ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

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 ダンまちの18巻は戦争遊戯か~、ひょっとしてメンバーを決めるだけで丸々使うんじゃ……

 それともメンバーはあっさり決まって即始まったりするんだろうか?



第57話:神会に臨むのは間違っているだろうか

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 【単眼の巨師(キュクロプス)】椿・コルブランド。

 

 ヘファイストス・ファミリアに所属をしているLV.5の第一級冒険者であり、ファミリア内で最上級鍛冶師(マスター・スミス)の称号を与えられた首領でもある。

 

 

 名前が漢字だから判る通り極東出身でヒューマンとドワーフのハーフ、不壊属性武器を鍛えたり魔剣を鍛ったりが可能で第一等級武装を造り出す腕前で、特殊武装までも造り出せる正しく首領の身分は伊達ではない。

 

 そんな彼女が今回の遠征の為にも多額の代価を受け取り鍛ったのが不壊属性武器、手入れこそは必要となるものの仮にヴィルガが放つ溶解液にも溶かされてしまわない破壊が難しい武器だ。

 

 アイズのデスペレートも不壊属性の武具だが、敵に溶解液を放つヴィルガが現れるのを鑑みての複数投入に踏み切り、ファミリアの懐事情は他にも多額の資金を注ぎ込んだ事も手伝って火の車。

 

 第五九階層への遠征は成功をさせねば全く以て元が取れない大赤字となる。

 

 ガレス・ランドロックが戦斧。

 

 ティオナ・ヒリュテが両手剣。

 

 ティオネ・ヒリュテが斧槍。

 

 ベート・ローガが短剣。

 

 フィン・ディムナが長槍。

 

 連作【ローラン】と呼ばれるこれらは材質に拘って威力を突き詰め、武器の形状により異なるにせよ第二等級武装並みの攻撃力だと云う。

 

「そう言えば御主はどうするのだ? 優斗よ」

 

 椿・コルブランド――椿が馴れ馴れしくも名前で呼びながら訊いてきた。

 

「椿には僕の佩く武器が見えないか?」

 

「見えておるよ、やはり不壊属性かの?」

 

「勿論、折角の武器をモンスターに溶かされたりはしたくないからね。そして魔剣でもある」

 

「っ! それが魔剣だと!?」

 

「凍魔剣コキュートス。形状は椿なら知っているだろうが刀、当たり前だが武器としては第一等級の威力を持たせてある」

 

「魔剣でありながら武器として使える上に攻撃力が第一等級の不壊属性と!? ヘファイストス・ファミリアの首領たる手前ですら不壊属性ともなれば威力は第二等級武装レベルだというに、何とも有り得ん話しだろうが!」

 

 地下迷宮地下五〇階層の森を会話しながら歩くのは二人だけではない。

 

「んもう、何でベートと前衛なのよ?」

 

「うっせー、莫迦ゾネス」

 

 ベートと共に前衛を任されたティオナ。

 

「レフィーヤ、少し呼吸が浅いぞ。身体から少し力を抜いておけ」

 

「は、はいぃっ!」

 

 リヴェリアにとってレフィーヤとはロキ・ファミリアに於ける自らの後継者、だから常に彼女を気に掛けては教えを伝えていた。

 

「ラウルよ、それはお前さんもじゃ。どっしりと構えておらんか」

 

「は、はいっす!」

 

 【超凡夫】ラウル・ノールドはスキルも魔法も発現しておらず、ステイタス値も魔力の0を除けばだいたい600くらいと平凡な数値。

 

 発展アビリティは【狩人】と【耐異常】と【逃走】を持ち、見た目は何処にでも溶け込めそうな

モブ顔といった処。

 

 『器用有能』と呼ばれて団内での評判は決して悪くは無く、本人は恐らく聞かされていないだろうがフィンはラウルを次期首領の候補として期待を寄せている為、こういう重要な場面でサポーターとして連れ回されてもいた。

 

 そんな彼をガレスも気に掛けている。

 

 尚、今回のLV.4サポーターとしてラウルとナルヴィとクルスとアリシアが付き、レフィーヤもLV.3ながら連れ出されていた。

 

