ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】 作:月乃杜
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ヘルメス・ファミリアの面々は神妙な面持ちで見下ろしていた、それは頭が砕けた男や背中に無数の刺し傷があったゴツい女性……その謂わば遺体。
しかも遺体が遺されているのはまだマシ、他に三人ばかり吹き飛んだり食人花に喰われたりして、遺体すら無い仲間も居るらしい。
「キークス、エリリー」
どうやら遺体の名前らしきを呟くアスフィ。
「レフィーヤ、どうやら僕は随分と遅れを取ってしまったみたいだね」
「それは……」
「まあ、僕が一人だけ加わっても犠牲が出なかったとは口が裂けても言えんが、それにしてもあの赤毛……推定LV.はもう8でも収まらないな」
アイズとベート、第一級冒険者を同時に二人も相手取り、赤毛は全く怯みもしなかったらしい。
「いえ、最初は何とかなっていました。でも【
「【白髪鬼】っていうと、確か嘗ての
「はい」
「死んだと聞いていたが、生きていたのか?」
「魔石を得て、モンスターとの
「個人じゃないなそれは。誰かしらが生かして使った……という訳か。魔石を喰って強くなるなら赤毛も、そいつと同じくモンスターとのハイブリッドだな」
「恐らくは」
「面倒な話だ」
ユートは独り言ちる。
何者なのかは知らない、優雅と一つに戻り得た知識から、判ったのはどうやらあの宝玉は連中……そう、“連中”にとっては必要な某かという事。
組織立って動いているのは間違いない。
少なくとも闇派閥が絡んでいるのは、【白髪鬼】が指揮をしていたからクロと見て良かろう。
そして赤毛は闇派閥とは無関係だった。
【白髪鬼】の魔石を奪った事から、利用し合う関係でしかなかったのだろう。
「ルルネ・ルーイ、君らが戦った闇派閥の連中は死兵だったという話だが?」
「え、ああ。身体に火炎石を巻き付けて、神の名前か何かそれを叫びながら自爆してきて……ウチのセインが巻き込まれちまった」
「セイン?」
「アンタのくれた治療薬で治したこいつ」
帽子を被ったエルフを指差すルルネ。
「いやぁ、ホントに助かったよ。君のお陰ですっかり快復したさ」
何故か気障ったらしい言い回しだが、感謝をしているのは違いない様だ。
「何故だろうね、君からは何処かしら懐かしい匂い……みたいなのを感じる」
「! ああ、男でもエルフならそう感じるか」
レフィーヤもフィルヴィスもそうだし、リヴェリアでさえ同じ感想を懐いた。
エルフとは世界は違えど可成り親しくしていたし、何より今のユートは樹というものに親愛を受ける。
それ以前からも津名魅の加護を受けていたらしく、光鷹翼すら自力でハルケギニア時代は二枚、スプリングフィールド時代には三枚も生成が出来ていた。
尚、柾木に転生したばかりの頃は五枚……Zと同じだけ生成が可能だったし、それを越えてからは三次元に十枚、更に高位次元に対して二枚という合計十二枚の光鷹翼を展開が出来る。
お陰ですっかり三頂神に天地と同様、目を付けられてしまった様だった。
まあ、津名魅が一番最初に目を付けていたという事で優先権を主張してたが。
樹に森にと、エルフにとってはやはり懐かしさみたいなのが薫るらしい。
「それにしてもよく効く薬を御持ちですね。どちらで購入された物でしょう?」
アスフィが加わる。
「メルキシル剤か? あれは自前だ。自分で調合をした薬だよ」
「メルキシル剤という名前ですか?」
「まあね」
ユートはアトリエ世界に幾つか行ったが、その中でアーランドに滞在をした際に得たレシピである。
中々に使えるのだけど、【ネクタル】に【妙薬ドラッヘン】に【竜の鱗】に【マーメイドの涙】を使う薬なだけに、調合はちょっと大変な代物だったり。
