ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

48 / 71
第47話:ロキ・ファミリア首領達のランクアップは間違っているだろうか

.

「それにしても、彼の下には随分ととんでもない人材が居るのですね」

 

「そうだね。時空間を往き来する人間……か。中々に面白い。本当は“彼”の事を見に帰った心算だけど、うん……あの子も面白いみたいだね」

 

 ニヤリとヘルメスは口角を吊り上げながら、ユートが行った先を見つめた。

 

「それに死者蘇生。これは流石に拡散はヤバイね」

 

「すれば我々は彼の報復を受けますね。ヘルメス様も天界に帰る事になるかと」

 

「うわぁ、本当にヤバイ」

 

 淡々と告げるアスフィ、ヘルメスは苦笑いを浮かべるしかなかったと云う。

 

 黒衣――フェルズへ報告をした後、ルルネは三つの鍵を渡された。

 

 オラリオ東区画保管庫、ノームの貸金庫の鍵だ。

 

 ユートとアイズの分も渡されていたから、ルルネは三人で貸金庫まで行く。

 

 開けて吃驚な宝箱。

 

「うわ!? 何だこりゃ? スゲー御宝じゃん!」

 

「スゴい……」

 

 ルルネもアイズも中身に感嘆をしてしまう。

 

 それもその筈。

 

「各種色取りどりな貴石、高価そうながらシンプルで品の良い指環、一角獣の角に本は全部が魔導書か? 随分とまたぶっ込んだな」

 

「スッゲー! これ、全部で何千万……何億ヴァリスになるんだよ?」

 

 魔導書は売り方次第で、それこそ一冊が一億を越えて売却が可能だ。

 

 数冊もの魔導書ならば、それこそ数億ヴァリス。

 

「ユートがあいつらを生き返らせてくれてなけりゃ、素直な気持ちでこの御宝を見る事は出来なかったな」

 

 ルルネの表情は暗い。

 

 五人もの仲間の死は確かにルルネへ陰を落とした。

 

 元々は彼女が受けた依頼なだけに、死んだ仲間達への責も充分過ぎたから。

 

 事実、ユートの識らない原典のコミカライズ版で、御宝を目の前に『こんな物の為に私は!』……と激昂をしている。

 

 この世界では生き返ったから幾らか心も軽いけど、やはり落とした陰が無くなる訳ではない。

 

 安易に『気にするな』とは言えないし、何より本当に気にしないならユートも優雅も見限った。

 

「ふむ、上手く売り捌けば数億ヴァリスか。僕は遅れ気味だったからちょ〜っと後ろめたいが、くれるんなら貰っておこうか」

 

 向こうがユートの働きを知っている上で用意した、ならば後ろめたさを感じていても貰うのみ。

 

「魔法王国アルテナ製か。使えば魔法スロットが増えるとも聞くな」

 

 魔法王国アルテナで製造された魔導書(グリモア)であれば、最大限の三個を越えはしないもののスロットが一個で埋まっていても、二個に増えて魔法が発現をする程の出来だとか。

 

 リヴェリアが御得意様をしているレノアの魔法具店にも、アルテナ製の魔導書を誼で分けて貰ったとかで店内にて競売(オークション)をしている。

 

 今頃は一億ヴァリス越えを楽々と果たしていよう。

 

 とはいってもユートには無用の長物、何故なら既にスロットは三個共に埋まっているからだ。

 

 最大限を越えないなら、使っても意味が無い。

 

(ベルにやっても良いが、どうも誰かが用意したらしい魔導書で【ファイヤボルト】を得てるしな)

 

 ユートの勘が告げる。

 

 あの魔導書は何処かしら神が用意した物だ……と。

 

 カンピオーネとしての勘だが、他の連中とは違って単純な戦闘関連以外にも割と使える。

 

 こうだ……と閃けばそれは大概が事実に基づく。

 

 魔導書の件も、力を喪ったソレを視た瞬間に銀髪の女が閃いた。

 

 何処と無くシルを思わせる鈍色を鮮やかにした銀、そしてベルや自分に向けられた視線。

 

 何処ぞの女神が魂までも見定めようとしていた。

 

 だからこそ勘も働いた。

 

「あ、そうだ!」

 

「どうしたアイズ?」

 

「あの、ね。フィンが貴方に会いたいって言ってた」

 

「フィンが?」

 

「うん。私が二四層の報告をした後、五九層に行きたいって言ったの」

 

