ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

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第32話:魔導具談義は間違っているだろうか

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「やれやれ、これで全部が片付いたかな?」

 

「ユート君、お疲れ様……ロキ・ファミリアの皆さんもありがとうございます」

 

 漸く闊歩するモンスター総勢――九八体+αを討滅したユートと愉快な仲間達へと、ギルド職員を代表する形でハーフエルフでありユートとベルの担当官たるエイナ・チュールが頭を下げて礼を言ってきた。

 

 エイナの近くに立っていたピンク髪のギルド職員、ミーシャ・フロットも同じく頭を下げている。

 

 彼女はヒューマンだが、エイナにも負けず劣らずの美少女で、やはりカウンターを任されるだけあった。

 

 カウンターを任されるのは謂わばギルドの顔な為、基本的には見目麗しい女性やイケメンフェイスな男が担当をしている。

 

 少なくともギルド長をしているエルフなど、絶対にカウンターを任せられたりはしないであろう。

 

「冒険者の立場上、やるしかなかったってのもある。それにこれでも僕はアテナの聖闘士。アテナが守護する地上の愛と平和を護るのは当然の話だよ」

 

「は、はぁ……アテナの聖闘士ですか?」

 

 まあ、言っても意味など理解は出来まい。

 

 解るのは嘗て地球で実際に聖闘士を統括したアテナ――サーシャと、黄金聖闘士として聖域を守護していたユートだけ。

 

「ま、感謝してくれるならその内にデートでもしてくれりゃ良いさ」

 

「〜〜っ!?」

 

 エイナの脇を抜ける際、ポンと手を頭に置きながらエイナにだけ聴こえる声で呟くと、ボッ! 瞬間湯沸し器の如く真っ赤になって頭から湯気を出す。

 

 ハーフとはいえエルフ、エイナもリヴェリアやレフィーヤ達と同じく、ユートに森の如く安らぎを感じて好感が高いらしい。

 

 ユートを追い掛ける形でアイズ達も歩く。

 

 暫く歩くと、レフィーヤが丈の短いスカートを押さえているのに気付いた。

 

「ああ、【豊穣の女主人】で打ち上げっぽく食事でも……とか思ったんだけど、先にレフィーヤの為に店へ行かないとな」

 

「お店……ですか?」

 

「下着、買わないと」

 

「う゛!」

 

 必死でスカートが捲れない様に押さえていたのは、恐らく惰性だったのだろう……今更ながら顔を真っ赤にしてある事実に気付く。

 

「あの、ユートさん!」

 

「何だ?」

 

「若しかしてですけど……み、視ましたか?」

 

「うっすら亜麻色の毛に守られた筋、可愛かったよ」

 

「キャァァァァァァッ! 忘れて、忘れてくださぁぁぁぁぁぁぁぁい!」

 

 わたわたと慌ただしく、レフィーヤは涙目になりながら訴えたものだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「うう、もうお嫁には行けません……」

 

 バッチリ視られていたと理解してか、レフィーヤは【豊穣の女主人】に着いてからもシクシクと泣く。

 

 バッと顔を上げると……

 

「ユートさん、責任を取って下さい!」

 

 行き成り責任を追及してきたレフィーヤ。

 

 ウルウルと涙を溜めて、口もへの字に曲げながら見つめてくるけど、ユートは答えは決まっていた。

 

「アテナ・ファミリアへと改宗するのなら、沢山居る中の一人的に責任を取って面倒を見ても構わないよ」

 

 それは酷く最低な答えであったと云う。

 

「な、何なんですかそれはぁぁぁぁっ!」

 

「いや、だってな? 僕が異世界から来たのは話したけど、ならその異世界には付き合いのある女の子が居ると思わないか?」

 

「そ、それは……」

 

 レフィーヤが口篭った。

 

「居るの?」

 

「い、るの?」

 

 そしてティオナとアイズが食い付いてくる。

 

「数えてないから詳しくは知らないが、千人規模にはなるんじゃないかな?」

 

「「「「っ!?」」」」

 

 余りな言葉にフィンに恋する乙女以外の、何故だかウエイトレスのエルフまでが驚愕して戦慄を覚えた。

 

「むむ、どんな子だよぉ」

 

 ティオナはスキル実験の為とはいえ、その身体を許した関係からやはり其処は訊きたい処。

 

 それはデートをしていたエルフのウエイトレスとて同様なのか、気配を消して怖い顔で長い耳にて聞き耳を立てている。

 