「容れ物がファンシーに過ぎますが……」
ピンクにメルルっぽい顔が描かれた容れ物だけに。
一応、此方の世界に来てから調合をしたアイテム。
つまり、このオラリオで入手可能な素材から造られているので、誰かに渡しても特に問題は生じない。
「幾ら掛かるかも知れない薬では? タダで配っても良かったのですか?」
「単なる善意じゃないよ。僕の主神が懇意にしている薬神は、知り合いに謂わば胡麻擂りとか言って宣伝用のポーションを配り歩いていてね。気に入ったのなら今度は金を出して買ってくれれば良い」
「ふふ、成程。ではいずれ買わせて戴きましょう」
アスフィも回復薬くらい造れるし改良も出来てしまうが、流石にレシピすらも未知の薬を造れたりはしなかった。
ユートは遺体を見遣る。
(エリリーというドワーフは兎も角、キークスってのは無理だな。頭部が無いとか損壊が激し過ぎるから。況んや、ポット? ポック? とかホセとやらは遺体すら残っていない)
どれも使えるが、問題無く復活が可能なのは損傷が小さなエリリーだけだ。
それにユートは便利な『蘇生まっすぃーん』になる気など一切無く、一人だけを無料で蘇生して後から続く連中に味を占めさせたくはない。
仲間ならまだしも他派閥では、やはり言い訳の仕様が無いのだから。
『生き返らせてやれば良いじゃねーか』
『優雅兄? 知ってるだろうに、僕が蘇生だなんだとやらない理由を』
『一つは蘇生まっすぃーんになりたくない。今一つは次元の魔女と同じくだな』
『そう、何かをするのなら或いはして貰うなら、必ず対価のやり取りをしないといけないんだよ』
『なら、対価を支払わせれば良いだけだろ?』
『目には目を歯には歯を、生命の対価には生命をだ。本来は簡単にはいかない』
『フッ、まあな』
とはいえ、其処ら辺に関してはユートの匙加減次第とも云える。
『どちらにせよ、エリリーだったか? 一人だけ生き返らせても余程の図太さがないと気にするだろ?』
『とはいっても、ルルネがどうも……な』
『ルルネ? あの犬人が? そういや、優雅兄にやって貰った依頼で荷の運び屋は彼女だったか』
何と無く察した。
割と気に入っていたのであろう、赤毛は単純に性欲を満たすだけの道具扱いだったみたいだが、ルルネ・ルーイはお気に入りか何かという訳だ。
本気という事でないのはユートの感情に何も無いから解るし、単純なお気に入りを哀しませたり後悔を出来る限りさせたくない……そういう話か。
対価をどうするのかという話が無ければ確かにアリだが、ルルネを哀しませたくないだけでは動けない。
所詮、オラリオには死が満ちているのだから。
彼女らの死は、オラリオでも世界にも当たり前にある悲劇の一つでしかない。
「はぁ、取り敢えず話は持っていくけどな」
対価は貰うが取り敢えずだが、死んだ四人の蘇生を話してみる事にした。
わざわざ自分から話す様な事ではないが、対価を貰って蘇生をさせるからには自分が蘇生可能なのを話さないと始まらない。
ちょっとしたジレンマ。
「やれやれ、優雅兄からの珍しい頼み事だしな」
基本的には前に出ずに、飽く迄も陰の存在として影に徹する緒方というか柾木優雅なだけに、余程の事が無ければ内部で大人しくしている。
本来はユートにとっては魂の相剋であり、相争うのが運命だった優雅ではあるのだが、そんなの“前世”で“遣り尽くした”から、もうやりたくないと云う。
すっかり丸くなったと、ユートは溜息を吐くしかなかったものである。
「アスフィ、君にというかヘルメス・ファミリアに……となるか? 提案という名の選択肢が在るんだが」
「何でしょう?」
「自然界の理をねじ曲げる覚悟、それからある意味で仲間を喪う覚悟があるなら聞くと良い」
「……覚悟ですか?」
「どうする?」
「覚悟すれば団員が戻って来るとでも?」
溜息を吐きながらやれやれという身振り。
「そうだ」
