ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】 作:月乃杜
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ふわりと浮かんで大地に立ったヒタチ・千草、異世界では冥界の宝石の如く輝きを放つとも云われる漆黒の鎧――
「冥王ユート様……地劣星エルフの千草。心身共に貴方様へ御仕えすべく罷り越しました」
勿論ながらタケミカヅチ・ファミリアの面子はあたふたと慌てふためき、実情をよく知っているキャロルとエルフナインは特に思う所はは無く、ベル達は全く意味が解らないといった具合なのか茫然と見つめていた。
「ち、千草殿?」
まるっきり人が変わったヒタチ・千草の様子に心配してしまうヤマト・命。
「テメェ、千草に何をしやがった!」
掴み掛かろうとするも……
「桜花、ヤメテ! この方は私が御仕えするべき冥王様なんだよ!?」
当のヒタチ・千草に止められた。
「なっ、俺達の主神はタケミカヅチ様だろう? どういう事なんだ千草!」
「タケミカヅチ様にもちゃんと敬意は払うよ? だけど今の私はタケミカヅチ様の眷族でもあり、冥王ユート様の
「すぺくたぁ?」
意味が解らないのか、首を傾げて棒読みで鸚鵡返しに呟くカシマ・桜花にクスリと笑うその姿、それはいつものタケミカヅチ・ファミリアで話すヒタチ・千草そのものである。
それが何だか嬉しくて涙が零れ落ちそうになるヤマト・命、本当にあの鎧を着て人が変わってしまったくらいに違う親友に拳を握り締めた。
「一つ、勘違いが無い様に言っておく。冥衣には別に洗脳効果なんて無いし、別人がヒタチ・千草を名乗って肉体を乗っ取っている訳でも無いぞ。冥衣を纏った冥闘士として初めての挨拶って事で一種の御約束みたいなもんだ。確かに冥闘士に成ったからには冥王の僕に忠誠は誓うけどな」
「あの、冥王というのは?」
「この世界にも同じ名前の神――ハーデスが居る筈だが、僕の元々居た世界にギリシアはオリンポスの三大神として天帝ゼウス、海皇ポセイドン、冥王ハーデスが存在していた」
「ゼウス!?」
「ポセイドン……」
ハーデスの名前は挙がらなかったけど、抑々にして迷宮都市で嘗て二大勢力と云えばLV.9やLV.8を擁していた彼のゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリア、そしてポセイドン・ファミリアも海の覇者リヴァイサアサンを両ファミリアと共に討ち斃した事で有名だ。
「その三大神は地上の覇権を握るべく地上を
「アテナ様って、貴方の主神の?」
「ああ、ガチで間違いじゃない。今、この世界でアテナを名乗るサーシャ……逆か、サーシャを名乗るアテナは嘗て地球で地上の愛と平和を
ヤマト・命の質問に答えたけど、サーシャというのは本来だとユートが共に在った城戸沙織であるアテナの先代――神格は兎も角として名前だけはNDとLCのどちらも共通――に当たる。
星矢に刺さったインビジブル・ソードをどうにかするべく、城戸沙織が時空神の方のクロノスに嘆願して過去へ戻った際に、ユートだけ世界線の異なる【聖闘士星矢LC】の方へ跳ばされた。
尚、この時には蟹座のマニゴルドとごっつんこをかましていたりする。
この迷宮都市でサーシャを名乗るアテナというのはLCの方のサーシャだ。
理由不明だったけど、何億年か数えるのも既に億劫なくらい前にアテナとして生誕していたが、当のサーシャとしては意味が解らなくて困惑をしていたし、天界から地上に降りるなんて当時には意味が無かった事もあり涙を流していた。