「さて、此処から先の無駄口は無しだ。総員戦闘準備――」

 

 安全地帯たる第五〇階層から下へ。

 

「征け! ベート、ティオナ!」

 

 一斉に二人が階段を駆け降りる。

 

 顕れるブラックライノスをベートもティオナも容易く斬り伏せていった。

 

 ユートもコキュートスの鯉口を切りつつ走り、刹那でブラックライノスの隣を駆け抜ける。

 

「何をやっておる?」

 

 訝しい表情の椿だったが……

 

『グギャッ!?』

 

 ブラックライノスの首が落ちた。

 

「な、何と? あれは抜刀術か!」

 

 緒方逸真流宗家刀舞抜刀術――弐真刀。

 

 目にも留まらぬ抜刀と納刀で二度の攻撃を行い敵二人の首を斬る技だ。

 

 ユートが前々々世の最初の人生で習い修得をしていた剣術であり、前々世や前世でも活用をしてきた魂にまで染み付いた技術。

 

 故に最早、息をする様に放てる。

 

 首を落とされたブラックライノスは次から次へと灰と化しており、斃された瞬間には体内の魔石が抜かれているというのが判る現象だ。

 

 ドロップアイテムが出ないのは運が悪いからではなく、これもドロップをした端からユートが持つアイテムストレージへと格納が成されているからに他ならない。

 

 寧ろこの手の運に関しては幸運であるが故に、実は物凄い勢いでドロップアイテムが貯まっていく一方である。

 

 ユートが転生前に行った世界で出逢った女神の神氣を得て、それを基に構築された特殊な権能がこの手の幸運を齎らしてくれていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユート達のダンジョンアタックとはまた別に、戦女神アテナ――サーシャも別の意味で闘いへと赴いており、これは特にコネも無い神々からしたなら兎にも角にも闘いであったと云う。

 

 【神会(デナトゥス)】――殆んど有名無実ではあるが管理機関からも認められる神々の諮問機関。

 

 これは三ヶ月に一度の、つまり一年間に四回は開かれる神々の会合なのである。

 

 オラリオの中心まる『摩天楼(バベル)』……その三〇階を丸々使っての交わされる討議とは不真面目で且つ巫座戯た内容が多々有るものの、冒険者にとっては生涯にも関わりかねない称号の進呈を行われる『命名式』や、オラリオで開かれる催しの発案や精査をする場でもあった。

 

 参加資格はLV.2以上の上級冒険者を眷属として擁する主神のみで、この会合に主神が居るという事実はオラリオの有力ファミリアとして名を列ねた証でもある。

 

「くっ、ベル君……待っていておくれ、ボクが必ず無難な名前を手に入れるからさ!」

 

 それは隣で悲壮な決意を持つ神友ヘスティアにとっても同じ事。

 

「アテナ、ヘスティア……私もアンタ達の気持ちは判るから味方はするけど、私の言葉は単なる一票に過ぎないからそれは理解してよ」

 

「判っていますよ、ヘファ」

 

 赤い髪の毛で大きな眼帯にて顔半分を覆う女神ヘファイストス、鍛冶神の一柱でオラリオに於ける鍛冶派閥としてはゴブニュ・ファミリアと合わせて二大ファミリアと呼べる規模を誇るのだが、『神会(デナトゥス)』での発言力は飽く迄も一票の価値にしかならないのだ。

 

「それとアテナ、今はまだ私達しか居ないんだから他所行きの言葉遣いは止めてくれる?」

 

「仕方無いわね」

 

 サーシャは相手や場所――謂わばTPOを弁えて言葉遣いを変えており、親しい者しか居ない場所では普通の喋り方をしているのだが、公式な場や周りにそれを気にする者が居た場合は丁寧な喋り方というか【沙織さん喋り】になる。

 

 誰が相手でもざっくばらんでやっちまう訳にはいかないからだ。

 

 とはいっても、親しいヘファイストスからしたらサーシャの【沙織さん喋り】は距離を感じるから余り好きではない。

 

 地球のギリシア神話とは異なり同性であるから恋慕や性欲を感じたりしないが、それでも好意的な神友であるのだから無理も無いけど。

 

