ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】 作:月乃杜
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モンスターは透過により防御を無視され、極大なる閃熱炎に焼き尽くされた。
文字通り焼滅してしまったモンスターなど、ユートも優雅ももう興味は無いとばかりに次へと向かう。
赤毛の女が居る場所へ。
まあ、ドロップアイテムや魔石はアイテムストレージ内に格納されてるし。
向かうとアイズが苦戦を強いられていたのを確認、ユートと優雅が赤毛の攻撃を二人で防いで助ける。
「其処までだ!」
「これ以上は好き勝手させねーぜ?」
白て赤が言う。
「貴様らか!」
赤毛は不愉快そうに表情を歪め、忌々しそうな口調で吐き捨てるが如く。
「ユ、ユート……」
「ユートさん!」
「……」
アイズとレフィーヤと、更にはルルネのリアクションというか……
「俺の名前が出ねーし?」
解せぬとばかりに優雅は呟いた。
「名前を知らないから」
「あ? そりゃ剣姫が言う通りだったな。俺は優雅、赤龍真帝の優雅だ」
詳しく名乗っている場合でもないから、取り敢えずは通り名と名前だけを名乗っておく。
真なる赤龍神帝とも違う赤龍真帝、それは今現在のノーマル状態を指す訳ではなく、この上位版の姿となった場合を示す名前だ。
ユートと優雅のそれは、仮面ライダー剣系のバックルにより、カードを装填して変身をするタイプ。
上位変身とはつまりは、JフォームとKフォームと全融合の王国フォームだ。
Jフォームはちょっとした変化で、Kフォームというのが
また、覇龍も無様に巨大化したあんな暴走形態とかではなく、確り鎧の進化系としての変化をする。
「どうやらパワーアップしての蘇生らしいが、どうやってそんな真似をした?」
「知らんな。銀髪の女が私を生き返らせた以外は」
「ぎ、んぱつ……だと? それはこんな感じか?」
空中に写真を投影してみると、目を見開いて驚愕をする赤毛の女。
「どうやったか知らないが……まあ、良いか。確かにソイツだ」
素直に教えてくれた辺り思う処でもあるのか?
「チッ、ニャル子の介入って訳かよ!」
這い寄る混沌ニャルラトホテプ星人のニャル子……ナイアルラトホテップという神の一存在。
トリックスターであり、
その所為で彼方此方での暗躍が成されていた。
ユートが識るのは基本的にナイアとニャル子だが、ナイアは大十字九郎とその眷属に御執心で、ニャル子こそがユートに御執心だ。
他にも出会った這い寄る混沌も居るには居るけど、別の誰かに御執心だったからユートと深くは関わっていなかった。
例えば、丸目蔵人に御執心だったのが上泉信綱。
剣聖上泉伊勢守信綱本人と吹くが、それだけの剣術を使える腕前でもある。
這い寄る混沌は本性を晒していない状態だと、人間なら紛う事なく人間でしかなくなる為、ユートも正体には気付けなかった。
邪神の介入があった時点で這い寄る混沌の介入とか確かに疑われていたが……どうやらアレが黒幕という訳でも無かったらしい。
扨置き、あの赤毛の能力の上がり具合だが?