テンマもアローンも居ない、当然ながら未来から来た優斗も居ない世界な上に名前や司るモノこそ変わらないが、この世界では神は個体で完結をしている超常存在だったからサーシャはゼウスやメティスの娘では無いし、ヘファイストスからは粗相をされたりもしていないというか、性別からして違っていたからそれは有り得ない話。
だけど司るモノが同じなだけに、ヘファイストスは鍛冶の神でゼウスは雷霆の神でオリンポスの主神であるし、ヘルメスはゼウスの使い走りをしていたし、ヘスティアとアルテミスは処女神で、自分と合わせて『三大処女神』なんて余りな呼ばれ方をしてもいる。
前世では伯母に当たるヘスティアと姉に当たるアルテミスは共に神友として、姿も性格も全く違うから仲良くなるのは割と早かったものだ。
それから人間臭い神も……否、そんな神しか居ないと云っても過言ではなく、オリンポス一二神にして界隈での美の女神アフロディーテが何故かアルテミスに絡んで来ては泣きを見ていた。
アレだろうか? 好きな子に意識して貰うべくイジワルをする心境で、天界時代にアルテミスとヘスティアを伴って湖に沐浴に出掛けたら何故かアフロディーテが現れ、サーシャとヘスティアには目も暮れずアルテミスだけを標的に口撃して、最終的にはアルテミスの勘気に触れて矢で尻を射抜かれてしまっていたし。
ヘスティア曰わく、矢女神なんて或る意味では斬新過ぎるのだとか。
ヘスティアやアルテミスとは神友になれたし、前世とは違って女性なヘファイストスとも神友の間柄、領地こそ離れていたけど気の良い武神であるタケミカヅチ、薬神ミアナなど善神とは普通に友神関係を結べたので寂しさは減った。
それでも折に触れて地球の聖域で出逢った人達――聖闘士や、孤児院で暮らしたテンマや兄であったアローンを思い出しては涙を零し、そんな処をヘスティアに見られて訳を話す事にもなる。
はっきりと云えば神友関係でも流石に信じては貰えず、サーシャの妄想か夢物語みたいな扱いに成っていたのだけれど、ヘスティアだけはガチに信じて――『そっか、また会えたら嬉しいね』と嫌味や嘲りなど決して無い、本気でそんな風に言ってくれて思わず抱き付いてしまった。
素直過ぎるヘスティアであっと云う。
とはいえ、地上になど降りても居ない筈なのに『地上には聖闘士という子供が居る』とか言われても、誰だって素直に頷ける筈も無いというのが正直な処――ヘスティアを除いては。
今から約千年前から地上に光臨するのが一種のトレンドとなり、真っ先に降り立った中に居たのが天空神ウラノスだったり雷霆神ゼウス、後発組で割と最近に降りたのがヘスティアやサーシャ。
そしてサーシャはヘスティアと共にヘファイストス・ファミリアで居候をしつつ、サボって怠けるヘスティアとは異なり一応は積極的な活動をしていたけど――『私と契約して聖闘士になりませんか?』だとか、どっかの白い宇宙生物みたいな勧誘の仕方が良くなかったのか? 全く誰も勧誘には乗ってくれなかったのである。
ヘファイストス曰く、『真面目に活動をしているだけヘスティアよりはマシだわ』らしい。
どちらにしても神友の
因みにだが、二柱によるこの期間での寝食代金に関してはユートが支払っている。
それは扨置き説明を続けるユート。
「どうやらゼウスとポセイドンは知っているみたいだな、この世界とは無関係だがハーデスという神とアテナの最終聖戦で聖闘士の一人のペガサス星矢が胸に剣を突き立てられて、その剣を引っこ抜いてハーデスを真っ二つにしてやった」
「そ、それって神を殺した?」
神殺しは当たり前だけどやらかして良い事では決して無く、特に神時代である現代に於いて明確に罪人扱いされるだろう。
