ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜

61 / 74
 可成りハチャメチャな内容に……





第60話:穢れた精霊を“浄解”するのは間違っているだろうか

.

 第五九階層の森が全て焼滅してしまっており、ガレスが全身を以て守らなければ下手したら死者すら出ていた攻撃に、ロキ・ファミリアは統領のフィンも最高幹部のリヴェリアも楯になっていたガレスも、そして幹部であるアイズもティオナもティオネもベートも……況んやLV.4のラウル達や魔力の強さは兎も角として能力的にはLV.3であるレフィーヤも、ユートを除く誰もが死々累々にして這々の体で倒れ伏していた。

 

 ナルヴィはユートを見て――(何であの人だけ無傷なの?)と、世の理不尽というものを見せ付けられた気分になっていたと云う。

 

「【地ヨ唸レ――】」

 

 殆んど間を空けずに再び可憐にして死を誘う詩が美しい、然れども間違い無く恐怖を煽る精霊の声が上半身から紡がれ始めた。

 

「【来タレ来タレ来タレ大地ノ殻ヨ黒鉄ノ宝閃(ヒカリ)ヨ星ノ鉄槌ヨ 開闢ノ契約ヲモッテ反転セヨ空ヲ焼ケ地ヲ砕ケ橋ヲ架ケ天地(ヒトツ)ト為レ 降りソソグ天空ノ斧破壊ノ厄災 代行者ノ名ニオイテ命ジル 与エラレシ我ガ名ハ地精霊(ノーム)大地ノ化身大地ノ女王(オウ)――】」

 

 余りにも美しい歌声でありながら、それを聴く者達は悍ましさすらも感じてしまう反転精霊の唄、しかも唱われるその詠唱は破壊に特化した魔法の其れである。

 

「ラウル達を守れえええええっ!」

 

 声よ枯れよと云わんばかりの絶叫にも等しい、フィン・ディムナの命令に第一級冒険者たる幹部が即座に動くも、穢れた精霊は何ら躊躇いも無く呪文詠唱を完成させた。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!」

 

 アイズもレフィーヤの前でエアリエルの詠唱を行って、自らが手にしたデスペレートを眼前へと持って行き防御をする。

 

「【メテオ・スォーム】」

 

 そして遂に魔法は放たれた。

 

 天井を埋め尽くす魔法陣の輝きの一つ一つから召喚される巨大なる岩石、それは重量も然る事ながら形が尖鋭化されていて兇悪な事窮まりない。

 

 そんなモノが雨霰と降り注ぐ。

 

 駄目だ……と、誰もが絶望の表情を浮かべてしまうのも無理からぬ事であろう。

 

「流石に見過ごせないな……光鷹翼!」

 

 それは其処に見えていながらにして存在が否定される光の翼、“白龍皇の光翼”のモノとも全くの別物であるそれは攻撃に使って良し、防御に使って良し、自らの強化に使って良しと使い勝手が凄まじく良い代物だ。

 

 しかもユートは樹雷の皇家とは違って皇家の樹のバックアップを受けずとも、自らの意志で自らの力を以て発現させる事が可能となっている。

 

 ユートは元からハルケギニア時代の次元放浪期に於いて、【天地無用! 魎皇鬼】の世界に行って“三命の頂神”の一柱たる白眉羽鷲と津名魅との出逢いにて彼女達を視る事により、二枚だけだが光鷹翼を発現させる事に成功をさせていた。

 

 それを使ってハルケギニアに帰還をしたのだから当然の帰結である。

 

 転生後は三枚、更に今世ではZと同じく五枚、そして全てが終わってからは一二枚もの光鷹翼を発現させる事が出来ていた。

 

 更にバックルを手にすると、ミスリルゲートを開いて内部へカードを装填してやる。

 

 バックルからトランプカードみたいなベルト――シャッフルラップが伸長して腰に合着……

 

「変身!」

 

《OPEN UP!!》

 

 スピリチュアルエレメントがバックルから顕れると、龍を模したエムブレムが赤く浮かび上がってユートを自動的に通過する。

 

《Welsh Dragon Balance Breaker!!》

 

 即ちその姿は神器“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”の禁手である“赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイル・メイル)”だった。