ユートは考察する
(さてそうなると、生半可なパワーアップじゃない)
ハルケギニア時代でも、ヴィンダールヴのジュリオに与える力として、火竜山脈にブリミルが封じていたエンシェント・ドラゴンを使ったくらいである。
(元々、【
とはいえ、それは目安のLV.12になれば最下級の神くらいになれるという事でしかなく、中級〜上級に上がるには更に別の意味で経験値が必要だろう。
神々はサーシャから聞いた話が正しければ、出でたその時から姿形に変化は訪れないが、ヒトから神に成った場合はその限りではないらしい。
何しろ、これが千年くらい前に始まった初めての試みであり、古代から現代までに実際に成り上がった者は皆無だから、神々にさえどうなるのかが判らないというのが正しいとか。
随分といい加減な話だ。
(聖衣に神血を掛けたら、神聖衣という夢幻の形へと進化するし、確かにヒトが神に神化してもおかしな事じゃないんだけどな)
何にせよ、現代オラリオでの最高峰がLV.7たる【猛者】オッタルだ。
それだって相当な年月を掛けただろうし、ソコから更に5つもLV.を上げるのは容易ではあるまい。
それこそヒトとして寿命が保つかどうか。
(まあ、寿命はLV.が上がると見た目の変化が乏しくなる辺り、間違いなく延びていると思うけどな)
ユートの拳と赤毛の武器がぶつかる毎、周囲へ激震が奔って空間を揺さぶる。
マルチタスクがあるから考察しながら闘えるけど、それが出来ない者なら疾うに終わっていそうだ。
「迅すぎて見えない……」
アイズはショックを受けてしまう。
この身はLV.5。
第一級冒険者となってより約三年、周りから持て囃されても未だに力を貪欲に求めてきたが、ユートみたいな高みには全く至らず、自分は足踏みをしている。
アビリティの数値などは仮令、第五一層でどれだけ多くのモンスターを殺しても僅かにしか伸びない。
あの芋虫モンスターが出た遠征後、ロキにステイタス更新をして貰ったけど、前回からの伸びは殆んど無かったのだ。
伸びてはいたがそんなのは誤差の範疇。
強くなりたい。
誰にも負けないくらい、お母さんを取り戻しに往けるくらいに。
『――待ってて』
よく視る夢だ。
『――待っててっ!?』
黒いナニかに母親を奪われる悪夢であり、事実上の現実に起きた事への抽象。
『必ず、そこに行くから。必ず、迎えに行くから――絶対に取り戻すから!』
なのに現実のアイズは、全くの足踏み状態。
三年間で今が限界となるならば、必要なのはやはり器の昇華――LV.を上げるという事になる。
LV.5からLV.6へ……器が昇華されたなら、その伸び代は再び上がる。
数値的には今までのものが消える訳でなく、確りと踏襲された状態でオール0にリセットされ、ソコからまた伸ばす形になる。
しかも、器が昇華された時点で今までより明らかに能力が上がるのだ。
それはゴブリンという、最弱モンスター一匹にすら勝てないヒューマンでも、【神の恩恵】を受けた途端に数値がI0でも勝てる様になる事からも判る。
それに……
「ユートは強い」
ユートのあの異常なまでの強さ、その秘密を知りたいと思っていた。
公式なLV.は1であると聞いていたが、明らかに第一級冒険者の自分よりも力量が上である。
そしてギルドに通達しているLV.が偽りでないというのは、アイズ自身が既に背中のステイタスを見て確認もしていた。
まあ、今はランクアップしてLV.2だが……
本人はそもそも【神の恩恵】を受ける前、初めからLV.5相当の能力を持っていたかららしいのだが、そこまで鍛えるのにどれだけの時間が掛かるか?
単純に能力を上げるなら【神の恩恵】を貰った方がやはり早いし、今は伸びが悪いアイズにせよ約十年間でそのLV.5まで上げたのはそれなりの早さだと、首領であるフィンにも絶賛された程だ。
何しろフィンもLV.6という、アイズ以上の能力を持つが年齢は四十路など既に過ぎている。
それだけの年月が必要であり、未だにオラリオ最強のオッタルに追い付かないのが現実だった。
そして今一つ。
今回のダンジョン探索の前に、ティオナと模擬戦をしたら敗けてしまった。
勿論、模擬戦くらいなら何度か行っている。
その度に、勝ったり負けたりを繰り返していたのも事実ではあるが、あの日はアッサリと敗北していた。
信じられない話だけど、ティオナのアビリティは明らかにアイズを越える。
同じLV.5であるし、能力は得意分野で伸び率が異なるが、総合的には大した違いは無かった筈。
技術が上がった訳でないのなら、単純明快にアビリティがアイズを遥かに越えたという事になる。
付与魔法たるエアリエル込みで敗けた為、ショックは余りにも大きかった。
「私は……弱い……」
こんな様ではいつまで経っても目的は達せない。
「強くなりたいっっ!」
アイズはギリッと奥歯を噛み締めるのだった。
一方、レフィーヤ・ウィリディスもアイズと同じく衝撃を受けている。
ユートがLV.の垣根を越えて強いのは知っていた事だし、地上で怪物祭に於いては食人花にエロティカルな目に遭わされた際に、救出されてもいたから理解はしていたのだ。