「……冗談でも言って良い事と悪い事がありますよ」
「冗談でこんな時にこんな事を言う程に、空気が読めない事は無いんでね」
「……聞きましょう」
「それを話すには先ず僕が何者か語る必要性がある。ロキ・ファミリアにそれを告げる心算は無い。だからアイズ達は悪いがちょっと向こうに」
「それは……」
レフィーヤが辛そうな顔で立ち尽くす。
精神力の使い過ぎによる後遺症、自分を護って死んだ二人への申し訳なさなどが綯い混ぜになっており、それが余計に苦しめているのかも知れない。
「残念ながらさっきも言った様に、これは自然界の理をねじ曲げる行為なんだ。レフィーヤにも理解は出来るだろう? 死者が戻るって意味を……さ」
それを聞いて青褪めてしまうレフィーヤ。
死は神ならぬ地上人には基本的に平等に訪れる。
【神の恩恵】を背中に刻まれた冒険者であるなら、LV.の上昇により神へと近付く為に寿命が延びて、更には死に難い肉体に変わっていくのだ。
見た目に若いロキ・ファミリアの首領、フィン・ディムナもLV.6であるから若々しいというだけで、実年齢は四十路を越える。
それでも死なないという訳ではない。
否、目の前の遺体がそれを指し示している。
「判り……ました……」
ベートが眠る場所にまでレフィーヤは下がった。
アイズも言いたい事や訊きたい事は有るだろうが、レフィーヤと共に下がる。
これでも第一級冒険者、他派閥の秘密を知りたがる我侭を、平然と口にする程の恥知らずではない。
「さて、覚悟があるのなら私達の仲間を戻してくれる……とは? 生き返らせるとでも言う心算ですか?」
「慌てなさんな。急ぐ必要はあるけど、これもさっき言ったが僕の事を教えるのが先だ。とはいっても……吹聴されては困るんだよ。仮令、それがアスフィにとって主神たるヘルメスに対してもね」
「……私だけでなくそれは蘇生された仲間も含めて、この場の全員がという意味なのでしょうね」
「当然だ。死者蘇生というのが神々の忌避する行為なのは勿論、余り僕の能力を当てにされても困るのさ。僕は『冒険者蘇生まっすぃーん』になる気は一切合切無いんだよ」
「だから対価を取ると?」
「誰かに無料でやったら、不公平だと不平不満を叫ぶ奴は必ず出るからね」
身の程知らずな恥知らずは実に多いから。
「お金で解決は?」
「御一人様で一〇億ヴァリス戴きます。しかも明確に遺体が残っている場合に限り……だ」
「……残ってない場合は、どうなりますか?」
「一〇〇〇億ヴァリスで」
「ほ、法外にも程がある! 払える訳がない!」
ルルネが叫ぶ。
「それが支払えない程度の相手ならば、生き返らせる価値も無いんじゃないか? なら蘇生なんてせず墓を作って拝めば良い」
「うっ!」
それは道理だ。
生命を金で買いたいならこの程度は安いもの。
金持ちに寿命と引き換えに要求すれば、恐らく容易く支払うであろう。
一年につき一億ヴァリスとか言っても。
「取り敢えず、仮にそれが可能としましょう」
「ふむ、で?」
「どうして貴方は、そんな話を我々に持ち掛けたのでしょうか?」
それが解せない。
アスフィはそう言っているのだろう。
「だから言っているんだ。先ずは僕が何者か話す必要があるってな」
「成程……」
「余り時間は掛けられないんだ。神が存在しない世界なら未だしも、この世界には神と死後の世界が在る。時間を掛けたら魂があの世……天界に召されてしまうからね。そうなれば手出しが出来なくなる」
「! そういう事ですか。そして面白い事を言うものですね、この世界……」
何かを察したらしい。
アスフィは他のメンバーにも他言無用を伝えた。
「先ず、アスフィは察したろうけど僕は異世界からの
アスフィ以外が驚愕して目を見開く。
「とはいえ、僕にとっては異世界巡りなんていつもの事だし、寿命なんかも無いから千年二千年を異世界で暮らし元の世界の元の時代に帰るなんて普通にやる」