「千人以上、全て言えと? 何日掛ける気だよ」

 

「んじゃ、何人か」

 

 絞れという。

 

「ハァ……僕の生家で居候をしている中にその何人かが居るよ」

 

「一緒に暮らしてたっていう事かな?」

 

「ああ。血筋的に同じになる柾木・阿重霞・樹雷」

 

「マサキ……」

 

 呟くアイズ。

 

 ユートが名乗るファミリーネームと同じ。

 

 敢えて言わなかったが、阿重霞はユートにとっては血脈的に大叔母だ。

 

 そして同じく大叔母。

 

「阿重霞の妹、柾木・砂沙美・樹雷」

 

「うぇ? 姉妹でって?」

 

 姉妹共々、『戴きます』的な間柄ともなれば姉を持つティオナが反応した。

 

 尚、ティオネはリアクションが無い。

 

 原典では色々とやらかしている阿重霞ではあるが、見た目は好みから外れていなかったし、大抵が魎呼との絡みによるものだった。

 

 取り敢えず、天地に想いを抱く前にユートは阿重霞を『戴きます』しており、美味しく喰っている。

 

 砂沙美は流石に生理年齢が低いので、高校生になるまでは直に接触は余りしていなかったが、それでも唇は割と早めに奪っていた。

 

 おませな砂沙美にはそれでも充分だったらしくて、天地よりもユートへと心を許していたもの。

 

「とはいえ、名前だけ聞かされてもよく解らないだろうからね」

 

 アイテムストレージから写真を取り出し、テーブルに滑らせる様に投げた。

 

 大きな集合写真であり、其処に写るのは柾木家全体で撮ったもの。

 

 真ん中に冴えない男性と頭に被り物をした美女。

 

 一番後ろには巨大な女性の姿が在り、すぐ前に黒髪と緑髪の女性が居てその間にユートが立っている。

 

 また、ユートの前に笑顔を浮かべる水色の髪の毛をツインテールにした少女、横には赤毛が蟹みたいな型の少女、さらに隣端に白っぽい青み掛かった長い髪の毛に長い耳の女性、そのすぐ前には短い翠髪の女性と黒髪の青年、主役っぽい冴えない男性の隣に銀髪を纏めた女性、更に隣に老人、銀髪女性の後ろには金髪でティオナみたいな茶褐色の肌の女性、その隣に内ハネした黒髪の女性。

 

「これは?」

 

 ティオネが興味を示す。

 

「写真。現風景を記録出来る物で撮影したものだよ」

 

「へぇ?」

 

「で、この子が阿重霞だ。んで……僕の前に居る子が砂沙美だね」

 

「小さくない?」

 

 阿重霞はティオナよりも歳上っぽいが、砂沙美だと明らかに子供である。

 

「可成り前の写真だしね。これ、父さんが玲亜さんと再婚した時に撮ったんだ」

 

 原典第三期、砂沙美の後ろにユートが居るだけで、後は原典と変わらない風景を思い浮かべると良い。

 

「因みに、この内ハネした髪の毛の人もそうだよ? 名前は柾木水穂」

 

「全員、マサキじゃん!」

 

「血筋的には親族だから」

 

 但し、水穂は母親の姉だから完全に三親等の伯母、少なくとも日本の法律では結ばれない相手だ。

 

 言わなかっただけだが、実は銀髪の女性もそういう関係である。

 

 柾木天女。

 

 地球なら老婆ともいえる年齢の女性であら、ユートと天地にとっては血の繋がった実姉だったり。

 

 阿重霞や砂沙美や水穂と仲好くしていて、自分だけ仲間外れなのが余程悔しかったのか、何よりも天地の婚約者として神木・ノイケ・樹雷を、更に何の因果かユートにも婚約者を連れて行かねばならない事から、フラストレーション大爆発してしまい、寝室に押し掛けて来たのが切っ掛け。

 

 ユートは基本的に裸で寝るから、押し掛けた天女の方が真っ赤になって停止、眠りを妨げられたユートが寝惚け眼で天女を抱いた。

 

 ん十年を独身だったらしい天女、翌朝になってみれば布団に赤い染みと裸体の天女の姿に、ヤっちまったと頭を抱えてしまう。

 

「それでこれが今の砂沙美だね」

 

 もう一枚を取り出して、それをテーブルに置く。

 

「っ!? 何、このスッゴい美人は!」

 

