるのか、リューは先程の科白だけで疑問となる。

 

 エルフの潔癖症を知らないのか? 初対面な男なぞと宿にしけ込む筈エルフなら有り得ないと、どうして理解していないのだろう?

 

 リューもユートなら或いは暫く人となりを見極め、リュー本人がユートから触れられる事を前提にであれば吝かでもないが、こんな連中と宿で性交なんてヤりたい筈も無かった。

 

 溜息を吐く。

 

「今一度言います。貴殿方と遊ぶ気はありません! 私はツレを待っている」

 

「そう言うなよ……」

 

 ニヤニヤしたチンピラAがリューの左手首を掴み、その侭腰にまで触れようとするが……

 

「私に触れるなっっ!」

 

 一瞬で地面に叩き伏せ、頭を踏み抜いてやる。

 

「ガブッ!?」

 

 後頭部を靴底の踵で踏まれた為か、あっという間に気絶させられてしまう。

 

 やっちまったぜ……

 

 何処かのRPGのエンディングが流れてきそうで、リューは内心では再び頭を抱えてしまった。

 

「そうだ! ユートさんに見られていなければセーフの筈です!」

 

 ちょっと混乱気味だ。

 

「て、てめえ!? よくもケンちゃんを!」

 

 腰のベルトに着けていた短剣を抜くチンピラB。

 

「はい、ソコまでだ」

 

 然し短剣は背後から奪われてしまう。

 

「なっ! 何だてめえ?」

 

「その娘のツレだよ」

 

 相手はユートだった。

 

 茫然となるリュー。

 

 ──視られた?

 

 自分を掴んだチンピラAを叩き伏せた場面を?

 

 やはり自分にシルみたいなのは似合わないのだと、チンピラBに奪ったのとは別の短剣を突き刺すのを見ながら思うリューだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 何故か気絶したチンピラにも短剣を刺すユートではあるが、プスッ! という間の抜けた音が出るだけで出血は無い。

 

「フッ、不能の短剣だ……お前らの股間の粗末なモノが勃ち上がる事は最早二度とは無いだろう」

 

 何だか空恐ろしい事実を平然と宣うユートに対し、周りの男共が股間を押さえるという珍妙な場面。

 

 短剣を仕舞うとユートがリューの方を振り向き……

 

「待たせたね。今日はとても可愛い格好だなリュー」

 

 ニコリと笑顔でナチュラルに褒めてきた。

 

「そ、そうでしょうか? 私に似合うとは思えないのですが、シルがどうしてもと言いますので」

 

「気合いを入れてデートに臨んでくれて嬉しいよ」

 

 手を差し出されて逡巡をするが、ソーッと右手にて差し出された手を取る。

 

 やはり拒絶反応は無い。

 

 若干、リューの頬が朱に染まっているのはテレか、或いは触れる相手を見付けた事への昂りか?

 

 いずれにせよ、リューはユートと触れ合えた。

 

 嘗てリューは、仲間であった女性に言われていた事がある。

 

 若し、自分が触れ合える相手に巡り逢えたのなら、必ずその絆を大切にしろといった感じに。

 

 そんな相手など居ないと思っていたのに、ヘスティアと食事に来ていたユートと偶々だが触れ合う機会を得て、すぐに引っ込めようとしたのにユートから薫る懐かしい気配に遅れてしまった結果、ユートに触れても拒絶反応が出ない事実に気付いてしまった。

 

 懐かしい気配――故郷の森を思わせる〝匂い〟だというべきか、土と風と水と樹の渾然一体となったものがリューの五感を直撃し、思わず真っ赤になってしまったのがイケない。

 

 シルにはからかわれる、アーニャ達からは変なものを見る目で視られる、碌な事がないと思えば今度は何と本人からデートに誘われてしまったり。

 

 この感覚は自分のみならずエルフに共通する筈と、リューは自身の感じたモノに確信を持っている。

 

 事実、自分達の王族(ハイエルフ)たるロキ・ファミリアの副首領とも云えるリヴェリア・ヨルス・アールヴが、随分と気安い感じで接していた上に肌に触れられても拒絶しなかった。

 

 同じく、【千の妖精】と名高い第三級冒険者であるレフィーヤ・ウィリディスなど、今の自分と同じ様な顔をしていたくらい。

 

 そう、リューはユートにどうしようもなく惹かれ、だからこそ内心ではとても苦しんでいる。

 

 ――『私は汚れている』と自嘲しているから。

 

 勿論、それは性的な意味には非ずだ。

 

 意図せず性行為に及ばされた場合は『汚された』と揶揄されるが、このリューの場合は手が血で汚れているというもの。

 

 リューはデートの最中であるが故に、固いながらも笑みを浮かべながら所謂、【恋人繋ぎ】で手を繋いでユートに付いていくけど、同時に自分は幸せなど感じてはいけないのだと頑なに思ってもいた。

 

