ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

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 久方振りに書けました。





第38話:リヴィラの街での大乱戦は間違っているだろうか

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「貴様は何の為に私を生き返らせた?」

 

「私の目的の為ですよ」

 

「目的……だと?」

 

「貴女を殺したあの方……ユートさんと愉しく遊ぶ。それが私の目的ですから、行き成り原作キャラクターに死なれては困ってしまうんですよ」

 

「……礼は言わん」

 

 原作キャラクターの意味は解らないが、取り敢えずこの見た目には単なる少女に過ぎない彼女によって、自身が甦った事だけは事実として受け取ったらしい。

 

「要りませんね。私は私の目的さえ果たされるなら、それで充分ですから」

 

 ニャル子の目的はユートと遊ぶ事であり、その為に悉く事象へと介入をしてきたのである。

 

 彼女のユートを――白い鎧の男を視る目は明らかに恋する乙女でありながら、何処か邪悪で淫靡な色が混じっていた。

 

「では、その力を存分に揮って下さいな」

 

 そう言って転移する。

 

 残されたのは赤毛の女が唯一人だけ。

 

「剣姫の風……とか言っていたな」

 

 剣姫とは誰なのか?

 

 ダンジョンに何年間も篭り続けていた赤毛の女には判らなかったが、姫と呼ばれたからには性別は女であると考え、力の有りそうな女を捜してみる事にした。

 

 また、剣の姫とされるのならば剣士である事も予測される。

 

 力が高くて剣を持つ女、一気に絞られてくる筈だ。

 

「では往くか」

 

 その有り余る身体能力を駆使し、赤毛の女はその場から文字通り飛び出した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 赤龍真帝の優雅は食人花(ヴィオラス)を相手に一歩も退かず、そのパワーを以て蹂躙をしていく。

 

 尤も、どれだけのパワーであろうと拳打に耐性が有るだろうヴィオラスには、拳の一撃なんて幾らでも耐えられるみたいだ。

 

「だけどな!」

 

 赤龍帝の能力は全て解放済みな優雅にとってみればそんなのは全く関係無く、その特殊な能力を如何無く発揮して潰していた。

 

《Penetrate!》

 

 透過という、ドライグが生前に持っていた能力で、神器に封じられてしまった際に聖書の神により封印を受けていたが、瑠韻の力を借りてアッサリと解除してしまった。

 

 外に人格を顕すと破滅の因子全開となる瑠韻だが、内部で力を揮うのは関係が無いらしく、優雅は新しい妹? の力を確り使う。

 

 結果、【白龍皇の光翼】の反射も合わせて能力解放に至り、こうしてヴィオラスの防御を透過させて一撃のダメージを通している。

 

「うらぁぁっ!」

 

 よって、ヴィオラスは殴られる度に表皮がひしゃげてしまい、LV.7相当の拳打を内部で直接的に受ける事で絶命し、魔石が優雅のアイテムストレージへと格納されて灰に還る。

 

「数だけゃ多いな」

 

 ユートや優雅の識らない原作でも、数十匹は現れていたヴィオラスだったが、この場の数は優に百を越えて存在していた。

 

 勿論、LV.2の冒険者如きにどうにかなる事などあろう筈もなく、犠牲者も出ている可能性が高い。

 

 リヴィラの街を造っているのは、LV.3冒険者であったボールスを筆頭にしている事からも判る通り、基本的にLV.4を越える冒険者は常駐していない。

 

 今回、ロキ・ファミリアの首領たる【勇者】フィンや幹部達が居たのは偶々、然しながらフィンも個人戦なら強いのだが、こうまでモンスターが闊歩をしていては中々に苦戦をする。

 

 LV.6のフィン。

 

 LV.6のリヴェリア。

 

 LV.5のアイズ。

 

 LV.5のティオネ。

 

 LV.5のティオナ。

 

 LV.3のレフィーヤ。

 

 対外的にはユートはまだLV.2だが、実質的にはLV.7相当であったし、優雅も同じである。

 

 とはいえ多勢に無勢。

 

 それでピンチに陥る事は無いが、冒険者達を救う事が出来ない状況だった。

 

 其処へ優雅の乱入。

 

 槍使いのフィンは一応、ダメージを入れていたとはいえ元々の防御も高くて、一撃の許に斃すには腕力が足りない。

 

 にも拘らず、赤い鎧の男は普通に斃しているのだから驚くしかなかった。

 

「あれがユート君の兄か」

 

 苛烈に激烈。

 

 ユートとは真逆な存在に見える優雅。

 