 津名魅と完全に融合した姿は、当然ながら砂沙美の未来の姿だっただけに今は津名魅と全く同じ顔形で、スタイルも可成り良い。

 

 そんな砂沙美の今現在を見て、ティオナは驚愕から叫んでしまったし、アイズもレフィーヤも目を見開いてしまう。

 

 二人とて、ティオナとかエルフのウエイトレスも、美人なのは変わらないのだろうが、砂沙美は一線を画するくらいの美女であり、まるでそれは……

 

「女神様みたい」

 

 アイズの言う通り完成度は正に女神。

 

 原典で初めて津名魅の姿が=未来の砂沙美だと知ってしまい、阿重霞と魎呼が大慌てしたのも無理からぬ超が付く美女に成長した。

 

 まあ、実母の美砂樹とて同じくらいの美人な訳で、正に母親の遺伝子万歳だ。

 

「そっちの三……四人とは違ってティオネは興味も無さそうだね」

 

「アンタの色恋沙汰なんて聞かされても……ねぇ」

 

 ティオネが愛しているのはロキ・ファミリアに於けるトップ、小人族フィン・ディムナ団長である。

 

「……その様子じゃ脈は全く無しかな?」

 

「当たり前……というか、アンタは千人規模で女を囲っていながら、まだ欲しいとか思ってるのかしら?」

 

「ヒトの欲望に際限なんて無いよ。何より僕は性欲が限り無いからね、何千人居ても全く足りないな」

 

「アンタって……けど納得はしたかな?」

 

「納得?」

 

「ティオナが言ってたわ、一晩で二〇発とか……」

 

 正確には二〇発以上。

 

 普通の男なら五回も出せば打ち止め、量だって限り無く少なくなるものだし、六回目なんて余程でもなければ不可能だ。

 

 寧ろ搾り尽くされ木乃伊となりかねない。

 

 それが四倍を越え二〇発以上とか、どんな冗談みたいな性欲かと。

 

「私の興味は寧ろあの鎧、いつの間にか脱いじゃってるけど、あの白亜の鎧には興味津々ね」

 

「流石はアマゾネスか」

 

 性欲関連を除けば戦力、正に彼女はアマゾネス。

 

 ティオナもアマゾネスの本能が目覚めたらしくて、戦闘に関してにのみならず性関係も興味津々。

 

 正しくこれがアマゾネスだと謂わんばかり。

 

「あの鎧は異世界で手に入れた特殊なアイテムだよ」

 

「アイテム?」

 

神器(セイクリッド・ギア)と呼ばれ、それを宿せば神器毎に特殊な能力を手に入れられる」

 

「例えば?」

 

「【聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)】、聖なる波動を持つ様々な属性の剣を造り出す神器」

 

 結構レア物な神器だが、ユートも【禍の団】と闘っていた最中、敵から奪って手に入れている。

 

「【魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)】、様々な能力の魔獣を造り出せる先の【聖剣創造】と同じく創造系の神器」

 

 まだ少年のレオナルドから奪い取った神器であり、上位神滅具(ハイ・ロンギヌス)と呼んでいる。

 

「それに僕が使っていた、【白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)】だと、触れた相手に対して十秒毎に力を半減させる」

 

 千の力を持っていても、十秒で五百、二十秒で二百五十と激減させてしまう。

 

 他にも空間圧縮によってあらゆるモノを半分にしてみたり、反射で敵の攻撃を跳ね返したりも可能。

 

「あの白亜の鎧の名前が、ディバイン・ディバイディングって訳ね?」

 

「正確にはその禁手(バランスブレイカー)と呼ばれる現象、【白龍皇の鎧】が僕の纏っていた鎧だよ」

 

「ディバイン・ディバイディング・スケイルメイル? 長い名前ね。それにバランスブレイカーって?」

 

「神器の裏技的なパワーアップ法。使い手が流れにすら逆らう某かに至る時に、神器が強大な力を発露するのが禁じ手――禁手と呼ばれる現象が起きるんだよ」

 

 そこら辺の何でも無い様な下級神器なら未だしも、神滅具クラスになると手が付けられない。

 

「じゃあ、あの鎧と同じ物は無いのか……在ったんなら買うのもアリだけど」

 

 ティオネの呟きに反応をしたのはアイズ。

 

「ふむ、アルビオン!」

 

 バッ!

