ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

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 ありふれが早めに上がった為に此方もちょっと頑張ってみました。





第55話:ベルのスキル検証は間違っているだろうか

.

「う、ん?」

 

 自室のベッドで目を覚ますベル。

 

「ベル君っっ!」

 

「うぇ、神様?」

 

「ベルく~ん!」

 

「うわ、神様……いったいどうしたんですか!?」

 

 目を覚ましたベルに感極まったヘスティア、思わず抱き付いてしまったのだ。

 

 斯々然々的にいったい何があったのかベルへ、ユートから頼まれたヘスティアが説明をする。

 

「そうですか、ミノタウロスを斃した後で僕は気絶していたんですね。それでユートさんが連れて戻って来てくれた……と」

 

 だいたいは察したベル。

 

「ユートさんは?」

 

「今はヴァレン某と食事中だよ」

 

「アイズさん……って、どうしてアイズさんが僕らの本拠地(ホーム)に来てるんですか!?」

 

「ユート君が連れて来たんだ。ヴァレン某も君の師匠だから権利があるってさ」

 

「権利?」

 

「ベル君がランクアップするのを見る権利さ」

 

「ラ、ランクアップゥゥッ!?」

 

「当然じゃないか。君は今までにもランクアップに必要な経験値(ファルナ)を得てきている。此処に来てその経験値が貯まり切ったんだよ」

 

「じゃ、じゃあ!」

 

「おめでとう、ベル君。君は遂に登り始めたんだ……果てしない英雄坂をね」

 

「な、何だか明日には終わりそうな科白ですね」

 

 とはいえ、ベル・クラネルは確かに門を一つ開いた事になるだろう。

 

「という訳で、ユート君やヴァレン某やリリ君を呼んで来たまえ。皆の見ている前でランクアップの儀式を行おうと思っているんだからね!」

 

「は、恥ずかしいんですけど?」

 

 上半身は裸になるから女の子が居る前でやる事ではない気もするが、師匠だからと言われてしまうとアイズを拒絶は出来ないし、色々と頑張ってくれていたリリも同じくだ。

 

「若しかしてラブレスさん達も来るんですか?」

 

「流石に来ないよ」

 

「そ、そうですか……」

 

「この場を赦されるのは君の師匠たるユート君とヴァレン某、そしてミノタウロス戦で一緒だったリリ君だけさ。ボクを除いたらね」

 

 ホッと胸を撫で下ろすが、ユートは師匠だから兎も角としてラブレスはヘスティア・ファミリアではなくアテナ・ファミリア、同盟して仲間ではあっても違う派閥なのだから当然だろう。

 

 早速、食堂に居た三人を連れて戻ると服を脱いで上半身を晒したベルはベッドに俯せとなる。

 

「では始めよう」

 

 針でプツッと傷を付けるとプク~と赤い血玉が人差し指に浮かび、それをベルの背中へツーッと縦に一線を入れた。

 

 ロック解除。

 

 ベルの背中にステイタスが浮かんだ。

 

 

 

ベル・クラネル

所属:ヘスティア・ファミリア

種族:ヒューマン

LV.1

力:SSS1620

耐久:SSS1333

器用:SSS1321

俊敏:SSS2000

魔力:S920

 

《魔法》

【ファイアボルト】

・速攻魔法

 

《スキル》

【憧憬一途】

・早熟する

・懸想が続く限り効果持続

・懸想の丈により効果向上

 

 

 

 LV.1でラストの数値である。

 

 此処から更にランクアップさせるヘスティアの指の動きは少しウキウキ気分、それはそうだろうというのはユートにも判る、謂わば自身の眷属が初めてのランクアップを果たしたのだから。

 

「そういや、調べもしないでランクアップしちゃったけど……ベル君の発展アビリティが複数出ちゃってるぜ?」

 

「……え゛? どうしましょうか?」

 