 

 ユートは複数の神器を先の――【ハイスクールD×D】の世界で、“禍の団”が襲撃をしてきた際に強奪をしてその内に有している。

 

 それは大した事の無い神器から“聖剣創造”みたいな高位の神器、更には神霊をも弑奉る神滅具と呼ばれる最上位の神器まで……だ。

 

 それが“魔獣創造”と呼ばれている上位神滅具、ユートはこれを使ってデジモンを創造してみたり仮面ライダーのガワを創造したりと、本来の持ち主では思い付きもしないし、仮に思い付いたとしても能力的に創れないモノを創って可成り好きに使っている訳だけど、別の――【闘神都市2】の世界観を強く持った世界に居た転生者から“白龍皇の光翼”を、そして狼摩白夜と共に死んで転生していた狼摩優世から“赤龍帝の籠手”を獲ている。

 

 より正確には狼摩優世の死に伴って“赤龍帝の籠手”も消えた……というか、普通に新たな持ち主の許へ転生をした筈だったのだが、何故かユートの中に存在していたドライグが普通に覚醒した。

 

 記憶の有無から間違い無く狼摩優世の使っていた神器のドライグであり、しかもどうやら昔から事ある毎にユートは力を行使していたらしい。

 

 確かに行き成りパワーアップしたり、敵の硬い防御をすり抜けたりと明らかに“赤龍帝の籠手”と思しき力を用いた記憶が有り、故にこそ赤龍帝のドライグがユートの魂と結び付いていたというのも間違え様が無い事実。

 

 実際問題、ハルケギニア時代のニャル子との闘いでも不可思議な増力が在ったればこその勝利、それに次元放浪期での最初の一歩にて芳賀という鬼神が真の姿を再構築した際、神様ないっちゃんとなっちゃんを抱いて力を取り戻したユートではあるが、意外なレベルでパワーアップすらしていた為に鬼人の木島 卓やその恋人な天神うづきに、ユートと情を交わしたうづきの姉の天神かんなも倒れ伏してしまっていた程、ユートも力こそ取り戻したけどパワーアップの幅が予想外なくらいでヤバかったのも確かであり、その時に行き成り力が何倍にも成ったからこそ勝てていた。

 

 今なら解る、それは間違い無く増幅と貫通というドライグの――赤龍帝の特殊能力。

 

「行け、そして貫け! 爆裂豪雨(イオレイン)!」

 

《Penetrate!!》

 

 それは極限爆裂呪文(イオグランデ)を数百にも分割した高熱のミサイル、しかも一発一発にドライグの“貫通”が付与されたモノで放たれた爆裂豪雨がメテオ・スォームの岩を貫き通し、半ばまで到達したのと同時に爆発し破壊をしていく。

 

 ロキ・ファミリアのメンバーは首領であり最も冷静沈着たるフィンをして、茫然自失となりながらその或る種の理不尽な光景を眺めていた。

 

 そしてLV.4な二軍のラウル達は、理不尽を超越した不可思議なナニかを感じずにはいられないのか、味方である筈のユートを視ながら絶望の表情すらをも浮かべている。

 

 ユートはまだこのオラリオに来て余り日が経っていない、ベル・クラネルより本当に一ヶ月程度違うくらいだからかいまいち、自分とオラリオの冒険者のLV.というのを理解していない。

 

 当初の素ならLV.5くらいというのにせよ、第一級冒険者の端くれがどの程度なのかを理解してなかったからこそ、実際には素でオラリオ最強たるLV.7――某かの偉業を成し遂げて上位の経験値を獲られればLV.8にも到達が可能な程の数値――な【猛者(おうじゃ)】オッタルをも下す。

 

 成り立てなロキ・ファミリア首領と最高幹部なんかは何を況んや。

 

「フィン、立てないか? それなら僕がアレを斃すまでだが」

 

「冗談を言わないでくれ。僕らのダメージは可成り抑えて貰ったのに立てないなんて有り得ない。勿論、君だけに闘わせる心算も無いさ」

 

「そうか、なら使え」

 

 ユートは槍を渡す。

 

「これは?」

 

「グラディウス・レプリカ」

 