「ああ、赤毛が何かそんな事を言っていたな」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「邪魔されては仕方がない……アリアに伝えろ」

 

「――何?」

 

「五九階層に行け。丁度、面白い事になっている」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 アリア=アイズの事なのは把握していて、赤毛からの科白は帰り際にアイズへと伝えてあった。

 

「然し、それとフィンがって意味が解らないな」

 

「何か、珍しくフィンが思い詰めてた……から」

 

「そうか。まあ、ならこれから会いに行こうか」

 

「うん」

 

 ロキ・ファミリアの本拠たる【黄昏の館】に向かう事になり、ユートはルルネと別れてからアイズと共にそちらへ行く。

 

 道すがら話を聞いたら、どうやら五九階層へ向かうのは決定したらしい。

 

 今はその準備に余念が無い様だが、フィンの用事はそれに則したものなのか?

 

 着いた先の【黄昏の館】では、訓練所らしき場所でフィンがスタンバっているのが判る。

 

 金髪で小柄な槍使い。

 

 小さいながらもやっぱり流石にLV.6、存在感というものが周囲の野次馬であるLV.2や3と違う。

 

 少しでも対等なのが同じ第一級冒険者、LV.5であるティオネやティオナ、それにベートだろう。

 

 無事に砕けた脚は治っているらしい。

 

「やあ、来てくれて嬉しいよユート」

 

「とはいっても、アイズも伝言をしてくれただけだ。用件すら聞かされていないんだが?」

 

「僕らが第五九階層に遠征を予定してるのは?」

 

「其処は聞いているよ? あの赤毛が指し示した謂わば何かしらの手掛かり……だからアイズは五九階層に行きたがったし、フィンも遠征に行く予定を立てた。それと僕を呼んだ意味が解らないんだよ。まさか僕に遠征に付き合えとかか?」

 

「実はそれも考えていない訳じゃない」

 

 ギョッとなるファミリアの第三級や第四級冒険者、それとは裏腹に第二級以上の面子、つまりはLV.4以上のロキ・ファミリアのメンバーは驚きながらも、然し歓迎をしているムードで多少の温度差があった。

 

 現在のロキ・ファミリアの第二級冒険者から上は、ユートの実力も正しく把握をしている連中ばかりで、それ以下の者はユートの事を全く知らない。

 

 それが温度差の原因だ。

 

「だけど今回、君を呼んだ理由はちょっと違うかな」

 

「ふむ?」

 

 フィンは槍をブルン! と風切り音を響かせながら振るうと……

 

「僕と戦って欲しいんだ」

 

 などと宣った。

 

「だ、団長!?」

 

 驚いたのはティオネ・ヒリュテである。

 

 ティオネは当然ながら、初めてのロキ・ファミリアとの邂逅時に居た一人で、ユートの実力を何度か目の当たりにしてもいた。

 

 話だけは聞いていたし、故にユートがLV.1ながら素でLV.6相当なのも知っており、前回の事件でLV.2――LV.7相当になったのもアイズからの情報で聞いている。

 

 あのフレイヤ・フレイヤの団長、【猛者(おうじゃ)】オッタルと同レベルだ。

 

 如何にフィンとはいえ、只では済まないであろう。

 

 尚、何度も記しているがLV.7相当なのは素での話である。

 

「勿論、対価は用意した」

 

 其処には大きな袋が幾つも積み重なっていた。

 

 ジャラッという金属音、恐らくはヴァリス硬貨。

 

「僕の個人資産で十億だ」

 

「それはまたぶっ込むな」

 十億ヴァリスともなれば相当だし、恐らくはフィンがロキ・ファミリアを結成してから貯めたお金だ。

 

 多分だが全財産だろう。

 

 給金制度ではないから、ファミリアの団長となれば動かせる金が増える訳では無いだろうし、昔に個人で潜って獲た資金だと考え、十億ヴァリスの袋群を自分の資金庫に格納した。

 

 間違いなく十億ヴァリスが加算される。

 

「確かに頂戴した。これだけの額だし、オラリオでも一、二を争うロキ・ファミリアの団長とはいえ個人で動かす金としてはすっからかんだろうに。其処までして遠征前の大事な時期に戦いたいとなると、ひょっとしなくてもランクアップを狙っているかな?」

 

 周囲の団員がざわめき、人形姫とまで呼ばれているアイズでさえ目を見開く。

 

「正解だ。普通なら流石に僕も自重をしたんだけど、アイズを狙う赤毛の大女は少なく見てLV.8以上の実力だと報告を受けたよ。となると、今までのLV.では居られないさ」