 そういえばランクアップをすれば、前ランクの行動如何で発展アビリティが発現するのだと今更ながら気付くベル。

 

「始めちゃったからギルドのエイナさんに相談とかは出来ませんし……」

 

「確かアドバイザー君だったね」

 

 エイナ・チュールはユートとベルの担当アドバイザーであり種族はハーフエルフ、ロキ・ファミリア副団長たるリヴェリア・リヨス・アールヴの親友な母親を持っていた。

 

 仕事に真摯で口癖は『冒険者は冒険をしてはいけない』である。

 

「ヘスティア、何が出てる?」

 

「うん、【狩人】と【耐異常】と【幸運】」

 

「確か【狩人】は一度斃したモンスターの同種に対してステイタス値アップ。【耐異常】はデバフに耐性が付くんだったな。【幸運】はギルドにも情報は無かったな、僕の【反英雄】もそうだけど恐らくレア物だろう」

 

 ユートの説明にベルが唸る。

 

「【狩人】とか格好良いかな……じゃなく、無視は出来ないと思う」

 

「初見のモンスターには意味が無いがな」

 

「う゛っ、そうだけど……」

 

「それにあれ、或る程度の強さに達したら完全な死にスキルと滓……じゃなくて化すからな~」

 

 それはベルにとって意外だと目を見開いた。

 

「え、死に……スキル……ですか?」

 

「確かに強いモンスターを相手に、自身の能力が上がるのは悪くないスキルだと云えなくも無い。けど大概の冒険者はアドバイザーの言葉を無視して新規階層を開拓するか、逆にアドバイザーの言葉を守って開拓した階層に留まるかだ。新規階層は新しいモンスターも現れるだろう、それだったら【狩人】は意味を為さない。暫く同じ階層での狩りをしていたら抑々、同じモンスターなんてのは冒険者にとっては敵では無い。油断して殺られるのは愚かしいがね」

 

 深層域のドラゴンとかなら未だしもだけど。

 

「【耐異常】はアクセサリーでも装備してりゃあどうとでもなるな」

 

 例えばFFのリボンとか。

 

「ベル君には【幸運】のアビリティが必要だ! 是非に取るべきだよ!」

 

 ヘスティアは【幸運】をイチオシしてきた。

 

「うう、エイナさんに相談しておきたかった」

 

 だからオロオロしてしまう。

 

「そうだな、ダンジョン探索を着実堅実に進ませたいなら【狩人】ってのはこの上無くベルの力になるだろうな」

 

「で、ですよね!」

 

 ベル自身も【狩人】が欲しいからか、パーっと

表情を明るくしながら首肯する。

 

「特に【耐異常】と違って【狩人】はLV.2の時にしか発現しない、つまりは今回取らなかったら二度と機会は無くなるからな」

 

「それじゃあ!」

 

「だけど……」

 

「え?」

 

「【幸運】も恐らくは今回だけだろう」

 

「……うっ!?」

 

 確かにレア物なら今回限りな気もする。

 

「だけど、どんなアビリティか判らないし」

 

「想像は付くさ」

 

「想像ですか?」

 

「恐らく僕が持つ権能である【この素晴らしい世界に祝福を!(ブレッシング・ジ・ゴッデス)】の下位互換的な発展アビリティだろう」

 

「ぶれ?」

 

「僕のこれはこの世界由来の力じゃないんだけど魔力を使って発動が可能な様、此方の世界で調整を受けているんだ。能力は常時発動、確率変動によるパーセンテージの上昇が主だな」

 

「は、はい?」

 

 やはりベルには意味不明だったらしい。

 

 というか、リリもアイズも首を傾げている辺り理解をしていないのであろう。

 

「例えばレアモンスターのブルーパピリオが居るだろう?」

 

「居ますね。確か羽が良いドロップアイテム」

 

 ブルーパピリオの羽は取り引きをされる中に在って低層では狙い目だが、コイツがレアモンスターであるが故にリアルラックが良くないと中々に出会えない。

 

