ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

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第36話:柾木優雅のダンジョン探索は間違っているだろうか

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 一旦はイシュタル・ファミリアの歓楽街に泊まり、サンジョウノ・春姫と寝てから翌朝には再びオラリオを歩いている。

 

 今までと違ってユートには慣れたらしく、抱かれるのにも忌避感は無い様だ。

 

 専用というか専属契約をしているから初めてを貫かれて以来、ユートしか知らない春姫だけど優しく抱かれていて夢見心地になれるからか、来てくれるのを待ちわびている節があった。

 

 美しい狐人(ルナール)の春姫から、色々と甲斐甲斐しくされるのは嬉しいし、スタイルも良くて玉の様な肌はスベスベで、触れれば心地が良かった。

 

 射精する度に穏やかに、嬉しそうな微笑みを向けられては、ユートの男が堪らないくらい固くなる。

 

 尚、春姫にも恩恵が在るのを知ったユートは彼女の基本アビリティに補正を与えているが、取り敢えずは耐久と俊敏と魔力を中心に引き上げている。

 

 武器を扱えない春姫には力は要らないし、器用だって必要ではないからだ。

 

 要るのは生命を守る為の耐久と俊敏、そして魔法を扱う魔力くらい。

 

 出すモノを射精()して下半身がすっきりしたし、朝食も食べたユートが歩いていると、昼前だと云うのに知り合いが白亜の摩天楼バベルに集まっているのを見付けた。

 

「フィン、幹部と準幹部が屯って何してんだ?」

 

「やあ、ユート」

 

 小人族でありロキ・ファミリアの首領――フィン・ディムナが、声を掛けてきたユートへ爽やかな笑顔を浮かべながら手を挙げる。

 

 見た処、全員が武装をしているからダンジョンにでも潜るのだろう。

 

「これからダンジョン?」

 

「まあねぇ。実はアイズが先日ゴブニュから借りていたレイピアを壊してね? 弁償しなきゃならないらしいんだよ」

 

「それは御愁傷様だな」

 

「序でにティオナも未だにウルガのお金を返し切ってなくてね、しかも遠征では刃が可成り劣化して修理にまたお金が掛かってさ」

 

 テヘペロと頭を掻きながら舌を出すティオナ。

 

「それで皆でダンジョンって訳か」

 

 フィンにリヴェリアという首領と副首領、ガレスは留守番という事だろう。

 

 他にアイズ、ティオナ、ティオネ、レフィーヤ。

 

 ベートが居ないのは恐らくだけど、ティオナ辺りが意図的にハブったのだ。

 

 別段、ティオナが殊更にベートを嫌っているという訳ではなく、普段から態度がアレだからと見た。

 

 ベート・ローガ――神々が与えた二つ名は【凶狼(ヴァナルガンド)】。

 

 それは速度と鋭い攻撃により敵を八つ裂き、食い荒らすが如く凶暴な戦い振りから名付けられたと云う。

 

 普段から彼は弱い存在を『雑魚』と言って、決して優しい行動なぞ起こさない気質である。

 

 それ処か『強者は弱者を高みから見下ろす義務がある』とまで嘯き、甘やかしたりはしないものだった。

 

 意味はある。

 

 決してベート・ローガに悪意は……無い?

 

 彼には彼でLV.5――第一級冒険者としての矜持というものがあり。

 

 リヴェリア・リヨス・アールヴでさえ、強者の驕りだと切って捨てているし、実際にそれが無いとは言い切れまい。

 

 ベートは弱さに甘える者が嫌いなだけだ。

 

 嘗ての弱かった自分を思い出すのも嫌なのだろう。

 

 周囲との軋轢も気にしない孤高の狼、ベートは自らが実践をしていた。

 

 強者の位置で弱者を見下ろすという事を。

 

 ユートは決して彼を嫌ってはいなかった。

 

「そうだ! どうせならば君も一緒にどうだい?」

 

