ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】 作:月乃杜
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ユートが使う神の権能、それは死者に仮初めの肉体を与え、十二時間に限定の生命として甦らせるモノ。
【
名前の元ネタは【とある魔術の禁書目録】などに出てくるカエル顔の医師で、その二つ名は【
「我は願う。それは深淵の底より来る者、忌むべきはその非道の行い。我が下僕となりて死界の穴より這い上がれ、その名を以て我は命じよう……」
朗々と詠われる聖句。
「【
別に権能の名前を言わなくても発動するが、何と無く慣れみたいなものからか名前を発してしまう。
遺体の有無は関係無く、ボコリと迷宮の地面が盛り上がり、腕がにょきにょきと生えてきた。
「ヒィィィッ!?」
少し怖がりなのか小人族の魔導師メリルが、ホラー映画宛らな場面に絶叫を上げて謎の覆面に抱き付く。
「う、ぐっ……」
「うう……」
「ぁはあ……」
ポック、ポット、ホセの三人が虚ろな瞳で地面から現れたのである。
更にはキークスとエリリーの二人も、光に包まれたと思ったら五体満足な姿で立ち上がった。
「くっ、俺?」
「私、死んだんじゃ……」
「某、食人花に喰われたと思ったのだがな」
「俺、どうなったんだ?」
「私は……」
小人族の双子の姉弟であるポットとポック。
獣人で詩人を自称しているホセ。
アスフィLOVEなやる時はやるキークス。
ドワーフでゴツいけど、実は一番の乙女であるというエリリー。
五人の死者が甦る。
「本当に生き返るとは……こんな事があるなんて?」
アスフィも目の前で起きた奇跡に驚愕した。
正に神の奇跡を簒奪したからこそだろう。
「さて、蘇生組。君らは今現在だと仮に生き返っている状態だ」
「生き返った?」
小人族の少女のポットが小首を傾げる。
「実際、君らは死んでる。それは理解してるだろ?」
「……確かに。それに私は両目が潰れていたのに治っているわ」
「そういや俺も、両手が無くなってた筈なのに?」
「某、喰われたから肉体は消化されたのでは?」
それを言ったらポットとポックは火炎石で自爆し、肉体は木端微塵のミジンコちゃんになっていた。
とはいえ、一発で粉微塵になった双子とは違って、徐々に生きながら喰われたホセの苦しみは如何ばかりかとも思える。
「その状態は五人共が仮初めの蘇生だ。十二時間が過ぎたらまた死ぬだろう」
「「「「「っ!」」」」」
「それを本当の蘇生にするに辺り、君らからは訊いておきたい事がある」
「訊いておきたい事?」
ポットが代表して首を傾げながら鸚鵡返しにした。
彼女は素で毒舌を吐くから余り交渉事に向かないのだが、取り敢えず今が大事な時なのは理解している。
「君らを蘇生するに当たり対価を要求した。此方側の事情も鑑みて魔導師をね」
「まさかメリルを?」
ポットだけでなくポックも驚きに目を見開く。
メリルは双子と同じ種族――
だけど、LV:2で目を惹く特技が在る訳でもなかった双子と違い、メリルはLV:2にランクアップをした際に発展アビリティの【魔導】を得た小人族としては才能を発揮した者。
現在はLV:3で双子よりLV:が高い。
替えの利くポット達とは異なり、【魔導】を得ている魔導師は貴重だ。
それを五人のファミリアメンバー蘇生の為にせよ、そんな貴重な魔導師を渡すなど二人からしたなら暴挙にも等しい。
それが双子、特にポックの持つ純然たる意見。
実際にポットとそういう話をした事がある。
『小人族に期待はするな、だって小人族だから』
自嘲しながらポックが言った科白である。
だけど例外はどんな場所にも存在するものであり、それこそが小人族の英雄と見做される【勇者】フィン・ディムナだし、ポック達と同じヘルメス・ファミリアの魔導師メリルだ。