 羽その物も必ず出る訳ではないのだ。

 

 それなりに低確率の湧出だけど、ユートならば必要としていれば普通に顕れて羽も基本的に必ずドロップしている。

 

 需要に供給が追い付かない程ではないが品不足は否めないアイテムだけに、ブルーパピリオの羽が欲しいファミリアはそれなりの数に上った。

 

 そんなユートのブルーパピリオ狩りを支えている権能こそ、【この素晴らしい世界に祝福を!】世界の幸運の女神エリスを抱いて神氣を喰らった事で獲た【この素晴らしい世界に祝福を!(ブレッシング・ジ・ゴッデス)】という訳だ。

 

 本当は【この素晴らしい世界に祝福を!(ブレッシング・オブ・エリス)】だったのだが、当事者であるエリスが恥ずかしがって頭から布団を被り出て来なくなった為に変更をした経緯がある。

 

「恐らく【幸運】は確率のパーセンテージ上昇って感じの発展アビリティだよ」

 

「そうなると何が出来ますか?」

 

「ドロップアイテムのドロップ率向上がダンジョンでの恩恵だろうね」

 

 ギャンブルでも色々と勝ちそうなものではあるがそれは言わぬが花。

 

「悪くはないですね」

 

 ユートのアテナ・ファミリアと同盟関係じゃなければ間違いなく、貧乏な零細ファミリアとして

廃教会の地下部屋でじゃが丸くんを食べて暮らしていたと確信しているベルは、お金を稼ぐという事が如何に大切な事かきちんと認識している。

 

「決めました神様、僕は【幸運】にします!」

 

「よしきた!」

 

 気が変わらない内にベルのランクアップを果たしてしまい、発展アビリティも【幸運】に決定をしてそれを確りと背中に刻んでいく。

 

「いやー、然し到頭ベル君もLV.2かぁ……って普通は言うんだろうけど、ベル君の場合は感慨に拭ける暇すら無かったよね。ユート君もだけど」

 

「あはは……」

 

「はい、終わったよ」

 

 ガバッと起き上がるベルは右手を握々、左手を握々としながらそれを見つめていた。

 

「特に何も変わらないですね」

 

「そりゃ、身体の構造が行き成り変化をする訳でもないしね。『何だこの変化は……ち、力が溢れてくるぜ!』みたいな事にはならないよ」

 

 ベルの感想にヘスティアが答える。

 

「とはいえ、ステイタスの昇華は本物だ。実際にランクアップしたから判るんだが、ステイタスを昇華するといざ戦闘になったら肉体が齟齬を来すからな」

 

「ユートさん、齟齬ですか?」

 

「普通なら単純に数値がリセットされただけの筈なのに、ちゃんとした調整をしないと逸過ぎたり跳び過ぎたりと思ったより身体が動く」

 

「それって……」

 

「明らかにランクアップ前より能力が上がっている事になるな。アイズもだろ?」

 

「……うん、そう」

 

 だからアイズもランクアップの直後には手頃な階層で微調整を行う。

 

「実際、ゴブリンも斃せないヒューマンが背中に【神の恩恵】を得た途端に斃せる様になるって、つまりは得ただけでボーナス数値を獲ているって事なんだろうね」

 

「それがランクアップでも適用されると?」

 

「そういう事」

 

 事実かどうかは扨置き、確かにパワーアップをしているのは間違いないのだから。

 

「それからベル君、待望のスキルが出てたよ」

 

「えっ!?」

 

 ヘスティアが写した羊皮紙を取り上げて睨み付けるが如く視た。

 

 新しいベルのステイタス……

 

 

ベル・クラネル

所属:ヘスティア・ファミリア

種族:ヒューマン

LV.2

力:I0

耐久:I0

器用:I0

俊敏:I0

魔力:I0

 

《魔法》

【ファイアボルト】

・速攻魔法

 