「僕は他派閥だぞ? 前は成り行きで一緒になった訳だけど、余りに好ましいとは云えないんじゃ?」

 

「ええ? 一緒に行こ!」

 

 フィンの誘いに遠回しな断りを入れると、ティオナが腕を掴んで自分の無い胸へと押し付けて、甘える様な猫なで声で誘ってくる。

 

 すっかりハマり込んでいる妹を、温かな瞳で見据えるティオネが居た。

 

「ユートも、一緒しよ?」

 

 アイズも賛成らしい。

 

 見る限りでリヴェリアもレフィーヤも反対はしていないらしく、ユートは溜息を吐きながら……

 

「判った、一緒に行こう。どうせダンジョンには潜る心算だったしね」

 

 頷いて言った。

 

 ユートの場合は装備品も消耗品も全て、アイテム・ストレージ内に入れてあるからそれを出せば良い。

 

 装備フィギアで装備品を装着して、腰へと佩くのはダークリパルサーR。

 

 黒鍛鋼製のエリュシデータRでも別に良かったが、そこら辺は好みの問題でると云えよう。

 

 また、これらにはちょっと改良が加わっていた。

 

 ユートのスキル【聖剣附与(エクシードチャージ)】を用い、宝石にそれを附与して剣に填め込んでいる。

 

 その内容はデュランダル――シャルルマーニュ十二勇士のローランが用いていたのが特に有名だろう。

 

 この世界でもデュランダルは不壊属性の名前として存在するが、ユートの使うスキルは同じく不壊属性を与え、更に強力な切れ味をも与えてくれる。

 

 ドラクエ的には攻撃力が+20といった処か。

 

 よって、ダークリパルサーRは攻撃力が上がって、更に不壊属性を附与されているのだ。

 

 最早、王者の剣も斯くやな攻撃力である。

 

 鍛冶師の技能を持っているユートからしたならば、これは単純に機能拡張とかが出来る福音となった。

 

 ユートは足りなければ他から持ってくるタイプだ。

 

 全てを自身の腕前だけで何とかしたがる方ではないから、こういうのはそれこそウェルカムであろう。

 

「相変わらず見事な剣だ。僕の槍も一度造って貰いたいくらいだね」

 

 フィンが感心した表情となり、抜剣したダークリパルサーRの刃を見遣る。

 

 その左肩には自分が持つ槍を掛けていた。

 

「お金さえ支払うなら造るのは構わないよ。使う金属次第で値段もピンキリになるのは他と変わらん」

 

「ふむ、本当に頼むか?」

 

「【聖剣附与】のスキルを使った拡張強化もすると、更に値段が高値にはなるんだけど、便利な能力を付加したりも出来る」

 

「へぇ、面白いな」

 

「【鍛冶】の発展アビリティは無いが、それでも僕は最上級鍛冶師(マスタースミス)のレベルの心算だ」

 

 勿論、【鍛冶】を取れば更なる高性能化が可能。

 

「……前に見た時と少し違うけど」

 

 宝石を指差してアイズが問うてきた。

 

 鍔の部分の宝石の色が、明らかに違ったからだ。

 

「ほぅ、よく気付いたね。僕の【聖剣附与】は宝石に籠めて剣に填め込んだら、恒常的に効果を与える事が可能なんだ。今のダークリパルサーRには、不壊属性と攻撃力の増加が附与されているって訳だね」

 

 文字通りデュランダルの能力を付加したのだから。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 少し時は遡る。

 

「フッ、意外と簡単に手に入ったな」

 

 目付きの鋭い黒髪黒瞳の青年が、手に入れた宝玉をポンポンと二度三度と宙に投げながら呟く。

 

「ま、いつまでも遊んでないでさっさと行くか」

 

 三〇層から一八層にまで上がらねばならないから、宝玉を仕舞うと元来た道を駆け上がる青年。

 

 あっという間にリヴィラの街にまで着き、約束をしている酒場まで足を伸ばした青年は、キョロキョロと入るなり辺りを見回して、ウェイターの居るカウンター席に座り、合言葉となる注目をウェイターに頼む。