「グラディウス・レプリカ? 詰まりグラディウスと呼ばれる槍の複製かい?」

 

「そうだ」

 

 アカネイア大陸はラーマン神殿に置かれていた神器、それは剣の“メリクル”と槍の“グラディウス”と弓の“パルティア”、そしてマケドニア王国には斧の“オートクレール”が存在していた。

 

 ユートがフィンへと手渡したのは槍の神器である“グラディウス”の複製品、ユート自身がよく視て全てを識り尽くしてから鍛った贋作。

 

 勿論、贋作が真作に劣るとは限らない。

 

 フィンが振り回すグラディウス・レプリカは、グラディウス真作と変わらぬ攻撃力を持つ。

 

「貸してやるだけだ、後で返せよ」

 

「これ程の槍、中々見付からないね。正直に言えば欲しいと思うよ」

 

 輝きが違う、まるで伝説にすら謳われる程の槍であるとすら思えるし、或いは女神フィアナが携えた武器はこのくらい輝きを放つのかも知れないとまで考えてしまう。

 

「欲しけりゃ売ってやる……が、雷神の剣と同じか或いはそれ以上の高値になるぞ」

 

「出来たら勉強して欲しいね」

 

 軽口を叩きながらグラディウス・レプリカを構えるフィンは、背後で未だに倒れ伏してしまっているファミリアへと声を掛けた。

 

「あのモンスターを……討つ! 君達に勇気を問おう、その瞳には何が見えている? 恐怖か? それとも絶望か? 或いは破滅か! 僕の目には斃すべき敵、そして勝機しか見えていない!」

 

 グラディウス・レプリカの石突きを地面に突き刺すと甲高い音が響く。

 

「只でさえ、あのモンスターは僕らだけでもやれない訳じゃ無い筈だ! それに加えて彼が居る、ユートが居るんだ! 退路など不要、彼より受け取りし槍を以て道を切り開こう! 小人族(パルゥム)の女神フィアナの名に誓って君達に勝利を約束する! 僕に付いて来いっっ!」

 

 ちゃっかりユートの名を出す。

 

「それとも……君達にベル・クラネルの真似事は荷が克ち過ぎているかな?」

 

 ニヤリと笑うフィン、そんな彼の科白に発憤をしない者はロキ・ファミリアの第一級冒険者の中に居る筈も無く、いの一番にベルを謗ったベートが自分の脚で確り大地を踏み立ち上がる。

 

 ベート・ローガ、彼は勿論だが初めから今みたいな性格だった訳では無い。

 

 牙の部族が居た。

 

 身体は弱いが芯の強い幼馴染みも居た。

 

 それはきっと初恋だった。

 

 父が居た。

 

 部族を引っ張る偉大な長だった。

 

 仲間が居た。

 

 冗談を言い合える仲間達だった。

 

 全部が過去形、自分が居ない間にモンスターにより全てが壊されたから。

 

 新たな居場所が出来た。

 

 新たな恋慕も有った……かも知れない。

 

 部族の仇を討つべく留守にしていた間に又もや大切なナニかを喪った。

 

 ベート・ローガの牙は全てが傷である。

 

 己れを傷付ける度にその牙は、鋭く硬いモノへ変わっていき敵を喰い千切る力と成るのだ。

 

 彼の侮蔑は須く発破、ベート・ローガは誰も守れず誰しもを傷付ける事しか出来ない……だからこそ! フィンの言葉に立ち上がれないなら自分を決して許しはしないであろう。

 

「自身より強大な敵を前に彼は臆したか? 君はどうだベート?」

 

「ああっ!? この俺に、んなもんは聞くまでもねーだろうがよ!」

 

 ティオネ・ヒリュテ。

 

 ティオナ・ヒリュテ。

 

 褐色の肌を持つアマゾネスの姉妹、オラリオの出身では無くて嘗ては女神カーリーが治める国である闘国(テルスキュラ)で生まれ育ち、仲間と称される者達同士で殺し合いをさせられていた。

 

 それを不服に思った姉妹は国を出る。

 

 神カーリーには何らかの意図が有ったのだろうとティオネ――ティオナは特に考えていない――は思ったけど、それはそれとして闘国を脱してから色々とあったものの迷宮都市に辿り着き、何やかんやでティオネはフィンと闘り合った後に彼の強さと魔法による獣性に惹かれたらしい。

