ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】 作:月乃杜
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ヘスティア&アテナ&ミアハ・ファミリア同盟の本拠地。
本来は廃教会の地下に在る一室に過ぎなかったが、ユートによる魔改造というか魔改装で地下には広大な基地が広がっていた。
しかも空間圧縮技術などもふんだんに使われているが故に、オラリオ迷宮都市の地表面積と同じレベルで拡がっており、たった二つのファミリアの基地に使うには広過ぎる。
最大のファミリアであるロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアの本拠地、それすら遥かに凌駕するであろう広大さであった。
そんな本拠地内の一室、其処はアテナ――サーシャの住まう部屋。
サーシャの部屋には三人といおうか、一人と二柱が居てベッドに座っている。
二柱は女神で一人は男、だからといって3Pとかをして楽しんでいる訳では決してなく、だけど男は服を脱いで上半身が裸だ。
勿論、パンツは疎かズボンだって穿いている。
男は背中を二柱に見せた状態でベッドの端に座り、女神の二柱はそんな男の後ろで背中を見ていた。
「やっと、やっと私のファミリアを発足出来る」
「じゃあ、始めようか? サーシャ」
「うん、お願いヘス」
男の背中には焔を象った紋様や神聖文字が描かれ、それは意味を持ったモノとして成立していた。
「良いね、ユート君」
「ああ、ヘスティア。改宗……やってくれ」
男――ユートの背中へと刻まれた【神の恩恵】を、主神たるヘスティアが一旦無効にして……
「よし、サーシャ。今度は君の番だよ」
サーシャが再び有効化。
「
背中の神聖文字は変化をしないが、紋様が変わっていてそれが改宗をした証明となっていた。
まあ、アッサリとしているものではある。
「じゃ早速、ステイタスの更新もしちゃおうね」
「はうう……」
「どうしたの、ヘス?」
「うん……結局ユート君のステイタスをボクは一回もしなかったなってさ」
「アハハ……」
へちゃ顔なヘスティア、そんな彼女の言い分に苦笑いなサーシャ。
そう……結局はユートのステイタスは更新されない侭で改宗が行われた。
そもそも、随時の更新が不要なレベルでユートは強かったから。
LV.は間違いなく1でしかないが、その実力自体は素の身体能力でLV.5に匹敵しており、更に戦闘の技術は千年以上仕込み。
故に高がモンスター風情に後れは取らず、ステイタスの更新はしなかった。
血を、神の血を流しつつ背中のステイタスから経験値を元に更新していく。
「ふあ!?」
「ウソ……」
アテナとヘスティアが驚きに目を見開いた。
「どうしたんだサーシャ、ヘスティア?」
「「LV.2、キタァァァァァァァッ!」」
絶叫する駄女神に対し、ユートは耳を塞いだ。
柾木優斗
種族:カンピオーネ
所属:アテナ・ファミリア
LV.1
力:SS1080
耐久:A820
器用:S962
俊敏:SS1090
魔力:SS1012
《魔法》
【精霊干渉】──精霊との交信で魔術を発生させる。詠唱は魔術により区々で、水火風地>雷氷光闇影樹となっている。
【黒魔術】──異世界に住まう魔の眷属の存在力へと干渉して力と成す。
【神威魔術】──この世界の神々との交流によって、存在力へと干渉をする事が可能。それを魔術に変換をする事が出来る。
《スキル》
【