尚、この話をした時に姉から聴かされたのがフィンの年齢は四十路という。
ポックの倍以上を生き、少なくとも二十数年に亘って冒険者をしていた。
十五年前のゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアによる黒竜討伐失敗を契機とし、フレイア・ファミリアと同じ時期に一気に頂点に立ったロキ・ファミリアの
そもそもにしてロキ・ファミリアの最初の団員で、リヴェリア・リヨス・アールヴとガレス・ランドロックと共に最古参な訳だし、当然ながらそれなりの年齢であるのだ。
LV.が6から上がらないのは、首領であるが故に“冒険”をやり辛くなったのが原因だろう。
自分よりファミリア優先なのは仕方がない。
これはリヴェリアだとかガレス辺りも同様り
そんなフィン・ディムナだが、ポックは憎まれ口を叩きながらも憧憬の対象としていた。
ポックの今際の科白――『サイン、欲しかったな』というのがそれを深く表していよう。
そしてメリル。
小人族ながら【魔導】を得た魔導師、それが貴重でない筈がなかった。
だからメリルと引き換えに生き返って良いのか? そんな思いを持つのは当然の帰結である。
「まあ、単純に能力を上げたいならポットだったか? 君なら可能だけどね」
「ポックが無理なら女の子限定?」
「そうなるな」
当然ながらメリルも可能であり、
勿論、本人がそれを望まないならしないけど。
ナァーザみたく強制される立場ではないから。
「どうやって?」
「僕のスキルにあるんだ。女の子限定で“一発”に付き約一〇ポイント程だが、基本アビリティが上がるのが……ね」
わざわざ“一発”とか、割と解り易く言ったからだろうか? ポットが理解の色を示していた。
とはいえ高が一〇ポイントと侮る勿れ。
単純に出すだけの作業という意味なら、始めてから一〇分も掛からない訳で、前戯からゆっくりヤっても三〇分か其処らで一発。
それこそ一発に限らず、一通りを熟して休むまでの彼是なら、二時間くらいを掛けて三発か四発くらい。
つまり僅か二時間程度をベッドの上にて運動会をするだけで、約四〇ポイントの基本アビリティの+。
まだLV.5だった頃、アイズが遠征で深層域での戦闘を、命懸けで何日間も行ってさえ僅か一〇ポイントも稼げなかった事を鑑みれば、単純に能力を上げるだけならユートのスキルの方が安全で確実だ。
しかも今のユートなら、欲しい部分へ任意に上げる事さえ可能。
ゲーム風に云うと能力値は上がるものの、プレイヤーとしての技能は上がらないから頼り切りも良くなかったりするが……
それでも基本アビリティを上げるだけであるけど、ポットみたいなタイプには垂涎モノのスキル。
無論、これが子のデキ難いユートでなければ孕むというリスクが高い。
と思っていたのだけど、どうやらスキルを発動した場合は孕まないらしい。
このスキル、パッシブではなくアクティブだから、ちょっと詳しく調べてみた結果である。
つまりは冒険者の女性は妊娠の心配をする事無く、幾らでも基本アビリティを稼げるという。
勿論、貞操観念や処女とかだった場合の抵抗など、誘えば必ず引っ掛かるものでもないが、アマゾネスであるならばティオネみたいに特殊な事情が無ければ、実力さえ示せば割と簡単に引っ掛けられそうだ。
尚、現在でこのスキルの恩恵を受けているのは……
リリルカ・アーデ。
ティオナ・ヒリュテ。
ナァーザ・エリスイス。
ラブレス。
ミッテルト。
そして本人は知らないがサンジョウノ・春姫という娼婦、彼女はイシュタル・ファミリアで【神の恩恵】を受けているからユートのスキル対象となる。
娼婦ながらユートに会うまで処女で、軽く男の肌を見ただけで気絶する初心に過ぎる娘だった。