「ほら、ヘスも行くよ」

 

「あ、うん。サーシャは何だか落ち着いてるな、ボクなんて昨夜は眠れなかったよ」

 

「私には切札が有るからね」

 

「切札……かい?」

 

 言われた瞬間にサーシャの腰に何故だか佩かれている武器を見つめる二人。

 

 正直に云うと凄まじいまでに恐いと感じてしまう圧迫感の武器、サーシャは武器を嫌うのに敢えて腰に佩いている辺り余程の事だろう。

 

(アテナ、まさかと思うけど優斗可愛さに暴れたりはしないわよね?)

 

 隣に居るヘスティアと更にアルテミスを含めて『三大処女神』と呼ばれ、男との経験は数億年を過ごして皆無なサーシャではあるが、その理由は愛する者が居るからだと真しやかに囁かれていたのはヘファイストスも知る処だけど、最近は(とみ)に美しく見えるサーシャを鑑みればそれはユートの事では? とも考えていた。

 

 単純に抱かれたい相手が居ないからだというのはヘスティアの談。

 

 尚、ヘファイストスも処女ではあるが理由的にあの三美神とは違う。

 

「さ、会場入りしましょうか」

 

 ヘファイストスに促されてサーシャとヘスティアは頷いた。

 

 会場内はある意味で熱狂に包まれている。

 

「「タケ……」」

 

 極東の武神と名高いタケミカヅチが何やら祈る様に――否、様にではなく間違いなく祈っているらしく両手を合わせて握り呟いていた。

 

「そういえばタケの所の(みこと)って娘が最近になってランクアップしたんだっけ?」

 

「つまり、ボクらと同じ心境なんだね」

 

 命名式。

 

 LV.2以上に成った上級冒険者には神々より二つ名を与えられる――といえば聞こえは良いが、その実態は娯楽に飢えた神々による悪巫座戯した中ニ病患者も真っ青な名前の乱立である。

 

 謂わば『ぼくのかんがえたさいこうのなまえ』発表会であり、眷属の為にも無難な名前を手に入れたいのはヘスティアだけではない。

 

 どうせ付けられるのが強制ならばせめて無難な二つ名を……と。

 

 因みにロキ・ファミリアで云うと――フィン・ディムナ【勇者(ブレイバー)】、リヴェリア・リヨス・アールヴ【九魔姫(ナイン・ヘル)】、ガレス・ランドロック【重傑(エルガルム)】などがそれに当たる。

 

「司会はロキかい? 何で彼奴が司会役?」

 

「自分から買って出たらしいわ。ほら、ユートが一緒してる遠征でファミリアの御気に入りが軒並み居ないから手持ち無沙汰らしいのよ」

 

 ヘスティアとヘファイストスの会話をチラリと見遣るロキ。

 

(ファイたんにアテナに、ほんまにドチビが来とるやないか。かーっ、生意気やな)

 

 とはいえ、ロキは目的があって司会なんて面倒を引き受けたのだし、先ずは普通に情報交換といきたい処。

 

「では、第ン千回になるか判らんけど神会を開かせて貰います。司会進行を今回仰せ遣ったんは、ウチことロキや! 皆、よろしゅーなー!」

 

『『『『『イェー!』』』』』

 

 巨大な円卓に皆が付いたのを見てロキが挨拶を入れると、ノリの良い神々が一斉に拍手をしたり何故かスタンディング・オベーションをしたりと嬉しそうに声を上げた。

 

「んなら情報交換するでぇ、誰かおもしろネタを報告するモン居るか?」

 

 原典ではソーマがネタにされていたりするが、この世界線では逸早く真面目な酒作りに没頭をしているから、酒作りを禁止されてネタ化するのを地味に防がれている。

 

 とはいってもネタは多々有るらしくて大抵の神は面白可笑しく報告をしてきた。

 

「予想はしていたけど酷いなこれは」

 

「フフ、いつもの事よ」

 

 取り敢えずラキア王国が又候、オラリオ侵攻の準備をしているらしい事は確からしい。

 

