ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

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第4章:昇格
第48話:ベルの真・訓練メニューは間違っているだろうか


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神会(デナトゥス)?」

 

「うん。私も遂に……って感覚は無いんだけどね? LV.2の子が出た訳じゃない? 早い話がユートなんだけど」

 

「まあ、そうだね」

 

「だから呼ばれる筈!」

 

 神会に出る為の条件は、LV.2以上の冒険者を自らの派閥に持つ事。

 

 今まではそもそも冒険者を持たないフリーだったから呼ばれる呼ばれない以前の問題だったサーシャは、ユートというファミリアのメンバーを得て僅か一ヶ月と少しで神会に行く権利をもぎ取った。

 

「それにしても……」

 

「何?」

 

「んにゃ、何でも」

 

 喋り方が昔と比べて大分変わったと思う。

 

 聖域より以前、射手座のシジフォスにイタリアから連れ出される前の彼女は、漫画での描写から一応判っていたが、それともまた違うが明らかに聖域に居た頃とも違う話し方だ。

 

 恐らくはこの世界の神々との会話から、以前と違った話し方になったのだろうと推測が出来る。

 

「さて、出掛けるか」

 

「あれ? また私を放っておいて御出掛け?」

 

「人聞きの悪い。サーシャの事は本拠地に居る時に、ちゃんと相手してるだろ」

 

「もっと構って欲しいって思うのは悪い?」

 

「悪くは無いけどゴメン、やっぱり柵ってのはある。サーシャの相手は落ち着いたらって事で」

 

「……仕方がないか」

 

 我侭は言えない。

 

 ユートが自分の許へ改宗してくれただけで救われたと考えねば、泣く泣く改宗を了承してくれた神友――ヘスティアにも悪いし。

 

「行ってらっしゃい」

 

「ああ、行ってきます」

 

 こんな当たり前な挨拶を交わせる事を喜ぼう。

 

「テンマ、アローン兄さん……私達は生きています。貴方達の来世はどうだったのでしょうか?」

 

 偶には過去に想いを馳せる事もあるのだが……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「あの、ユートさん?」

 

「どうした?」

 

「僕は何で連れ出されてるんでしょうか?」

 

 ユートは本拠地から出る際にベルを連れていたが、無論ながら男とデートなんてする気は更々無い。

 

 目的があって連れ出したのである。

 

「ベル、君はヘスティア・ファミリアの団長だ」

 

「は、え?」

 

「まだまともに団員が居ないから自覚に乏しいけど、いずれはポツポツでも団員が増える……かもだ」

 

「かも……ですか」

 

 こればかりはベル本人の頑張りが必須。

 

 今現在のヘスティア・ファミリアはギルドランクEであり、構成員はLV.1の初心者団長のみ。

 

 正確には生活班的な形でミッテルトを残したけど、飽く迄も彼女の派閥内立場とは萌衣奴(メイド)でしかないのである。

 

 ヘスティア・ファミリアに在籍させているだけで、要は派閥同盟(クラン)全体の生活を切り盛りするのが御仕事という訳だ。

 

 掃除に洗濯に料理など、ミッテルトはもうプロ級の腕前で行えた。

 

 当然、ユートに対しての御奉仕も……である。

 

「そんな時に何ら力も知識も有りません、そんなのが許されると思うかベル?」

 

「う、思わない……です」

 

「ベルならそんな団長を信じて付いていくか?」

 

「遠慮したいかなぁ」

 

 実際にどうかは兎も角、ベルの心境としては勘弁願いたいらしい。

 

「だけどベルは今だとそんな存在なんだ」

 

「う、うん……」

 

「だからお前は鍛え学ばねばならない」

 

「鍛え学ぶ……」

 

「知識はエイナに頼める。問題は力を鍛える方だ」

 

「ユートさんが鍛えてくれるんですか?」

 

「LV.7相当と模擬戦、ヤりたいか?」

 

 ユートの質問にブンブンと激しく首を横に振る。

 

「レ、LV.7っていったらフレイヤ・ファミリアの【猛者】と同じですよ?」

 

「そうだな。戦れば勝てると思うよ」

 

「本当ですか?」

 

 “素の力”でLV.7、それと同じだけの能力。

 

「ああ、能力は同等な筈だから……ね」

 