《スキル》

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

・早熟する

・懸想が続く限り効果持続

・懸想の丈により効果向上

 

英雄願望(アルゴノゥト)

・能動的行動に対するチャージ実行権

 

 

 

 但し、【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】はヘスティアにより羊皮紙からは抹消されていたりする。

 

「ほ、本当だ! 僕にも遂にスキルが……っ!? 【英雄願望】……? 英雄……願望……?」

 

 能力どうこうは取り敢えず良しとして、問題なのはスキルの名前である。

 

 即ち【英雄願望】という。

 

(ちょっと待ってよ? 確か冒険者に発現をする魔法やスキルって本人の()()()()も影響するんだよね!? その辺は名称も同じで……つまりっ!)

 

「英雄願望か。そんな歳になっても君は本っ気で御伽噺の英雄に憧れてるんだね」

 

 ヘスティアがニヤニヤしてるし。

 

「うわぁぁぁぁあああっ!?」

 

 よくよく見れば周りが微妙に優しい目をしているのにベルは気付く。

 

 選りに選ってアイズにまで心の奥底に仕舞っていた願望がバレたのだ。

 

「ベル君、可愛いね」

 

「うわぁぁぁぁあああん! 神様のバカァァァァァァアアアッ!」

 

 ニヤニヤしながら言われたベルは絶叫するしか無かったと云う。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「戯れ事はもう終わりにして、スキルの検証をした方が良いだろうな」

 

「そうですね、ベル様が今後使われるからには私達も把握しているべきでしょう」

 

 ユートの言葉に頷くリリ。

 

「でもユートさん、名前はもうこの際だから置いておくにしてもいまいち要領を得ませんよ」

 

英雄願望(アルゴノゥト)

・能動的行動に対するチャージ実行権

 

「恐らく使おうという意志に反応して攻撃なんかの行動をすると、それらの力をパワーチャージしてくれるんじゃないかな?」

 

「え? つまりはどういう事ですか?」

 

「そうだな……」

 

 ユートはドライグバックルをアイテムストレージから取り出し、スロットの中へ赤い龍が描かれたカードを装填して閉じる。

 

 腰に据えるとシャッフルラップがギュンと巻き付くと装着、低い待機音が喧しいくらいに鳴り響き始めてミスリルゲートを開いた。

 

「変身!」

 

《OPEN UP!》

 

 電子音声が響くと共にカードと同じ龍の紋様が描かれたオリハルコンエレメントが顕れ、それをユートが駆け出しながら潜るとゴツい感じで龍を思わせる赤い鎧兜の姿に変わる。

 

《Welsh Dragon Balance Breaker!!》

 

 それは赤龍帝ドライグ・ア・コッホを封印した神滅具の一つ、【赤龍帝の籠手】と呼ばれている神器が禁手化したものだった。

 

 仮面ライダー剣系のライダーシステムに落とし込んで、仮面ライダードライグと名乗るその姿は

いつもは優雅が使っているが、ユートも当然ながら使用する事が出来るのである。

 

「見ていろ」

 

《Boost!》

 

 電子音声が響く。

 

「これが能動的なチャージだ。今の音声一つに付き力が倍加される」

 

《Boost Boost Boost!》

 

「倍加×4回。これで例えば1の力は最初の倍加で2に、次の倍加で4に、次の倍加で8に、次の倍加で16になる。恐らく此処まで派手に上がらないにせよ、何秒間かのチャージにより振るわれる力が……魔法にせよ剣技にせよパワーアップさせるのが可能なスキルなんだろう」

 

「パワーチャージ!」

 

「例えばだが、ベルのファイヤボルトは即効性という意味では良いが、やはり火力は不足しているといわざるを得ない。だが、【英雄願望】によりチャージを一分間ばかり行えばある程度の詠唱をした魔法と同等レベルの火力になるんじゃなあか……とか思う。いざって時の【英雄の一撃】って事じゃないかね」