 

 フィン・ディムナ。

 

 ガレス・ランドロック。

 

 リヴェリア・リヨス・アールヴ。

 

 ロキ・ファミリア発足から黎明期を駆け抜けたという最初期メンバーであり、この中の一人を抜粋しただけで物語が成立する程に、重厚な人生を生きてきたのだと解る。

 

 ガレスは兎も角として、フィンもリヴェリアも各々が【超凡夫(ハイ・ノービス)】や【千の妖精(サウザンド・エルフ)】を後継者に見定め、育成をしている真っ最中だった為に、ある意味では一線を退いた形でLV.6からランクアップを何年も果たしていない。

 

 だが、後身たるアイズがランクアップしてLV.6になり、すぐにもベートやヒリュテ姉妹も駆け上がる事は想像に難くない。

 

 【千の妖精】レフィーヤ・ウィリディスも今でこそLV.3だが、基本アビリティ次第ではすぐLV.4に……第二級冒険者としてランクアップする筈。

 

 フィンとしては願わくは【超凡夫】ラウル・ノールドも、この遠征中とまでは言わないまでも成るべく早くLV.5になって欲しいと欲もある。

 

 云ってみれば戦闘者から育成者に半ばなっていて、ランクアップを果たす為の偉業に挑めない環境だ。

 

 其処に現れたのがLV.こそ駆け出しでありつつ、実力は自分と同等でもありながら、ソロで第五一階層に降りた強者のユート。

 

 今やランクアップをしてLV.2がとなったから、既に実力だけでも【猛者】と同等と云えた。

 

 ならば七面倒臭い迷宮で偉業達成より、ユートとの本気の戦いでなら或いはと考えたのである。

 

「まあ、戦うだけで十億ヴァリスは流石に取り過ぎ。与えられたモノには須くそれに見合うだけの代償が、対価が必要だよ。与えすぎてもいけない、奪いすぎてもいけない。過不足なく対等に均等に……でないと、様々にキズが付くからね」

 

「ならば?」

 

「リヴェリアとガレスも、“フィンと同時に”相手をしようか」

 

「なっ!?」

 

 驚愕したのはフィンだけでなく、周りに居た団員達も同様であった。

 

 幾ら実力が【猛者】とも同等とはいえ、この三人が同時に掛かればオッタルとはいえ勝ち目は無い。

 

 否、少なくとも無傷では決して居られないのだ。

 

 首級は落ちねど腕や脚に欠落は覚悟する必要が……

 

「フッ、恩恵に頼り過ぎてる君らに敗ける気はしないってね」

 

「どういう意味かな?」

 

「流石に第一級冒険者なら理解してるだろ?」

 

「む、う……」

 

 苦々しいフィン。

 

 そう、理解している。

 

 遥かな昔の英雄達は恩恵も無く戦わねばならなかったが故に、己れの全てを引き出さずにはいられなかったのに対して、神が安易に可能性という力を引き出す今現在、それに頼り切っている節が見られた。

 

 例えば恩恵に無い力など有り得ない。

 

 例えば魔法種族なエルフが恩恵無しには使えない。

 

 正に便利になった弊害。

 

 一応、エルフには恩恵無しでも魔法は扱えるらしいのだが、ユートは恩恵関連以外の魔法を見た事がまるで無い。

 

 リヴェリアにレフィーヤにフィルヴィスにアリシアにリュー、オラリオで知り合いのエルフ自体が少ないとも云えるが、五人が五人共に割と強い魔力持ち――恩恵で強化されてる――な訳で、特にリヴェリアが使えないなら他も同じというのは納得してしまう処。

 

「さあ、実験を始めよう」

 

 何処かの戦う兎みたいな科白を宣うユート。

 

 これは正に実験。

 

 LV.6をして恩恵へとおんぶに抱っこだという、謂わば証明をしようとしているのだから。

 

 当たり前だが周囲の団員は虚仮にされたみたいで、面白くないといった顔をしながら、ユートがボコられるのを見ようとしている。

 

 だが、ティオナやアイズはユートの言葉に偽りが無い事は理解をしていたし、ベートも面白くは無くともやはり理解していたから、特に何か言う心算は無い。

 

 ティオネは愛しの団長にあんな口を利いたのが面白くないだけで、ティオナと同じくアマゾネスとしての本能が訴えていた。

 

 子宮に直撃をする様な、甘い電撃的な衝動がだ。

 