 

 すると赤いレザーに同じ色のホットパンツという、ボーイッシュながら女であるのを主張してる服装で、癖の強いショートカットの黒髪、茶色の瞳に茶褐色の肌を持つ二十歳には届かない犬人の少女が、青年の隣に擦り寄ってきた。

 

 恐らく日焼けではなく、アマゾネスみたいな純粋なる褐色の肌なのか、見た感じで白い肌は存在しない。

 

 短刀を武器にしているのは彼女が盗賊――冒険者という意味で――だからか。

 

「貴方がブツを?」

 

「つまり、お前が運び屋って訳だな?」

 

「じゃあすぐに渡して」

 

 手を出してくる少女。

 

「せっかちだな? 名前くらい名乗り合わねーか? 折角の男女の出逢いだぜ、一杯か二杯は付き合えよ。一仕事が終わったばかりなんだしな。アンタはこれから始まる訳だが」

 

「……余り強いのは飲めないよ? さっき貴方が言った通りこれから仕事だし」

 

「ああ、構わねーよ」

 

「ハァ、私はルルネ・ルーイという」

 

「柾木優雅だ」

 

 注文をするとウェイターがすぐに応えて品を出す。

 

「じゃ、乾杯」

 

「乾杯」

 

 二人は――優雅とルルネは互いにグイッとグラスを煽り、次の酒を注文した。

 

 ルルネより飲む優雅は、つまみも注文しておく。

 

「ふぅ、それじゃブツを」

 

「既にルルネのバッグん中に入れてあるからこの侭、何事も無かったかの様にしていろ」

 

「――え?」

 

「運び屋がいちいち動揺をするな。それと荷物も確かめたりせず、依頼人に渡したら速やかに忘れろ」

 

「う、うん」

 

「酔った振りをしろよ」

 

「? 判った」

 

 軽く立ち上がったルルネがフラリと揺れる。

 

「おっと、脚にキタんなら御泊まりでもどうだ?」

 

「ん!?」

 

 唇を奪われて動揺してしまうが、先程の優雅の科白を思い出して……

 

「さ、流石にそこまで安い女の心算は無いから」

 

 ソッと押してその場を離れる様に店を出た。

 

「アララ、フラれたかな。マスター、酒持ってきな」

 

 一頻り飲んだ優雅は先のルルネの分も酒代を払い、酔った振りをしながらフラフラと酒場を出る。

 

 実際には酔わないから。

 

 流石はリヴィラの街か、割高な酒代となってしまった訳だが、ルルネはそれなりな美少女だったからその唇の代価として支払った。

 

「ふむ、どうやら掛かってくれたみたいだな」

 

 視線を感じていた。

 

 それこそ、リヴィラの街に入った時点でビンビンに感じる視線を。

 

 暫し歩くと白いフードに顔を隠す長身の女が優雅の前に現れ、ニコリと笑みを浮かべながら近付く。

 

 目付きが鋭いからニコリというかニヤリだが……

 

 然しながら風に棚引いて見える顔立ちはルルネより整い、短めな赤毛が綺羅綺羅と煌めいている。

 

 スタイルも良さそうで、モデル体質なのだろう。

 

「何か用かな?」

 

「何、それ程難しい用ではない。私を買わないか?」

 

「は? 流れの娼婦だっていうのか?」

 

「いや、私は別に娼婦などではないな」

 

「何だそりゃ」

 

「とはいえ、ヒトであるからには女と云えど性欲というものはある。ならば羽振りが良い男と寝て金も貰えれば一石二鳥だ」

 

「羽振りだぁ?」

 

「私はそこら辺を嗅ぎ付けるのが上手くてな。大方、大きな依頼を成功させた後なんじゃないか? 折角だから寝物語に聞きたいな」

 

 優雅に擦り寄りながら、女が柔らかく艶やかな肢体をくっ付けてきた。

 

「ふーん、良いぜ」

 