 

「だとしたら凄いかも知れないです」

 

 ベルは両手を広げた状態で見ながら頬を朱に染めて興奮気味に答えた。

 

「取り敢えず実戦で使う前に訓練してどの程度の能力か把握しとこうか」

 

「は、はい!」

 

 実に良い返事である。

 

「アイズ、戻る前に少しベルの相手を頼んでも構わないか?」

 

「……いい、よ。私も興味あるから」

 

「じゃあ、頼んだ」

 

 ユートはリリの方を見て口を開いた。

 

「で、リリだが」

 

「はい?」

 

「単純に基本アビリティなら僕が抱いたら際限も無く上がるだろうが、それだといつまで経ってもランクアップは望めない。君は危ない思いをしてもランクアップを望むか? それとも僕に抱かれて能力だけを積み重ねるか?」

 

「……リリは、リリもベル様みたいにランクアップしたいです! でも、ランクアップなんてリリに出来るんでしょうか?」

 

「種族特性なのかは知らんが上がり難いのはあるかもだが、現にフィン・ディムナはLV.7にまで上がっているぞ」

 

「そ、それは……」

 

「僕が一番使いたくない科白って知ってる?」

 

「え、いえ」

 

「バケモノとテンサイ」

 

「っ!」

 

「昔ね、妹に一度だけ言っちゃったんだ。お前は天才だからってね。後でスッゴい恥ずかしくなってのた打ち回ったよ」

 

「ユート様が?」

 

「昔は僕も強くは無かったのさ。五歳も下の妹に敗ける程度に……ね。あれ以来は僕もそんな科白を言わなくなった。言いたくないから。言うくらいなら自分を追い詰めてでも、我武者羅に強くなるべく闘ったし訓練したよ」

 

 ユートにとっては前々々世の黒歴史。

 

「フィンには確かに才能が有ったんだろうけど、リリにそれが無いとは思えないよ」

 

「……そうでしょうか?」

 

 自信無さそうに顔を伏せるリリ。

 

「伏せるな、顔を上げて前を向け!」

 

「っ!?」

 

 行き成り怒鳴られて言いなりになるリリ。

 

「幾ら才能があっても、僻みや嫉妬なんかの後ろ向きな精神で才能が伸びるものかよっ! 仮令、そういう精神でも前を向けば伸びるんだ!」

 

「そういうものでしょうか?」

 

「そういうものだ」

 

 リリはもう一度下を向いて再び顔を上げた。

 

「お願いします!」

 

 リリはユートのスキル【情交飛躍(ラブ・ライブ)】の力により単純なパラメーターは高まったが、ランクアップはしていないからどうあっても一段は力が劣る。

 

 それを何とかしないと今にベルに付いていけなくなるのは間違いなく、況んやユートとパーティを組むなんて夢のまた夢でしかない。

 

 ユートは基本的に深層で動くからLV.1でしかないリリは足手纏い、連れて行って貰いたくても自殺行為にしかならないのだ。

 

 ユートはLV.こそ2に成って間もないけど、

実力はLV.5や6を相手に何ら感情を露わとするでなく勝てるし、LV.7の【猛者】と闘ってすら割と余裕で勝てるだけの力を持つ。

 

 【神の恩恵】を受ける前の地力が古の英雄とか【猛者】や【勇者】を凌ぐモノだったらしいし、背中に書かれていない魔法や技能を百や二百では足りないくらい持っているとか。

 

 しかも幾つも有る自作の魔導具や特殊な力を持った魔導具、ユートはLV.に囚われず深層まで平然と進めてしまう。

 

 リリも出逢ってから一ヶ月と少しに過ぎないにせよ、ユートの技能である【情交飛躍】とかにより一夜で一〇発を越えて抱かれたから数値は割ととんでもなかったりする。

 

 何しろ最大値で一二〇ポイント、それを入れたい基本アビリティに好きな数値を加点出来た。

 