 ラキア王国は謂わばアレス・ファミリアとも呼べる国で、戦の神アレスが中心となって莫迦みたいに戦争を起こしている。

 

 ヴェルフの先祖もこのラキア王国に所属して、沢山の『クロッゾの魔剣』を献上してきた。

 

 ヴェルフ・クロッゾは自らの血に流れる精霊の力がスキル化したそれを嫌う――否、憎しみすらも抱いているくらいに鍛とうとはしない。

 

 今のクロッゾで魔剣を鍛てるのはヴェルフのみであり、彼が鍛たないなら事実上で新たな魔剣は産み出されない事になる。

 

「一回黙ろか。纏めとくとアレスん動向は気にせなあかんやろな。一応はギルドに報告しとくが、此処に居るもんのファミリアは召集掛けられるかも知れんから宜しくな」

 

 ちゃんと話し合っている自覚はあるらしくて、司会のロキが言うとピタリと止まった。

 

「あ、そや。ウチからもちょーええか? 最近は気色悪い新種のモンスターが現れる様になっとるみたいや。フィリア祭や安全階層なんかになぁ。絵具をぶち撒けたみたいな極彩色の化物共やで、力は第二級冒険者並で神出鬼没。ダンジョンだろうと都市内だろうと御構い無しみたいやからな。昔にやんちゃしとった闇派閥共の残り滓がこそこそと動き回っとる……ちゅう話も耳にするからの、皆も気ぃ付けてや」

 

 ちょっとした牽制球みたいなものではあるが、仮にこの中に件の存在が居ても鉄面皮は崩せないらしく、ニヤニヤしているのも何かが起きたら愉しいと考えての事であろう。

 

 但し、ヘスティアは除く。

 

 何しろオロオロとしながら周りを見ている辺り事情を理解していない。

 

 尚、原典ではガネーシャがハシャーナの死に関して語るけど、この世界線では優雅が代わっていたからハシャーナは存命していてガネーシャが動く理由が無かった。

 

「んじゃ、いよいよ皆大好き『命名式』やで! さぁ、新参は覚悟せーよ?」

 

 細目なロキがニヤリと口角を吊り上げながら、サーシャとヘスティアを見て言う。

 

 又もや神々が万歳三唱。

 

「先ず一人目はセト・ファミリアのセティっつー冒険者からや」

 

「み、皆! 何卒御手柔らかに!」

 

 細身な筋肉質で褐色肌にオールバックなセトが慌てながら叫ぶが……

 

『『『『『だが断る!』』』』』

 

「ギャァァァァァァァァァァアアアッ!」

 

 其処に神々の慈悲なんてモノは一欠片足りとも無かったのだと云う。

 

 『命名式』などと気障ったらしい儀式に聞こえはしても、所詮は娯楽に飢えた神々にとってみれば中ニ心に溢れた名前を付けるのが愉しいとか、正しく愉悦でしかないこの瞬間。

 

「エリカ・ローザリアの称号は【美尾爛手(ビオランテ)】やな、これに決まったで」

 

「ヒィィィッ! イヤァァァァァアアッ!」

 

 神々の時代に追い付けていない人類の間でならとても誇らしい二つ名でも、神々の間では大半が悶絶するくらいに()()()()()()の数々。

 

「く、狂ってるぜ……」

 

「思っていた以上ですね、これは。それにしてもいずれ護慈羅とか母守螺とか出てきそうですね」

 

 青褪めるヘスティアと腰に佩いた武器に触れるサーシャ、そして先程まで神の癖に神頼みしていた武神の眷属がターゲットにされる。

 

「ヤマト・(ミコト)ちゃん、LV.2かぁ。結構可愛らしい娘やな」

 

 長い黒髪を右側でサイドテールに結わい付けた所謂、地球の日ノ本では大和撫子と充分に呼べる美少女なヤマト・命は正に絶好の餌。

 

「【極東神風(ジャンヌ・オブ・ヤマト)】!」

 

「【聖忍(セイント・テール)】!」

 

「【星裸月光(セーラー・ムーン)】!」

 

「ばっか、此処は【天使(テ・シーオ)】の一択だろ!」

 

 最早カオスである。

 