 寄り添い、近くの洞窟を改良したらしき宿に入る。

 

「いらっしゃい」

 

「一日、貸し切りで頼む」

 

「貸し切り? って、ああ……そういう事か」

 

 はっきりと顔は見えなかったが、それでもチラホラと見える顔立ちがとても整っており、スタイルも出る所は出て引っ込む所は引っ込んだ良い肢体なのは見て取れた。

 

 思わず舌打ちをしたくなるのは仕方がない。

 

「代金だ」

 

 ドン! とカウンターに置かれた袋、高純度な魔石がタップリ入っていた。

 

「良いのかよ?」

 

「迷惑料込みだ」

 

「オッケー。戴いとく」

 

 奥に入る二人を見送り、宿屋の主は溜息を吐く。

 

 宿の作りから喘ぎ声など丸聴こえな為、やってられないとばかりに飲みに行こうとカウンターを出た。

 

 そんな宿屋の主人の気持ちなぞ知らぬとばかりに、ベッドに腰掛けた優雅が女を見遣る。

 

 思った以上の美女だ。

 

「どうした? 今更ながら怖じ気付いたか?」

 

「まさか、中々のモノじゃないか。これなら私も楽しませて貰えそうだ」

 

 優雅の屹立したモノ……それはそこら辺の男が持ち得ぬサイズであり、脈打つ血管が浮き出てグロテスクでさえある。

 

「さあ、始めるか」

 

「そんなにがっつくな」

 

「男と女が二人きりだぜ、ヤる事をヤらない訳にゃあいかんだろ」

 

 女をベッドに押し倒し、そして目眩く動物の本能に沿った性衝動の侭、二人の影が重なるのであった。

 

 どれだけの時間が経ったのか優雅が何度目か射精を行い、それに伴って女の方も甲高い嬌声を上げ上と下が入れ替わった瞬間……

 

「ぐっ!?」

 

 女が凄まじい握力で優雅の首を締め付ける。

 

「テメエ!」

 

「中々、楽しめたぞ。だがここまでだ!」

 

 その握力はいったい何tあるのかと謂わんばかり、明らかに一般人は疎か第一級冒険者以上。

 

 ゴキュッ!

 

 為す術も無く首がへし折られてしまう。

 

「フン、最後に楽しめて逝けたんだ。幸運だったな。好みから外れたオッサンならヤらせず殺していたぞ」

 

 嘲る様に言い放つ。

 

「そういえば、荷物らしき物を持っていないが何処にアレを仕舞った?」

 

 取り敢えずは服を漁ってみたが、捜し物それらしき某かは明らかに無かった。

 

「おかしい、コイツが手に入れたのは間違いない」

 

 パンパンパンパン!

 

「っ!?」

 

 背後から拍手の音が鳴り響き、女は目を見開きながらバッ! と後ろを向く。

 

 殺した筈の男がニヤニヤしながら素っ裸の侭に拍手をしており、その傍に間違いなく首の骨が砕けた男が倒れていた。

 

「ど、どういう事だ!?」

 

「クックッ、中々に良い尻してるじゃねーか。その侭で犯してやりたいくらいだったぜ?」

 

「質問に答えろ!」

 

「脳筋な奴だな。んなの、テメエが殺ったのが影分身だったからに決まってんだろうが?」

 

「影分身……だと?」

 

 ボンッ!

 

 消える死体。

 

「まさか!? 私の目を誤魔化していたのか! だが……いったいいつから!」

 

「バックから射精()した時に入れ替わったのさ」

 

「なっ!?」

 

 最後の射精の一回前だ。

 

「初めから気付いていた……という事か!」

 

「気付かれないと思っていたのか?」

 

「くそっ!」

 

「この侭、二〜三回くらいヤらせんなら生命だけは助けてやるぞ?」

 

「ほざけ! 貴様こそ手に入れたモノを寄越せ!」

 

「平行線だな。ならヤるべきは戦闘かねぇ?」

 