 寧ろ恩恵無しでも勝って魅せる勢いで。

 

「けど、ユートさんじゃないとしたらいったい?」

 

「すぐに判るから黙って付いてきな」

 

「は、はぁ……」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 そうして連れて来られた場所、それはベルは来た事が無いが【黄昏の館】――ロキ・ファミリアの本拠地だったと云う。

 

「あの、此処は?」

 

「ロキ・ファミリアの本拠地である【黄昏の館】」

 

「へ? うぇぇぇっ!?」

 

 主神たるヘスティアとは犬猿の仲であり、二人に付いた渾名は【ロリ巨乳】と【ロキ無乳】だとか。

 

 そしてベルの憧れの君、アイズ・ヴァレンシュタインが所属するファミリア、なれば当然だが彼女はこの館に住んでいる。

 

「何だ、またお前か」

 

「っ!?」

 

 館に近付くと門番をしていたのは、名前も知らないヒューマンの青年だけど、前にユートが冒険者依頼をフェルズから受けた際に、此処へ来た時も彼が門番をしていた。

 

 そしてロキへの取り次ぎをして貰えなかった訳で、やれやれと肩を竦ませるしかない。

 

「で、また通してくれないのかな?」

 

 青年は睨み付けてくる。

 

「何をしてるのよ!」

 

 もう一人は女性であり、猫耳から猫人(キャットピープル)らしい。

 

「貴方はユート・柾木さんですね?」

 

「ああ、フィンとロキに呼ばれてるんで参上した」

 

「はい、聞いています」

 

 猫人の女性は頷いて門を開いてくれた。

 

 約束をした時間に黒髪で黒瞳の青年が来る事自体、彼女も聞かされていたからすぐに対応をしたのだ。

 

 それに彼女からしたら、喧嘩を売られても困る。

 

 ユートが団長達、ロキ・ファミリア最高戦力を相手に圧勝したのを、模擬戦を観て実は知っていたから。

 

 LV.6の三人を相手に圧勝、LV.2でしかない彼女からしたら敵対するのは悪夢でしかない。

 

 団長からも言われているのだから通せば良いのだ。

 

 それに青年の巻き添えは御免被る。

 

 前にユートを相手に彼は莫迦をやり、ロキからこっぴどく怒られた挙げ句に、団長や副団長らからも睨まれてしまった。

 

 LV.2でも上位でいずれはLV.3になれると、彼女に対して嘯きナンパ紛いをされた事もあったが、最早見る影も無かった。

 

 【黄昏の館】の団長室に案内され、入ると其処にはフィン・ディムナだけでなくロキやガレスやリヴェリアが立っていた。

 

「やあ、ユート。よく来てくれた。時間通りだね」

 

「返事に来た」

 

 軽い挨拶を交わして話を始める二人。

 

「今度のロキ・ファミリアの遠征、それに付いていく事はオッケーだ。サーシャ――アテナも許可を出したからね」

 

「そうか、助かるよ」

 

 公式にはLV.2とはいえども、ロキ・ファミリアの首領と最高幹部陣を瞬殺する戦闘力、五九階層では何が起きるかも判らないから是非とも来て欲しいと、あの日の模擬戦の後に勧誘をされた結果、サーシャに相談をしたユートは許可を得てこうして返事をする。

 

「それに当たって幾らかの取り決めをするのは当然として、対価の代わりに少し頼みがあるんだが」

 

「察するに彼かい?」

 

 フィンはベルを見た。

 

「確か、ベートが謗った……改めて済まないな少年。我々のファミリアの者が、君に無礼を働いて」

 

 リヴェリアが先の酒場での事を謝罪するが、ベルは恐縮してしまって困った顔で慌ててしまう。

 

「ベルはヘスティア・ファミリアの団長。とはいえ、実質的に一人しか居ない。アテナ・ファミリアとミアハ・ファミリアが同盟を結んだクランで活動はしているけど、LV.もまだ1でしかない」

 

「ふむ? クランとは?」

 

「ギルド……じゃないな、複数のファミリアが合同で動く場合の呼び方……とでも思ってくれれば良いよ。団員が少なかったり弱体化したり、そんなファミリアが寄り集まったのさ」

 

「成程……」

 

 得心がいったのかフィンは頷いて先を促す。

 