LV.1ながらLV.3の自分を遥かに越えるし、憧れの『アイズさん』より強いのもおかしくない。
だけど、ユートの魔法を少しだけ見知ったが余りに自分を越えていた。
魔法に関してだけなら、LV.5のアイズやティオナやティオネをも遥かに越える実力を持ち、三つ目の最後の魔法スロットに顕れた魔法――エルフ・リングは条件さえ満たせば同胞の魔法を召喚出来るという、規格外の魔法だったりするくらいのモノ。
その気になれば、リヴェリア・リヨス・アールヴの魔法さえ使えるのだ。
魔法能力の高さだけなら第一級冒険者並と云えて、自分に未だ自信を持てないレフィーヤだが、取り敢えず良いモノは持っていると言われていた。
先天的魔法行使者であるエルフだからだが……
それに対してユートは、種族的には平均的に低めな能力のヒューマン。
アイズもそうではあるが……ヒューマンの魔法行使能力は大概が低い。
それは器の資質的問題。
エルフみたいな高い素地を持たないが故に、魔法という意味ではレフィーヤもアイズを越える。
だけどヒューマンの筈のユートが使う魔法、それは明らかに自分の最大行使の魔法を上回っていた。
「メラゾーマ……カイザーフェニックス!」
今現在、使っている魔法だけでもそうなのだ。
どんな仕組みかは理解が及ばないが、ユートは火の魔法を行使する際に火の鳥に変化させている。
別に変化させたからどうだという話だが、魔導師のレフィーヤから見てアレは明らかに威力が弥増していた為、最初に見た時にそれは衝撃を受けたもの。
しかもユートは【魔導】を持つ魔導師ではないが、どう考えても並行詠唱でもするかの如く動き回りつつ魔法を使うし、そもそもが詠唱をしている様子自体が無かった。
詠唱文の長い魔法は威力が高く、短い魔法は威力という意味では劣る。
なのにユートの無詠唱な
それは威力がレフィーヤの魔力に依存しているとはいえ、仮にもリヴェリア・リヨス・アールヴの魔法を越えたという事。
レフィーヤがユートについて知る事は少ない。
精々がLV.1でヘスティア・ファミリアの団員であるという事、スキルには何かとんでもない事実が有ってティオナと……
考えるだけで赤面してしまう行為に耽っていたが、何故かユートに対してだと警戒心が沸かない。
まるで故郷――ウィーシェの森の香りを放つ樹木の如く、または同胞みたいな感覚で触れ合うのも忌避感を覚えないのだ。
レフィーヤは、基本的に余程の嫌悪感を持たない限りは触れ合いを忌避しないタイプだが、初めて会った相手には多少の躊躇いくらいは持つ。
だけどユートにはそれすら無かった程。
いや、まあ……ティオナとの情事を視て無意識にも自らの股間へ手を伸ばし、ティオナを自分に置き換えて真っ白になったのも理由ではあるのだが……
「ライトニング・バスタァァァァァーッッ!」
そうこう考えていると、ユートが凄まじい魔力を籠めた魔法を、右手に収束させてから赤毛の鳩尾へ叩き込むのが見えた。
「あの女の人、あんな一撃を受けてもまだあれだけの動きが!?」
ライトニング・バスターとやら、レフィーヤの魔導師としての視点から視ると爆裂魔法を右手に収束し、相手を殴り付けたと同時にエネルギーを解放、内部に衝撃を叩き込む必殺技だと見えたが、そんな一撃から普通に戦闘を継続している赤毛もまた既知外である。
レフィーヤはユートや、敵の赤毛を見て口に出す。
「私は……弱い……強く、強くなりたいです……」
それは、憧れのアイズ・ヴァレンシュタインと同じ呟きだったと云う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「やはり、LV.8相当って処か……」
「どうだろうな?」
参ったというか困った。
今のユートは素で視ればLV.7相当、赤毛に能力がワンランク劣る形だ。
闘氣や魔力を使って能力を上げる事は可能、単純に【白龍皇の鎧】を進化形態にするのも良い。
だけど問題がある。
あの
ユートの見立てで最下級の神を造る法と思われる、【神の恩恵】による最大限のLV.12にまで上がる可能性も無きにしも非ず。
そうなると
そうなればアイズにせよレフィーヤにせよ、その他のロキ・ファミリア団員にせよ生き残れるのか?
ティオナはスキル実験とはいえ、肌を重ねた相手なだけに死んで欲しくない。
ならば姉のティオネとて死なせたくなかった。
柵で雁字搦めにはなりなくないが、既にアテナ・ファミリアのみならずヘスティア・ファミリアやロキ・ファミリアやミアハ・ファミリアと友誼を結んだ間柄であり、ディアンケヒト・ファミリアの【
いつもの事。
よく解らない理由で何処かに転移、そこで知り合いを作って柵が出来る。
「どうしたものか……」
いずれは決着しなければならないにせよ、間違いなくこの日この時この瞬間ではないなら、赤毛には逃げられる羽目に陥るだろう。
如何な繰り返そうとも、決して変えられない事象を文学的に【運命】と呼ぶ。
というか、赤毛をニャル子が蘇生させた理由とは、恐らく原典で赤毛は決してこの時に死ななかった筈だからであろうし、況してやイレギュラーのユートだか優雅だかが殺すのはニャル子的にNGだったのか?