 いつの間にか手にしていたのは何か機械的な物で、少し右寄りに銀縁に赤い丸な状態でクリスタルが張り付いている。

 

 其処に赤い龍が描かれたカード――ワイルドベスタと呼称される物を機器へと装填すると、シャッフルラップが伸びベルトとなって優雅の腰へと巻き付く。

 

 立ち上がる優雅は未だに臍まで反り返る分身を堂々と晒しながら、右手で機器――ミスリルゲートをスライドさせて叫ぶ。

 

「変身っ!」

 

《OPEN UP》

 

 ベルトからオリハルコンエレメントが回転しながら顕れ……

 

「がはっ!?」

 

 赤毛の女を物理的に吹き飛ばして、優雅の方へ向かってゆっくり移動。

 

 優雅がオリハルコンエレメントを潜る。

 

《Welsh Dragon Balance Breaker!!》

 

 先のベルトからの音声と異なる野太い音声が響き、優雅はその姿を大幅に変化せしめていた。

 

 全身を赤い鎧兜のフルプレートアーマーとも云える姿となり、胸に緑で大きめな宝玉を填め込んでいて、肘や膝や手の甲には比較的に小さい緑色の宝玉、仮面に覆われた両の眼も翠色に輝く――小さな赤い人型龍とも云うべき存在と成る。

 

「な、何だその姿は!?」

 

「赤龍帝」

 

《jet!》

 

 龍の翼を開いて更に電子音声を響かせ、赤龍帝となった優雅が赤毛の女へ攻撃を開始するのであった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ワイワイと話をしていても始まらないし、ロキ・ファミリア幹部陣とユートが合同で降りるダンジョン行を正午ぴったりに行った。

 

 中衛に魔導師のリヴェリアとレフィーヤを据えて、後衛にフィンとティオネを置き、前衛にはティオナとアイズが入り、ユートには遊撃が宛がわれている。

 

 ゲームでは後衛に魔導師みたいなタイプを入れるのだが、普通に考えて後衛に直接戦闘を行う者を入れてしまうと、背後から強力な敵が現れた場合だと一気に劣勢になってしまう。

 

 特にこのダンジョンでは意地悪く、背後にモンスターを産み出す事もあった。

 

 故にこそ中衛だ。

 

 とはいえ、最低であってもLV.3たるレフィーヤ――第二級冒険者。

 

 少なくとも中層までなら脅威も感じない。

 

 仮令、後衛職と呼ばれる魔導師だとしても。

 

 まあ、レフィーヤは若干ながら怪しいのだが……

 

 あっという間に上層最後の一二層まで降り、其処に上層で最強とも実質的には上層の【迷宮の孤王(モンスターレックス)】とも云われるインファント・ドラゴンが湧出した。

 

「ドラゴンが僕に敵う筈もないと云うのに……」

 

 ユラリと近付くユート、その口角は吊り上がる。

 

「あ、不用意に近付いたら流石に危ないですよ?」

 

 インファント・ドラゴンは近接だとレフィーヤとて苦戦は免れないし、それが判るからこその忠告だった訳だが、ユートは振り返るとニコリと笑う。

 

 とても穏やかな笑みに、レフィーヤはトクン……と胸を高鳴らせた。

 

 顔が熱くて赤らめていたのを、両手で押さえながらブンブンと頭を振る。

 

 先日、痴態を見せてしまったのを思い出した上に、お姫様抱っこをされたのも同時に想起されたのだ。

 

「呪え、呪われよ我が怒り以て竜蛇を呪え赤き堕天使……神の毒。我が悪意にて全ての竜蛇を呪え呪え呪え呪え呪え……呪い在れ!