 

 ロキ・ファミリアに改宗後は今と変わらない、ティオナがヘラヘラしつつティオネはフィンへの恋のアタック、そうしてユートとの出会いまでに二人はLV.5の第一級冒険者に。

 

「彼は全てを出し切って闘った。君は本当に全力を出し切ったのかいティオネ?」

 

「っ! 未だ、全っ然です団長っ!」

 

 顔を上げて不敵な笑みを浮かべたティオネは、ボヨンと巨乳を揺らして跳ね起きる。

 

「彼は冒険をした。襲い来る理不尽な生死の境に身を投じたよティオナ」

 

「ん、だね! 私達だってこんな所で負けてらんないんだよっ!」

 

 ティオナもまた、身体の痛みなど知らぬとばかりに起き上がった。

 

 アイズ・ヴァレンシュタイン。

 

 未だに七歳の幼女に過ぎなかった頃、ロキ・ファミリアにて神ロキと契りを結んだ。

 

 三大クエストの最後の一つである黒竜の討伐がゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアの合同で行われたが、敢え無く失敗に終わってしまった際にアイズは両親を喪った。

 

 即ち、アイズの両親はどちらかのファミリアの関係者だったという事になる。

 

 ユートは勿論だけど知らない。

 

 知らされていないからだが、流石にこの辺の事は可成り微妙なバランスで保たれているだろう、それに本人が話さないならユートも訊こうとまでは思わなかった。

 

 とはいえ、精霊アリアとの関連性があるという事だけは知り得てしまった訳だが……

 

 精霊アリアはアイズの力が風である事を視ても風属性に関わる精霊だろう、そんなアイズの風を視たレヴィスが彼女を『アリア』と呼んだ。

 

 アイズの風を『アリアの風』だと、そしてこの第五九層へと誘ったのである。

 

 三大クエストは大地のベヒモスと大海のリヴァイアサンこそ斃されたが、大空を舞う隻眼の黒竜は未だに健在で終わっていない。

 

 アイズ・ヴァレンシュタインに倒れている暇は無い、況してやモンスター相手に手折れている訳にはいかない、そして弟子であるベル・クラネルが最初の階段を昇ったのを見たからには……

 

「アイズ、彼は限界を越えて見せた」

 

「……うんっ!」

 

 俯いてなど居られなかった。

 

 弟子がたった一人で格上のモンスターを叩き伏せたのに、師匠である自分が闘えませんでしただなんて絶対に言いたくない。

 

 トリはレフィーヤ・ウィリディス。

 

 未だLV.3と、この場に居るロキ・ファミリアのメンバーの中では一番低い。

 

 抑々、学区からロキ・ファミリアにリクルートで入ったのが約四年前であり、LV.も上がってはいるけど僅か1のみ。

 

 然しながら魔力の値も高いのでリヴェリアからは自身の後釜、後継者として育てられているので期待値は高いと云う事だ。

 

 ユートと非常に仲好くなっているのはユートがエルフに好かれ易い体質な為で、エルフ達が曰わく『まるで故郷の森に包まれているみたいだ』と男女を問わずに言われていた。

 

 レフィーヤ自身も『ウィーシェの森に帰ってきたみたい』と、思わずユートの胸に飛び込んでしまうという()()()()()事をしている。

 

 同じくロキ・ファミリアの二軍の中に在っても高位に位置をしていて、レフィーヤを除けばエルフの中でも最高位かも知れない“純潔の園(エルリーフ)”アリシアですらもユートに対して肌触れを許している程だ。

 

 まぁ、ユートからしたらエルフが(こぞ)って森の香やら気配やらを感じるので、『ひょっとしたら僕はフィトンチッドでも撒いてるのか?』などと本気で悩んだ事もある。

 

 とはいっても周りに虫が出てそれが落ちたみたいな事も無いが……

 

(ベル・クラネル、アイズさんの弟子扱いされてる白髪赤目のヒューマン……じゃあ無くって実はアルミラージ?)