「この世界で殺れば罵倒されても仕方が無いが、飽く迄も別の世界だし……前世の話だからな」
故に糾弾対象にはならない。
「ハーデスだって普通に生きてるだろうしな……光臨してるかは知らんが」
少なくともユートが知る限りハーデスが光臨をしていたり、或いは光臨後に送還されてしまったり……といった話は聞かなかった。
「兎に角、真っ二つしたら噴き出した神血で全身が真っ赤――神血は青いけど受肉しているからか赤く見える――に染まった。更に奴の神氣を喰らった事で多少の能力向上もあった。その後にとある理由から“カンピオーネ”と呼ばれる存在に成ってからが劇的に変わった。ハーデスの神氣を操れる様に成ったからだ」
「は? 神の力を……ですか?」
ヤマト・命は……だけでなく、その場で知らなかった者達は全員が驚愕をしている。
「主な力は三つで魔法みたいに名前を付けているから解り易い。その中でも神氣の大部分が使われたのが“
名前の由来は勇者王の必殺技、その能力は想像が赴く侭の冥界創造というちょっと意味が判らないもので、正しく名前の通り天国と地獄を創ってしまえる能力だった。
ユートは既知の通りに冥界を創造したけれど、天国とされるエリシオンと通常の天国を完全に分けており、エリシオンは【閃姫】や嘗て黄金聖闘士と呼ばれた勇士などが住んでいる。
勿論、ユートの冥闘士もだ。
それに伴って冥闘士や【閃姫】達の関係者達も望むなら受け容れていた。
例えば――【ソードアート・オンライン】という世界の【閃姫】の一人である桐ヶ谷直葉だが、彼女は兄と義姉の事を受け容れて欲しいと願ったので、本人達がそれを望むのならばと受け容れてエリシオンに家を与えている。
必要とあらばユートからの要請を受けるという契約の許にだが……
黄金聖闘士にしても城戸沙織の時代の人間と、先代的には童虎とシオンを受け容れていた。
但し、流石に与えたのは黄金聖衣では無く形が似ていて刺々しい冥衣の方である。
「二つ目が“
それは矢張り驚愕を以て迎えられた。
一〇八の魔星とか云いながら実は幾らでも創ろうと思えば創れてしまい、モチーフも原典以外から普通に象る事が可能となっている。
抑々、元黄金聖闘士が纏う冥衣だって似た形で創っているのだから当然。
「一番しょぼいのが三つ目だけど、この世界での基準ならこれも大きい。ま、僕の感覚が【DB】の孫悟空並に鈍ってきている証左だろうけどな。それが“
『『『『『ハァ!?』』』』』
矢張り知らない者が叫んだ。
この権能は一二時間限定だが蘇生が可能という事から、冥王ハーデスが黄金聖闘士達――OVAでは白銀聖闘士も――を蘇らせた能力である。
但し、肉体をどうにか出来るなら一二時間という限界を解除してしまえるの、何らかの術さえ持ち合わせれば一二時間は最早限界に非ず。
名前の由来は【とある魔術の禁書目録】に出て来る蛙顔の医者の渾名“
「無茶苦茶だ……」
タケミカヅチ・ファミリアの白衣の少女が震えながら呟いた。
「神々を弑奉り権能を簒奪するってのはその無茶苦茶をやれる存在に進化するって事、故に僕みたいな存在を極東の言葉で王者、僕の世界の英国語でチャンピオン、そしてイタリア語で書かれていた書物から『カンピオーネ』と呼ぶんだよ」
「王者……カンピオーネ……」
ヤマト・命は呟く。
恐怖心と好奇心が綯い交ぜとなった複雑怪奇な震えと興奮を呼び起こし、それは小さいながらも何処か性的な快感をも与えていたと云う。
「それに同類連中も中々にぶっ飛んだ権能持ちが居たぞ? 死んでも生き返って黒竜化をしたり、何かを生贄にして姿を変えてみたり、たった一柱を殺しただけで一〇種も能力を扱えたり、異界へのゲートを開いたり、そこら辺のなまくらをだいたいの物を叩っ斬る名刀に変えたりな」