気絶した女じゃつまらないという事か? その度に客はチェンジで放置されてきたらしい。
それは兎も角、ポットは少し考えたものの首を横に振って断る。
「私はポックと一緒に強くなる心算だから」
「ポット……ちぇ」
そっぽを向くポックだが心なし頬が赤い。
双子で常に二人でやってきたポットとポックだが、若しこの姉が頷いたら少し寂しかっただけに、素直にはなれずともちょっとばかり嬉しそうだ。
「なら君らとしては生き返るので構わないな?」
「それは……メルルは本当に良いの?」
「うん。みんなと離れるのは寂しいけど、ポット達がまた居なくなるのはイヤ」
現実に生きて動いて話している五人を見て、これを台無しにしたくないという欲がメルルに湧いた。
本来は取り返しが付かない落命を覆す力、メルルは自分が行く事でそれが成されるならと思ったのだ。
「それじゃあ、肉体を創るから少し待ってろ」
「肉体を創る……ですか、それはいったい?」
「アスフィ、今の五人に与えた肉体は一二時間限定。時間が過ぎたら肉体は消失するし、魂は天界に導かれて死ぬんだが……」
「そういえばそうな事を言っていましたね」
今現在は、生前の肉体を完全エミュレートしているとはいえ、飽く迄も仮初めに与えた肉体に過ぎない。
この完全エミュレートをした肉体のデータを基に、ユートが神器【魔獣創造】の禁手――【至高と究極の聖魔獣】で創造をする。
因みに、今やあの世界のシステムからも離されて、神器システムとは別になっていたりする為、何処ぞのキャンセラーにも無効化は出来ない。
創られた聖魔獣。
とはいってもヒトとして完璧にエミュレートされ、更には上手く恩恵も引き継がれている……けど主神がちゃんと有効化をしないとならない。
後は魂を肉体に宿すだけで終わりであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
帰りは特にトラブルなど無く、普通にリヴィラの街まで戻って一泊……とはいっても宿は高いからユートのコテージ――FFで使われる消費アイテム――を街から離れた場所に展開し、それで寝泊まりをした。
後は朝になってから地上に戻るだけ、本来なら墓を作るとか色々な話もあったのだろうが、仲間の死が覆されたから無くなった。
「それではユート、貴方には我がヘルメス・ファミリアのアジトまで御足労を願います。ある程度の説明をヘルメス様にして頂きませんと、メリルの改宗の為に恩恵に手を加えて貰わないといけませんし」
「そうだな。僕もヘルメスには会ってみたい」
「そうなのですか?」
「随分と愉快な神らしいからね」
「誰からそんな話を?」
「ルルネ」
「――へ? わ、私?」
褐色肌な
「酒を飲みながら話してくれたじゃないか?」
「お酒? ちょっと待って……それってユーガと話した記憶はあるけど……」
あの時に優雅と飲んで、軽く話というか愚痴ったのは確かだ。
「言ってなかったけどね、柾木優斗と柾木優雅は二人で一人の探て……じゃなくヒューマンなんだよ」
「二人で一人?」
「柾木優雅とは本来、実体と呼べるモノは持たない。柾木優斗と柾木優雅という二つと、更に柾木瑠韻という三つ目の人格が一つの魂に同居する多重人格者……それが僕なんだ」
「それってつまり?」
「一時的に優雅兄に実体を与える術がある。そいつを使って仕事を頼んだんだ。それが例の宝玉絡みだね」
「ああ……」
「んで、優雅兄が僕の内に戻れば記憶は共有される。だからどんな会話をしたかも覚えてるし……」
ルルネの耳許にまで顔を近付け……
「キスの感触だって確りと覚えてるよ」
なんて言い放つ。
「うなっ!?」
キスを思い出したのか、真っ赤になるルルネ。
うなじに掛かる吐息とかが余計に想起させた。
ホットパンツとか短髪、見るからにボーイッシュな装いは飽く迄も探索者……冒険者としてのもの。