「ベルはまだ弱い。戦い方もなっちゃいないんだよ。一応はある程度ながら教えているけど、余り伸びが良くなくてね」

 

「それは基本アビリティがという意味かな?」

 

「否、そっちはバンバンと伸びている。これでも伸び盛りみたいでね。けど技術が追い付かないんだ」

 

「そういう事か。前に言っていた冒険者が恩恵に頼り過ぎているっていう」

 

「それでも第一級冒険者なら技術を磨いている」

 

「確かにね」

 

 ベルは弱い。

 

 だけど決して雑魚ではないと、自らが証明をするかの様に邁進している。

 

 あの日、ベート・ローガに謗られたあの時に思ったのは『何もかもが足りないなら、何もかもしなければならない』という現実。

 

 まあ、本来ならその足でダンジョンに突撃をかましたのだろうが、この世界線では生憎とユートに捕まってロキ・ファミリアの宴会に同席させられたが……

 

「さて、そんな弱々しい事この上ないベルなんだが、取り敢えずロキ・ファミリアから人を借りたい」

 

「誰をかな?」

 

「それは……」

 

 一拍置く。

 

「アイズ・ヴァレンシュタイン」

 

 フィンからの確認を受けて堂々と宣うと……

 

「ええええええええええええええええええええええええええええっっ!?」

 

 ベルの絶叫が館内に響いたのだと云う。

 

「ちょ、ちょ、ちょっ! ちょっと待って下さいよ、ユートさん!?」

 

「どうした、ベル? 嬉しくないのか?」

 

「う、嬉しいか嬉しくないかで言えばそりゃあ勿論、嬉しいに決まってますよ! だけど何の脈絡も無く、こんな頼み事なんて?」

 

 慌てるベルは真っ赤な顔をしながら腕を振ったり、或いは指先を彷徨わせたりと忙しない。

 

「言ったろベル。君には何もかもが足りないんだと。知識はギルドで補完も出来るさ、エイナが幾らでも教えてくれるからな」

 

「うう……?」

 

 此処に来るまでに言っていた通り、エイナ・チュールならば嬉々として勉強をさせてくれるだろう。

 

 時間が許す限りは。

 

 エイナは受付嬢であり、ベルのアドバイザーでもあるから、ベルへの勉強に関しては『業務です』の一言で済むのだから。

 

 それにどうも弟みたいに感じているらしいエイナ、他の冒険者に対するよりも明らかに特別視している。

 

 尤も、ベルは勉強が好きという訳でもなさそうだ。

 

 眼鏡女教師とマンツーマンで個人レッスン、美味しい萌え要素だと思うが……

 

「だけど戦闘経験はエイナじゃどうにもならない」

 

「はい」

 

 エイナ・チュールは決して戦闘者ではないから。

 

「然し、それでアイズをというのは何故だい?」

 

「【神の恩恵(ファルナ)】では経験値(エクセリア)を蓄積させる為に、冒険者は戦闘行為をする訳だが……弱い相手からは雀の涙程度にしか入らない経験値が、強い相手からだと多量に入ってくる。まあ、当たり前といえば当たり前だけど。これは単純に強さによるのだけでなく、相手が強いと高いストレスに晒されるのが原因と視ている」

 

「ふむ? ストレスね」

 

 敵が強ければ死に直結をする故に、人間は精神的にストレスを抱え込む。

 

 ユートはヘファイストスから恩恵について訊いた事がある――ヘスティアじゃないのはロックすら識らない彼女が判ると思わなかった――訳だけど、その際の回答から予測したのが今回のベルに答えたこれだ。

 

 そもそも恩恵は与えている神々でさえ未知であり、よく理解が出来ていないと云うとんでもな代物。

 

 ギルドを創設して祈祷によりダンジョンを封じているウラノス、彼の老神により初めて造られた概念。

 

 それが爆発的に神々の中で広まり、千年という刻が経った今現在までこうして使われていた。

 

 それでも尚、プレイヤーたるヒトは疎か神々さえ、全容が見えないのである。

 

 何故ならヒトに与えられる【神の恩恵】とは即ち、ヒトの中の“可能性”というモノを発掘するから。

 

 本質的には有限であれ、ヒトの数だけ可能性という名の未知が在り、無限にも思えるナニかに満ち充ちているもの。

 

 娯楽に飢えた神々からすれば正に愉しいゲーム。

 

 だけどだからこそか? 神々も全容が解らない。

 

 どうして基本アビリティや発展スキルが得られているのか、魔法やスキルなどが発現するのか?