「よう、【勇者】様よぅ。意外に苦戦しているな?」

 

「ゴライアス程じゃないにせよ、巨体で防御力もあるモンスターだからね。比較的に腕力が低い僕には少し大変ではあるよ」

 

「ふん、それでもピンチにならない辺りが流石だな。くれてやるから使え」

 

「っ?」

 

《Transfer!》

 

「これは!?」

 

 溢れてくる力。

 

 全身がまるで強化されたみたいで、しかも腕力上昇が著しいまでだ。

 

「【赤龍帝の籠手】の第二能力の【譲渡】は、増幅をした力を他者に与える」

 

「よくは判らないが使えるみたいだ」

 

「序でにコイツもだ」

 

 それは呪文。

 

「バイキルト、ピオリム、スクルト……バイスピオクルト!」

 

「うっ!? この輝きは」

 

「攻防速強化合体呪文……まぁ、頑張ってくれや」

 

 本来は複数に掛けるが、範囲内にはフィンしか居なかったから個人に掛けた。

 

 再び離れる優雅を見送ったフィンは、襲いくる食人花を片手間で屠る。

 

「譲渡……か。素晴らしい能力だね。しかもこの魔法はアイズの風みたいな付与魔法か何かかな?」

 

 それだけに敵対するのは恐ろしい相手だった。

 

 リヴェリアはレフィーヤとは違い、魔導師としての格が非常に高いレベルで、動き回りながら魔法の詠唱をする【並行詠唱】を難なく熟するが、基本的に高い威力と広範囲な魔法だから乱戦では使い難い。

 

 故に近接戦闘をしながら機会を窺っていた。

 

「メ・ラ・ゾー・マ……」

 

 五本の指にメラゾーマを灯す白い鎧を纏うユート。

 

五指鳳凰焔舞(フィンガー・フレア・フェニックス)ッッ!」

 

 解き放つと火の呪文は、不死鳥の姿となって戦場を翔び回り、ヴィオラス共を焼き尽くさんとぶつかる。

 

「何と……魔法をあの様に使えるのか」

 

 バカ魔力任せに放たれる極大魔法とは違う技巧に、先天的な魔法の使い手であるハイエルフとして驚愕を露わにしていた。

 

 悪党の技故にイメージ的に最悪なモノ、しかも片や歴史が無いが故に出世欲に目が眩んでいた小悪党で、片や偉大な大魔王様が放つ必殺技というか呪文だ。

 

 とはいえ、ユートは使えるなら使うタイプだから、普通に行使していた。

 

 火の鳥が指向性を持って敵を追い回し、その高熱を以て敵を焼き尽くす。

 

 それも基本的に大魔王が一羽で撃っていた呪文を、五指から五羽の火の鳥を放ったのだから敵からすれば堪らなかった。

 

「リヴェリア、こいつを使って戦え!」

 

「け、剣? いや、然し私は魔導師だぞ。近接戦闘は嗜み程度でしかない」

 

 一応、リヴェリアも近接戦闘が出来るのだろうが、飽く迄も魔導師として戦闘スタイルを確立している。

 

 しかも渡されているのは明らかに両手剣、あんなのを振り回すのは難しい。

 

 まあ、魔導師とはいってもリヴェリアはLV.6、力のアビリティもそれなりには有るから、この両手剣を振り回せない訳では決してないのだが、技術は拙いから余り意味も為さない。

 

「誰も近接戦闘をしろなんて魔導師に言わないさね。こいつの銘は【雷神の剣】といってね。確かに武器としても一級品な代物だが、実は別の側面もあるんだ」

 

 攻撃力は95。

 

「別の側面?」

 

「放てという意を籠めて、この雷神の剣を揮ったなら極大閃熱呪文(ベギラゴン)と同じ熱量を放てる」

 

「ま、魔剣なのか!?」

 

 魔剣――決してオリジナルを越える事は無いにせよ魔法の力を籠めた武器。

 

 但し、何度か使えば砕け散る運命の剣。

 

 剣の形をしながら剣としては使われず、単に魔法モドキを放つ道具に過ぎない入れ物の器である。

 

 ユートが得た情報では、十回も保てば御の字とか。

 

 オリジナルたる魔法には届かず、僅か十回未満しか使えない魔剣。

 

 唯一の例外はオリジナルを遥かに越える力を放てる【クロッゾの魔剣】とか、即ちヴェルフ・クロッゾがそれを鍛てるらしい。

 

 本人は魔剣を鍛ちたくはないと聞くが……

 

「壊してしまっても弁償は難しいのではないか?」

 