 

 それは兎型モンスターである。

 

(……でも、強かった。団長やリヴェリア様が、アイズさんもティオネさんもティオナさんも……それ処かベートさんまでが見惚れるくらいに? 未だLV.1でしかない未熟者、だけどあんな熱い闘いは私だって経験が無い)

 

 格上を相手に傷付きながら相手にダメージを負わせていき、最後には華麗でも優雅でも無い泥臭さ満点の激闘に相応しいトドメ。

 

 今の処のレフィーヤには確かにそんな経験は無いのであろう、だけど果たして原典とは異なっていてベルとミノタウロスの闘いを視た。

 

 それが何を成すかは誰にも判らない。

 

「フィン、ちょっと先に行ってろ」

 

「君の助けをこれでも当てにしていたんだがね、何か大事な用件でも有るのかな?」

 

「何ね、ちょいと準備をするだけさ」

 

 パチンとウィンクしながら右手の親指と人差し指だけ立てた状態でBANGと呟く。

 

「まぁ、先に行くのは良いが……別にアレを斃してしまっても構わないんだろう?」

 

「何で其処で死亡フラグを建てたし? だったらこう返そうか……遠慮は要らない、がつんと痛い目に遭わせてやれフィン……と」

 

「フッ、そうか。ならば期待に応えるとしよう」

 

 そう言って駆け出すフィン。

 

「ラウル達はこの場に後方に残って支援しろ! 僕とアイズ達で女体型に突撃をする!」

 

「はいっす!」

 

「レフィーヤ、君も来るんだ!」

 

「はい!」

 

 先ずは指令を出す。

 

「リヴェリア、ガレス、此処で終わりか? なら其処で寝ていると良い。僕は先に行く」

 

 そして最高幹部たる二人に激励。

 

「クソ、生意気な小僧(パルゥム)めっ! おい、いけ好かないエルフ! 其処で寝とる場合か!?」

 

「……黙れ、野蛮なドワーフ!」

 

 そんな激励に二人は起き上がった。

 

「斧を寄越せええええっっ!」

 

「最大砲撃に移る! 私を守れお前達!」

 

「はいっ!」

 

 叫ぶはガレス、リヴェリアも新たに魔法の準備に移り、アリシアは涙目で返事をする。

 

 それを視た椿は……

 

「良いモノを見た、手前も一助となろう!」

 

 抜刀しながら叫んだと云う。

 

「たった今、この突撃を以て奴を貫く! 出し尽くせ全てを!」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 細かな指示を出したフィンは狂化魔法によって自らを強化した。

 

「【魔槍よ、血を捧げし我が額を穿て】」

 

 これにより最早、この先に指揮は不要となり、要るのは純粋な荒れ狂う狂者のみだ。

 

「【凶猛の魔槍(ヘル・フィネガス)】!」

 

 それは術者の理性を狂暴な野生にて駆逐して、自身の能力を大幅に引き上げる魔法。

 

 獣を越え、人を越える神の戦士としては可成り皮肉な魔法であろう。

 

「さて、実験を始めよう」

 

 先ずは変身を解除。

 

 ユートは魔力を抑えると氣力を全開に、そして自らの埋に眠る記憶から引き出す力。

 

「ファントムガオーッ!」

 

 それは勇者王の力の模造。

 

融合(フュージョン)ッ!」

 

 ファントムガオーと融合すると同時に変形を、それは飛ぶ為の飛翔型から人型を執る。

 

「ガオファーッ!」

 

 更にユートから謎の信号が放たれた。

 

 何処とも知らぬ場所、ユートを捜していた者の一人にそのシグナルが届く。

 

 卯都木 命だ。

 

「祐希ちゃん、優斗さんからファイナルフュージョン要請のシグナルです!」

 

 直ぐにユーキへ【閃姫】専用のリストバンド、通信装置でもあるそれで連絡を入れた。

 

〔ファイナルフュージョン承認!〕

 

「了解!」

 

 尚、彼女が真っ赤に成っているのは空きっ腹を満たすべく寄ったバーガーショップでハンバーガーにかぶり付いていたから。

 

 こんな場所で行き成り寸劇をさせられているのだから無理も無いが、【準閃姫】扱いから正式な【閃姫】と成った命は恥ずかしいのも我慢をし、嘗ての職場に有ったコンソールと同じ型の仮想コンソールを叩く。