 

 ユートがおもむろに立ち上がり叫んだかと思うと、背中に白い骨組みに青い光の翼が生えた。

 

「これが【白龍皇の光翼】の通常モード」

 

 但し、普段はブレイバックルを使って最初から禁手で運用をしている。

 

「ミアさんに睨まれても困るから、流石に禁手化とか出来ないけど……見ているから解るよね?」

 

「まあね」

 

 禁手化した【白龍皇の鎧】は戦闘で見せた。

 

 わざわざ食事処でやる様な事でもあるまい。

 

「取り敢えず、情報は教えたんだ。対価に酒くらいは奢って貰いたいね」

 

「それくらいなら構わないわよ。ウエイトレスさん、上等なお酒を頂戴」

 

「了解……」

 

 デートはしたが、モンスターが現れたから一仕事をした後、リューは此方に帰って来てウエイトレスとしての仕事に戻っていたが、ユートが女の子とワイワイしているのはちょっと納得がいかないらしい。

 

 とはいえ、今はウエイトレスなのだから仕事をするしかなかった。

 

「お待ちどう」

 

 ミア母さんから渡されたのは、この店でも最高級品の酒であった。

 

「ほら、私が御酌して上げるんだから喜びなさいな」

 

「そりゃ光栄だね」

 

 ティオネの御酌を受けられる男なぞ、通常であればフィンくらいだろうから。

 

 彼女は妹の絶壁と違い、中々のモノを持っている上に基本的には薄着、だから目の保養にはもってこい。

 

 美女だから余計にだ。

 

 ユートもティオネの想いがフィンに向いてないなら口説いたが、片思いらしいとはいえ好きな相手が居るなら仕方ないと考えた。

 

 まあ、胸はロキ並に無いけど妹のティオナとは閨を共にしてるし、それで構わないとも思っている。

 

「あんな鎧みたいなのって他には無いの?」

 

 ティオナが、御酌をしながら更に情報を得るべく話しかけてきた。

 

 酔えないが美女の御酌は心地好いし、ユートもお酒と御酌の分くらいは情報を開示しても良いかと考え、クイッとグラスを煽ってから口を開く。

 

 因みに、空になっているグラスにはティオネが再び酒で満たしていた。

 

「無い事はないな」

 

「へぇ? それもセイクリッド・ギアってやつ?」

 

「いや、此方は僕が造り出した魔導具(マジックアイテム)の類いだよ」

 

「なら私達にも扱えるという事よね?」

 

「この地の冒険者には余り勧めないけどな」

 

「あら、どうして?」

 

 再びグラスを煽りつつ、その答えを口にする。

 

「僕の考えでは弱い者が、強い相手に挑めばそれだけ基本アビリティが増える。増え易い傾向にある」

 

「……そうね」

 

「なら、強い力を与えてくれるアイテムに頼り過ぎてしまうと、経験値(エクセリア)の取得が遠ざかり、基本アビリティの伸びだって悪くならないか?」

 

「確かに有り得るわね」

 

 だからこそユートはベルのステイタス更新に待ったを掛け、ある程度は伸ばさない状態で強敵と戦わせ、一気に基本アビリティを伸ばす修業をさせていた。

 

 ユートの識らない原典、あれの基本アビリティより恐らく、今のベルは少しだけど高いのであろう。

 

 シルバーバックも割かし簡単に斃せたし。

 

「これ」

 

 そう言ってテーブルへと置いたのは、白銀に輝いた腕輪であった。

 

 但し、聖衣石ではない。

 

 腕輪のデザインや填まる宝石も異なる代物。

 

「僕が偶に造るモノだよ」

 

「これが?」

 

 ティオネが興味深い顔で見ているが、写真を観賞していた三人も魔導具に興味を持って見つめ始めた。

 

「元々はゴーレム召喚器の派生系アイテムだ」

 

「ゴーレムって、石人形のモンスター?」

 

「いや、モンスターとは違う代物だな」

 

 取り出したのはコイン。

 

「ヴァリス金貨じゃあないわね、これは」

 

「それがゴーレム召喚器。魔力を籠めて名前を呼べば自律稼働のゴーレムが召喚され、召喚者の命令に従って戦ってくれる」

 

 ゲシュペンストMk-III、ヴァイスリッター・アーベント、ソウルゲインを召喚が可能な召喚器のコイン。

 

 その気になったらウダイオスやバロールといった、高レベルな階層主とさえも戦える戦力となる。

 

「そしてこの腕輪はそんなゴーレムを着込むタイプ、鎧として扱えるモノだね」

 