 

 経験値が溜まるシステムはどうなっているのか?

 

 一応は調べたのだろう、だけど完全には理解に及ばなかった。

 

 ユートは経験値の多寡というのは、ストレスで判断されていると考えている。

 

 人間は感じる感じないは兎も角、行動の一つ一つにストレスを持つ。

 

 ストレスとは生命体が持つ謂わば防衛反応、歩くだけでも無意識に感じているストレス、これが戦いともなれば凄まじいものだ。

 

 このストレスに反応して【神の恩恵】は経験値としており、基本アビリティを上げていくのではないかと推測をしていた。

 

 弱い敵より強い敵の方がストレスは強まる。

 

 だから経験値足り得た。

 

 意思など持たない恩恵、それがいったい何を基準に経験値(エクセリア)としているのか? ストレスだと答えれば何と無くストンと腑に落ちた。

 

 どんな場面でどんな場合にどの様なストレスを感じるのか、それを判断基準にして恩恵はステイタスへと経験値を還元する。

 

 成程、解り易い。

 

 勿論ながらこれは飽く迄もユートの推測に過ぎず、正解かと問われても首を傾げるしかないが……

 

 然し、【神の恩恵】が何を以て『経験値』としているか理解をしたのならば、効率良く基本アビリティを上げられそうだ。

 

 事実として割かし強い筈のユートは、緊張感を持つストレスからLV.1ながら有り得ない上がり方をしており、ランクアップすら出来てしまった。

 

 そもそもユートがベルだけでなく、全員のステイタス更新をさせずに戦わせていたのも、程良くストレスを感じさせる為である。

 

 特にベルは修業を始めて以来、全く更新させて貰えなかったストレスが半端ではない。

 

 久方振りに更新を許可された時、そのストレスから一気に解放されたベルは、その基本アビリティを大きく上げていた。

 

 【神の恩恵】が莫大なる経験値と判断するくらい、それは正に童貞が脱童貞をして、初めて中出しの射精を決めた程のサッパリとした解放感だろうか?

 

 兎も角、それは間違いなくベルの力となった。

 

「中々に面白い推察だよ」

 

 フィンも割と満足そうに頷いている。

 

 所詮、神すら解らないのが【神の恩恵】である為、一応にでも納得が出来そうな内容にフィンも感心してしまったのだ。

 

「とはいえ、アイズを彼の修業に宛がう理由がまだ解らないな」

 

「ベルはアイズにミノタウロスから救われ、憧憬というのを一途に懐いている」

 

「ちょっ!?」

 

 密か? な想いを暴露されたベルが叫ぶ。

 

「憧れの君に稽古を付けて貰う……少年からしたなら随分なストレスだろ?」

 

「ああ……」

 

 流石は【勇者】フィン、この称号というか神会にて与えられた二つ名、そもそもがロキを介してフィンが一族再興の旗頭となるべく自ら捩じ込んだものではあるのだが、その意味は武勇のみを讃えるには非ず。

 

 一族の纏め、ファミリアの首領として知略にも長けているという。

 

 だから察した。

 

 元より他者に視られるのはストレスを加速するが、それが何ら無関心な相手ならいざ知らず、気になっている女の子ともなれば話は可成り変わる。

 

 男のプライドとかも刺激される事であろう。

 

 それがどれだけストレスを溜め込むか、フィンにも理解が出来てしまった。

 

「解った。君を遠征に連れて行きたいのは確かだし、本来ならアイズの技術とは我々、延いてはロキ・ファミリアの財産。他派閥へと流布すべきではないが」

 

「そのマイナス分の働きはして見せるよ」

 

「頼もしいね」

 

「具体的にはサポーターと同じく荷物の運び手だな」

 

「君には第一軍でのそれを頼みたい」

 

 ロキ・ファミリアは人数が多い為、基本的にチームを分けて行動している。

 

 ガレスが第二軍を率い、フィンとリヴェリアにより第一軍が率いられ、先ずは幹部を詰め込んだ第一軍によるアタック。

 

 第二軍がその後を付いていく形が多い。

 