 最初は出来なかったらしいが、ちょっと頑張ったら出来る様になったのだと云う。

 

 この廃教会地下をベースに設えた本拠に存在する訓練所、何処かの宇宙一硬いとされる金属により覆われているから多少の暴発にも耐える。

 

 ベルがアイズと【英雄願望】の使い熟し訓練をする傍ら、リリもユートからランクアップをする為の実戦訓練を行う事になった。

 

 そんなリリの目の前に居るのはモンスターではなく、巨大な肉食爬虫類でモンスターと見紛う程に凶暴そうな獣である。

 

「ユート様、これは?」

 

 全長は約一〇mはあり、脚は八本で赤い体躯に緑の不気味な眼を輝かせるワニだろうか?

 

「こいつは今晩の晩御飯のメインディッシュで、そんで名前はガララワニと云う」

 

「メインディッシュって、食材なんですか?」

 

「肉が美味いんだよ。美味いからって流石に竜を相手にさせられないからこいつなんだよ」

 

「は、はぁ……」

 

 リリは要領を得ないのか首を傾げる。

 

 竜とはいってもインファント・ドラゴンなんて雑魚い方、ユートが云う竜は()()()()強竜とよばれるカドモスのレベルだ。

 

「こいつは其処まで強くないよ。一般人な猟師が五〇人くらいで、こういう武器を使えば何とか仕留められるレベルだからね」

 

「つまり、弱くも無いと?」

 

 冒険者ではない一般人だとはいえど五〇人もの

人間が、しかもユートが持つのは猟銃でリリも知らない武器ではあるが、飛び道具らしいのは同じ飛び道具を使うリリには想像が出来た。

 

 捕獲レベルというのが有って、ガララワニだと

それの基本は【5】という事らしい。

 

「けど、こんな生き物なんて見た事も聞いた事も無いですよ? そりゃ勿論、リリだって世界中の動植物を把握してる訳じゃありませんけど」

 

「異世界産だからね。ちょっと特殊な環境で育まれたグルメ地球とでも云うか、美食に溢れている世界で生まれた美味い生物ってやつだよ」

 

「へぇ」

 

「とはいえ、喰われるだけの生物じゃないから。大概は凶悪だったり喰われ難い環境に棲んだり、捕獲レベルと呼ばれる規準が設けられていてね。ガララワニは【捕獲レベル5】なんだ。はっきり云えば目茶苦茶に低い」

 

「……訊きますが、リリが闘うのだとしたらどうなるとお考えですか?」

 

「ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張ってどうにもこうにもならないって事は無いかな? って感じだよ」

 

「つまり、上手く闘えば勝てる……と?」

 

「確りと奮闘すればね」

 

「判りました、やります」

 

 リリも与えられてばかりでは居られないから、これまでにも与えられてばかりだった事を思えば少しでも役立つ為、ユートの試練を乗り越えなければならないだろうと覚悟を決めた。

 

 ふんす! とガッツポーズを取る。

 

「上手く勝てばデザートには特別な食材を使った物を出してやるから頑張れ」

 

「はい!」

 

 戒めから解き放たれたガララワニがリリへと向かって動き出した。

 

 リリは右腕に装着した小型ボーガン以外にも、剥ぎ取り用に短剣を持ってダンジョンに潜る。

 

 聖なるナイフは既に三代目になるくらい使い込まれ、流石にもうちょっとマシなナイフを渡してからはもう少し保つ。

 

 それとは別に魔力を矢に転換するボーガンである【リリルカ・ボーガン】を主武装てしており、近接用にはパプニカのナイフ・レプリカを用いて戦闘をしていた。

 

 放たれる魔力矢。

 

 まだそれ程に強力な矢は構築したり出来ないまでも、それにしても普通の矢を放つよりは貫通力も高い矢を構築は可能。

 

 ガララワニの皮も越えて身を貫く。

 