「何て理不尽な」
「って言うか、黒竜化って何だ!?」
白衣の少女が頭を抱え、カシマ・桜花は黒竜という名前に酷く反応をしている。
正確にはこの世界に於ける黒竜のネームバリューについて識らない、ユートとラブレスとキャロルとエルフナイン以外がと云うべきだろう。
神を弑奉る事は重罪なれど、余所の世界で起きた出来事で此方でやらかした訳では無いからか、極めて考えない様にしているっぽい。
故に余計と黒竜に反応したのかも知れないと、ユートは話をしながらそう考えている。
「黒竜化は黒竜化だ。古代メソポタミアとか言っても判らんだろうが、ひょっとしたら同じ名前の女神が居るのかも知れんな。地母神イナンナからヴォバンの爺さんが簒奪した権能だ。自らの霊魂――霊体を伴う魂魄を肉体から剥離させて体長が三〇
全員が意味不明とばかりに首を傾げた。
ガサガサッ! 少し離れた場所で草音が響き、皆が振り向くと驚愕に目を見開くアイズの姿。
ヤバいと思ったのか回れ右をして逃走を開始するアイズ、だけど幾ら魔法を使ったら瞬間的にはベートをも凌駕するスピードファイターであるとはいえ、トップスピードに行き成り乗れる筈も無くて数秒間のラグが発生する。
「……え?」
気付けば目の前にユートは居た。
「う、そ……」
疾さには自信があっただけに、気付かれぬ内に回り込まれていたのに衝撃を禁じ得ない。
「何処から聞いていた?」
実はだいたい判っている。
「……こ、黒竜の話。ユートが居たから声を……掛けようとしたら……黒竜って聞こえて……」
「フム、黒竜ね。どうにもオラリオって言うよりこの世界の人間にとっては特別らしいな」
陸の王者ベヒーモス、海の覇王リヴァイアサンに関してはある程度の情報は得ていたのだけど、名前が判別しない“隻眼の黒竜”に関してはユートも些か情報不足だった。
「隻眼の黒竜、ユート様は御存知では無かったのですか?」
「三大
リリの質問に自分らしくなかったと反省をしながらも、現在は未だにギルドランクが低いのだから余り意味が無いとも考えていた。
今現在に限ればと注釈は付くが……
それに残された三大冒険者依頼が黒竜ならば、ユートからしたらカモでしかないのだから其処まで警戒してはいない。
ユートは竜蛇という属性に対してなら絶対的なアドバンテージを持っているのだから。
最早、単なるIFに過ぎないが若しユートが来たのが一五年前より以前だったなら、ひょっとしたらヘラ・ファミリアにでも入団したかも?
そして或いはベル・クラネルは誕生する事も無くて、柾木優鐘という白髪紅瞳の息子が産まれていたのかも知れない。
ユートならあの二人の病を癒やす事が或いは出来たかも知れず、最低限で病が背中の恩恵の中でスキル化していた姉の方は……ユートを受け容れていたらだけど確実に治っただろう。
そうなれば病の無い彼女に竜蛇を圧倒が出来るユート、その他にLV.9やLV.8を含めて複数のLV.7達の戦闘となれば隻眼の黒竜すらも屠った筈だ。
そうなれば姉妹丼を病を癒やすという理由から『戴きます』をしても、姉やヘラも邪険には出来なかったであろうし……本来のベル・クラネルの父親を近付けさせもしなかった。
アイズの両親も黒竜戦で居なくならなかった事を鑑みれば、或いは柾木優鐘――IFのベルとは幼馴染みとして仲良くしていたかも知れない。
英雄が現れなかったからと自らが英雄に成るべく強さに生き急いだり、復讐姫なんて黒い炎を燃やす燃料みたいなスキルも出なかったろう。
迷宮都市の二大ファミリアとてゼウスとヘラの侭で、ロキ・ファミリアもフレイヤ・ファミリアも三番手四番手に甘んじていたかもである。
そしてきっと、