 高価な魔剣だ。

 

 たったの数回だけ炎を出せる魔剣、それですら何と百万ヴァリスもの値段。

 

 強大な魔法モドキを放つ魔剣なら、それこそ何千万ヴァリスにもなる。

 

「魔法を放っただけでは壊れないよ」

 

「莫迦な!?」

 

「この世界の魔剣の作り方とは根本的に違うからね」

 

「む、むう……」

 

 当然、ゲーム的な縛りも無いからリヴェリアであれ問題無く使用可能。

 

「それで、ベギラゴンとはどの様な魔法なのだ?」

 

「熱エネルギーを拡散して放つ魔法で、ギラ系と呼ばれる中で二番目に強い」

 

 それでも攻撃魔力の概念が無いナンバリングでも、100前後ものダメージを与える程だ。

 

 熱に強いモンスターでなければの話だが……

 

 そして現れたモンスターは植物系、高熱を放つ魔法に強いとは云えない。

 

「判った。有り難く借りておこう」

 

 頷いたリヴェリアはその手に【雷神の剣】を取り、刃の腹部分を一撫ですると『放て』と意志を伝えながら揮った。

 

 轟っ!

 

 凄まじい熱量のエネルギーが剣身から放たれると、食人花のモンスターであるヴィオラスを数匹ばかり、呑み込んで纏めて焼き尽くしてしまう。

 

「な、何と!」

 

 ベギラゴンなる魔法とはどんなモノか? リヴェリアにもはっきり理解出来た訳だが、下手をしたら自分の炎の魔法並の威力。

 

「越える……のか? 我々(オリジナル)を」

 

 エルフ達が忌み嫌う彼の【クロッゾの魔剣】を思わせるが、今は精神力の消耗も無く使えるのが有り難いとリヴェリアは感謝した。

 

 ヒリュテ姉妹が戦っている戦場まで、赤と白の龍人が飛んでくる。

 

 姉のティオネ・ヒリュテは短剣を二振り、器用に操ってヴィオラスにダメージを与えていた。

 

 逆に妹のティオナ・ヒリュテはバカでかい剣を豪快に揮って、ザックザックとヴィオラスの本体を斬り裂いている。

 

「頑張ってる様だな」

 

「そうみたいだね」

 

「「っ!」」

 

 ヘッドマスクを収納した素顔、それは寸分違わぬ程に似た青年のもの。

 

「ユート……と、誰?」

 

 似ているし赤い方を兄だと言っていたから、兄弟だとは理解もするティオナではあるが、赤い方の名前は知らなかったから。

 

「柾木優雅。ユーガだ」

 

「ユーガね。うん、名前は覚えたよ」

 

 優雅の名乗りに頷くのはティオナ。

 

「で、用件は? 此方も忙しいんだけど」

 

 ティオネがジト目だ。

 

 ヴィオラスは取り敢えず今は居ないが、すぐにまた現れるなら確かに忙しい。

 

「二人にはこれを貸そう」

 

 それは同じ形をした腕輪が二組で四つある。

 

「腕輪?」

 

「豪傑の腕輪と星降る腕輪という魔導具。片や力を上げる腕輪で片や素早さを上げる腕輪だ」

 

「! そんな物が?」

 

 ティオネが驚く。

 

 取り敢えず豪傑の腕輪と星降る腕輪、片腕に一つずつ装備をしてみた。

 

「確かに何だか身体が軽い感じだし、軽々と大双刃(ウルガ)を持てるみたい」

 

 今までも軽々と振っていた気もするが……

 

「序でにこれ。【聖魔装身(エクシード・チャージ)……絶世の名剣(デュランダル)】!」

 

 二人の武器にスキルの力を附与する。

 

「うわ、うわぁ!」

 

 大喜びなティオナ。

 

 前にも掛けて貰ったが、不壊属性に加えて切れ味が数段上がったのだ。

 

 竜が相手ならデュランダルより、幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)を掛けてやり対竜の剣にしただろう。

 

「少し前と輝きが違う?」

 

「流石はティオネ。実は、LV.が2に上がった際にこのスキルにも変化があったんだよ」

 

「LV.が上がったのね。だけどスキルに変化って? そんな事が起きるものなのかしら?」

 

「さて、神々でさえ把握してない恩恵らしいからね。絶対に有り得ないとも言えないだろう?」

 

「まあ、確かに……」

 

「変化も性能が上がったんだから問題は無いしね」

 

 【聖魔装身(エクシード・チャージ)】――ユートが識る聖や魔の力を持った装身具の能力を附与する。

 