彼女自身は紛れもなく、女の子なのである。
ユートはイケメンなんかではないが、転生する毎に女性方面に顔が寄るからか整ってはいた。
しかも優雅とそっくりな顔で、自分の唇に重ねた唇を耳許に近付けられては、心穏やかには居られない。
ドッキンドッキンと心臓が早鐘を打つ。
尚、女性側に顔が寄るのは単純に母親の遺伝子が、父親の遺伝子よりも強く出る為である。
最初が緒方蓉子。
次がユリアナ・ド・オルニエール。
その次がアリカ・アナルキア・エンテオフュシア。
現在が柾木清音。
いずれも美女ばかりで、これではユートの顔は男としてのイケメンにはならずとも、中性的な意味合いでは充分に整うだろう。
況してや祖母はアイリ・マグマで、曾祖母が船穂という美女のオンパレード。
整わなかったら遺伝子の奇跡だろう、正しく真逆な意味合いでだが……
それだけに、更には腹黒なイケメン神を間近で見てきた彼女からしたならば、ユートは一推し出来る。
優雅とユートが同一人物に近いなら、問題なんかは派閥くらいしかない。
あの時はアスフィからの宣告に首を横に振ったが、勿体無い事をしたかもなどと今は思う。
優雅は荒々しい感じで、ユートは優しそうだから。
ある意味では一人で二度美味しい相手。
「まあ、取り敢えず君らの主神には会うよ。メリルの改宗の話も確かにあるし」
アスフィが言った様に、改宗には派閥の主神が許可の許、背中の恩恵を弄らないといけない。
だからユートもヘルメスには直に会おうと考えた。
どうにもアスフィらからの反応や説明、胡散臭さが服を着て歩いている神らしいのは理解したし、やはりこういう事は下手に他人任せに出来まい。
ダンジョンを出た一行、フィルヴィス・シャリアは笑顔を浮かべ、同胞の得難い親友……と呼べるかも知れないレフィーヤに別れの挨拶をしていた。
「ユート」
「どうしたフィルヴィス」
「あの日の逢瀬で実は私はランクアップしたんだ」
「へぇ、LV.4にか? それはおめでとう」
「ディオニュソス様の護衛を主にする様になってからというもの、ステイタスの上昇も無くランクアップもしないと思っていたんだ。貴方のお陰だ、本当にありがとう」
やはり嬉しかったのか、一際に美しい笑顔を魅せてくれたフィルヴィス。
「なら、いずれまたダンジョンにでも行くかな?」
「ディオニュソス様の護衛もあるから難しいが……」
それでも頷いてくれた。
顔がほんのり朱に染まっている辺り、前回のデートは割と愉しかったらしい。
その様子をレフィーヤは見守り、『むむむ?』とかちょっと膨れっ面に。
別に“まだ”恋愛的な事まで考えてはいないけど、ちょっと気になる男の子? が他の女の子に仲良くしているのを見るのは複雑なのか? 或いはフィルヴィスがユートと仲良くしているのが複雑なのか、それはレフィーヤにも判断が出来ないでいた。
「む〜。ティオナさんとはあんな事までしておいて、フィルヴィスさんとも仲が良さそうです!」
あんな事……
普段からエロエロな服装だが、正真正銘に裸身を晒したティオナが股を開き、ユートの見た事もない大きさ――ユートのが初めて見るモノだが――な分身を、胎内に受け容れて甘い声で啼いているのを思い出し、レフィーヤはお腹の奥底が熱くなる気がした。
レフィーヤからすれば、あんなティオナは初めて見たから衝撃的だ。
ティオネならフィン限定であんな感じだが……
そもそも、出会った当時からティオナ・ヒリュテは『元気が取り柄』で『色気より食い気』で『姉に双丘の栄養を吸われて産まれた』とか、恋? 男? 何かなそれは? な状態。
快楽的な性格に愉しければ良いと感じるタイプで、それなりにアマゾネス的なファッションは愉しむみたいだけど、男に魅せるとか考えてはいないだろう。