ならば此処で自分の力を余り見せたくはない訳で、既に見せた力だけで乗り切るしか無いだろう。
「闘氣くらいなら……否、魔力の方が馴染みあるか」
両方を使い融合をさせる咸卦法もあるが、伸び率が大きくなり過ぎるかも。
ニャル子が関わるだけで途端に面倒臭い。
ハルケギニア時代にしてもそうだ、ヴィンダールヴのジュリオにエンシェント・ドラゴンを与えたら行き成りジュリオが喰われた。
自体はそれでややこしくなったのだから。
「バイキルト、ピオリム、スクルト……三種合体!
ユートが選んだのは先程でもフィンに掛けた呪文、飽く迄も常識的な伸び率を見せるものだった。
「往くぞ、おおおっ!」
「ぬっ!」
まるで瞬動の如く速度で赤毛に近付き、アイズでさえ見切れぬ逸さで拳を揮って殴り付ける。
二人が動き出すと最早、この場では優雅でもなければ事態を掴めない速度で、時に現れては岩壁に激突をしていたり、空気を引き裂く音が彼方此方で響く。
そう、アイズでさえ見切れないくらいであるから、赤毛がLV.7すらも超克しているのは間違いない。
アイズはLV.7である【猛者】と、勝てないまでも見切れないとまではいかないのだから。
まあ、オッタルが速度よりパワーなタイプだからであろうが……
破壊痕がそこら中に出来ているが、ダンジョン内の一部ならダンジョンが勝手に修復してくれる。
一時的な能力ブースト、そしてユート本人の技術が赤毛を上回った結果だが、何とかなりそうだ。
ユートは赤毛の両脚を取ると天高く飛ぶ。
「くっ!?」
逆背中合わせ。
両脚をクロスさせて左手で上側となる足首を掴み、右膝に赤毛の顎を引っ掛ける形で背中を折る勢いにて固めた。
「これは昔に見た超人レスラーの必殺技。完璧・零式奥義……千兵殲滅落としぃぃぃぃぃっ!」
ゴガァァァァァンッ!
ハルケギニア時代の時空放浪期、超人レスラーが闘う世界に行った事がある。
その中でも【キン肉星王位争奪戦】の更に先で起きた闘い、完璧超人始祖襲来というか悪魔将軍の率いた悪魔超人軍による超人墓場襲撃から始まる闘いにて、悪魔将軍と超人閻魔による一騎討ちが起きた。
それにより超人閻魔とは元神で、完璧超人始祖零式のザ・マンだと判明。
その奥義が炸裂した。
完璧超人始祖の闘いを、ユートは全て視ていたから取り敢えず、技の入りから極めまでを頭に入れていた訳だが、確実に扱うのにはまた難しいものだった。
何とか完璧超人始祖弐式シルバーマンの完璧・弐式奥義のアロガント・スパークは使えたが、それにしたってマッスルスパークまでは使えたから、その応用でやれたに過ぎなかった。
尚、その犠牲者は清秋院恵那の持つ天叢雲劍だ。
そのすぐ後のメティス戦を闘い抜き、簒奪した権能――【
その一つが赤毛に使った千兵殲滅落とし。
「ぐっ、まだこの身は完全とはいかないか……」
赤毛は生きていたらしく立ち上がると、バッと一気に後ろの崖っぷちにまで飛んで下がった。
「あ、逃げられる……」
まだ『アリア』を知る事について訊けてない。
アイズは追いたかった、だけど間に合わない位置。
「どうにも分が悪い」
そう言って崖から落下をする形で逃走した。
「チッ、やはり逃げに徹したか……」
後味の悪さと胸騒ぎ……アイズに影を落とした闘争は終わり、取り敢えず凌いだという感じか?
その後、ユートは約束をした通りにリヴィラの街の修復を行う。
【
この力は最近だと本拠地の改装に振るわれている。
想像による創造と云う。
そして一度、このパーティは地上へと戻る事になるのであった。
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