 既に団長――フィンへの想いが在るから頷けないだけで、若しフリーだったらティオナと同じ選択をした自信がある程だ。

 

 ユートの子胤が『欲しい欲しい』と疼き、御股の方が受け容れ体勢を整えるのだから冷や汗モノ。

 

 訓練所に設えた闘技場、それなりの広さを持つ場に立つは四人、ユートを相手にフィンとガレスとリヴェリアの三人が対する。

 

 驚きはしたがユートを侮れないと、フィンの親指が疼いているからリヴェリアも後方で魔法の準備をし、ガレスは前衛でドッシリと斧を構えていた。

 

 ハイエルフの【九魔姫】とドワーフの【重傑】が、小人族の【勇者】と組んでたった一人と戦う図。

 

 珍しいを通り越す戦い、リヴェリアの弟子的扱いなレフィーヤも識らない。

 

 年齢が一桁な幼い頃からダンジョンに潜るアイズ、それでもこんな絵図なんて見た事が無かった。

 

 冒険者は冒険で死に易いから、最初期メンバー以外に実は初期メンバーが居ないが故に、彼らが揃っての戦闘など滅多には無い事も手伝って、アイズすら識らないレアな戦いだった。

 

 見られない理由は簡単、フィンが第一隊を率いての遠征などでは、リヴェリアが魔導師部隊を取り仕切って纏め、ガレスは第二隊を引き連れて動く形だから。

 

 同じ場所に居ないから、同じ戦場では戦わない。

 

 何より実力が高い三人が同じ相手に挑む、そんな事が起きるならそれは=全滅に近い被害を受けた後という事になるだろう。

 

 始まりのゴングは無く、リヴェリアはフルバックとして魔法の詠唱を始めて、ガレスがフロントアタッカーとして突進し、フィンはガードウィングとして動くのを前提にロキ・ファミリア三大幹部――この場合はロキが首領――は戦う。

 

「――え?」

 

 ガンッ! という鈍くも甲高い音と共にフィンがぶっ飛んで、闘技場の外へと弾き出されたのと同時に、リヴェリアの【魔導】で作られた魔法陣が消え去り、次の瞬間にはガレスが顎を打たれて空中に舞ったかと思えば、そんなガレスの背に乗ったユートがサーフィンみたいに前進し……

 

「ヌオオオオオッ!?」

 

 壁へガレスの頭から激突させていた。

 

「ガハッ!」

 

 更にガレスの身体を床の代わりにバックジャンプ、丁度良く跳躍の最大点へと到達したら、手にはでっかい火球を湛えて放つ。

 

「メラゾーマ!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 リヴェリアが火炎呪文に巻かれてしまった。

 

 そして闘技場の中央へと威風堂々と立つユート。

 

 まさかのLV.6の三人を秒殺に、その凄まじさが見えもしなかったその事実に誰もが口を開けない。

 

 LV.5の幹部は一応、ある程度は見えていた。

 

 だけど本当に霞んで見えた程度でしかなったから、対処が出来たかと訊かれたら首を横に振る。

 

「っそだろ?」

 

 嘗ては自分こそを秒殺にした三人が、秒殺されてしまった様にベートは掠れた声で呻いた。

 

「戦いの真髄とは相手に力を出させず勝つ事。まんまと魔法なぞ使わせないし、わざわざ力自慢と力競べなんてやらない。技巧派相手に技の打ち合いなんて以ての外だろうね」

 

 魅せる戦いなプロレスなら批判モノな戦い方だが、命懸けのダンジョン探索をするなら正しく真理。

 

「だ、団長ぉぉぉぉっ!」

 

「リ、リヴェリア様ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 ティオネとレフィーヤが叫びながら駆け付けるが、ガレスには『ガレスさん!』とラウルが駆け付けた辺りが物悲しい。

 

「凄い……」

 

 スピードが心情みたいな戦い方だからか、アイズはベート以上に見えていた。

 

 それでも見切れない。

 

「まあ、これだとやっぱりランクアップにはならないだろうし、少し押さえないと駄目……かね」

 

 秒殺のレベルでは偉業も何も無いだろうから。

 

「な、何をしやがった?」

 

「戦いに関して説明するのもアレなんだがな」

 

 ベートからの問いに苦笑いをしながら説明開始。

 

「先ずはリヴェリアの魔法をAMF――アンチ・マギリング・フィールドを発生させて封じ、スピードにより掻き回す心算なフィンより疾く動いて横薙ぎ一閃、闘技場から弾き出してからガレスを掌底で上空に飛ばしてすぐ、マッスルインフェルノで潰してリヴェリアにメラゾーマ、大火球を放って〆たって感じだ」