 寧ろ、あの頃であったら性的に汚されても何も感じなかったろう。

 

 というより、血塗れでなければシルが見付けた際のリューは、性的暴行を受けて絶望した少女の如く倒れ伏していた訳で……

 

 思い出すは自らの業。

 

 ユートも見目の良い自分――基本的にエルフは美麗な容姿を誇り、リュー自身も客観的に美人だと自負があったりする――にアプローチをしてくるが、若しもあの頃の自分を知れば離れるだろうと思っている。

 

 因みにだがエルフの中にはブタ君も存在していて、しかもそれが実はギルドのお偉いさんだと云う事実。

 

 金に執着する事もあり、エルフの矜持を忘れた者として蔑視されている。

 

 まあ、リューは間違いなく美人なので問題は無い。

 

「どうした?」

 

「――え?」

 

「心ここに在らずだな?」

 

「そ、そんな事は……」

 

 考え事をしていたのだから――『ありません』とは続けられず、ふと気が付く手の温もりを感じてしまい恥ずかしくなる。

 

 手が血で汚れていると思っているのに、彼の手に温もりを感じ安らいでいた。

 

 意外とがっしりした掌、それに細身に見えて筋肉は確り付いており、普通っぽくも中性的でどちらかと云えば女性よりな顔立ちで、見た目に細いからこんなに細身の筋肉質とは思いも寄らなかったリュー。

 

 ユートは高負荷トレーニングの後、低負荷トレーニングを行うのを常として、結果的に瞬発力の高い白筋でも持久力の高い赤筋でもない、どちらも兼ね備えたピンク筋というやつだ。

 

 聖闘士なれば余りに連続で高強度の動きを強要されるが故、ピンク筋肉の割合いが赤筋や白筋より多い。

 

 ユートは意図してこれを作る修業を取り入れた為、某・哲学する柔術家の如く全身がそれだったり。

 

 だから一見すると細身な優男――あの木場祐斗程にイケメンではないにせよ――に見えるユートだけど、実は筋骨隆々だという罠。

 

「楽しくないか?」

 

「いえ、恐らくは私が嘗て冒険者であった頃、仲間達や主神と共に在った時の様な気分の高揚を感じます」

 

「それは光栄だね」

 

 それは仲間と比べていると言われたのに等しいが、逆に考えればそんな仲間に互するとも言われたのだ。

 

 悪くはない。

 

「……貴方なら女性など、選び放題でしょうに何故……私にアプローチを?」

 

「君がアプローチを一時的にしろ受けてくれた理由、それを聞かせてくれるなら答えるよ? 序でにそんな憂いの顔をしている理由、それも教えて欲しいな」

 

「……まったく貴方は」

 

 驚きながら軽く瞑目し、だけど確りと頷いた。

 

 軽食店に入ると認識阻害の魔法をユートが仕掛け、それの確認をしたリューはポツポツと語り始める。

 

 正義と秩序を標榜して、壊滅した【眷属の物語(ファミリア・ミィス)】を。

 

 そして、唯一の生き残りがそれを善しとはせずに、愚かにも走った復讐劇を。

 

 数年前、このオラリオに正義と秩序を司る女神――アストレアがファミリアを結成していた。

 

 女神アストレアに賛同した団長や仲間達、其処には若いと云うかまだ幼さの残るリュー・リオンも居た。

 

 LV.4の第二級冒険者――【疾風】のリオン。

 

 その疾風の如く動きは、何者も捉える事が叶わない高速の戦闘を可能とする。

 

 誇りだった。

 

 不正を暴き悪を懲らしめ常に正しき義を以て動く。

 

 女神アストレアの名前の下に、アストレア・ファミリアは獅子奮迅の目覚ましい働きをしていたのだ。

 

 だが、栄枯盛衰は世の中の必定というもの。

 

 一五年前に最大派閥だった筈の【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】がオラリオから消えてしまった様に、敵対派閥からすればアストレア・ファミリアなぞ目の上の瘤でしかないのだから、悪と断じられた連中がやらかす事など決まりきっていた。

 

 連中はアストレア・ファミリアを誘き出し、彼らへ怪物進呈(パス・パレード)を敢行をしたのである。

 

 次々と倒れる仲間達に、遂には団長までもが。

 

 仲間は団長はリューだけでもと逃がしてくれた。

 

 仲間を喪ったリューは、アストレアに必死に頼み込んでオラリオから退避して貰い、奪われた者としての権利――復讐を開始する。

 

 怪物進呈を行った連中は言うに及ばず、それに乗った連中や支援者だけでは厭き足らないのだとばかりにちょっとした関係者やら、最早一般人でさえ連中との関わりが僅かにでも疑われれば斬り捨てた。

 

 復讐などとっくに超過をして、既に暴走でしかないリュー・リオンの所業に対しギルドは【疾風のリオン】をブラックリスト入り。

 

 賞金すら掛けられた。

 