 

「ファイナルフュージョン、プログラム……ドラァァァァァァイブッ!」

 

 叩かれるスイッチ。

 

 だけどこの後の事を考えると安心なんてしていられない為、命はバーガーショップをさっさと出て特殊な空間へと入り込む。

 

「フッ、ドンと来い! よ」

 

 ファイナルフュージョンのプログラムが飛び、ユートのガオファーが受信をした。

 

「よっしゃ、ファイナルッ……フュージョォォォォォォォォォンッ!」

 

 念能力“勇者王新生”、物自体は“勇者王誕生”とも大して変わりはしないのだが、ガオガイガーかガオファイガーかの見た目の差は出る。

 

 尚、本来は独力で出来る念能力ながらシークエンスを確りやると出力アップなどが見込めた為、可哀相に卯都木 命を始めとした『チームGGG』は突発的な寸劇をさせられていた。

 

 役割は持ち回りで、プログラムドライブも三人の中から一人がランダムで選出される。

 

 『チームGGG』とは、何処ぞの銀髪アホ毛様によりあらゆる平行世界から跳ばされてきた【勇者王ガオガイガー】に関わる女性陣から構成された組織であり、何故かGGGとは全く無関係な筈のユーキが長官役に収まっていた。

 

 というか、抑々にして銀髪アホ毛様が何故に彼女達――【勇者王ガオガイガー】関連の女性陣を跳ばして来たのかも意味不明。

 

 最初はプロトJアークに乗った形でオリジナルのパルス・アベルと卯都木 命の二人。

 

 此処で云うオリジナルとはパスキューマシンで肉体は疎か記憶でさえ複製されたレプリジンでは無くて、本来ならば疾うに消えて死んでいた筈のオリジンたるパルス・アベルの方だ。

 

 パルス・アベルにせよ、他のソール11遊星主にせよ、仮に死んでもレプリジンが無限に創られるから怖くは無いと考えていた様だが、実際に死ねばそれまででしかない。

 

 レプリジンというのは飽く迄もレプリジンという別個体に過ぎず、死んだらレプリジンの肉体で甦る訳では決して無くて記憶を引き継いだだけの別人に過ぎなかったのである。

 

 恐らく本人達に自覚は無かった。

 

 複製されたレプリジンは記憶引き継ぎで幾らでも再生されていると勘違いを重ねていたろうが、死んでしまった個体は普通に消滅をしていた訳だったし、オリジンなんて最初の方で消滅してから完全に終わっている。

 

 例えるならウルトラマントレギア、彼は斃されても何故だか復活をしてウルトラマンタイガ達を苛立たせたものだが、あれも実際にはトレギアは死んでいて平行世界の同一人物を召喚して記憶を引き継がせていただけだ。

 

 他にも【スーパーロボット大戦Z】に於いて現れた敵機シュロウガ、その機体のパイロットであるアサキム・ドーウィンは機体が破壊される度に死んでいて、復活をしている様に見えているのは記憶を引き継いでいるだけでシュロウガが造り出した虚像であった。

 

 それと同種だと思えば解り易い。

 

 転生して肉体を変えているだけで、魂が同一のユートとは全くの真逆であろう。

 

 アホ毛様が何故にこんな事を仕出かしたのかは解りかねるが、どうも未だに初心だったユートを揶揄うのが主目的だったみたいだ。

 

 故に、基本的にはああいった類いは前々世であるハルケギニア時代のみで終わっていた。

 

 偶に誰かが跳ばされて来る事はあったのだが、それはその世界での【閃姫】候補の関係者だとか理由は有ったし、揶揄うというのも矢張り有ったらしいのは確認をしている。

 

 アホ毛様の厭らしい処は全員が別の世界線から連れて来られた事と、彼女達から話を聞くに全員が死んだと思ったのに生きてハルケギニアに居たと証言していた事だ。

 

 つまり元の世界で彼女達は死亡判定されているので、若しも元の世界を捜し出して連れて帰っても既に居場所が無い訳だから。

 