 

 ユートの説明は一連の動きを話したが……

 

(とはいえ、マッスルインフェルノは未完成版の更に不完全バージョンだけど)

 

 マッスルインフェルノ、それはキン肉星王位争奪戦にてキン肉マンゼブラが主に使った技だが、本来なら相手の周囲を飛び回っての背後で上空へ一蹴しつつ、その侭サーフィン状態へと移行して壁にぶつける技。

 

 ユートのはそれをしない謂わば不完全な技だった。

 

 問題なのはこれだけの事を一分以内、秒殺という形で行ったという事。

 

「ま、魔法を……封じる……とは?」

 

 火傷を負ったリヴェリアが同族……アリシアに肩を借りて質問してきた。

 

「アンチ・マギリング・フィールド。魔力結合を阻害するフィールドで覆う為、敵味方拘わらず魔法が成立しなくなる。此方は魔法を使わなければ良いだけだ」

 

「最後のは……魔法ではないのか?」

 

「あの瞬間だけAMF解除をしたんだ。術者だけに、ON/OFF自在だよ」

 

「そういう……事……か」

 

 相当に辛いらしい。

 

「ベホマ」

 

 輝きがリヴェリアを覆って傷を癒していく。

 

「これは、ダメージが癒えていく……のか?」

 

 リヴェリアも治療魔法を扱えるから解る光。

 

 程無くリヴェリアは完全に快復をしていた。

 

 回復系呪文は幾つか存在するが、ゲームだと数値の違いで威力を表す。

 

 ホイミで約三〇程度。

 

 べホイミで約八〇。

 

 ベホイムで約一六〇。

 

 ベホマが完全回復。

 

 これが現実だとどうなるのか? というと完全治療までの時間が変わる。

 

 例えばベホマで数秒間としたら、ベホイムで十数秒掛かる感じだろう。

 

 よく考えたら解るけど、どの呪文も回数こそ変われど完全回復は出来る。

 

 その回復の回数が時間という訳だった。

 

「回復はバッチリしてやるから始めようか?」

 

「な、何をかな?」

 

 いつの間にかティオネに支えられて来てたフィン、そしてラウルに肩を借りるまでもないと単独で歩いてきたタフネスなガレス。

 

「LV.6の蹂躙劇」

 

 言葉通りとはやらずに、ユートは三人を相手取りながらぶっ飛ばす。

 

「莫迦な! レア・ラーヴァテインが効かない?」

 

 【九魔姫】の二つ名……背中の恩恵に刻まれている三つの魔法、それをそれぞれ段階的に詠唱文を増やす事で効果が三段階の変化をする事から来ている。

 

 例えば吹雪の魔法【ウィン・フィンブルヴェトル】から更に詠唱すると、炎の魔法【レア・ラーヴァテイン】に変化→【ヴァース・ヴィンドヘイム】に変化をする訳だ。

 

 攻撃と防御と回復の三種がそれぞれ三段階、つまり九種類の異なる効果の魔法を扱えた。

 

 レア・ラーヴァテイン、つまりは炎の魔法という訳だからユートに効かない。

 

「悪いけど魔法を使うなら前段階、ウィン・フィンブルヴェトルの方が良かっただろうね」

 

「どういう意味だ?」

 

「僕は最高位の精霊神との契約を果たした契約者だ。しかも四魂契約者(フル・コントラクター)と云い、四大元素の精霊神とだよ。精霊術師にその属性の力は効果を成さない。炎術者に炎系統で火傷はしない」

 

「な、何と!?」

 

 雷撃か氷雪か閃光系統、或いは樹木でも良いだろうけど、炎、水、土、風でのダメージは受け付けない。

 

 また、ユートの真属性は【闇】であるから闇系統や影系統も無駄だ。

 

「確かに耐性のあるモンスターには効き難いが……」

 

 まるで効かないのも少し珍しいかも知れない。

 

「続けようか」

 

 こうして最上位幹部である三人は、その日の夜中にロキからステイタス更新を申し出て……

 

「フィン、ガレス、リヴェリア……LV.7キタァァァァァァァァァァッ!」

 

 ロキをして喜びと興奮から絶叫をさせたと云う。

 

 

.




 何かロキ・ファミリアの首領が弱く感じる形に……

 一応、詳しい説明は次回に回した感じです。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。