 つまり聖剣のみならず、聖槍や聖弓や聖鎧や聖盾や逆に、魔剣や魔槍や魔弓や魔鎧や魔盾などの魔に属する武装の附与も可能。

 

 しかも〝ユートの識る〟とある様に実際がどうだかは無関係で、ユートが認識している能力で附与する事が出来るという。

 

 デュランダルの附与も、切れ味に関してはゼノヴィア・クァルタの持っていたデュランダルに、決して壊れなかったという逸話を持った状態での附与だ。

 

 しかも効力や持続時間も二倍になっている。

 

「おーし、ぐわんばるぞぉぉぉぉぉぉおっ!」

 

「ティオナ、煩いわよ」

 

 ブンブンと大双刃を振り回すティオナと、煩そうに文句を言うティオネが立ち去った後、ユートと優雅も空を翔んで次を目指す。

 

「アイズやレフィーヤは……っと、どうしたかな?」

 

 捜すのはアイズ・ヴァレンシュタインとレフィーヤ・ウィリディスの二人で、レフィーヤの事だからきっとアイズと一緒だろうとか考えて捜してみる。

 

「おい、ユート!」

 

「どうした、優雅兄?」

 

「あそこ、アイツはさっき殺した赤毛じゃねーか?」

 

「――何?」

 

 髪の毛が短髪になってはいたが、顔立ちや着ている服から確かにさっきの女。

 

「莫迦な、確かに息の根を止めた筈! 心音も無かったのは確認したんだぞ?」

 

 アロガント・スパークはシルバーマンが使う、殺意の塊みたいな業であるが故に〝殺す〟という一点に於いて最高のもの。

 

 柔らかい場所に落としたなら万が一も有り得たが、ユートが極めた場所は硬い岩場であった。

 

 超人レスラーでさえ死ぬ秘技に、人間の肉体が耐えられる筈がないのだ。

 

 確かに強靭な肉体だった赤毛の女だが……

 

「だけど奴は生きている。間違いなく……な」

 

「チィッ! どういう絡繰りかは知らんが、なら今度は息の根を止めるだけでは済まさない! 肉体諸共に魂すら消滅させてやる!」

 

 言っている事は物騒極まりないが、カンピオーネであれば仮に肉体が消滅しても生き返る場合があるし、割と普通な考えであろう。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 一方のアイズとレフィーヤの二人は、未だにルルネ・ルーイと一緒に居た。

 

「貴女は!」

 

 其処へ現れたのが赤毛、赤い鎧と戦って……明らかに死んだと思われた必殺技を喰らっていた女。

 

「お前が奴の言っていた」

 

「何の……事?」

 

「見せて貰うぞ」

 

 剣姫の風の意味を。

 

 駆け出して放たれるは、モンスターがいつも手にするみたいな石造りな手斧。

 

「こ、れは……ネイチャーウェポン!?」

 

 手斧の一撃を愛剣(デスペレート)で受ける。

 

「クッ!」

 

 パワーがおかしいレベルで吹き飛ばされ掛けた。

 

 アイズが踏み留まったのは偶然でしかない。

 

「成程、奴が言っていた通りの力だ」

 

 自らの拳を見つめつつ、赤毛の女が呟いた。

 

「つ、強い……」

 

 アイズは驚愕する。

 

 見ていたレフィーヤとて驚くしかないし、ルルネは恐怖からか血の気が引いて青褪めていた。

 

 アイズはLV.5である第一級冒険者だが、決して無敵や不死身などではない事は本人が一番理解している事で、常に強くなりたいと考えている程。

 

 だが、弱者でもない心算なアイズではあったけど、目の前の敵はそんな自分を遥かに凌駕している。

 

(LV.6なんかじゃとても足りない、【猛者】より力強い剣だった)

 

 見た目だけなら鍛えられた女だが、その腕力は明らかに筋肉漢(きんにくまん)なガチムチ猪人のオッタルよりもパワフル。

 

(まさか、LV.8?)

 

 単純にオラリオ最強たるLV.7のオッタルよりも強いなら、それは即ち彼女のLV.が7を越えていると考えるしかない。

 

「本気で来い。然もなければ……死ぬしかないぞ」

 

 恫喝でも脅迫でもない、単なる事実として言う。

 

 ゾッ!