・発現者が男の場合だと女性との情交を一回で基本アビリティに十前後上昇。
・同時に絶頂を迎えれば効果は倍増。
・絆が深まればボーナスがプラス。
【
・権能を扱う事が出来る。
【
・施術者の識る聖剣の機能を武器へと附与。
・武器でさえあるなら種類は問わない。
・附与時間は六十分で恒常附与の為には宝石を媒介とする。
「っていうか、何かなこの異常な数値は……」
「SSっていったい」
サーシャ自身はファミリアを持った事は無いけど、ヘファイストスの所に居てその眷属がステイタス数値に一喜一憂しているのを見てきており、其処から類推する事も出来た。
そもそも、基本アビリティの数値は評価Sの999がカンストなのに、千を越えている評価SSをユートは記録していた。
「ヘファから教えて貰っていたけど、どんなに頑張っても基本アビリティはSが最大だって話なのに……」
「うん。しかもベル君みたいなスキルも無いのに」
「兎に角、羊皮紙に共通語で写しておこうか」
ステイタスをコピーした羊皮紙、それを渡すと手にしたユートが読み始める。
「へぇ、初めての更新だったけど僅か一ヶ月でこんな上がるもんか?」
「上がらないよ! っていうか、ボクの時と対応が違わないかい?」
「共通語は覚えたからね」
「はやっ!」
「今は神聖文字を習得中」
意外と勤勉でヘスティアは吃驚だ。
「でも、有り得なくはないのかな?」
「サーシャ、それはいったいどういう事だい?」
「ユートはね、何回か転生をしているの。しかも記憶保持者だから魂の格も格段に上がってる。【神の恩恵】の正体は眷属の肉体を、徐々に神に等しいレベルに昇華させる補助具だよね? 魂の格が上がればそれだけ原始的な存在へと還る。成長も早まるんだよ」
「転生したから……か」
その理屈はヘスティアも理解が出来る。
「さて、それじゃあランクアップもしちゃうね」
再び神血を以てステイタスへと干渉した。
「(あれ? これは)」
どうやら何かしらが埋まっていたから、サーシャはそれを引っ張り出す。
それは化石の発掘をする作業にも似ていた。
柾木優斗
種族:カンピオーネ
所属:アテナ・ファミリア
職業:聖闘士
LV.2
力:I0
耐久:I0
器用:I0
俊敏:I0
魔力:I0
《魔法》
【精霊干渉】──精霊との交信で魔術を発生させる。詠唱は魔術により区々で、水火風地>雷氷光闇影樹となっている。
【黒魔術】──異世界に住まう魔の眷属の存在力へと干渉して力と成す。
【神威魔術】──この世界の神々との交流によって、存在力へと干渉をする事が可能。それを魔術に変換をする事が出来る。
《スキル》
【
・発現者が男の場合だと女性との情交を一回で基本アビリティに十前後上昇。
・同時に絶頂を迎えれば効果は倍増。
・絆が深まればボーナスがプラス。
【
・権能を扱う事が出来る。
【
・施術者の識る聖剣の機能を武器へと附与。
・武器でさえあるなら種類は問わない。
・附与時間は六十分で恒常附与の為には宝石を媒介とする。
【
・早熟する
・聖闘士である限り効果は持続する
・アテナとの絆により効果向上し、経験値に無条件の加算が行われる
サーシャは新しいスキルを見て真っ赤になる。
「わわ、私とのって……」
言うなればユートはこの世界で唯一アテナの聖闘士であり、サーシャにとっては心の拠り所でもあった。
そんなユートが自分との絆をと考えれば、まだまだ乙女なサーシャからすれば赤面しても仕方がない。
まあ、天界で億年も在り続けて処女を拗らせている処女神なのだが……
職業が聖闘士となったのもサーシャの影響か?