神の毒より呪い在れ(ドラゴン・イーター)】!」

 ドロッとした赤い空気、結界型の権能であるこれは龍喰者【神の毒(サマエル)】から獲たモノ。

 

 その効果は龍という属性に対し、自身の能力を十倍にも引き上げる上に龍因子の持ち主は、そのダメージの修復が結界内に限ってだが不可能となる。

 

 欠点は龍の因子を自分も扱えなくなるという事で、色々と持っている龍関連の能力が、権能も神器も起動しなくなるし【竜戦士(ルシファー)】も使えまい。

 

 因みに、【竜戦士】というのは文明が崩壊した地球の四〇〇年後、幾つか存在したのをどさくさ紛れにて掠め取った一機である。

 

 それはハルケギニア時代の漂流期の話だった。

 

「さて、死ね!」

 

 斬っ!

 

 首を刎ねて殺した。

 

「やっぱ必要無かったか」

 

 カドモスなら未だしも、インファント・ドラゴンが相手に不要らしい。

 

 とはいっても龍を喰らうのが好きなユート的には、喰えない龍はこうして虐殺するのみだった。

 

 この世界のモンスターは死ねば灰となり崩れる為、どうやろうとも喰えたものではないから。

 

 一五層まで降りると普通にミノタウロスとか現れ、レフィーヤも杖の先で攻撃を仕掛けるが、魔導師だから涙目になりながらドカバキと殴り付け、トドメとばかりに首に突き付けた。

 

「やれやれ、まだまだだ」

 

「ふわっ!?」

 

 師匠でもあるリヴェリアが大量に斃しているのに、レフィーヤは二〜三匹程度でしかない。

 

 その差にはズーンと心が重くなる。

 

 ライガーファングが現れたが、ティオナの大双刃が一撃で叩き伏せた。

 

「うん、ウルガも絶好調ってやつだね!」

 

 SS評価になってしまった力の基本アビリティも、ティオナの攻撃力を引き上げているのだろう。

 

 本来ならS999が最高の数値だが、ユートに抱かれて獲た余剰数値が彼女に限界突破をさせた。

 

「あれ? ゴライアスが居ませんよ」

 

「ホントだ〜」

 

 レフィーヤの疑問に右手を額に添え、【嘆きの大壁】を見上げながらティオナが大口を開けて言う。

 

「優雅兄が潰したからね」

 

 聞こえない様に小さく呟くユート。

 

「居ないなら居ないで丁度良いさ。皆、リヴィラの街へ向かうよ」

 

 フィンの号令の下に一行は第一八層に降りた。

 

 【迷宮の楽園(アンダーリゾート)】と呼ばれて、第五〇層と同じくモンスターが産まれない空白地帯。

 

 この地には冒険者達が、自ら街を造り出している。

 

 ぼったくりな街だが……

 

「今は……どうやら昼の様だな」

 

 手で傘を作って見上げたリヴェリアが呟く。

 

 上空のクリスタルの輝きで外と同じく、だけど独特な時間経過をする此処は、普通に昼夜が存在した。

 

「この侭、一九層に行っちゃう?」

 

「そうねぇ。ドロップアイテムや魔石はユートに預かって貰ってるし、団長はどうしますか?」

 

 ティオナの質問に然し、決定権はフィンだと謂わんばかりに訊ねるティオネ。

 

「折角だし街に寄ろうか。確かにアイテムはユートに持って貰っているけどね、休息を偶にはベッドで取りたいじゃないか」

 

「はい、団長♪」

 

 取り敢えずフィンの決定なら基本的に従うらしく、ティオネがニコニコしながらフィンの腕に組み付く。

 

 ユートが居なければ選択肢として確実に寄らねばならないが、今現在はユートのアイテム・ストレージに仕舞える利点がある。

 

 一行は南に存在する森から西部に在る街に向かう。

 

 冒険者がダンジョンを行く際の、最初に訪れるであろう安全地帯だ。

 

 ダンジョンとは思えない美しい場所で、自然豊かな場所だからレフィーヤとしても嬉しい。

 

 リヴィラの街へと着いた途端……

 

 ドガァァンッ!

 

 ダンジョンを揺るがす程の揺れと爆音が、彼ら一行を大歓迎してくれた。

 

 

.




 う〜ん、未完にするか?


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