それがあんな女の貌を魅せながら股を開いていた、それがレフィーヤには信じられないくらいの話。
実際に見ても『あれは誰ですか!?』と言いたいくらいだった。
「どうした、レフィーヤ? 百面相をして」
「うひぃやぁっ!?」
急に話し掛けられて驚き叫ぶレフィーヤ。
「ユ、ユートさん?」
「ちょいっと遅れて悪かったな。何かベートも脚とか砕けてたし」
「あ、いえ……」
先程、ユートとティオナの艶事を思い返していたから挙動不審となる。
「まあ、君が無事だったのは良かったよ」
「そ、そうですか?」
「
「きれっ!?」
傷が綺麗に治ったと言われたのだが、ちょっとした勘違いをして真っ赤に。
そういえば大事な部位を視姦された事もあったし、何だか恥ずかしい処ばかり見られている気がする。
それにエルフとして感覚が囁く、ユートの匂いというか気配には【ウィーシェの森】、故郷を思い出させるナニかがあった。
それに関しては王族たるリヴェリア、仲間の先輩たるアリシアも認めている。
それが心地好いのも手伝ってか、レフィーヤを含むエルフはユートに好意的。
「まぁ、また危なくなったら僕の名前を呼ぶと良い。呼ぶとは即ち喚ぶ事に繋がるからね」
「どういう意味ですか?」
「嘗て、ちょっと敵対した奴から力を簒奪してね? それの使い勝手を良くしてみたら、同じ時空間に居るなら扱える様になった」
「えっと……」
「強風の権能ってね」
本来、双方が風の吹いた場所に居なければ発動が叶わない権能だが、印を付けてさえいれば同じ時空間、同じ世界間に居れば発動が容易く可能。
そう、【最後の王】との戦いに関して割れた意見、最後の最後に敵対する事になった草薙護堂から奪った権能――【
一〇の内の一つたる派生能力【強風】だった。
とはいえ、やはりユート・クオリティだろうか?
やり方がやり方なだけに男には使い難く、基本的に女の子にしか使わない。
チュッ……
「へあうっ!?」
額にキス。
これが印の付け方だ。
「ピンチに陥ったなら名前を呼んで。それできっと僕に届くから」
「は、はい……」
完全に陥落した少女の図……かも知れない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ダンジョンから出た後、【ヘルメス・ファミリア】の主神、ヘルメスとユートは会った訳だ。
ロキ・ファミリアは各々が行くべき場へ。
アイズとレフィーヤは館に帰り、ロキからの罰としてメイドさんに。
ベートはディアンケヒト・ファミリアで、砕けていた脚や傷付いた肉体の治療を行っている。
話し合いは進んだ。
「つまりは、エリリー達の蘇生の条件にメリルの改宗をしろと?」
「既に団長のアスフィとは話が付いている」
「それでもと断ったら?」
「僕には閃姫と呼ばれる謂わば従者が居る」
「……それで?」
「能力にセーブ&ロードがある。その力の真髄とは、【死に戻り】ってね。時間を巻き戻して歴史そのものを書き換える。更に上書き型だからこの歴史は無かった事になるな」
ニヤリと笑うユート。
「嘘……ではなさそうだ」
神に子の嘘は通用しないが故に、“ユートの嘘”がヘルメスに通用した。
嘘吐きの真髄とは真実の中に、ほんのちょっぴりの嘘を混ぜる事にあるとか。
そう、嘘は吐いてない。
ユートの閃姫の中には、確かに存在しているのだ。
歴史を書き換えるギフトを持つ少女が。
再誕世界で死に掛けていたのを助けたから。
餓死で。
だけど今現在、喚べない状況でありこの場に居る訳でもない。
嘘なのだ、それが今すぐ可能という事は。
誤解させただけ。
嘘を見抜くからこそ。
「了解したよ。これで僕が眷属を見捨ててしまったら流石にアスフィに見限られてしまうだろうしね」
交渉は此処に成立した。
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