 逐われる立場となって、流血に塗れたリューは街の裏角で倒れ、雨が降り頻る中でその生命を終えるのだろうと、既にナニモノも映さない視線で曇天をボーッと見つめるのみ。

 

 そんな時、アッシュブロンドの少女が手を差し伸べてくれたのだ。

 

 爾来、リューはその少女――シル・フローヴァには感謝の念が絶えず、しかもこんな自分を【豊穣の女主人】で雇って貰える様に、ミア・グランドに話を付けてすらくれた。

 

 正しく恩人である。

 

「……これが私の過去となります」

 

「……」

 

「どうですか? 軽蔑しましたか? 私のこの両手は大量の血で汚れている」

 

 憂いに充ちた表情に歪められつつ、何処か窺う様な瞳を向けてくるリュー。

 

「リュー」

 

 ビクッ! いつもならばこんな弱々しい部分を見せたりはしないが、今回ばかりは気に入った――気に入ってしまった相手に嫌われたかも知れないと思うと、思わず肩を震わせずに居られないリュー。

 

「第一に、僕も大概で血に塗れているんだがな」

 

「――え?」

 

「地上の愛と平和を護りしアテナの聖闘士、だが実質的にやっているのは敵対者たる人間の排除が基本だ。アテナと意見を違えた存在に仕える闘士を邪と断じ、実力行使で排除するからにはまず生き残らないしな」

 

 ハルケギニア時代の事、その他の事は解り難いだろうけど、この話はリューにも理解はし易い筈だ。

 

 アストレア・ファミリアがやってきた事にだいたいが通じるし、実際にリューは理解の色を示している。

 

「復讐だって虐げられた者の権利だ。まあ、殺って殺られて殺り返されてって、何処かで連鎖を断たなければキリが無いけど」

 

「ユート……さん……」

 

「第二に、僕は自分の視る目に自信があるし、リューが勝手に僕の目を見縊らないで欲しいね。確かに僕はリューの見た目で最初とかはアプローチしてきたよ。美しいエルフだ、男ならば惹かれても当然だろう? だけどね、美人がイコール人間(エルフ)性じゃない。よく云うだろう? 美しい薔薇には刺があるって」

 

 ユートは短い間でしかないが、リューの人となりはアプローチしながら観察をしていたし、周りの評判も確りと把握している。

 

 その上でアプローチを止めなかったのだ。

 

「第三に、女好きエロ野郎な僕だけど気に入らない女をデートに誘う程、酔狂な心算なんか無いんだよ」

 

 スッと手を握る。

 

「……あ、その……やはり行き成りは困る」

 

 だけど拒絶はしない……というより出来ない。

 

「貴方で三人目です」

 

「三人目?」

 

「私が他人との触れ合いに拒絶しなかったのは」

 

「光栄だけど、三人目か。初めてじゃないのは残念」

 

「あ、違う……男性は初めて……です……」

 

「というと?」

 

「最初の方も、二番目だったシルも同性ですよ」

 

「そっか、全体として見れば三番目だけど男としては初めてか」

 

 本当に嬉しそうにしているユートに、頬が熱く燃える様な感覚に囚われる。

 

「ちょっと嬉しいな」

 

「――あ」

 

 リューの腕を取って身体を軽く自分へ引き寄せて、背中に腕を回して固定をすると更に彼女の顔を自らへと近付け……

 

「うっ」

 

 もう少しで唇が重なるといった直前。

 

「チッ、あと少しでリューの唇を奪えたのに!」

 

 ユートはリューを手放して悪態を吐く。

 

「な、何が?」

 

 リューはユートの異変に訊ねるが、理由はすぐにも理解が出来た。

 

「キャァァァッ!」

 

「うわぁぁぁぁああっ!」

 

 人々の悲鳴が響く。

 

「どうやら何者かが街を騒がせているらしいね」

 

 特殊な影分身が還ってきた事で、周囲の状況を把握したユート。

 

「デートが台無しだっ! 誰か知らんが許さんぞ! リューは一般人の避難誘導に努めてくれ」

 

「ユートさんは?」

 

「原因を叩く!」

 

「わ、判りました」

 

 今のリューは冒険者としての全てをギルドから剥奪されており、力は在っても何もしなくても咎められる理由は無い。

 

「デートは楽しかったよ」

 

 踵を返すユート。

 

「ユートさん!」

 

 そんなユートを停めて、リューは爪先立ちになるとユートの頬へ唇を当てた。

 

「く、唇同士は恥ずかしいので……」

 

 そう言い捨てて自分自身が踵を返して駆ける。

 

 茫然となったユートではあるが、口角を吊り上げてやる気充填は一二〇パーセントだと謂わんばかりに、闘氣と魔力を漲ぎらせるのであった。

 

 

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 リューとデートをしてますが、特殊な影分身を使ってサーシャやリリやラブレスといった面々ともデートをしています。


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