 然りとてガララワニも無脳ではないから矢を躱して肉薄してきた。

 

「させません!」

 

 左手に持つパプニカのナイフ・レプリカを下から振り上げ、ガララワニの顔……取り分けて柔らかい眼球を斬り裂いてやる。

 

「ぐっ!」

 

 それでも飛び掛かられた勢いは死ななかった、リリの胴体に体当たりが打ち込まれたのだ。

 

 ゴロゴロと床を派手に転がるがこれは態とで、敵のガララワニから距離を開けるのが目的。

 

「ダメージは大したものでは無いですね」

 

 半ば後ろに自分で跳んだのが功を奏した。

 

 まだガララワニは動きに戸惑いがある。

 

「チャンスです!」

 

 スキルの発動、練氣発詔(オーラ・パワー)

 

 但し今は魔力と同時に扱えない為に矢も練氣によるモノへ転換、赤い矢が黄色い矢へと変化して幾条にも放たれてガララワニの皮を穿つ。

 

 単純に基本アビリティが上がるスキルではあるものの、矢が練氣に換わると魔力より構築が高度になっていて威力も上がっていた。

 

 故に数も威力も魔力でやるよりやや多く高い。

 

 リリも戦闘に参加するから防具の着用を義務付けられており、動きを阻害しない服型と革の胸当てを装備していて更に、それに付属している籠手と脚当ても装備をしていた。

 

 勿論、プロテクターが着いてない部分が当たれば痛いし怪我もするだろうが、其処はユート謹製の防具セットなのだからある程度の防御力くらいは確保している。

 

 服その物が魔導具であり、スカラとピオラとバイキルトのDQ強化呪文が僅かな魔力を徴収して発動をする仕組みだ。

 

 スピオキルトの効果を旗により周囲へ与えるという魔導具も有るが、効果範囲外には効かないから同時にこういう防御も必須となる。

 

 実際、今のリリは御旗の下に闘う訳では無いから防具の呪文効果で防御を上げていた。

 

 無論、直接的な攻撃ならバイキルトの効果も在って攻撃力が上がる。

 

 ゲームならいざ知らず、飛び道具系だとどうやらバイキルトは掛からないらしい。

 

 呪文の効果は飽く迄も生命体に掛かっていて、武器は握っているから強化されるのであり離れたら効果を失うのは道理だろう。

 

 リリがリリルカ・ボーガンで次々と串刺しにしていき、ガララワニの俊敏性が可成り下がってしまって鈍ったのを見計らい、ワニの心臓部に対してパプニカのナイフ・レプリカを突き立てた。

 

 中々に苦戦はしていたけど、ダメージはベルがミノタウロスと闘った時程に大きくない。

 

 それでも痛みがあるからかヒョコヒョコと足取りが宜しくなく、ユートの腹にフラリと抱き付く形で倒れてしまった。

 

「はぁ、何とか勝てました……」

 

 頬を朱に染めている辺り、ダメージというよりは女の子として好きな男に甘えているらしい。

 

 まぁ、ちゃんと勝って戻って来たのだから甘えるのも別に構わないし、取り敢えず甘やかしながらベルとアイズの模擬戦を観てみる。

 

 模擬戦とはいってもベルのスキルの使い勝手などを調べるのが主だし、完全にアイズが守勢へと回ってベルの攻撃を往なし躱し受けていた。

 

 それとどうやら一回一回で可成り疲労してしまって、連続では相当に使い難いものらしくベルは体力回復薬――スタミナポーションをガブガブ飲みながらやっている。

 

 この世界にはスタミナを回復させる専用薬みたいなのは無いらしく、ユートの造るこの魔導薬を知ったディアンケヒトがレシピを欲しがったが、錬金術士として調合のレシピを管理している関係から簡単には渡せない。

 

