ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】 作:月乃杜
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やらかしたぁぁぁっ!?
レフィーヤ・ウィリディスは心の中で絶叫する。
今現在、ユートと二人っ切りで個室に篭っているのだが、場所は女子用トイレというのはどうだろう?
やらかしたという事から判る通り、レフィーヤこそがユートをトイレに連れ込んだのだ。
これではまるで誘っているにも等しい。
この状況下で求められてしまうと、レフィーヤとしても拒絶し難かった。
近くにユートの顔。
密着する二人の身体。
顔が熱くて身体も体温が上がっている気がするし、心音がバクバクと早鐘を打っていた。
レフィーヤがユートを好きか? 愛しているか? と訪ねられたら『判らない』と答えるのであろうが、少なからず意識をしているのは間違いない。
理由は主に三つ。
ユートとティオナの情事を諸に覗いてしまった。
何故か故郷の木々の匂いを感じて心地好い。
自分が食人花に捕まってしまった際、救われた時に大事な部位を完全に視られてしまった。
特に一番目は、ティオナのスリットに挟み込まれたブツが出入りする様が見えてしまい、三番目は自分のスリットが広がって中の膜まで見えた訳だから。
穴があったら入りたいと思ったが、ふと自分の穴にユートの
「えっと、こうなったら訊いちゃいますけど」
「こんな場所で?」
女子用トイレでする事ではないと思うが……
「だって、どうしろと?」
「
あの呪文はルーラと付いているが、
どちらかと云うならば、【
つまり、ベルを合流基点にしてるなら女子用トイレから、ワープしてベルの所まで跳べるのである。
「或いは僕の部屋にもマーキングはしてあるからね、【黄昏の館】から僕の本拠に跳ぶ?」
【
つまり射程距離は短いのでは? とも思えるけど、魔族がこれを使って消える際には下手すれば可成りの距離を跳んでいる。
ロモス王国から死の大地の鬼岩城までとか。
つまりは可能。
「そうですね。私達が連れ立って御トイレから出たらどんな噂が立つか」
だからといってユートだけで出て、他のロキ・ファミリアの誰かに見付かればシャレにならない。
「じゃあ、本拠の部屋に跳ぶからな」
「え、待っ!」
「リリルーラ!」
その瞬間に、二人の姿が女子用トイレから消失。
「……て下さい!」
暗い部屋らしき場所へと転移をしていた。
パチンと指パッチンすると電気が点く。
大きめな……キングサイズのベッドの上に、ユートとレフィーヤは座っていたらしい。
その事実には真っ赤になるレフィーヤ、今はちょっと淫らな発想が頭にあるにしても、基本的には潔癖症なエルフなのだ。
尤も、レフィーヤはそれを良しとはしてないけど。
同性とはいえ異種族である先輩と仲良くしてたり、シャワーなども御一緒したりと積極的に交流してる。
流石に異性では他派閥なユートのみだし、理由的にレフィーヤだけが特殊な訳ではない。
「それで……」
「ひゃうっ!?」
ベッド上に座り込んでいたレフィーヤにユートが話し掛けると、軽く手が触れ合ったのを相当に意識したらしく悲鳴を上げた。
「ああ、この世界のエルフは触れ合いが苦手だった」
「ち、違います! いえ、違いませんけど違くて!」
「いや、何を言ってる?」
「た、確かにエルフは少し排他的なきらいはありますけど、私はそういうの良くないと思ってますから!」
「そっか、それは良かったかな。レフィーヤに何度か触れてるから、実は嫌われていたのかと思ったよ」
ブンブンブン!