「成程……」

 

 実は鎧だけを自律稼働するゴーレムとして召喚とかも可能であり、単純な戦力の増加にも使える物だ。

 

「この腕輪は最近になって造った物だな。召喚されるのは風の魔神シュロウガ」

 

「風?」

 

 エアリエルを扱うアイズがピクリと反応した。

 

 スーパーロボット大戦Zな世界で現れた漆黒の魔神――シュロウガ。

 

 闇堕ちしたサイバスターみたいな機体で、ユート的にはグッとくるデザインでもあったし、シュロウガを基に造った鎧である。

 

 他にもエルドランシリーズの鎧もあり、ユートは剣だけ槍だけで召喚して技を繰り出す事もあった。

 

 自律稼働ゴーレムとして召喚した機体と合体とか、そんな芸当も可能である。

 

「売るとしたら幾ら?」

 

「数打ちの量産型なら安いけど、シュロウガ級となれば可成り高値になるかな」

 

「そうでしょうね」

 

「一億ヴァリス。シュロウガの最低限の売値だよ」

 

「本当に安くはないわね」

 

 思わず呆れる値段。

 

 少なくとも個人で購入をするには色々と難しい。

 

 まあ、造ろうと思ったら再建が可能なものであり、そもそもこれ以上の高値では買えない事を鑑みれば、これが妥当な値段設定である筈と考えての事。

 

「どんな感じなのかしら」

 

「あ、それは私も気になるかな〜」

 

「コクコク」

 

「わ、私も……」

 

 ティオネに追従する形でティオナが言い、アイズは無言だが首を縦に振って、レフィーヤも遠慮がちながら軽く手を挙げた。

 

「けど、まさかこの店ん中で展開は出来ないぞ」

 

 間違いなくミア・グランドに叱られてしまう。

 

「じゃあ、食べたらちょっとダンジョンにでも行ってみましょうか」

 

「……ま、良いけど」

 

 他も特に異論は無いらしく首肯している。

 

「リュー?」

 

 何だか凄い勢いで睨まれている気がするのだけど、間違っているだろうか?

 

「くっ!」

 

 そして何だか悔しそう。

 

「どうしたんだ?」

 

「い、いえ……別に……」

 

「今日、休みだったんじゃなかったか? 何で戻ったら仕事をやってる?」

 

「先の騒ぎで祭も終了したからか、お客でごった返していたので自主的に」

 

「それは、また」

 

 御苦労様な話である。

 

「リュー、もう上がんな」

 

「え? ミア母さん?」

 

「アンタは今日、休みだったんだから。もう充分さ」

 

「けど……」

 

「気になるんだろ? そんな気もそぞろじゃあ邪魔にしかならないよ」

 

 口は悪いがリューを思っての科白、それが理解出来たからだろう……

 

「ありがとうございます」

 

 リューは頭を下げた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 バベルからダンジョン内に入ったユート、リュー、アイズ、ティオナ、レフィーヤ、ティオネの六人。

 

 フィリア祭だったからか普段は冒険者でごった返す入口も、まばらな感じでしか居なかった。

 

「じゃあ、始めるか」

 

 ユートは腕輪を右手首に装着すると……

 

「来よ、漆黒の暴風っ! シュロウガ!」

 

 二つ名に相応しい黒い風が逆巻き、それがユートに重なって一秒……

 

「フッ!」

 

 正に漆黒と呼べる装甲を持つ魔神と成っていた。

 

「何ていうか……」

 

「禍々しい」

 

 ティオネとリューの感想は仕方がない。

 

 漆黒だし鋭角的な装甲にギラつく緋の眼、どう見ても悪者な姿でしかなかったのだから。

 

「まあ、殆んど敵対していた奴の愛機だからね」

 

 シュロウガを駆るのは、アサキム・ドーウィン。

 

 パイロットを喪っていたシュロウガが、嘗ての操者を思わせる形で再現したという存在で、殺される度に直前までの記憶をインストールされて投影される為、自らを不死身だと勘違いしていた哀しい人形。

 

 大罪なんてアサキム・ドーウィン本人には在りもしないし、還れる場所なんて存在していなかった。

 

「それじゃ、ゴブリンとか少し虐めてから解散しようかな?」

 

 その後、再湧出(リポップ)するまで第一層に於けるモンスターが、一時的に全滅したのは余談である。

 

 

.




 ユートは悪っぽい禍々しいデザインが好みです。


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