何より恐らく舐められてたロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアと違い、嘗ての二大ファミリアが健在だったなら連中はド派手に事を起こそうとはしなかったであろうから。
そうなれば正義のアストレア・ファミリアが、迷宮都市から消えてしまう事も無かった筈だ。
リュー・リオンの運命も変わっていた可能性が高いし、正義は余り好きじゃないがアストレア・ファミリアと存外仲良くなれたかも知れない。
まぁ、所詮起きなかったIFである。
「アイズ、黒竜との因縁は知らないから何とも言えない。だけど君が生き急ぎながら強さを得たい理由が黒竜なのは理解した。魔力式念能力を本格的に学びたいなら教えてやるから」
「っ! うん」
「それとフィンに此方の人員が増えたから天幕を新たに張る事を伝えてくれ」
「……判った」
アイズは頷いて今度こそ立ち去ろうとしたが、其処へ待ったを掛ける存在が居た。
「んみゅ? ありあ~?」
「っ!?」
精霊ルベライト――ルビーである。
「貴女は……精霊の……」
先程まではユートの胸元、服の中で眠っていたルビーがアイズの風に反応したらしく起きた。
見た目は可愛らしい少女だけど、力を喪っているから身長が約三〇cmくらいしか無い。
「ありあ、ありあ!」
苦々しい表情になるのは矢張り穢れた精霊を思い出してしまうからか、確かに容姿は幼くなって肌は白く瞳も髪の色も紅に輝くルビーではあるけれど、あの穢れた精霊を彷彿させる容貌をしているのも間違い無い。
「わたしといっしょになりましょう?」
ビックゥゥッ!
バッとバックステップして鎧こそ装備していないけど、モンスターが第一八階層には産まれないだけで越階してくるから存在しているが故に佩いたデスペレートを抜剣。
「心配するなアイズ。ルビーのは穢れた精霊による『貴女ヲ食ベサセテ』って意味じゃ無いから」
「そ、そうな……の?」
ユートの肩に乗ったルビーをアイズが見遣るとキャッキャッと笑いつつ……
「ゆないと! ゆないと!」
子供みたいにはしゃぎながら叫んだ。
「ゆ、ゆないと……って?」
「融合みたいなもんかな? 言葉自体は僕が教えたんだよ」
ユニゾンデバイスに近い事が可能となる為に、ルビーにはユナイトという言葉とやり方について既に伝達済み、現状では精霊神との契約をしている契約者なユートか、精霊の血族であるアイズかヴェルフであればユナイトが可能であろう。
勿論、クロッゾ一族なら基本的に誰でも可能と成ってはいるのだが、それはルビー自身が嫌がるのでそういう意味では不可能だった。
今現在のクロッゾ一族はヴェルフを除き精霊には嫌われているのだから。
「試しにユナイトしてみるか?」
「……えっと……それは」
「心配は要らない、その子は無害だよ」
「う、うん……ならちょっとだけ」
特に教えた訳でも無いが、アイズが可愛らしいポーズを執りながら右腕を掲げるとルビーが掌に収まり、クルクルとこれまた可愛らしいポーズで回って一言をルビーと口ずさむ。
「「
同時にアイズがルビーを胸元へと、目を閉じたルビーがスッと胸からアイズの中へ吸い込まれ、彼女の長い金髪が炎の如く色へ煌めき、瞳の色も真紅と呼べそうな程に紅い。
轟っと全身を焔が纏い、佩いていたデスペレートをスラッと抜き放ったアイズの背中には炎の翼が二枚、ちょっとした魔法少女の様な変身シーンと共にユナイトを完了した。
「力が……湧き上がる?」
「ユナイトで大幅にアイズの身体能力が上がったんだよ。因みに基本アビリティという意味でなら力の値が大きく伸びている筈だ」
「力が?」
「これが風の精霊なら俊敏、水の精霊なら魔力、土の精霊なら耐久って処だろうね」