首を横に振る。
「寧ろ………………何でもありません」
言い掛けた科白を呑み込んで呟いた。
色々と恥ずかしい場面を視たり視られたりしたし、だけど大いなる故郷の森――ウィーシュにも似ている
寧ろ……好きという感情の方が先立つ。
正確には『視た』時は、そんな気配は判らなかった訳で、単に知り合いが男とヤっていたから好奇心に負けた形であり、『視られた』時は既に気配的に惹かれていたのもあったし助けられた事実もあったが故に、嫌悪感など懐く環境が少なかったのである。
これが某・Yや某・Iであれば、出会って間も無くそんな事になれば魔法にて吹っ飛ばしていたろう。
長く付き合っていたなら別なのだろうが……
「改めて訊くがレフィーヤは結局、何であんな蛮行に及んだんだ?」
蛮行=ユートを女子用トイレに連れ込んだ理由。
「あ、その……ユートさんの知り合いがアイズさんの訓練を受けるみたいな話を耳にしまして、そのぉ……事実確認みたいな?」
「ああ、間違いないな」
「な、何で!?」
「何を驚く? まあ、そりゃ他派閥の者がとなったら面白くないか?」
「う゛……」
言われて言葉に詰まる、早い話がその通りだった。
それなりに一緒のファミリアなレフィーヤでさえ、二人切りで訓練なんて普通には無いのに、他派閥の……しかも男がなんて面白くないに決まっている。
「どうして……だったか? 理由はベル――ベル・クラネルという名前だけど、彼はミノタウロスに追われた挙げ句、【豊穣の女主人】でベートに謗られた」
「あ、あの時の!」
ベートが謗った後に店を出ようとして、ユートにより阻止されてから何故だか一緒に食事をした白髪赤瞳の少年の事を思い出す。
あの時の彼がベル・クラネルなのは、自己紹介されていたから判った。
「アイズに救われたベルはアイズに憧憬を懐いた」
「よくある話ですね」
斯く言う自分もそうで、レフィーヤはアイズに何度も救われ、強い憧憬を懐いているのは間違いない。
ロキ・ファミリアの幹部であり、神様でさえ欲しがる人形の如く整った美貌、エルフも大概が整った容姿ではあるが、アイズのそれはレフィーヤからしたなら正に神憑っていた。
生命を救われた思春期の男の子が、アイズに憧憬を懐くなど別に特別でも何でもない話でしかない。
実際、ロキ・ファミリアの男連中はアイズ・ヴァレンシュタインを偶像崇拝しているレベルだ。
まあ、苦労人な【超凡夫】は流石に偶像崇拝なんかはしてないらしいが……
「これはまだオフレコ……非公開な情報だからロキにも言っちゃだめだぞ。ベルはその憧憬をスキルとして顕したんだ」
「スキル……ですか?」
「【
「未確認!?」
「内緒だよ? ロキにも、アイズにも、リヴェリアやフィンやガレスにもね」
レフィーヤの左頬に右手を添えながら、笑顔なのに笑わない目を向けて言う。
更には念による威圧。
レフィーヤは無防備に念を受けたからか、ガクガクと歯の根が合わず震えた。
「い、言いません!」
「良い子だ」
威圧の解除をして今度は普通に微笑んだ。
先程までの震えは無く、そんな微笑みに安堵したからなのか、真っ青だった顔を今度は赤らめている。
「あ、その、リアリス・フレーゼってどんなスキルなんですか?」
流石に落ち着いたのか、レフィーヤが訊ねてきた。
「さっきも言ったろうが、ギルドも未確認な成長促進系のレアスキルだ」
「成長促進系!?」
確かに知らない。
そもそも【神の恩恵】が神ウラノスより開発されて早千年と経つが、成長促進をするスキルなんて今までに存在すらしてない。
「その効果は早熟するという文言通り、恐らく他者に比べて可成り基本アビリティが早く上がる」
「早くって?」
「さて? 他をよく知らないからな。少なくともベルと他をちょっと比べてみたけど、同じLV.1であるラブレスやヴェルフの伸びよりベルの方が伸びてた。それは確かだよ」
それも二倍や三倍は当たり前な感じであり、例えばヴェルフが総合で四〇くらい上がっていたとしたら、ベルは三〇〇くらい上がっているのだから凄まじい。
「懸想が続く限り効果持続と懸想の丈により効果向上という文言、つまり憧憬の対象への憧憬が続いている限りは効果を持ち、その想いの強さが上がれば上がる程に効果は更に増える」
「んなっ!? 無茶苦茶じゃないですかそれ!」
「それでちょっと詳しく調べたら、文言には無い効果が存在しているのが判明したんだよね」
「ど、どんな?」
「副次効果っていうのか、何しろ惚れれば惚れる程に強くなるスキルだからか、魅了に掛からなくなるみたいなんだ」
「魅了……ですか?」
「美の女神が使えるだろ? フレイヤ・ファミリアの主神フレイヤ、イシュタル・ファミリアの主神イシュタルとか」