 

 言葉に籠められた威圧感に背筋が凍る。

 

目覚めよ(テンペスト)……!」

 

 一言だけ。

 

 それはアイズを【剣姫】足らしめる魔法、風の付加魔法の……

 

「エアリエル!」

 

 吹き上がる風がアイズの周囲を巡る。

 

 それを見た赤毛は驚き、そして歓喜を上げた。

 

「そうか、その風! お前が『アリア』か!」

 

「っ!? 何故、その名を知っているの?」

 

 アリアとはアイズ・ヴァレンシュタインの母の名。

 

 だが、それ処ではなかったのを知らしめす出来事が更に起きた。

 

「うわっ!?」

 

 ルルネが持っていた荷物の中身、不可思議な胎児の化物が入った宝玉が飛び出したかと思えばモンスターに寄生したのだ。

 

「しまった! ええい! 全てが台無しではないか。こうなればアリアだけでも……連れて行く!」

 

 赤毛が何か言っているがそれ処では正に無い。

 

 宝玉が寄生した食人花が他の食人花共を取り込み、次から次へと融合をしていくではないか?

 

 目を見開くレフィーヤ。

 

 その巨体は下半身が根、上半身がヒトの姿を冒涜するかの如く人型。

 

「に、似てる……」

 

「アイツ、あの五〇階層に出てきた?」

 

 前回の遠征時にユートとアイズが斃したモンスターと似た感じで、視るからに気色が悪いモンスターだ。

 

「こっちに来るな」

 

「何処から現れた……と、問い質したいが。こいつは始末する方が先決か」

 

「ああ、そうだね」

 

 慌てないロキ・ファミリアの団長と副団長、ボールスは――『何でてめぇらはんな冷静なんだよ!』とかヒートアップする。

 

 下半身の融合した食人花が周囲を襲い始めた。

 

「狙いはアイズか?」

 

「アイズの風に反応しているのかな?」

 

 明らかに主なターゲットはアイズである。

 

 リヴェリアもフィンも、冷静に事を対処せねはならない身の上、今は慌てずに騒がずに観察を続けた。

 

 アイズは自分が追われているのに気付き、人気が無い方へ誘導していく。

 

 褐色肌のアマゾネス姉妹――ティオネとティオナも攻撃し始めた。

 

 下半身の食人花を斬ったティオナだが、既に首ではなく脚の一部故にか堪えてはいないらしい。

 

 

「借りるぞ!」

 

「へ? あ、リヴェリア様……?」

 

 何処かのファミリアだろうエルフから弓矢を奪ったリヴェリアだが、他の派閥とはいえリヴェリアは謂わばエルフの王族。

 

 ハイエルフだ。

 

 文句も言えない。

 

 三本の矢を矢筒から取り出すと番えた。

 

「フィン!」

 

「オッケー!」

 

 何がしたいか阿吽の呼吸で理解したフィンは走る。

 

 ロキ・ファミリア創立からの付き合い、まだ十代の若造だった彼も今や四十路に突入して久しい。

 

 つまりは、二十年以上の付き合いとなるのだから、これも当然なのだろう。

 

 放たれるは三本の矢で、牽制の意味があるそいつが命中、フィンが透かさずに脚の部位を複数斬る。

 

 ヒリュテ姉妹やフィンとリヴェリアの攻撃により、アイズへの追撃が止まったのを見たアイズも反撃に転じようとするが……

 

「お前の相手はこの私だ、アリア!」

 

「くっ!」

 

 ネイチャーウェポンによる攻撃を、アイズは自身のデスペレートで受ける。

 

「この侭では帰れんからな……付き合って貰うぞ!」

 

「アイズッ!?」

 

 その様子はティオナから見えていた。

 

「もう、うざい!」

 

 とはいえ、余りにも多い攻撃の手……というより脚に援護も出来ない。

 

「ボールス、皆を下がらせるんだ!」

 

「ああ? 下がらせりゃ良いんだな!」

 

 ユートの言葉に従うのは先の躾が効いたのか?

 

 すぐにも実行された。

 

「優雅兄、やるぞ!」

 

「応よ!」

 

《Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!》

 

 赤龍帝の籠手による増幅を行う優雅。

 

「右手にメラゾーマ、左手にベギラゴン……」

 

 ユートは両手に強大なる呪文を籠めた。

 

「合体――閃熱大炎【メゾラゴン】!」

 

 それを一つに融合。

 

「今だ!」

 

《Transfer》

 

 それを第二の能力である譲渡で増幅し……

 

《Penetrate!》

 

 更には第三の能力である透過能力を発動。

 

「「いぃぃぃっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」」

 

 防御無視の閃熱炎球が、巨大なモンスターに向けて放たれた。

 

 

.




 ユートが地味にパワーアップしています。


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