雷や闇や氷や樹や影などはまた違った形に成ってくると思われる。
「然し炎髪灼眼とはまた懐かしいね」
ユートはクスリと笑った。
実際にユートはその世界にも行ってはいるし、何なら主人公が最初に死んだ平行世界でメインヒロインを喰っちゃったりもして、あの世界では中々に愉しい事が出来ていたとは思っている。
因みに敗けヒロインになった彼女を、本来的なβ世界線では『戴きます』をしていた。
故に違う世界線での『シャナ』と『吉田さん』がエリシオンの、同じ家に仲良く暮らしていたりする……勿論だけどアラストールも。
「ルビー、ユナイトアウト」
ポンッ! とアイズの中から出て来たルビー、アイズの姿も金髪に戻っている。
「あ……」
ちょっと残念そう、ユナイトしている真っ最中は万能感に浸れて少し心地良いらしい。
「ラブレス」
「はい?」
「魔法に長けてるシャーマン一族であり、伝説の戦士たる父親を持つシャーマン一族の姫であった君は、ルビーとのユナイトは出来るか?」
「……私はアネスの残滓みたいなものですけど、そうですね……ユートさんの【閃姫】に成ってから私も御父様みたいな伝説の戦士に近い能力が有りますし、試してみないと判りませんけど恐らくはやれるのではないかと」
「ならルビーはラブレスに預ける」
「判りました」
伝説の戦士とは剛魔神族の力とシャーマン族の魔力を併せ持つ者、前者はシャクマという若者で後者はラブレスの父親のシャーマン王イシュタルの事を指している。
嘗てのシャクマは鬼光術の修得に成功、そしてラブレスも恩恵を得た時に鬼光術は修得済み。
シャーマン系以外の氣と自然の力を融合させる剛魔神系の術も扱え、見た目にはとても細い身体で力や俊敏の伸びも良いらしく剣術に堪能とか、正しく父親と同じ伝説の戦士を彷彿とさせる。
「あの~、ユート様」
「どうかしたか、リリ?」
「ルビー様とのユナイト? でしたか、それをする条件が精霊との親和性なのは理解しましたが、ラブレス様はどうしてでしょう?」
アイズやヴェルフみたいな精霊の血族なら判るリリだが、ラブレスは今までパーティを組んでの戦闘を見た限りで精霊は無関係だった。
「シャーマン族は精獣と呼ばれる生き物を取り込んで力に換える能力がある。まぁ、中には剛魔神や同じシャーマンまで取り込む悪魔みたいな連中も居たけどな。兎に角、そういう特性もあるからいけるかもと思ったんだよ」
「はぁ、成程」
少なくともリリがユナイトは無理っぽいというのは確かみたいだ。
「ユート」
「アイズ?」
「若しまた穢れた精霊……見付けたら……精霊に戻せる?」
「浄解自体は幾らでも出来るが、恐らく次に出会う時は浄解なんてやってられないくらいに切羽詰まってるだろう。ルビーみたいなのがアイズも欲しいってのは判るがね、だからって僕が来るまで斃さずに居て仲間が殺られたら困るだろ?」
「……そう……だね」
流石にアイズも其処は諦める。
「それに今回の浄解だってルビーの為って訳じゃ無く、僕の目的……穢れた精霊に浄解が効くかを確かめておきたかったってのがある」
「そうなんだ」
ユートは“
その差違は何故か知らないけど“赤之浄解”では浄解された対象が生物だった場合、激しい痛みに襲われるので味方じゃ無い対象に使っている。
元々この浄解は爆弾魔を相手にした際に犠牲になる連中を助ける建前で創った、詰まる話がこれは“除念”を行う為の念能力であった。
建前……というのは無償で救う訳では無かったから、当然ながら“GI”を攻略するのに必須となる指定ポケットカードを渡して貰う。
そして爆弾魔はその場で斃した。