「えっと、それから発展アビリティが複数出てるんだけど、どれにする?」
「発展アビリティか……」
他とは違って説明が無いのが難点だが、使われ続けたものは大概に効果が判明している。
「出てるのは……【狩人】と【耐異常】と【剣士】と【鍛冶】と【調合】と【神秘】って、多いね……それに【反英雄】?」
「【反英雄】? そんなのが出てるのか」
「うん、効果は判らない。ヘファん所で色々と勉強をしてたから、だいたいのは識っているんだけどね? 多分、これはレアだから」
「レアアビリティ……ね」
SAO時代を思い出す。
ユートもレアスキルとか騒がれたものだ。
寧ろあれはレアスキルというより、ユニークスキルだった訳だが……
「だけど、何でユートに付いたのが【反英雄】だったのかな? 聖闘士となって人々を……地上の愛と平和をずっと護ってきたんだから【英雄】とかなら判るんだけどなぁ」
ボヤくサーシャだけど、ユートには心当たりがあったから受け容れていた。
ユートは悪党は嫌いだったけど、悪役は割と好きな方だったから。
寧ろ、正義には反吐が出るとまで言わないのだが、余り好きにはなれない。
だから他の聖闘士ならば『愛と正義を護る』と言うのを、『愛と平和を護る』と言っているくらいだ。
何より、ナギからセカンド呼ばわりされても迷惑に感じていたユートなのに、マスターテリオンからなら受け容れた程だ。
二代目マスターテリオンと名乗る事もある。
英雄に退治される側として有名なのが反英雄。
退治された事は無くともユートはやはり反英雄とも云えたし、この発展アビリティにも納得なのだ。
「で、どうする? 【狩人】ってLV.2に上がる時にしか出ないし」
「効果は?」
「一度でも戦ったモンスターの同種相手に、基本アビリティにボーナスが付く」
「在れば便利だろうけど、必要って程でもないな」
「【耐異常】とか?」
「もっと要らない。基本的に僕は異常耐性が強い」
というか、毒なんて完全に無効化が出来るのに態々【耐異常】は必要無い。
「【調合】や【鍛冶】や【神秘】は?」
「サーシャ、【反英雄】で頼む。これも多分なんだが今回限りだろう。他ならばまた出るだろうけどね」
「うう、敢えて避けていたのに……」
逆らう気も起きなかったのか、サーシャはちょっと辿々しい感じで発展アビリティを有効化した。
「へぇ……」
「どうしたんだい?」
感心するユートに訊ねたのはヘスティア。
「いや、発展アビリティを有効化されたら途端に理解が出来た」
「「へ?」」
恐らくカンピオーネとしての理解力だろう。
自身の力を何と無くだが本能で理解する。
カンピオーネとは多分に直感的な処が多々見受けられるし、サルバトーレ・ドニなど直感の申し子みたいな存在は『何と無く』で全てを解決してたくらいだ。
「【反英雄】は基本アビリティに数値化されない+αを与える。更に【英雄】と認められる敵と相対したら更に+α、相手が【反英雄】の場合は【英雄】だった場合の半分が+αされる。また、人類を脅かすモノを相手にしたら【英雄】の倍の数値を+αされるのと、こりゃ【狩人】と【耐異常】がセットになってるな」
「「どんなチート!?」」
サーシャもヘスティアも効果に驚く。
「恐らく【英雄】の発展アビリティも在って、やっぱり【狩人】と【耐異常】がセットで、敵対者であった場合意外は反対のアビリティなんだろうね」
だから【反英雄】。
「+αって?」
「評価で数値が変わるんだろうけど、仮に【英雄】に対して数値が五〇上がるとしたら、【反英雄】に対しては二五のプラスだろう。敵対者には一〇〇かな?」
実際の数値は判らない、だけどユートのカンピオーネとしての直感が、正しくそう感じているのだ。
まあ、別に【耐異常】は死にアビリティだろうが、【狩人】は使えなくもないからラッキーであろう。
しかも、ユートは基本的に獲た能力を魂に刻み込むから、元の世界に還ったとしてサーシャが居なくなっても――連れ帰る気だが――恩恵は消えない。
恐らくユートに慣らされて染み込み、完全に一体化してしまう筈である。
「にしても【反英雄】か、クックッ……神殺しの魔王にはお似合いだよね」
転生の影響だろうか? 昔なら僅かでも神氣を感じれば身体が戦闘体勢を取っていたが、今はすぐ近くにサーシャやヘスティアが居ても問題が無いし、神々もユートに敵意を持たない。
「けど、ランクアップか。何でユート君がランクアップしたんだろうね?」
「さあ? ヘスが知らないなら私にはもっと判らないから……」
二人の疑問。
「「何で?」」
二人の質問。
なんちゃらプリ――?