 【戦場の聖女(デア・セイント)】アミッド・テアサナーレを寄越すのならば、他にも色々と付けて渡しても構わないと言ったら流石に諦めた。

 

 所謂、地球にもあるスタミナドリンクなんかの類いと違って確実に回復をするから重宝されて、事実としてベルも飲んで回復して再びスキルを使っている。

 

 リンリンリンと鈴の音が響く音が鳴り響いて、ベルの右手が光を放ち唸っていた。

 

「ファイヤボルト!」

 

 火力が期待出来ない速攻魔法でLV.6となったアイズでさえ吹き飛ばすが、本人は自身の愛剣たるデスペレートで受け止めたからダメージを受けた訳ではない。

 

 ムクリと起き上がったアイズに火傷は疎か焦げ痕すら見当たらず、瞑目をした侭でフワッと長い金髪を手で掻き上げるとデスペレートを構える。

 

「……さ、次」

 

 ちょっと心が折れそうなベルではあったけど、LV.2に昇格したばかりの自分とLV.6であるアイズ、その差が明確に出ているだけだと首を横に振って体力回復薬(スタミナポーション)を煽った。

 

 スキルを発動……リンリンリンリンリンリンリンリンリンと、煩いくらいに鳴り響いてベルの右手に再びチャージが成されていく。

 

 後ろ腰に佩いた黒い短刀――ヘスティアナイフを抜き放ってアイズに斬り付けた。

 

「大地斬っっ!」

 

 ユートがベルに教えたのはシンプル・イズ・ベストな剣技、即ち勇者アバンが使った心技体による技――アバン流。

 

 ユートの使う【緒方逸真流】はベルに向かず、だからといってロト流剣術もいまいちだと思ったし幻魔剣は呪われた武具が無いから意味も無く、ロイター流剣術もベルには向かない。

 

 余り複雑な剣術ではベルがそもそも修得出来ないと予測され、自然体で力任せや疾さ任せや闘氣任せなだけの剣技なアバン流ならいけそうか? などと考えた末である。

 

 そして教えてやった結果、空裂斬こそまだ扱えないが大地を斬る大地斬と形無き物を斬る海波斬は修得をしてくれた。

 

 紛い物で良ければベルはアバンストラッシュも或いは放てるであろう。

 

「ベルの方も上手く出来ていたみたいだな」

 

「ユートさん、一応の検証は終わりました」

 

 使うのに相当の消耗があるから正に一撃必殺に懸けたい、そんな時にこそ使う切札という印象が強いスキルなのは間違いない。

 

「それじゃ、御祝いにベルにも特別なデザートを出してやろう」

 

「本当ですか?」

 

「ああ。アイズも御礼代わりに」

 

「……うん」

 

 その日の夜、【聖域の竈】に於けるキッチンを預かるミッテルトは大変な思いをしはしたけど、確りとガララワニのステーキと特別なデザートを作り上げている。

 

 ガララワニと同じ世界出身の食材であり可成りの巨大なフルーツで、オパールみたく七色に輝いた余りにも美味過ぎる代物をゼリーにしたものであったと云う。

 

 ミッテルトが普通に調理を出来ているのはその世界に行き、四苦八苦をして料理人としての技能を上げたからである。

 

 勿論、ミッテルトも美味しくデザートを戴いた訳だけどその夜、ミッテルト自身がリリも含めてユートに美味しく戴かれたのであった。

 

 翌日、アテナ=サーシャがリリのステイタスを更新した際にLV.が2へ上がっていて驚愕をしたと同時に、ギルドでは可成りギリギリになってその報告が成された為に、エイナ・チュールを含むギルド職員が割を喰ってしまう。

 

 後日、例のデザートをユートがエイナ達に贈ったのは言うまでもあるまい。

 

 余談だが、ロキが疲れ果てたエイナ達を見て少し哀れに思ったのかフィン達のランクアップに関して次回回しにしたらしかった。

 

 

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 久々に書いたから変な部分があったかも……


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