「まさか、女神の魅了すら弾いてしまえると?」
「まあね。だけど文言にもある通り憧憬が途切れたらスキルを喪う。例えば合意も無く無理矢理に襲われたりしたら……ね」
「無理矢理にって……」
想像したのか真っ赤になるレフィーヤ。
「それから実際に明るみに出た効果。基本アビリティのカウンターストップをも超克する」
「カウンターストップ?」
「通称カンスト。つまりは数値が止まってしまうって状態だ。基本アビリティの最大値はS999だろ?」
「はい、そうで……え? それってまさか!?」
「ベルの数値は現段階でもSSも越えている。俊敏に至ってはSSSだしな」
「ト、トリプルS……」
「SSS評価は変わらないにせよ、基本アビリティはその範囲すら越えて伸びると見ている。まあ、魔力は魔法を使い始めたばかりだからまだ低いけど」
飽く迄も他よりは。
「其処まで……」
最早絶句するしかなく、そして嫉妬してしまう。
「どうして……」
「うん?」
「わ、私だってアイズさんに憧れてます! だけど、そんなスキルは!」
「推測に過ぎないけど……聞くか?」
「え、はい」
ベルとレフィーヤ。
アイズへと憧憬を懐く者同士ながら、成長促進系のレアスキルを発現したベルとしなかったレフィーヤ、その違いは何か? ユートはある程度の推測くらいはしていた。
「単純な部分は同性であるという点。憧憬の対象への恋愛感情と友愛感情の違いという処だ」
「性別……っ!」
確かにレフィーヤの持つ感情は飽く迄も友愛。
ベルは異性だから仄かに宿る恋心があった。
「そんな、性別なんてどうにもなりませんよ……」
「……」
ユートは僅かに目を逸らしてしまう、何故なら実はどうにでもなるから。
所謂、TSさせる能力をユートは【
事実として男の娘をTSさせた事例が存在する。
【ハイスクールD×D】世界のハーフヴァンパイア……ギャスパー・ヴラディという女装好きな少年。
【魔法科高校の劣等生】世界の黒羽文弥。
後者は敵対してきた黒羽の者を撃退後、ペルセウスから簒奪した権能を使う為にわざわざTSさせた。
勿論、強制的にサイオンを吸い上げて男に戻らなくしてやった為、文弥は常時『ヤミちゃん』となってしまい学校にも“男装”して通うしかなくなる。
尚、TS状態を維持していると意識も肉体に併せて変化するのは、ギャスパーの時で判明していた。
黒羽文弥もヤミちゃんと呼ばれるのに嫌がらなくなってしまうし、女の子モノな服を嬉しそうに買う姿が見られたりしたものだ。
最終的に黒羽弥深と改名してしまうし、戸籍も遡って女の子として登録し直してしまうくらい。
TSさせられた際だが、童貞より前に処女を散らされた衝撃もあるだろう。
それは兎も角……
男の娘を女の子にするのは抵抗も無いが、逆は余りやりたくないから黙っておく事にした。
結局はユートの能力。
使いたければ使うけど、嫌なら使わないだけだ。
「そして、経験値というのがストレスと=となる事」
「経験値がストレス?」
「ストレスとは生物に於ける物理的、精神的な謂わば防衛反応の事。生命体とは如何なる行動にも多寡こそあれど、何かしらストレスを持ってしまうものだよ。故にそのストレスを恩恵は経験値と判断するんだ」
「は、はぁ?」
よく解らないらしい。
「生命を懸けての戦いならストレスは半端じゃない。弱い敵より強い敵と戦う方がよりストレスを感じるから経験値も高いとなれば、実際に筋も通っているとは思わないか?」
「……成程。ですがそれとレアスキルの関係は?」
「スキルにせよ魔法にせよ経験値が決め手となるな。アテナ・ファミリア所属の
「リリルカ・アーデさん……ですか?」
「ああ、ステイタスってのは本来だと他派閥は疎か、同じ派閥でも内緒にするのが基本だから内緒だぞ?」
「は、はい……」
又もや怖い気配や笑顔にドン引きしてしまう。
「魔法は『シンダー・エラ』という。効果は変身」
「変身ですか?」
一風変わった魔法だ。
『シンダー・エラ』とは即ち『シンデレラ』。
襤褸を着た娘が魔法使いによりお姫様に変化した、そんな物語にあやかる効果と名前である。
「リリルカ・アーデ、リリは変身願望があったんだ。小人族はフィンや【
「そうですね」
「小人族は身体能力が他の種族より劣るのが一般的、だからリリも元のファミリアでは常にサポーターだ。しかも稼ぎを搾取され続けてきたらしいね」
「元……の?」
「ソーマ・ファミリアだったんだが、僕が引き抜いたんだリリを」
「ユートさんが……って、ひょっとしてそのリリルカ・アーデさんは、まさか……ユートさんと……」