「遍ねく疑問に祝福を……じゃなく、多分だが五〇層まで階層主を殺しながら進んだのが偉業と見なされたんじゃないか?」
数値は今回の更新で足りた訳だろうし。
「なっ!? 階層主を?」
ヘスティアは驚愕して、おっぱいを揺らした。
「階層主とか云われても、『叩いて砕け』は死神百足より弱かったしな……」
ザ・スカルリーパーの事を言っている。
「「叩いて砕け?」」
「知ってる娘が『叩いて砕けゴライアス』とか言ってゴーレムを創成するから、ゴライアスと聞くとどうもそっちを想像してさ」
コロナ・ティミルは泣いても良い。
「じゃあ、僕は行くよ」
「あ、うん。怪物祭も終わった事だし、また暫く普通に冒険なのかな?」
「さて……ね」
手をヒラヒラさせながらサーシャの部屋を辞する。
少なくとも、ヘスティア・ファミリアの団長であるベルと一緒に動くとなれば流石に深層へ行けないし、だからといって最初みたくソロはちょっと退屈だ。
果たしてどうするか? ソコはまだ決めていない。
「あ、ユート……」
「ナァーザか」
ミアハ・ファミリアに於ける団長だ。
何処と無く挙動不審なのはユートに対する苦手意識からか、けど逃げるで無し真っ直ぐ相対している。
モンスター程のトラウマを植え付けて無いらしい。
まあ、何度かダンジョンへ一緒に潜っている訳で、少しはナァーザも慣れてきたのだろう。
「そういえば、まだ武器を与えてなかったか」
「渡された弓だけで充分」
「上層ならな」
「? 中層をメインに?」
今でも中層まで進出をしてはいるが、飽く迄も上層の序でレベルだ。
それにユートが付いてのパーティだから。
ユートとベルとヴェルフとリリとナァーザとラブレスという、六人のパーティで挑むダンジョンは割と上手く機能している。
まあ、長めのブランクがあるLV2が一人、ユートを含む残り全員LV.1、ユートは素でならLV.5相当で、恩恵のお陰で実はLV.6にまで実力がある訳ではあるが、ユートが抜ければ間違いなく中層には早いパーティだろう。
いざとなればユートが助けつつ、強いモンスターと戦わせて早期に基本アビリティを伸ばす方針だから、わざわざ中層まで降りての探索をしている。
「ナァーザの弓って普通のとボーガンと、どっちが好みになる?」
「どちらでも。リリルカがボーガンタイプだったし、私は通常タイプで良いかも知れない」
「そうか。シュトルムカイザーとか良いかもな」
颶風弓か
「そういえばまだ手を出さないけど、契約条項に載せていた筈……」
眠たそうな瞳ながらも、ナァーザの頬は若干赤く染まっている。
「それはその内に愉しませて貰うよ。今は取り敢えず仕事に精を出してくれ」
「……ん」
「仕事と云えば【青の薬舖】はどうだ?」
「最近は順調……かも」
客足がそれなりになっていたからだ。
「口コミ作戦は成功か」
「口コミ?」
「ああ、ピンチのパーティにポーションを使って宣伝をしているだろ?」
「あれの効果か……」
「後は何か目玉商品でも有ればもっと客足が伸びる……と思うんだがね」
「目玉商品……」
一応、考えてはいる。
デュアルポーション。
それは謂わば、HP回復ポーションとMP回復マジックポーション、この効果を同時に顕せるポーションの事だった。
まだ素材が足りないが、完成まで後少し。
「取り敢えず、これを置いてみるか?」
見せたのは翠色の液体が入った試験管。
「これは?」
「スピードスター」
「スピードスター?」
ユラユラと揺らしながら答えると、中身もユラユラと揺れる液体。
「飲むと俊敏の基本アビリティが一時的、凡そ数分間だけど倍加される薬だよ」
「――なっ!?」
余りの効果に開いた口が塞がらない。
他にも基本アビリティを一時的に上げる【スター】と名の付く薬は有るけど、取り敢えずは俊敏を上げる薬を出してみた。
数分間のみの倍加とはいえ便利な薬だ。
「ちゃんとレシピさえ有れば君でも作れる」
素材はこの世界で採取をした物ばかり。