 それでも時間こそ掛かったけど世界を捜す為の道具を手に入れ、彼女達の世界を全て捜し出して一度はその世界へと送り返した。

 

 それは“導越の羅針盤”と云う。

 

 前世で手に入れたソレはユートが欲していた、概念魔法と呼ばれる魔法を付与した魔導具。

 

 ユートも概念を力に換える力は持っていたが、本来だと概念には雑念を入れては失敗をしてしまうが故に、ユートでは彼女達を帰す為の概念を創る事が出来なかった。

 

 当然だろう、折角自らの手の内に在る彼女達を帰したいとは建前では兎も角としても、ユートの本心が決して思う訳が無いのだから。

 

 それに卯都木 命には問題もあった。

 

 彼女は【勇者王ガオガイガー】本編でも無く、回想シーンに出て来るJK時代でも無い。

 

 ニニ歳な【勇者王ガオガイガーFINAL】に於ける卯都木 命、記憶喪失で肉体的な損傷も可成りの割合で負っていた事から最終決戦手前まで来ていたのは間違い無かった。

 

 恐らくジェネシックドライブに失敗したのだと思われ、そうなった場合にジェネシックマシンは解放されない侭でジェネシックガイガーはソール11遊星主に敗北していたろう。

 

 そうなれば仮に三重連太陽系が本当に復活したとしても、宇宙そのものによる世界の破滅加速によって結局はどちらの宇宙も終わる。

 

 既に記憶を喪って恐怖心からユートに縋ってしまった彼女を、本人の同意の元に『戴きます』をしてした事もあって彼女を破滅した世界に一度は帰す約束をしていたから帰した。

 

 結果的に悲しませる羽目になってしまったのはどうにも成らなかった訳だ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 三機のガオーマシン――ドリルガオーⅡとライナーガオーⅡとステルスガオーⅢがガオファーの周囲を巡りプログラムリングに乗って合体開始、上半身と下半身が反対方向に回転してガオファーの両腕は後ろへと回り、ドリルガオーⅡが両脚となってライナーガオーⅡが肩と二の腕に、そして背後へステルスガオーⅢが合体して腕部が二の腕に合着、ガオファーの顔をマスクが覆って緑色のGストーンが額に迫り出す。

 

「ガオッファイッガァァァァァーッ!」

 

 これが念能力“勇者王新生”。

 

 フィン達の側では……

 

「何じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 口だけかフィィィィィンッ!」

 

「……来てくれると信じていたんだよ、言わせないでくれ恥ずかしい」

 

「抜かせぇっ!」

 

 とかやっている。

 

 ガレスの斧が砕け散るのを視たユートは右側の腕部を回転させた。

 

「ファントムリング……プラス!」

 

 そしてファントムリングを腕部に纏わせると、そんな暴力的な腕を一気に解き放つ。

 

「ブロークンファントムッ!」

 

 それに気が付いたガレスが横に避けると腕部は下階層から壁となったそれへ激突、ファントムリングが壁を円状に削ってブロークンファントムが穢れた精霊の顔にぶち込まれた。

 

 再生する顔だったけど、勝利の法則が決まった瞬間を見逃す程に愚図はロキ・ファミリアに居よう筈も無く、フィンとベートが幾重もの攻撃を捌きながらアイズの道を切り開く。

 

「ゴルディーマーグッ!」

 

「おっしゃ、俺を使えガオファイガー!」

 

 念能力――“最強勇者機人軍団緑(ガッツィ・ギャラクシー・ガード)”は名前の通りGGGの勇者ロボをダウンジングサイズして具現化をさせるモノ、一斉に出したり今回みたいに一体だけを出すなど自在だ。

 

 無骨な橙色の機体のゴルディーマーグ、コイツもまたユートの念能力で創られた存在でありながら自由な意志を持つ。

 

 場所は再びユーキの元、彼女は仮想コンソールにキーを刺して回す。

 

「ゴルディオンハンマー、発動承認!」

 

 それを通信で聴いていた命はカードを裏側の胸ポケットから出した。

 

「了解! ゴルディオンハンマー、セーフティデバイス……リリーヴッ!」

 

 カードをスリットに通すとピンポーンという、とっても軽快な音が鳴り響いて承認される。

 