ゴンやキルアの成長の事も鑑みてユートが斃したのは、原典でビスケット・クルーガーが相手をした奴だけである。
元より原典に比べても強かったから問題無くいけて、あの連中――爆弾魔共の時限爆弾の除念も普通に出来た。
因みに、ビスケット・クルーガーには請われてユートは念能力の“人物再設定”を行使しており、あのムキムキなマッチョスタイルから普段使っているキャピルンなスタイルへと変更をした。
再設定は自在に名前や年齢や姿形も遺伝子の在るべきレベルで、能力値にしても今現在の数値を最大値として振り直しが可能。
但し一生涯に一度だけという制約が有るから、もう一度の再設定をするには心臓を停めて死なないといけなかったりする。
名前はビスケット・クルーガーの侭だけれど、年齢は16歳に変更していつも使う姿を標準化してしまい、能力の数値は力と耐久と俊敏に振り直した形で彼女の理想的な戦闘スタイルになった。
それは兎も角、アイズも取り敢えずは納得をしたらしくてコクリと頷く。
「ねぇ、ユート」
「今度は何だ?」
「序でだから訊きたい」
「構わんが」
「貴方なら……三大冒険者依頼……受けるとしてどれを受けたい?」
三大冒険者依頼とは即ち陸の王者ベヒーモス、海の覇王リヴァイアサン、隻眼の黒竜の討伐依頼の事なのは周知の通りな訳だが、依頼を受けるも何もソロでやる様なもんでもあるまいに。
「それはまさかソロでか?」
「……貴方なら或いはやれる……かも?」
コテンと小首を傾げる仕草はアイズを一六歳よりも幼く魅せる。
「基本的にどれでも構わない」
「黒竜……でも?」
あのゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアを以てして敗走――否、壊走に陥ざるを得なかった空の皇帝と呼んでも差し支え無いモンスター。
「竜であるからには僕の敵じゃない」
「っ!?」
アイズが目を見開く。
「海の覇王リヴァイアサンも海竜の類いだったから矢っ張り敵じゃないな。陸の王者ベヒーモスがそういう意味では一番の難敵だろうが、奴の毒は僕のみにという制限は有るけど効かない」
「どうして?」
「僕が異様にエルフから好かれているのには気付いているか?」
「あ、うん。レフィーヤもリヴェリアもアリシアもユートが気になって仕方がないみたいだから」
何だか代表みたいに言われた三人はユートとの接触が最も多い。
「僕は昔に四大精霊神と契約をしているからね、エルフやハイエルフならそれを感じられるんだ。それ以外でも同じ頃にヒューマンがエルフと敵対的だったんだが、僕だけは敵対的なエルフ以外とは仲良くしていたからかな? フィトンチッドでも垂れ流してるのかって思うくらい好かれ易くなったみたいだ」
「……そうなんだね」
「飽く迄も好かれ易いってだけ、向こうが敵対的だったら余り意味は無いからね」
例えばハルケギニアの鉄血団結党なんて集まりのエスマイールみたいな。
精霊神との契約によりその精霊神が司る属性ではダメージを負わなくなるし、小精霊や大精霊や精霊主との交感力も可成り増してくれる。
勿論だが単なる術師では其処までの能力は得られない、精霊神と契約をした契約者だからこその大きな力であるという事だ。
更に力は血筋に宿る為、直系であれば初代程では無くとも強大な力を揮う事が出来、仮に婚姻により家に入った外様でも直系の家に入った時点で能力が増すのだと云う。
四大精霊神な為に他は未契約、闇は初めから強い親和性が有ったから兎も角としても、光や影や樹や氷や雷などはどうしようもない。
「水の精霊神の加護ってやつでね、如何なる毒も僕には効果が無いんだよ。アルコールでさえね。酒の味は判るけどアルコールに酔う事は出来ないのがちょっとした悩みだな」