「これを【青の薬舖】に置くの?」
「嫌ならそれでも構わないんだけど?」
「いえ、是非!」
確かに使えるアイテム、置かない理由が無い。
SAOに存在した結晶アイテムも幾つか作ったが、【青の薬舖】は薬屋さんだから置くのもどうかと思って出していない。
ユートは、自重をしないと割かしとんでもない事を仕出かす。
「じゃあ、商品用の【スピードスター】とレシピ……後で部屋に持っていくよ」
「ん、待ってる」
ナァーザと別れたユートは本拠地を離れ、ヘファイストス・ファミリアの方へと向かった。
ファミリアの本拠地……其処には右目に黒い眼帯をした女神――ヘファイストス本神が立っている。
恐らくはあの眼帯の下はアレなんだろうが、ユートからすれば美しい女神だという判断だ。
「待っていたのか」
「フフ、まあね」
ヴェルフ・クロッゾにも用事があるが、ヘファイストスにも用はあった。
「これが注文の品だ」
出したのは黒いインゴット――
それがトランクに詰められて五〇本、ヘファイストスからの注文だった。
「フフフ、確かに。これが代金よ」
一本が五〇万ヴァリス、これが五〇本も詰まっているから、二五〇〇〇〇〇〇ヴァリスとなる。
すぐに仕舞うユート。
ウィンドウには、間違いなく二千五百万ヴァリスが加算されている。
「ヴェルフから聞いていたけど便利なものね」
数えずとも仕舞えば幾ら増えたか表示されるから、確かに便利な能力だった。
「欲しいなら最低限の機能で百万ヴァリス。フルスペックで十億ヴァリスだよ」
「微妙に払えなくもない額……なのよね、ウチなら」
最大手となる鍛冶ファミリアであり、それこそ何億もの武具を売っている。
売り上げと製造コスト、鑑みればそれでも大金が動くファミリアだけに、十億ヴァリスなら支払えてしまうのがヘファイストス。
当たり前だが本人が稼いだ個人のお金で……だ。
「でも、探索をしない私が持ってどうするって感じ。そういえばヴェルフ自身は持ってるのかしら?」
「持ってるよ。機能的にはアイテムストレージの中に二〇種類を九個ずつ格納が出来る一千万ヴァリスの」
「よく買えたわね」
驚くヘファイストス。
「借金ですがね」
すると背後から声が……
「ヴェルフ! 借金って、貴方……一千万ヴァリスも借金をしたの?」
「ええ、お陰で暫くはベル達の防具を無料提供です」
言いながら空中に顕れたコンソールを操作、アイテムストレージから箱を出してユートに差し出す。
「注文されてたベルとラブレスの防具だ」
ユートが二つの箱の蓋を開け、中身を確認して頷きながら再び蓋を閉める。
「確かに受け取ったよ」
良い出来。
間違いなく数万ヴァリスの価値がある。
ラブレスもレオタード姿であり、防具らしい防具は身に付けていなかったからベルの新しい防具を頼んだ際に、ラブレスの防具も頼んでおいたのだ。
「本当に便利ね」
ヴェルフがアイテムストレージを使ったのを見て、『ほう……』とヘファイストスが感心をする。
二〇種類を九個ずつとはまた微妙な数字だろうが、それでも探索の役には立っているのだから、後は借金を支払い終えてお金を貯めて機能を拡張するのみ。
分割払いに近い形だし、どうしても最終的には一億ヴァリスよりも高くはなるだろうが、それでも本当に役立つ〝魔法〟であった。
ヴェルフが持つ魔法……ちょっと癖のあるものではあるが、一応はベルとは違って魔法が発現している。
魔力の暴発たる【イグニス・ファトゥス】を引き起こす魔法で、ユートもそれ――【ウィル・オ・ウィスプ】であった。
ヘルハウンドの吐き出す炎すら暴発可能。
因みに、【
炎を吐き出すラブレス、それはシュールな光景。
ユートも【火遁・業火滅却】とか、炎を吐き出す術を扱えるのだけど。
用事を済ませたユート、次の目的地へと向かった。
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