「ふぅ……」

 

 一人で寸劇させられた命は、矢張り顔を真っ赤に染めながら椅子の背凭れに身体を預けた。

 

「システムチェェェンジッ!」

 

 ゴルディーマーグがマーグハンドに。

 

「ハンマーコネクトッ!」

 

 分離されたハンマーが握られる。

 

「ゴルディオンハンマァァァァァァァァァァァァァァァァァァーッ!」

 

 金色に輝けるガオファイガーが穢れた精霊へと向かうべく空中へ。

 

「アレは!」

 

 流石に異常に気付いたフィン。

 

 それは約三mという巨体が空中に居たら驚く、其処へユートが大声で叫んだ。

 

「アイズ! 此方が攻撃を極めた後に本体へトドメを刺せぇぇぇっ!」

 

 アイズはそれに頷く。

 

「ハンマーヘルッ!」

 

 穢れた精霊が口からアイシクル・エッジを放とうとするもハンマーで光の杭を突き刺す。

 

 勿論、何処ぞの魔王様では無いので尻パイルはしていない。

 

「ハンマーヘブン!」

 

 バールの様なモノ的なクローが迫り出てきて、光の杭を謂わば釘抜きの要領で引き抜く。

 

 杭には融合していた“種”が。

 

 精霊としての姿を喪った穢れた精霊は本来の姿たる強化“死体の王花(タイタン・アルム)”に戻っていた。

 

「【吹き荒れろ(テンペスト)】!」

 

 エアリアルの最大出力。

 

「リル・ラファーガッッ!」

 

 皆の応援を背に受けて見事に“死体の王花”を絶命させたアイズ、因みにゴルディオンハンマーは念能力だったから普通に消している。

 

「さて、本実験に移る」

 

「実験とは?」

 

「誰か“宝玉の胎児”を持ってくれ。あ、アイズは駄目だからな?」

 

 フィンの言葉には答えず言う。

 

「これで良い?」

 

 ユートの頼みに応えたのはティオナ、矢っ張り身体を幾度も重ねているだけあって信頼度が高いのか、それと何をしたいのか好奇心で一杯といった表情をしていた。

 

 ガオファイガーからフュージョンアウトして、()()を天に掲げながら八枚の妖精みたいな羽根を出し緑色に輝く、そして手は親指と人差し指と小指で印を結んでいる。

 

「念能力――“緑之浄解(クーラティオー)”」

 

 元より“勇者王誕生”から始まる念能力は一連のモノ全てを合わせて一つ、ガオガイガーへの最終融合や勇者ロボ軍団の召喚に浄解の事だ。

 

Curatio(治療を)!」

 

 それは天海 護がゾンダー核や原種核を相手に行っている浄解、これが態々ユートが実験と称してまでやろうとしていた事だったらしい。

 

Teneritas sectio salus coctura(繊細に切断し安全に分解せよ)!」

 

 ユートの浄解に“宝玉の胎児”は消滅を余儀無くされ、消えた後には小さな人の姿をしたナニかがティオナの掌の上に残った。

 

 何故か手を前に合掌組みして涙を流しており、浄解をしたユートに感謝の念を送っている。

 

「成功したみたいだな」

 

「まさか、精霊?」

 

 アイズが驚愕を露わにした。

 

 見た目は先程の穢れた精霊の上半身とそっくりだったが、緑色の樹木染みた気色悪い肌では無く普通に肌色をした姿……服は着てない。

 

「反転して“穢れた精霊”を浄解して本来の神より遣わされた使徒に戻した」

 

 あの姿はモンスターに“宝玉の胎児”を寄生させた上で、魔石を喰らわせてエネルギーチャージを行って強化種にした完全体。

 

 ならば“宝玉の胎児”の中身とは謂ってみるなら精霊その者、通常なら“穢れた精霊”を斃した時点で中身も消滅したのだろうが、それをユートが無理矢理に生きた状態にて引っこ抜いてしまう。

 

 その上で浄解をして再反転させたのが今の姿であり、小さいのはエネルギーが足りていないからミニマムと成っている訳だ。

 

 即ち、実験成功であったと云う。

 

 

.




 尚、ユートは赤の紋言の方が好みです。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。