「や、やめろ! やめてくれぇぇぇ! 命は、命は……本当に手塩に掛けて育てて来たんだぞ!」

 

 幼い頃から慕って笑顔を魅せてくれていた命、自分の為にファミリアの為に精一杯で尽くしてくれていた命、ランクアップが叶ってとても嬉しそうにしていた命……

 

 何としても無難な名前にしたかった。

 

「処でディオニュソス君」

 

「ん?」

 

「折角、久し振りに顔を出したんだ。君も意見の一つくらい出してみたらどうだい?」

 

「そうだな……」

 

 ふと見遣れば、身振り手振りでタケミカヅチが無難な名前をとジェスチャーを。

 

 ディオニュソスがニコリと微笑みを浮かべるとタケミカヅチは救われた表情に……

 

「【絶†影】……なんてどうかな?」

 

 なったかと思えば、次の瞬間には遥かな絶望へと叩き落とされるのであった。

 

「ディオニュソスゥゥゥッ、てっめえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!」

 

 無情にも命の二つ名は【絶†影】に。

 

 次は大本命としてロキの眷属であるアイズ・ヴァレンシュタイン――LV.6。

 

 これはアイズのイメージから【剣姫】が継続される事になった。

 

(次はドチビん所の子。ほんまにランクアップをしとるんやな。せやけど、1ヶ月半って何や? まぁ、アテナん所のユートも変わらんけどな)

 

 『ロキ無乳』な~んて呼ばれる()()なだけに、『ロリ巨乳』なヘスティアが気に食わない。

 

 それに今から約八年前に八歳の少女が身の程を弁えない異常な速度でLV.2に上り詰めたが、その所要時間である一年間を約一二分の一近くも縮めた『世界最速兎(レコードホルダー)』でもある。

 

 本当に気に食わない。

 

「二つ名を決める前にちょー聞かせろやドチビ! 1ヶ月半でランクアップってのはいったいどうゆう事や? ウチん所のアイズでさえ一年も掛かったんやぞ!? はっきり言うとウチらの【恩恵】ゆうんは、こういうもんやない!」

 

 ヘスティアは押し黙るしかなかった。

 

 とはいえ、ロキも実際にヘスティアが反則をしていたり闇派閥と繋がりを持ち、怪人レヴィスや白髪鬼(ヴァンデッタ)みたいな強化をしたとは思っていない。

 

 ヘスティアは自分と違って間違いなく善神で、【神の力】によるズルだってしてないだろう。

 

「おい、こらドチビ! 説明せんか!」

 

「うぐぐ……」

 

 ヘスティアはヘスティアでまさか成長促進系のスキルを発現した……などと、口が裂けても言えないから話せる筈も無く。

 

「ちょっと良いかしら?」

 

「何や、アテナ?」

 

 其処に口を挟むのはサーシャ。

 

「サ、サーシャ?」

 

 ヘスティアはこんな突然の神友の行動に面喰らってしまう。

 

「ヘスティアのファミリアとは同盟を組んでいる私が代わりに説明をしましょう」

 

「ほう?」

 

「サーシャ!?」

 

 微笑みを浮かべているが先のディオニュソスとは明らかに異なる慈愛の笑み。

 

「話の前にベル・クラネルに関して報告書には無い情報を一つ、彼がオラリオに来たのは二か月近く前と意外に最近ですね。死んだ祖父に言われてオラリオに来たのは祖父からの薫陶を受けていて出会いを求めてらしいわ。だけど見た目が貧相だからか、冒険者に成るにはファミリアに所属をして【神の恩恵】を受けねばなりませんが基本的に門前払い。聞くにダンジョン探索系ファミリアは全て回ったとか」

 

「全部? ウチん所もか?」

 

「ええ、余程に目立たない超小規模ファミリアでもない限りは全てですね」

 

 それこそヘスティア・ファミリアとか。

 

 フレイヤ・ファミリア、アポロン・ファミリアにロキ・ファミリアなど判り易いファミリアは回ったが門前払いされている。

 

 ソーマ・ファミリアみたいなよく判らない所や製作系ファミリアの門戸は叩いていない。

 