「元々は手癖の悪い事を考えていたみたいだったが、僕はサポーターが要らないから断った。それでもとか言うから賭けをしたんだ。リリが勝てばお金を余分に支払う。僕が勝てば一晩の権利をってね」
上のローブがゆったりとした服装だから判り難かったのだが、実は小人族という括りとしては巨乳な方だったリリは、割と愉しませて貰えたものだった。
「そ、そうですか……」
ちょっと膨れっ面。
「スキルは【
「それは確かに……」
「願望や必要性もストレスとしては強い。だから背中の恩恵は経験値として認めて与えたんだろうね」
望まない力など与えられはしないと云う事。
「その上で、ベルはアイズに憧憬を懐いて仄かな想いを胸に舞い上がっていた、其処へベートによるベルの全否定。想いも何も全てをぶち壊された。ベルは現実を突き付けられ、甘さや愚かさを嫌って程に思い知らされた。何一つ言い返せず事実として弱い自分が許せなかった。悔しくて悔しくて悔しくて、『いつかきっと』だとか夢を視ていただけの、何かしら期待をして待っていただけの
レフィーヤは胸に痛みを感じていた。
『いつかきっと』だとか“夢を視ていただけ”の、何かしら期待をして待っていただけの
そういえばベートに指摘されたではないか? 似た様な科白を。
「だから強くなりたいと、そう願ったベルに応えたのが【神の恩恵】、それにより得たのが【憧憬一途】」
「な、成程!」
「まあ、スキル自体は謗られる前から発現していたんだけどな」
「ズコーッ!」
なので実はベート云々は無関係であったと云う。
レフィーヤは盛大にコケてしまった。
「だからやっぱり単純な話なのかも……ね」
「そ、そうですか……」
深刻そうな話はいったい何だったのか?
「で、ベルがアイズと訓練をした場合の伸び率とか、他にも色々と頑張って貰う為に僕が遠征に付き合うって代わりに、アイズによるベルの訓練をロキやフィンに頼んだって訳だね」
「うう……何て羨ましい」
他派閥の癖に他派閥の癖に他派閥の癖に! とブツブツ言いたくなる。
「ロキは渋面作ってたが、僕が戦闘要員兼サポーターをすると遠征で助かると、フィンもリヴェリアもガレスもお墨付きをくれてね。まあ、LV.6を軒並みにLV.7に押し上げた僕が居れば、あの赤毛や仲間が現れたり、第五二階層以下の階層に行くにも都合が良いらしいからね」
「第五二階層以下?」
「ラウルからちょっと聞いたんだが、第五二階層からは地獄らしい」
「地獄!?」
レフィーヤは以前の遠征では降りてないらしくて、第五二階層からの知識など無いのか吃驚している。
「五〇階層までの常識は、最早彼処からは通用しないと震えていた」
ゴクリと固唾を飲んだ。
「特に階層無視の砲竜による狙撃とかね、ラウルには探知が出来ないから少しでも油断すればあじゃぱー! って感じらしいし」
「そういえばロキ・ファミリアの最大到達階層って、確か第五八階層です」
第五二階層から数百M先たる壺の最下層、五八階層からの階層無視の砲撃をするドラゴン。
第五二階層からは地獄、規模が尺度が脅威度の全てが第五一階層より上と違い過ぎる、ダンジョンの恐ろしさ……真なる地獄。
それに立ち向かう為に、一人でも常識外れな戦力が欲しいフィン・ディムナ、彼はアイズを他派閥に出向させてでも、マサキ・優斗という極東の出身であるらしきヒューマンを頼った。
大幹部や首領がLV.7に到達して尚、フィンには油断なんて無いと云う事。
「何なら、この場で君と寝て基本アビリティを上げるのも許容するかもね?」
「寝っ!?」
真っ赤になって後退り、肢体の胸を腕で隠す。
「あ、赤ちゃんがデキたら本末転倒ですよ!」
「デキない」
「……へ?」
「元々、デキ難い体質だ。そしてあのスキルを使ったら精子は相手の強化にのみに使われるらしい。だから妊娠は絶対にしないよ」
「そ、そうですか……」
「まあ、そっちが嫌なら……僕が修業を付けようか」
「はい?」
本来ならアイズやフィルヴィスがやる筈な修業……それをユートが代わる事になるが、原典を識らないから介入した事にすらユートは気付いていない。
そして、これが廻り廻ってフレイヤ・ファミリアに大打撃を与えてしまうのだけど、当然ながらユートはそれに気付かなかった。
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ベルのあのスキルを勝手にバラしましたが、どうせこの小説ではもうすぐバラすのでレフィーヤさえ口を閉ざせば問題無しです。
リリのスキルや魔法に関しては、ベル程の問題も無いのでやはりレフィーヤさえ黙っていれば大丈夫?
ぶっちゃけ良くはないんですけどね……
次回は今回のラストでのアレまでイケたらなとか。