「……お酒」
まだ幼い頃に冗談混じりに団員から酒を飲まされた事があるアイズだが、その際に大暴れをしてファミリアの連中を半殺しにした挙げ句、翌朝には何も覚えていなかった彼女に新たなるルールとして、苦笑いをしていたフィンから酒禁止令が出たのは言うまでも無い。
一応、ドワーフの火酒くらいに強いのを一升瓶でがぶ飲みすれば刹那の酩酊感くらいは得られ、全く酔いの感覚を知らない訳では無いとはいえど矢張りすぐに浄化されてしまう。
「アイズ、いずれ黒竜との決戦やダンジョンとのあれこれは起きるだろう。僕に頼り切らないとならない……そんな状況が許せないならせめて僕が教えた技術くらいはマスターして見せろ」
「……やってみる」
あれを修得すれば間違い無く今のLV.以上に強さを発揮が可能となる。
オーラを発揮させる手段が無いでもなかったにせよ、それでは魔力を使うのに邪魔となってしまって結局は中途半端で終わる可能性もあった。
ならば魔力をオーラ代わりにというのが一番の道となるだろう。
今度こそ立ち去るアイズを眺めていると……
「優斗」
キャロルが話し掛けてきた。
「どうした?」
「優斗はまだ彼方側には帰らないのだろうというのは判る。それならばオレとエルフナインはどうするべきだ?」
「取り敢えず冒険者って立場でオラリオに逗留をしてみるか?」
「む、話に聞く限り冒険者とは神の恩恵とやらを得ねばならぬだろう。オレが神から? 正直な話としてぞっとしないな」
「まぁ、キャロルの立場からはな」
苦笑いしか出ない。
「冒険者をやる上でのルールだから従ってくれとしか言えないな。冒険者ギルドに登録をするにも神の恩恵を得て各ファミリアに所属しないといけないみたいでね」
「チッ、已むを得んのか」
「神とか考えるからいけない。高位次元生命体と思えばどうだ? 要は津名魅や訪希深や鷲羽みたいな者の下位互換だと思えば良い」
「彼奴らか……」
津名魅を内包し更に一体化しつつある砂沙美には可成り世話になり、流石に神を名乗るからといって邪険には出来ていない。
砂沙美は津名魅と殆んど完全な一体化を果たしており、同名の艦船である津名魅も自由自在に操る権能を有していた。
年齢的にはもう完全な一体化をしている頃ではあったが、どうにも津名魅には心残りがある所為で意識が残されている状態であり、ユートも何を心残りにしているのか理解をしているからこそ、津名魅のその心残りを解消させてはいない。
どの道、いつかは解消してしまう。
それまではせめて共に在りたかったからこそ、そして砂沙美も津名魅も理解をしていたからこそ何も言わず、何も起こさずにゆるりと今という時を共に過ごしているのである。
まぁ、今回で砂沙美も遂にブチ切れてしまったかも知れないけど。
「オレ達は構わない、然しいずれ砂沙美も来る。それはお前にとって都合が悪かろう?」
「今は祐希さんが抑えてくれてますが、我慢の限界を越えれば流石にどうしようも無いかと」
キャロルとエルフナインが言いたい事は理解してしまう、確かに下手に抑えつける真似をしてはいずれ精神的に破綻を来し爆発してしまいかねない。
「仕方が無いな。この遠征が終わったら向こうへ一度帰宅して……決着も着けておくか」
敢えてやらなかった事、だけど砂沙美に此方へ来られては不都合が生じるのは目に見えて明らかな為に、ユートは彼女達……二人といつまでも変えなかった事に決着する決意を固めるのだった。
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これ、ソード・オラトリアと本編が微妙に擦れ違って黒ゴライアスとロキ・ファミリアは闘って無いんだよな~。