 因みにだが、抑々にしてベル本人も門戸を叩いたファミリアが何処のファミリアか理解せずに居た場合もあって、当時は探索系のファミリアであるなら何処でも良いからという感じだ。

 

「その上で語るなら、ベル・クラネルは成長促進系のスキル――【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】を得ています」

 

「ちょっ、サーシャァァァァアッ!?」

 

 まんま話した神友にヘスティアは思わず絶叫をしてしまったものだった。

 

「リアリス・フレーゼやと?」

 

「ええ、その効果はある特定の人物に対する憧憬を一途に想う事で経験値の大量取得及びステイタスの上がり幅の増加。それからスキルの説明文は『早熟する。懸想が続く限り効果持続。懸想の丈により効果向上』とあります。ベルは懸想の相手にLV.で追い付くか若しくは自らの想いを裏切るかするまでこのスキルの恩恵に与るでしょう」

 

「LV.……で?」

 

「今のベルはLV.2ですが、懸想の相手は既にLV.6と遥かな高みに居ます」

 

「っ! まさか、アイズたんか!?」

 

「そうです。彼がスキルに目覚めたのは奇しくも分水嶺とも云えるミノタウロスとの闘いとも取れない逃走から、アイズ・ヴァレンシュタインに救われたその日ですから」

 

 アイズとユートに救われて、ベートに謗られ、そして立ったベルの背中の恩恵に発現したスキルにより飛躍――更には進化とも云える成長を。

 

「後、懸想を裏切るっちゅーのは?」

 

「何処までが境界線なのかは私にも不明ですが、少なくともベル自身が納得しない形で性交渉をした場合、スキルは消失してしまうのではないかとユートは考えています」

 

「つまりは強姦でもされるとかか?」

 

「そうですね。フレイヤはそんな真似をしないと思いますが……イシュタル、貴女は?」

 

「さぁ、どうかねぇ?」

 

 若しベルが豊穣の女神にして美の化身とも云える彼女らに囚われたら?

 

 とはいっても、ベルが魅了を受ける事は無いとユートが御墨付きを出していた。

 

 ユートがベルを【鑑定】した結果として見付けた『魅了の効果の無効化』がある。

 

 何処まで効果を期待出来るかまでは判らないにせよ、単純な魅了ではベルを虜にする事など不可能であると結論付けていた。

 

 これに付いてはサーシャも語る気は無い……というのも、フレイヤの狙いがどうやらベルであるらしいとユートから聞いていたから。

 

「フフフ、ヘスティアの眷属の御話しは余り聴かないから知れて嬉しかったわ」

 

「フレイヤ?」

 

 イシュタルと同じ豊穣にして美の女神として、謂わば淫蕩に耽るのが倣いの存在である。

 

 本人の本意ではないとはいえ処女神の一柱たるヘスティアとしては、淫らな本質を持つ女神には苦手意識を自然と懐いてしまうのだ。

 

 とはいえ、大地母神たる女神は処女では居られないし居てはならない。

 

 処女とは即ち男との性的な交渉を持たない者、子供としての女――少女を意味する。

 

 子を成す為には性交渉は必要不可欠であるし、それは快楽に堕ちる事も不可分だった。

 

 子を成す為に性的な交渉をして孕む者とは即ち大人としての女――母を意味する。

 

 まぁ、だからといって美の女神の皆が大人かと云えばそうではなく、イシュタルはフレイヤへの醜い妬心を隠そうともしていない。

 

 ある意味ではデメテルが一番に理想的な母の像を醸し出しているだろうか?

 

 尚、オラリオには五柱の豊穣の女神が降りて来ているのだが、ユートが知るのはファミリア結成の際に野菜を卸す直接交渉をしたデメテル、眷属と闘った事で会う事になったフレイヤ、娼館が並ぶ歓楽街の女王たるイシュタルの三柱のみだ。

 

 イシュタルには会って無いけど。

 

「超激レアスキル持ちとか? このヒューマン、欲っすぃぃぃぃいっっ!」

 

「完全なダークホース!」

 

「ヘスティア、是非くれないか?」

 

「寧ろベルたんとヤ・ら・な・い・か?」

 