 また、第二軍はダンジョン産の拾得物を集めるのも任務であり、その役割とは決して第一軍に劣るものではなかった。

 

 何故ならそんな拾得物は地上で売却され、次の遠征の資金に充てられるから。

 

 勿論、第一軍でも拾得物を獲たりするであろうが、飽く迄もそれは余裕があればの序でに過ぎない余録。

 

 基本的には魔石すら拾わない事もある。

 

 それらは第二軍に追従をするサポーターの仕事。

 

 そもそも第一軍は戦ってモンスターを減らしていくのが役割で、第二軍はその減った後に湧いたのを潰しつつアイテムを拾う。

 

 第一軍に団長と副団長が居るのも指揮というより、最高の戦力として前線へと出ている為。

 

 当然ながら第一軍には、LV.4〜5までの準幹部や幹部が揃い踏みをして、第二軍はLV.2〜3までの連中で占められる。

 

 LV.1は余程の伸びをしていないと、遠征に連れて行くには戦力不足で死んでしまいかねないからか、殆んどが館で待機するなり別口でダンジョンに潜り、鍛えるなりをしていた。

 

 尚、第一軍にも飛び抜けたLV.3は居る。

 

 レフィーヤ・ウィリディスがその代表だろうか? 何しろリヴェリアの後釜と目されているのだし。

 

 いずれにせよ飛び抜けた者でなければならない。

 

 死はヒトに対して平等に訪れるのだから。

 

 フィンがユートに頼みたいのがサポーターであり、無制限に入るアイテム・ストレージに期待が掛かる。

 

 少し前にアイズらと共にダンジョンアタックして、ユートがモンスターを屠る毎に消える魔石やドロップアイテムに、聞いてはいても驚きを禁じ得ない。

 

 武器だけ片手に潜れるのは大きなメリットだ。

 

「そういえば……」

 

「何だ?」

 

「ユートさんの苦ぎょ……修業で筋力トレーニングをやらされますけど」

 

「苦行って、まぁ良いが。それがどうした?」

 

「あれって意味とかあるんでしょうか? ステイタスに影響とか、それとも単純に筋肉が付くだけですか? やっている内に気になっちゃって」

 

 ベルへの修業でユートが課しているのは、模擬戦やダンジョンでの実戦や更新無しでの戦い、それに加えて聖闘士の修業に近いだろう筋力トレーニングだ。

 

 基本的に魔改造をされた本拠地内、訓練施設で修業をしているベル達だけど、ちょっとした仕掛けにより外で修業しているみたいな光景に変えられる。

 

 其処で所謂、魔鈴に命じられた星矢よろしく崖っぷちに鉄棒を刺して、踵を棒に引っ掛けての腹筋だとか懸垂だとか千回。

 

 兎に角、科学的トレーニングとは何だったのか? みたいな至極原始的な修業をやらされていた。

 

 因みに、最初は腹筋など千回は疎か百回にも充たなかったが、今現在は取り敢えず千回に達している。

 

 恩恵様々だろう。

 

「筋肉も付くだろうけど、ちゃんとステイタスも僅かながら上がる」

 

「そうなんですか?」

 

「さっきも言った事だが、ステイタス――基本アビリティの上昇にはストレスが関わる。そしてヒトの行動には必ずストレスが掛かる訳だが、筋力トレーニングでもストレスは掛かるからそれを元に算出されてる。それにプラス筋肉が付く」

 

「筋肉が?」

 

「僕は恩恵を得る前に可成り鍛えていた。お陰で今はLV.7相当の身体能力になっている。だけどその礎となっているのは、鍛え抜いた素の肉体。冒険者で云えばLV.5クラスにまで鍛えていたから……だ」

 

「それはまた……」

 

「ドワーフはヒューマンより力が強く、エルフならば魔力が強い。だけど恩恵のスタート地点はI評価0。つまり、素の肉体がどれだけ強くてもステイタスの値は誰もが同じ。ドワーフのH評価100とヒューマンのH評価100、力はどちらが強いか? 答えは勿論ドワーフなんだ」

 

「鍛えた筋力は無駄にならないって事ですか?」

 

「仮にヘスティアが天界に送還されベルの恩恵が封じられても、鍛えた筋力までは無くならないしな」

 

 それはそれで嫌だなと、ベルは苦笑いをした。

 

 

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