「寿命が……無い?」
「そう。とある存在と契約した際に魂へ刻まれた紋様……【共生】、それによってその存在と同じ寿命を得たのが切っ掛けだな」
相手は精神生命体だとか若しくは、高位次元生命体と呼ばれる存在の魔族。
覇王将軍シェーラだ。
ハルケギニア時代に滅び掛けていたシェーラを例のなのはさん――【純白の天魔王】が召喚させ、ユートは彼女に勝利する事により契約をした。
まあ、金色の女王の魔法を使えたり、シェーラが可成り弱体化していたが故に勝てただけだが……
契約をするとその身体にルーンが刻まれる。
処が、高位次元生命体のシェーラは肉体とは即ち、自らの魂に等しい訳だ。
契約したらシェーラの魂とも云える核にルーンが刻まれて、同じくユートにも魂の方にルーンは刻まれ、本来ならシェーラがユートの寿命に従う筈だったが、逆にシェーラの無限に等しい寿命をユートが獲た。
シェーラが滅びない限りユートは不滅。
それ故にユートの転生のスパンが永くなった。
今や光鷹翼の十二枚を持つ頂神に等しい身、だから既にシェーラすらも越えた魂を持っている。
「幾つか巡った世界の中、カンピオーネと呼ばれている存在が、世界に君臨するみたいな世界も有った」
「カンピオーネ?」
「その世界の言葉で意味は【王者】となる。故に彼らは神すら殺す神殺しの魔王とも呼ばれた。何故なら、カンピオーネとは世界に降り立つ神を弑逆した魔王……だからね」
ゾクッ!
神々が降臨して恩恵を与えるこの世界では、神々の弑逆は可成りの罪だろう。
背筋が震えた。
「カンピオーネが王者足り得る理由、それは弑逆した神々から権能を簒奪して、その肉体が神々とも戦えるモノへ進化するから。人間では敵わないからさ」
「因みに……さ、私らから見た場合はどんな感じ?」
「それはルルネ、冒険者の視点でか?」
「あ、ああ」
「何もしない素の状態で、LV.5相当の身体能力。それは確認された事実だ」
「確認されたって?」
「僕自身がカンピオーネ、そして恩恵を受ける前までそうだった」
「なっ!? あ、だったらLV.6以上には敵わないって事か?」
「ハズレだ」
「……へ?」
ユートが首を横に振りながら否定すると、ルルネは目を丸くしながら間抜けた声を上げる。
「素の状態でと言ったろ。僕に限らずカンピオーネは神の権能を持ち、神の氣をその身に宿した存在だぞ。例えば【剣の王】と謳われたカンピオーネ、コイツは如何な駄剣や玩具の剣をも名剣に変えてしまうんだ。『ここに誓おう。僕は僕に斬れぬ物の存在を許さない……この剣は地上の全てを斬り裂き断ち切る無敵の刃だと』という言霊が示す通りに、恐らくはこの世界の超硬金属すら両断する」
この世界の超硬金属とは神鍛鋼と、名前自体は同じであるが別物。
斬る事は可能だろう。
「LV.6だからといって超硬金属より硬いって訳では無いだろ? 耐久がSでLV.6まで駆け抜けたのだとしても」
「それは……」
「今一つ、恩恵を受けたらLV.が上がったのと同じ扱いらしくて、僕もLV.が6相当になっていたよ」
「うなっ!?」
「【
「更に言えば僕は最近になってランクアップしてる。つまりLV.7相当だ」
「【猛者】と互角ぅ!?」
更に叫ぶルルネ。
飽く迄も“素の状態”で恩恵を受けていた場合だ。
ユートにせよ【剣の王】にせよ【仮面の魔王】にせよ【黒王子】にせよ、皆が神の氣を僅かながらも使えるが故に、それを十全として闘えば結果は容易く覆るかも知れない。
いずれにせよカンピオーネは皆が皆、生き汚いとも云われるくらいにサバイバビリティに溢れている。
完全に息の根を止めない限り、油断なぞ決して出来ない面子ばかりだ。
ユートが殺したサーシャ・デヤンスタール・ヴォバン侯爵みたいに。
転生してまで生きているユート本人も含めて。
「さて、僕が異世界を巡り神殺しになったのは理解もしたな?」
「そう……ですね」