 男神共が騒ぐ騒ぐ。

 

「やるか! ってか、最後の奴は誰だい!?」

 

 神々の中にはそんなのも居るのだろうか? 何て邪推したくなるが、そんなものを吹き飛ばすくらいの圧がサーシャより放たれた。

 

『『『『『っ!?』』』』』

 

 正確にはサーシャ本神からではないが……

 

「駄目ですよ、貴方達」

 

「な、何でだよアテナ!?」

 

「言った筈です。ベルは貴方達のファミリアにて門戸を叩いて門前払いにされたのだ……と」

 

「うっ!?」

 

「貧弱だからとか、見た目がショボいからだとか田舎者だと彼を拒絶しておきながら、レアスキルを得たからと今更欲しがるなどと」

 

 ベルを受け容れたのは唯一、ヘスティアのみだったのだ。

 

 ベル本人が移籍を望んだなら未だしも、それで欲しがるのは正しく恥知らずも良い処。

 

 娯楽大好きな神々とはいえ自らを貶めたい訳では無いからか黙るしかなく皆が皆、辺りを見回して動きを見守る雰囲気になってしまう。

 

 そんな様子を見ていたフレイヤはスッと立ち上がると、優雅な動きで入口の方へ向かうべく回れ右をしたのをロキが見つめ口を開いた。

 

「何や、もう行くんか?」

 

「ええ、知りたい事は知れたしね。それと出来れば『白兎』君には可愛い名前を付けて上げてね」

 

 パチンとウインクしながら投げキッスをする、それだけで蕩けた男神達が『Yes』と答える。

 

 その後に付けられたベル・クラネルの二つ名は――【未完の少年(リトル・ルーキー)】であったと云う。

 

(無難な名前で良かったぜ)

 

 ヘスティアとしては【美尾爛手】や【絶†影】よりはマシで喜んでいた。

 

「次はアテナん所の子やな。滑り込みで二人とは大したもんやけど……」

 

 一人はユート、もう一人がリリだ。

 

「じゃあ、先ずはリリ――リリルカ・アーデで御願い出来ますか?」

 

「かめへんけど……」

 

 資料に目を通す神々。

 

「ほう、リリルカ・アーデ。元ソーマ・ファミリアのサポーターかぁ」

 

 サポーターはロキ・ファミリアみたいな潤沢に過ぎる人材が居るのでなくば、基本的に冒険者の成り損ないとも云われる落伍者の小銭稼ぎという認識が強い。

 

 ロキ・ファミリアでもLV.1~2の者が普段はサポーターをしているし、パーティレベルでのダンジョンアタックなら中・後衛がサポーターとして荷物持ちをしたりする。

 

 ユートの居るアテナ・ファミリアでも基本的にはリリの立ち位置はサポーター、だけど此処ではサポーターだからと低く見られたりはしない。

 

 それに小人族の低い能力値がまるで補われる様に今、リリのステイタスには高い補正値が付いているから単純な腕力も低くはなかった。

 

「単なる荷物持ちちゃうんやな」

 

 荷物持ちだけで経験値が得られる程に簡単では無いのはロキも言っていた通り、だからこそ何かがあると考えるのは当然だと云えよう。

 

「この子はウチの団長が可愛がっていますから。ロキなら意味が解りますね?」

 

「ああ、そういう……な」

 

 ロキ・ファミリアの幹部――LV.5以上である第一級の冒険者ティオナ・ヒリュテ、彼女こそがユートに()()()()()()()()女の一人だ。

 

 ユートのスキル――本来の能力に加えてスキル化したソレ、元々からユートは抱いた処女を飛躍的にパワーアップさせる能力を持っている訳だが、スキル化されたコレは上げ幅こそ小さなものだったりするが、好きな部位にまるでその手のゲームみたいに数値の振り分けが可能となった。

 

 漠然と能力が上がるのもアリといえばアリなのかも知れない、だけど好きな部位に数値をぶっ込めるのも極振りが出来て愉しいもの。

 

 このスキルは元々からの能力とコンフリクトをしない為、数値にこそ表れていないがティオナもリリも普通に能力を増している。

 