「そして先程も言った様にカンピオーネとは、神々より権能を簒奪した存在だ。例えば死を司る神からなら他者に死を与える権能とかだね。ならば冥界を司る神から簒奪した権能とはどんなモノかな?」
「死者を蘇生すると?」
「少なくとも、僕の知っている冥王はそれが可能で、簒奪をしたからには僕にも可能となる。但し、その魂が天界に昇ってしまったらアウトだけどな」
「時間が無いとはつまり、そういう事ですか……」
「死んでから一日は掛けられない。だから対価を聞いた上で今すぐ決めろ。仲間を蘇生するかしないか」
「……少し時間を頂いても宜しいですか?」
「余り遅いと間に合わなくなるから、それさえ弁えるなら話し合うと良い」
アスフィは残されているメンバーを集め話し合う。
確かに対価を気にしなければ魅力的な話。
問題は対価だ。
十億ヴァリスは普通なら法外だが、生命の対価ならそれは安いかも知れない。
まあ、払える払えないは別にしても。
「対価をと言ってたよね、仲間を喪うとも」
「それはつまり、我々の中の誰かを対価に?」
セインとファルガーというメンバーが言う。
「恐らくそうでしょうね。生命の対価は生命、ならば誰かの人生を寄越せと言うのも道理でしょう」
「だ、誰を? ってかさ、一対一が対価なら五人?」
「ルルネ、ちょっと訊いて来なさい」
「私が? うう、判った」
今回の出来事はルルネが原因、ならばこのくらいは引き受けざるを得ない。
「えっと、さ……」
「どうした?」
「うんと、対価ってやっぱ一対一のレート?」
「普通はな。今回はサービスで一人で五人を蘇生させてやる」
「そ、そうなんだ……」
「他に質問は?」
「……っと、遺体が無くなったホセとポットとポックはどうするんだ?」
「心配無い。彼の冥王は、仮初めの肉体を与えて生命を甦らせた。僕にも同じ事が出来るし、ちゃんとした肉体も与える用意はある」
「わ、判ったよ」
頷いてアスフィに報告。
「そうですか。彼が欲しているのは誰でしょうね」
「やっぱ女だと思うけど」
「男性ですからそれは有り得ますか。ルルネを出してしまいましょうかね?」
「ア、アスフィ!?」
「冗談ですよ……多分」
何故か目を逸らされた。
「兎に角、向こうは一応ですが好意で言ってくれているのでしょうし、乗らない手は確かにありません」
「だが、対価にメンバーの誰かを差し出さないといけないのだろう?」
「それでも、死ぬ訳では無いでしょうファルガー」
「むう……それは……」
獣人で前衛のリーダーのファルガー、人当たりの良い無骨な戦士だ。
話し合いも終わった為、アスフィが団長として代表になり、自らがユートの前に立って結果を伝える。
「貴方が欲しいのは誰でしょうか?」
「受けるって事で良いみたいだね」
「ええ、以前にヘルメス様からも言われていますよ。人は……生命は平等ではないとね。ですから一人を差し出して五人を救えるなら……という決断です」
冷静を装ってはいるが、苦渋の決断だったのは想像に難くない。
「そうか。実は僕の派閥は以前に所属していた派閥と同盟関係にある」
「それが?」
「今尚、その派閥は団長になった彼だけでね。メイドとして一人は残したけど。基本的にはウチからメンバーを貸してるんだけど……LV.は兎も角、ちょっと実力に差があり過ぎるのが困りものだ。なので実力に相応な魔導師が居ると助かる訳だね」
「メリル……ですか」
ラブレスはLV.こそは1だが、実力的にはもっと能力が高いからベルの修業の妨げになる。
魔導師役で付いていっているラブレスを除くなら、当然ながら魔導師を新たに加えねばならない。
故に、見るからに魔法使い然とした小人族の魔導師――メリルが選ばれた。
LV.は3だが魔導師である為、純粋な戦闘能力は極めて低いだろうから。
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