 能力の恩恵を得る条件は処女をユートに捧げるという一点のみで、処女喪失というある意味では女として一つの壁を崩せれば意外と簡単に容易く手に入るのだ。

 

 数値に表れないから気付き難いけどティオナは元の能力値が高いから上げ幅も大きく、LV.6と云われても違和感が無いくらいの筈。

 

(いずれアイズたんも……とかかなぁ? ちゅーかレフィーヤ辺りはもう怪しいしのぉ)

 

 ロキは頭を抱えたくなったが、そんなロキを見てサーシャが割と余計な一言を添える。

 

「余り干渉するとアイズ・ヴァレンシュタインがお腹を大きくして報告されますよ?」

 

「……ハァ?」

 

「『ロキ、私デキた』――何て」

 

「ウギャァァァァァァァァアアアアアッ!」

 

 故に叫ぶ。

 

「な、何だ?」

 

「ロキが発狂したぞ!?」

 

 まさか『神々の嫁(アイズ・ヴァレンシュタイン)』が妊娠した想像で叫んでいるとは思わない神々。

 

 取り敢えずぶん殴って正気に戻してからリリの二つ名を話し合う。

 

「んじゃ、リリルカちゃんの二つ名は決定やな」

 

 いまいち巫座戯る雰囲気では無くなったからか意外とまともな二つ名となった。

 

「次はユートやね」

 

「そうですね」

 

 何だか凄まじい神威が放たれた気がするのは、果たして気の所為という訳では無さそうだ。

 

 その手の錫杖は嘗ての刻に地球で女神アテナが握っていたニケのレプリカ、ユートが最初に行った眷属としての仕事は彼の廃教会の地下を改造した事だったが、次の仕事としたのが聖戦で何度か視たアテナの身を鎧う物――アテナの聖衣の製作、この聖衣の左手にはアテナの楯を持ち、右の掌の上にはニケを乗せている。

 

 サーシャは【アテナの聖衣】その物は神室へと安置され、地球に於けるアテナ神殿の如く成されているのと同時に正しく神域化されていた。

 

 尚、サーシャも【神の力】を扱えないのは変わらないが【アテナの聖衣】を纏えば黄金聖闘士に匹敵する力を行使可能だが、当然ながらそれに関しては誰にも話をしてはいない。

 

 それは兎も角、普段のサーシャは街娘とも変わらぬ装いや雰囲気を醸し出しているが、いざとなればこうした厳粛な雰囲気も出せる。

 

 つまりは『沙織さんモード』。

 

 サーシャは次代のアテナたる城戸沙織みたいな事も出来る様になっていた。

 

「ロキ、先ずはユートからの伝言を」

 

「でんご~ん?」

 

「邪神なら天に還しても罪じゃないよな?」

 

「は? 邪神って何やの!?」

 

「例えば――子供の名前を弄ぶ神」

 

『『『『『っ!?』』』』』

 

 神々が思い切り目を逸らした辺りで愈々、腰に佩いた刀を抜刀する。

 

『『『『『ヒッ!?』』』』』

 

 その()()()()()に神々が息を呑んだ。

 

 

「ロキの子、地を揺らす者――の牙を以て鍛たれた白亜の刀です」

 

「ウチの子? 地を揺らす者ってフェンリルの事を言うとるんか?」

 

 嘗て前世程の昔に【ハイスクールD×D】世界でロキと敵対した時、神喰狼たるフェンリルとの闘いで両の牙を叩き折って手にしたそれを鍛える事で二振りの白亜の刀を造り上げた。

 

 元より神殺しの牙を改めて鍛えたそれは神殺しの刃と成り、更には神を斬り裂く事で正真正銘の神殺しの概念を付与している。

 

 その時に斬った神の名は――()()

 

 この神殺剣は正しくゴッドスレイヤーであり、ロキスレイヤーとして誕生するのであった。

 

 

.




 本編小説と外伝小説とアニメとwikiがウチの情報源だったりする為、アルテミスの噺やソシャゲの噺は概要くらいしか判らないけど……

 アルテミスの噺って時間軸的に何処に当たるんだろう? まだ通り過ぎて無いとは思うけど。


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